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鉄扇使いは成り上がる  作者: マルクゥ
2章 武闘会編
10/14

ノルウェスト街 ☆ステータス更新☆


 新魔6代15年8月20日 


 神人大陸最東で魔大陸と隣接している、エストゥ街へ向かって約一ヶ月が経とうとしている中、俺とサクラは今、セフィラとエストゥのに中間に位置するノルウェスト街へ辿り着いた。


「――――サクラさん」

「…………なに?」

「出発してから一ヶ月経ったな」


 セフィラ街にある森を出て約一ヶ月経っているのだが、まだ目的とするエストゥ街へ辿り着いていない。それどころかようやく折り返し地点のノルウェスト街へ辿り着いたのだ。


「仕方ないじゃん!! 誰かさんが気絶したり動けなくなったりして移動出来なくなっちゃったんだから!!」

「――――誰のせいでそうなったと思ってんだ!!」




 俺らは一日に徒歩6時間程歩き、その後サクラは食料の調理調達を行い、俺はオウセンに従い鍛錬や言語、型の練習をするという日課を毎日続けていた。

 そんなある日オウセンから、


『そろそろ対人での組み手を行った方がいいかもしれんな。身体は出来ても実戦経験が足りないといざという時に何も出来ないからな』


 という提案が上がったので組み手が出来る相手は1人しかいない為、サクラとの組み手を日課が終わった後に毎日行う事になった。

 最初は俺もサクラも真面目に組み手に取り組み、終わった後に反省会を開き徐々に自分でも成果が出ていると実感していた。

 

 だがここで俺は勘違いしていた。

 

 サクラとの組み手が日を追うごとにしっかり形になり、たったの数日で自分がどんどん強くなっていると勘違いをしていた。

 組み手の最中はオウセンがどこから相手の技が来るかを教えてくれており、サクラ自身も手を抜いてくれていたおかげで一本は取れずとも惜しい所までは行く様になってしまっていたからだ。

 だが俺はそんな事など露知らず。…………あれは、いつもの通りに組み手を始める前に向かい合っている時だ。


「今日は一本取れるのかな~? 何時までも弱っちいままじゃ困るから早く強くなってよね!」


 真面目にやる事に飽きてきたのだろう。軽口を叩き出してきたサクラに、強くなったと思っていた俺は軽口を返した。


「最近は後少しで一本取れる所まで来てるんだ、そんな軽口叩いてたら酷い目にあうぞこの幼児体系のペッタンコ女!」


 これでも俺は真面目にやっていたのだ。本気で強くなっていると自負していた所にそんな事を言われ、必要のない一言を言ってしまい彼女の逆鱗に触れた。


「――――――ふーん、そんな事言うんだ」


 ――――背筋が凍り付き、周囲の空気が一瞬無くなったかの様な息苦しさを感じた。


『いかん! 死にたくなければ今すぐに謝るんだ!!』

「――それじゃあ、行くよ!!」


 オウセンとサクラの声が被り、オウセンが何を言ったのか聞き取れなかったが、ここまで焦っているオウセンを見るのはセフィラの街での戦いの時以外では初めてだ。


『何を呑気にしているんだ! もう始まっている――――――右側頭部への蹴りだ! 防げ!』


 10mの間を開け、構えているサクラが目で追える速度を超え姿を消す。

 今迄の組み手ではお互いに走って接近していた為、驚きを隠せなかったが言葉通りに右側頭部を守る体勢を取る。


 ――――――その直後、目の前にサクラが現れ、腕、肩、頭に衝撃が走る。


「死なない程度に死んじゃえ!!!!」


「がぁっ! はぁぁっ!!」


 蹴りを喰らったと理解した時には足は地面にはついておらず、サクラの姿がどんどん小さくなっていく。


 ――――ボキッ!!

