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広い部屋

 新しい部屋だ、新しい綺麗な広い部屋だ。

 さあ、まずは荷物を広げよう。まだ新しいものはないけれど、昔の輝きを思い出すようなモノ達を広げよう。荷物を広げたら新しいモノを手に入れよう。そしてまた広げよう。何も気にしなくてもいいどういう風にしてもいい、気にするモノはいない。

 ここは、自分だけの()()()()なのだから。


 朝日が差し込む、気持ちのいい朝だ。

 今日も広い部屋で会社に向かう準備をする。会社に入ってまだ日が浅いから仕事も覚えきれていない、早く覚えていつか昇進して、もっと多くのお金を手に入れて、この広い部屋を多くのモノで埋めよう。昔の輝きに負けないくらいの新しい輝きでこの広い部屋を埋め尽くそう。たくさんの時間がかかってもいい、ゆっくりでもいい、あたらしいモノ達と出会うことに期待を乗せていくのだ。

 そう朝日のように輝いて、この()()()()のドアを開ける。


 今日も朝日が部屋に差し込む、いつもの朝だ。

 昨日は油断していたのか調子にのっていたのか単純なミスをして怒られてしまった。仕事を覚えて日が経ってきたころだからか気が緩んでいたのだろう。そういえばこの広い部屋もだいぶ馴染んできた。ここに来た頃は自分の帰る場所という感覚が薄かったけど、今となってはここが帰ってくる場所だ。この広い部屋にもいろんなモノが集まってきた。そろそろ広い部屋とは言えなくなってくるかななんて、しょうもないことを考えながら準備を済ませる。

 そうして今日も、()()()()のドアを開ける。


 今日は月がきれいに輝いている、いい夜だ。

 最近は仕事の量も多くなってきて残業も増えてきた。前みたいにゆっくり朝日を眺める時間もめっきり少なくなってしまった。別にそれがどうというわけではないが、朝早く起きて朝日を浴びるより月明かりを浴びてゆっくり眠りたい。そういえば、あいつらはどうしてるかな。仕事を始めてから連絡を取っていないけど元気にしているだろうか。今度連絡をして、あの広い部屋でまた昔みたいにバカな事をしたい。

今のあの広い部屋じゃ全員入りそうにないな、そうだ次の休みには掃除をしよう、そうして色々なモノ達を招き入れる用意をしよう。

 そんなことを考えながら今日もまた、()()()()のドアを開ける。


 今日もまた街頭だけが明るく光っている、いつもの夜だ。

 また同じようなミスをして怒られてしまった。近頃はミスが目立ってきた気がする。おかげで残業も増えてきて、週に残業をしていない日を数えたほうが早いほどになってしまった。疲れているのだろう、次の休みはゆっくり休むことにしよう、そうして次の仕事に備えよう。早くあの広い部屋に帰って布団を敷いてゆっくり寝よう、明日もまた、仕事があるのだから。

 重い足取りでまた、()()()()のドアを開ける。


 とても暗い見慣れた、当たり前の夜だ。

 いったい今日で何日目だろう、今では残業が当たり前になってきた。ミスが減ったと思ったら今度は仕事が増えた。たぶんこれからもそれは変わらない、終わらない仕事が当たり前。あの広い部屋も今ではモノでいっぱいになっている、恐らくほとんどが捨てるべきモノだろう、その狭い隙間に布団を敷いて今日も寝る。いつものことだ。そういえば、家族は元気にしているだろうか、特に最近は連絡を取れていない。そう広い部屋に憧れていたあの狭い部屋を思い出した。

 そうして重い体で、広い部屋のドアを開ける。


 「ああ、この部屋はなんでこんなに()()んだろう。」

 そう、足の踏み場もない様な、そしてぽっかりと穴の開いた広い部屋を見て言った。


 今日は日差しが気持ちいい、いい日だ。

 自分には広い部屋は合わなかったようだ、だからあの狭い部屋に帰るのだ。家族がいるあの狭い部屋に。次に広い部屋に入るのはたぶん隣に誰かがいる時だ。それもすぐに暖かいモノや、キラキラと輝いたモノでいっぱいの狭い部屋になってしまうだろう。けれどそれでいいのだ、それがいいのだ。

 そうしてもう二度と帰ってくることのないであろう広い部屋のドアに鍵をかける。

初めましてを兼ねたテスト投稿のようなものです。

まったりとやっていくので気が向いたら見ていってください。

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