 

 何かが折れる音と共に背中と後頭部に走る衝撃により、意識が朦朧とする。

 朦朧とする意識の中、頭の中にオウセンの溜息が聞こえそれを聞くと同時に目の前が真っ暗になった。

  


 …………目が覚めて聞いた話だが、3日間目を覚まさずに眠りこけていたらしい。

 


『全く君は。首、腕、手首、背骨が見事に折れていて下手をすれば死んでいたのだから、あまり安易な発言は止めた方がいい』


 目が覚めてオウセンに一番最初に言われた言葉だ。……本当に良く生きていたもんだ。


「――――私は、ぜっっっったいに悪くないから。…………お兄ちゃんが悪いんだから」


 口では非を認めないがばつが悪そうにするサクラさん。

 

 …………まあ、今回は悪かったかもしれない。だけど……。


「だけどこれはやりすぎでしょう…………」 


 魔法により怪我の治療をしてもらったが完璧に回復してしまうと身体への負担が今回は大きすぎるらしく、一週間の療養が必要とオウセンに告げられ大人しく寝たきりになる俺であった。


 怪我が治った後も組み手は続いた。サクラもあの一件の事で気に病んで一発くらい貰ってくれると思っていたがそんな考えは甘かったらしく、逆にその後の組み手では最初に比べて手加減が減った。


「あれで死ななかったんだしちょっとだけ本気でやってあげる!!」

「死ななかったにしても死にかけたよ!? トラウマになって戦えなくなっちゃうからもう少し手加減して!!」

「手加減は相手の為にならずっていう言葉もあるんだよ! 死にたくなかったら本気で鍛錬しないとね!」

「聞いた事ねえよそんな言葉!! ぬぅぁぁぁぁ! 理不尽だぁぁぁぁ!」


 そんな感じでハードな一ヶ月を過ごし組み手でボコられ寝込んでを繰り返していたらエストゥ街へ着く予定の日付に中間地点のノルウェスト街が見えてきた。

 確かに焦る旅ではない。だが、春香と蒼汰が今にも魔王討伐へ行ってしまって死んでしまったなんて事になられても困るので出来るだけスケジュールは巻いてこなしていきたい。


『その心配は君の心情だと最もだと思うが今は気にする必要はない』


 なんだっけ? 勇者がまだ学生で卒業してからじゃないと旅に出れないんだったっけ? 


『そうだ。卒業まで後約2年はかかるはずだから後2年の猶予はあるから今はその心配はしなくてもいい。後この一ヶ月も何も無駄だったわけではない、君はしっかり強くなってきているんだ。あまり焦るな』


 王都にある4年制の学院に勇者は今在籍していて卒業後に転生者と人間の中から一人供を選び魔王討伐へ向かうという事になっているらしい。

 まだ勇者は3年生という事で約2年ほど旅に出れないらしくその間は転生者の2人は魔大陸以外の色んな所に行き世界の情勢を自身の目で確認したり見分を広めたりと割と自由に2年過ごすらしい。

 そんな事はサクラやオウセンから嫌という程この一ヶ月間で聞いてはいるがやはり兄としては心配だったりする。

 後、俺の魔法の適正属性というやつも調べたい。

 

 この世界には魔法が存在する。

 火、水、風、土、光、闇、雷と7属性が存在し、属性毎に特徴があるらしいがその辺はまだ詳しくは俺には分からない。

 ただ、一般に適正があるのは火、水、風、土の内の1種だけで多くて3種との事。

 適性がないと魔法が使えないと最初は思いがちだがそうではない。

 適性はただ消費魔力が多いか少なくなるかの違いだけらしい。

 火に適性がある人間は適性が無い人間が火の魔法を使い際に1の魔力を消費するが、適性がある場合は2~3割魔力消費が少なく済むとかそんなものだとか。

 人によって適性の度合いが違うらしく一概にどれだけ少なくなるかは分からないらしいが。

 だから魔力量さえしっかりと備わっていれば属性関係なしに魔法が使えるとの事。

 だが後半の光、闇、雷はその概念からは外れて適性が無いと魔法が使えないらしく、ユニーク属性と呼ばれている。

 光と闇の魔法に関しては数千人に1人の割合で適性を持ち合わせているらしく適性持ちは割と重宝されるとの事。

 雷に関しては数百年前には適性者がいたらしいが現世での適性持ちは1人もいないらしく、ユニークどころか伝説の属性らしい。

 だがオウセン曰く、


『希少で使える者をここ数百年見ていないが、そこまで特別と言う訳ではない。魔法の威力なんかは他の属性に負けてしまうだろう。更に言えば雷の属性の魔法書などの文献はもうこの世に存在していないだろうから結局は適性があっても魔法を使えずに適性を腐らせるだけであまり一般の人間が持っていても意味のない物だよ』


 との事な為、結局あると嬉しいのは光と闇の属性らしい。

 つまり何が言いたいかというと、俺は早く自分の適性を調べて魔法を使いたくて仕方が無い。

 …………そりゃそうだろう!? ファンタジー世界に来てしまったのなら男なら誰しも一度は魔法を使う夢を見るはずだろ!!

 異世界に飛ばされてこの一ヶ月間は悲惨な目に会い続けて来た。

 幼馴染の弟分にボコられ、鬼の様な鍛錬を一ヶ月行い、年下の女の子に組み手で殺されかけ。

 ――――そろそろ覚醒パートが来てもいい頃合いだと思うわけですよ!!

 全属性の適性持ちで最強魔法を使えるようになる的な!?


『…………あまり期待しすぎない方がいいぞ。万が一そんな事になっても君の魔力量では初級魔法を一発撃つのが関の山だぞ』


 身内が厳しすぎて泣きそうだよ。

 

 そんなこんなのやり取りを終え、ノルウェストの街へ辿り着いたので冒頭へと戻る。




「弱いお兄ちゃんのせいだよ!!」

「確かに俺は弱いけど色々と別のやり方があるだろう!?」

「っっない!!」


 そんな力強く言われたら泣いちゃうだろう!?


「俺のレベルに合わせて手加減するとかあるだろ!? 現に最初の方はそうしてたじゃん!」

「そうしていてたらいつまで経っても強くならないんだもん!」

「そんな事は無いだろ!?」 

「……確かにちょっとは強くなってるかもしれないよ? けどちょっとじゃ貴方が目標としている所には辿り着けない。辿り着けた時には何年経っているか分からないしその時には転生者の2人はもっと強くなっているんだよ」


 ぐぬぬっ…………。

 そんな事を言われたらやるしかないじゃないか。

 だがここは一つ聞いておかなければならない。


「……根に持って嫌がらせでやっているわけではないんだな?」

「………………ここでずっと立ち止まっているのも何だし、早く街の中に入らない? よし、いこー!!」

「あ、ちょっと待ちやがれ!! この――――バカ野郎!!」

 

 …………危ない。クソ貧乳とか言う所だった。――――言葉に気を付けないと地面か街の外壁に俺の形をしたオブジェクトを作る事になってしまう。 


『アキがしっかり学習したようで私も安心したよ』


 …………命には代えられないからな。




 ノルウェスト街の中はセフィラの街とあまり遜色が無く、見慣れた街並みが広がっている。

 街自体の大きさもセフィラの街と変わらないだろう。


「ここの街で何かやる事があるのか?」

「んー。とりあえず情報収集かな、転生者の所在地や魔大陸の情勢とか」


 確かに転生者と不意に鉢合わせてまた殺されかけるとか勘弁してほしいからな。


「なら俺は転生者の事をそこら辺にいる人達に聞いてくるよ。魔大陸の事とかは任せていいか?」

「……私はそれでいいけど、お兄ちゃん。ちゃんと聞いてこれる?」


 ――――俺は子供か。


「大丈夫だ、ちょっと試したい事もあるしな。それじゃ色々聞き終わったら今いる街の入り口に集合で」

「うん、わかった。くれぐれも前みたいに変な事に首突っ込んで厄介事起こさないでよね!」


 あれは、お前が原因だろと思いはしたがサクラとその辺りの言い合いをすると終わらなくなるとこの一ヶ月で学んだため、スルーしサクラとは別方向に街の中を歩く。

 その後数分もしないうちに露店が広がる通りに出た為、とりあえず最初に目についたアクセサリーを販売している店の方へと向かう。


『――――あの店に入るのか?』

 

 どうした? 何か問題があったか?


『…………いや、特に問題はない』


 オウセンのこういう反応は何故か少し怖いんだよな……。

 だが、問題ないってことだし気にせずに店に入るか。


「ちょっと見て行っていい?」

  

 若い男性の店主だったので、あまり気負いせずに店に入り声をかける。

 雪の様な真っ白な髪色で目元まではないストレートな前髪のせいか少し幼い印象だ。

 背丈は同じくらいで多分年も同じくらいだろう。そのおかげで少し親しみやすい気がする。


「いらっしゃい。何かお探しで?」

「妹へのプレゼントを探していて」

「へぇー、いいですね。若い女性向けはこちらなので好きに見て行ってください」


 この時実は内心、とても歓喜していた。

 何故かというとオウセンの言語翻訳能力を使用せずに会話をしているからだ!

 街の中を歩いている時にオウセンと話をし、折角学んだ言語でどこまで話せるか試してみたいと伝え、現在翻訳無しでこの店主と話しているのだ。

 しっかり言葉が伝わり、聞き取りも出来ており意味も理解できる!

 この事実だけで一ヶ月の努力が報われた気がした。


「妹さん、何歳位なんですか?」

 

 不意に聞かれる質問に頭を悩ます。

 実の所、サクラの詳しい年齢を知らなかった。

 なんだったら今迄聞こうともしなかった気がする。


「あー、10歳になったばかりで」


 とりあえず適当な嘘をつくしかなかった。


「それならこの辺りがおすすめですね。このヘアピンなんかは最近王都から入荷してきて、向こうの若い女の子達に人気なんですよ」


 本当はここで手に取った物を買って色々話を聞きたい所なのだが、所持金がパン屋のバイト代のみでそれを更に盗んだパン代に充てている為、ほぼほぼ所持金ない。

 

「500セントか~、ちょっと所持金が足らないからもう少し溜まったら改めてこのヘアピンを買いに来るよ」 


 セントはこの世界での通貨の名称で価値に関しては日本円と変わらない位だ。

 ……つまりは500円も持っていないとんでもない貧乏人なのだ。


「……結構大変な生活をしているんですね。それなら今月末に開催される武闘会に参加してみてはいかがですか?」

「…………武闘会?」


 武闘大会って名前からして物騒だな……。


「ええ。この街の領主が何でもそういう物を見るのが好きらしく、規模は小さいながらもしっかりとした賞金が出る武闘会を年2回開いているんですよ」


 賞金が出るのか。それは興味があるな。


『確かにそういう大会に出て、自分の現在地の確認と経験を積むのはとてもいい事だと思うぞ。詳しく話を聞いてみろ。』


「それって誰でも参加可能なの?」

「一応10セント払えば誰でも参加出来ますね。ただ武闘会という位なのでやっぱりそれ相応の危険もあるので、腕に自信が無ければあまりおすすめは出来ませんが……」

「……やっぱり勇者とか転生者とかが出たりするのか?」


 もしソウタやハルカが参加するならここは逃げなければ危険だろう……。


「……いや、まさか! 流石にその様な方々は出ないですよ。――――勇者様と転生者様は今は王都で研鑽を積んでらっしゃるとの噂を聞きますしこんな辺鄙な街の小さな大会なんかにはいらっしゃらないですよ」

「――――ならちょっと出てみたい気もするな……」

「もし出るのでしたら、お金を預けて下されば私の方で参加登録をしておきましょうか? 」


 ……これは大丈夫だと思うか? お金を盗まれたりしそうな気も……。


『信用していいのではないか? 10セント盗んだ所でこの店主に理は無い』

  

 そういう事なら……。と思ったが今の俺にはこの10セントは所持金の10分の1だ。

 葛藤に次ぐ葛藤が心の中を動き回る。

 だが、経験には! 賞金には! 変えられない!!


「……それならお願いしても大丈夫か?」


 思う所を払拭し、10セントを店主へ預ける。


「はい、お預かりしました。私も参加しようと思っていたので物のついでというやつですので安心して下さい。参加登録をする際にお名前の登録が必要なのでお聞きしてもいいですか?」

「亜紀で登録をお願いするよ」

「アキ様ですね、分かりました。それなら今月の30日に街の中央にある大きな広場に来て下さい。そこで受付を行っているのでお名前を受付で伝えて貰えれば後は係員の指示に従って貰えば大丈夫です」

「こんな何も買えない客相手に色々丁寧にありがとう。賞金を手に出来たら必ず買いに来るよ」

「期待してますよ。何かアキ様とは今後も縁がありそうな気がしたので、ただの自己満足の様なものです」

「――――名前を聞いてもいいか? そこまで言われたら俺も何か縁がある様な気がしてきたよ」 

「アルカンジュ=フィルディアです。フィルと呼んで下さい」 

『――――――――!』


 オウセンがその名前を聞いた時に理由は分からないが息を呑んだ。


「よろしくフィル。俺も様付けとか敬語とかいらないから気軽に亜紀って呼んでくれ。」

「――――分かったよ、アキ。こちらこそよろしくね」


 この世界に来て初めてまともな友達を作れた気がする。

 その後は武闘会の詳しい開催時間を聞いてサクラを待たせていた事もありあの場を去った。

 どうせフィルも参加するとの事だから当日に出会えるだろうから、その時に色々話してみてもいいかもしれない。

 

 待ち合わせの街の入り口に辿り着くがどうやらサクラはまだ情報収集の途中なのかまだ帰ってきてはいない。


『アキ、君はあのアルカンジュという少年とはあまり関わらない方がいい』


 ――――――どういう事だ? せっかく仲良くなったのにか?


『あまり深くは言えんが……。私的な感情が入っているのだが関わらない方が賢明だという事は明白だ』


 もう少し訳を言ってくれよ。そんなに悪い奴なのか?


『あの少年はとてもいい人間だろう。だが、アルカンジュという名前が問題なのだ……』


 何か不味い名前なのか?


『…………いや、何でもない。もしかしたら私の気のせいだ。今、私が言った事は気にしなくてもいい』


 …………良く分からないが気にしないでおくよ。

 その後はサクラと合流しお互いに聞いた話を伝えあい、街を出て近くの森の中にある拠点へ向かう。

 サクラも色々聞いてくれたらしいが、魔大陸に関してはあまり有益な情報は無かったようだ。

 だが、転生者に関しての情報も聞いてきてくれたらしく、やはり転生者は今は王都の方へいるらしい。

 この点に関しては俺が聞いた話と同じみたいなので信憑性は高いと思う。

 武闘会の話もサクラに話してみたが、思えばサクラが出れば普通に優勝するんじゃないのか?


「サクラは武闘会には出ないのか?」 

「私はいいかな。お兄ちゃんは出るんでしょ?」

「俺は出るよ。参加登録も済ませてしまったし。サクラも出て見ればいいじゃないか、サクラなら優勝できるんじゃないのか?」

「私はいいよ。…………そういう祭り事は外から眺める方が好きだからさ!」


 勿体ないがそういう事なら仕方が無いのか……?


「賞金が出るんでしょ? しっかりと応援してあげるから頑張って賞金取って来てよね! 折角この一ヶ月みっちり鍛錬してるんだから!」

「……確かに強くなっている気はするけど一ヶ月程度で変わるもんなのか?」

「――――多分大丈夫だよ。なんたって王扇が考えたメニューをこなして私とも組み手をしてるんだし!」

「でも俺魔法とか使えないし、相手が魔法を使ってきたら対処方法なんて知らないぞ」

「んー、どうせそんな高位の魔法を使う相手なんていないと思うけどなー……。けど念の為に後十日程時間があるから魔法を使う相手を想定した組み手に切り替えた方がいいかもね。ご飯の用意するから王扇と決めてて。今日の晩御飯はなんと川魚の丸焼きだよー!」 

 

 この1ヶ月間毎日食っているやつじゃないですかー。

 それはそうと、組み手の切り替えすると言う事らしいが……。


『うむ、少し早いが魔法攻撃を想定した組み手を行っていこう。大丈夫だ、短期間で戦える様になる策はある』


 めちゃめちゃいい作戦があったりするのか!?


『ああ、腹を満たした後にサクラとの模擬戦をしてみよう。その際にでも策を実戦していこうと思うがまずは少し君の魔法や戦型の認識を整理していこうと思うのだが――――。魔法を使う敵の弱点は何だと思う?』


 …………魔力が無くなると魔力欠乏を引き起こす事か?


『それもあるが熟練の魔法使いは自身の魔力量を把握し計算しながら魔法を使うから魔力欠乏は起きない。魔法を使う際、基本は詠唱を行わなくてはならないんだ。初級なら2節、中級なら5節、上級なら10節と魔法の威力が上がるにつれ詠唱は長くなる』


 詠唱をしている間の隙を利用して相手に攻撃をすればいいって事か!?


『だが、詠唱というのは魔力を正確に出力し魔法のイメージを固める為に必要なだけであってそれが出来ている術者は詠唱の短縮や高速詠唱及び詠唱破棄をしてくる場合もある』


 結局詠唱はしてこないって事か?


『いや、基本、詠唱を大体の術者は行う。だが、世界のトップクラスの実力者達は短縮や高速詠唱を行ってくるから詠唱の隙を利用して攻撃するだけでは不正解という事だ』


 …………なら何とかして逃げ回って魔力を使えなくさせるとかか?


『安心しろ、もっと単純明快な話だ。魔法を使う相手には隙があれば魔法を使わせる前に倒す。隙が無く魔法を使わせてしまったなら――――その魔法を無効化してしまえばいい話さ。それだけで魔法を主戦としている相手には完封できるだろう』


 ――――――無効化なんて誰がどうやってするんだよ……?


『まだ話してなかったが私は製作時に特殊な素材を用いられていてな。私に触れると上級以下の魔法を全て無効化するのだよ。だが、私を持つに値しない者が持つとただの硬いだけの鉄扇になりその能力を引き出せないのだがね』


 …………え? なら俺って魔法使う相手なら無双できるんじゃないのか?


『あくまで上級以下の魔法を使う相手には、だがな。上級以上の魔法相手には残念ながら何も意味をなさない。後これはアキの力ではなく私の力だからあまり過信しない事だな』


 ――――お前ってもしかして滅茶苦茶凄かったりしないか!?


『ふふっ、今更か? 私は使い手が限られているのだが使い手が扱えば神器には及ばないにしろそこらに転がってる武器よりかは遥かに高性能だ。なんせ何も知らない少年に知識を与えたりアドバイスも出来るのだからな』


 全くなんて頼りになる相棒なんだよ。

 頼りになりすぎて負けた時の言い訳ができなくなるじゃないか!!


『なら、負けない様に頑張らねばな。…………まあ魔法を使う相手ばかりではないだろうがね』


 何か言ったか?


『いや、何でもないさ。お、食事も出来たみたいだな』

「魚の丸焼き完成だよー! 方針は決まった?」

「ああ、飯を食べたら魔法使いを想定した組み手だ! さくっと食べて始めよう!」


 とりあえず、待ってろよ賞金! いくら出るかも知らんがさくっと手に入れてやるよ!







 ☆登場キャラステータス☆


 ※ステータスはF~SSまで分類分けされており異世界の平均一般男性の目安値がEとなっています。

 また魔力は適正なしの属性の初級魔法を使う際、魔力を1消費するイメージとなっています。(属性適正なしの魔力消費量。初級魔法 1 中級魔法 25 上級魔法 100 超級魔法 1000)


 新魔6代15年8月20日 


 名前 常葉 亜紀


 種族 人


 性別 男


 出身 日本


 筋力 E+ → D


 敏捷 E+ → D


 耐久 D → C


 魔力 0.5 → 1 


 属性適正 ?


 武器 王扇



 名前 サクラ(本名不明)


 種族 ?


 性別 女


 出身 ?


 筋力 ?


 敏捷 ?


 耐久 ?


 魔力 ? 

 

 属性適正 火・水・風・土・光・闇

 

 武器 無し



 名前 黒木 蒼汰


 種族 人


 性別 男


 出身 日本


 筋力 A+


 敏捷 B+


 耐久 B+


 魔力 3500 


 属性適正 火・水・風・土・光


 武器 神器 聖槍グングニル


 

 名前 常葉 春香


 種族 人


 性別 女


 出身 日本


 筋力 B+


 敏捷 A+


 耐久 B


 魔力 3500 


 属性適正 火・水・風・土・光


 武器 ? 


 

 名前 ハンシンク=テレシア


 種族 人


 性別 女


 出身 王都ニヴルヘイム 


 筋力 C+


 敏捷 B


 耐久 B


 魔力 1500 


 属性適正 火・風・光


 武器 輝銀槍 


 

 ステータスは鍛錬や実戦により多少ですが変化していきます。


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