第九十六話 進展する恋 Ⅰ
ゆう君とルイナちゃん、楽しそうに戦っている。二人とも加減が上手いなぁ。
でもゆう君、何か悩んでる。大丈夫かな。
『私が相談に乗るよ?』
そう言ってあげたい。けど、私なんかが相談に乗ろうとしていいのか。私は昔ゆう君を振ったのに。
付き合い始めた頃――。
「ゆう君、お疲れ様」
「ん~。待ってくれるのはありがたいけど別に先に帰っててもいいんだぞ」
「ゆう君と話しながら帰るのが楽しいから待ってるんだよー」
「あっそー」
美術部の私は他の部活の人より15分ほど終わるのが早いけどサッカー部のゆう君が均しレーキでグラウンドを均しているところや後片付けをしているところをずっと見てゆう君を待っていた。
ゆう君は自転車通学で私は歩きだけどゆう君は私の鞄を自転車のかごに乗せて自転車を押して歩いてくれる。私達は学校を出て帰り道を一緒に歩いた。
「そういえば欲しい素材あるから帰ったらクエスト手伝ってよ」
「え~?なんの素材?」
「ジオラグーンとネオラグーンの天玉と靭尾」
「ジオとネオ~?この二体持っていくアイテム多いし、天玉と靭尾中々出ないんだよな~」
「い、嫌ならいいよ。普通に募集するし」
「はいはいわかったよ。でも今度なんか菓子とジュース奢れよー」
「やった~!」
ゆう君はゲームで強いし優しい。私もいつかはゆう君を越してみたいなんて思ってた。ずっと頼ってばっかりじゃ申し訳ないし。
「んじゃ、また夜でなー」
「うん、ありがとね」
ゆう君は私の鞄を渡して私とゆう君は分かれ道で分かれて帰った。
晩御飯を食べてお風呂に入ったあと課題を終わらせてパソコンの電源を付けた。通話ソフトを開くとゆう君はオンラインになっていたので今から出来るかどうかチャットを送った。するとすぐに出来るよと返ってきた。そして通話で話しながらゲームを起動してゆう君と一緒にモンスターと戦った。
「多分これで……集まった~!」
「お~、おめでとー」
「ホントにありがとー!もうなんでも奢るよー!」
「じゃあA5肉で」
「うんそれは無理」
「なんだよ。んで武器作れたの?」
「ふっはっは!見よ!この禍々しきオーラを放つ武器を!」
「お~。まぁ俺はとっくに持ってるけど」
「……そういう萎えること言わないで?でもこれで二人ペアルック的なやつ出来るよ!」
「え~?お前とペアルック~?」
「なんでー、いいじゃーんペアルック。武器カッコいいし、ゆう君と私の服装も武器に合っていいじゃんー」
「仕方ないなー。もう眠いからあと一回見た目重視でやって寝るから」
「よっしテンション上げてこ~!」
「うっせぇ」
毎日ゆう君と学校と帰り道で話して、夜にゲームしながら話すのが楽しかった。ずっとこんな日が続いて欲しいと思っていた。
10月の上旬。中間テストが終わって鞄に荷物を入れた私はまだ机で俯いて眠りそうになっているゆう君の隣に来た。
「ゆう君帰るよ~。テスト出来た~?」
「この俺が出来ると思うか貴様」
「ゆう君なら出来ると私は信じているぞ」
「絶対ほぼ満点のやつに言われると腹立つんですけど」
ゆう君は私を見て少し睨んだ。
「ちゃんと勉強すればいいのに~。ほら鞄持ってきなよー」
「怠い。持ってきて」
「それくらい自分でやって」
「あ、じゃあ日曜日のレベル上げ手伝ってあげねー」
「はい持ってきまーす」
私はゆう君の鞄を日頃のお礼も込めて持ってきてあげた。
「ほら早く筆箱入れて帰るよ」
「さっすが天才えりか様」
ゆう君は立ち上がって鞄を開けて筆箱とプリントを入れて閉めた。
「あのプリントなに?」
「あぁ、部活の日程」
「サッカー部は今日部活ないよね?」
「うん。あるのは野球部と吹奏楽部だけだってよ。テスト終わりで辛いだろうな~。あと陸上部もちょっとだけあるって言ってたな」
「だからせっかく5時間目で終わったんだから早く帰ってゲームしよ」
「はいはい。あ~疲れた疲れた」
閉まっている扉を開けて教室を出ると冷たい風が吹いてきた。
「う~わ、さっむ」
「カイロいる?」
ゆう君と廊下を歩きながら私は鞄から使い捨てカイロを取り出した。
「なんでまだ10月なのにカイロ持ってんだよ。冷え性女子かよ」
「冷え性女子だよ。末端冷え性だけど軽いほう。で、いるの?」
「いやいいよ。あと冷え性アピールはウザがれるからやめといたほうがいいぞー」
「出来るだけカイロは隠し持つようにしてるんだけどなー」
階段を降りながら私はブレザーのポケットに入っていたカイロに触れるとぬるくなっていた。
「ぬるいやつあげる」
「いらねーよ」
「私が朝から大事に使ってたカイロちゃんだよ?JCの使用済みカイロだよ?いらないの?」
「じゃあJCの使用済みカイロっていって売ったら金になるかなー?」
「いや売るなよ!ゆう君はすぐそういうこと考えるんだから」
私は新しいカイロを開けようとした。
「そんなにカイロ使ってなくならないの?」
「そりゃなくなるよ」
「冷え性も大変ですねー」
「私の手触ってみてよ。冷たいから」
一階まで降りて昇降口に向かいながらゆう君は私の手を軽く握った。
「冷たっ」
「でしょ?てかゆう君温かっ」
「そう?寝てたからかな?」
私とゆう君はそれぞれ自分の下駄箱から上履きと靴を履き替えて外に出て合流した。その間にさっきのことを考えていた私は恥ずかしながらもこう言った。
「ゆう君、寒いから手、握っててもいい?」
「えっ?あー、い、いいけど」
私はゆう君の右手を左手で握った。
「温か~い」
「俺は冷たいけどなー」
「ご、ごめんね」
「あぁいいよいいよ。俺でいいならいつでも握って温めてあげるからな。あ、でも背中に手入れるのはやめろよ?」
「へぇ~、温めてくれるんだぁ~。それっ!」
私はゆう君の背中に手を突っ込んだ。
「冷てぇ⁉おい!言った傍からやるんじゃねーよ!」
「あははは、面白―い」
「面白いじゃねーよ。絶対仕返ししてやるからな」
「その時はセクハラで訴えるからね~」
「女子ってズルくない?女子は俺のこと叩いてくるくせに軽くやり返したらセクハラだーって」
「それが男子に対抗出来る唯一の女子の武器だからね」
「じゃあ俺も逆セクハラで今の訴えるわ」
「勝訴出来るといいね~」
私とゆう君は手を繋ぎながら自転車置き場に来た。ゆう君は自分のと私の鞄をいつも通り自転車のかごに入れた。
「てか自転車押して行ったら手繋げなくね?」
「た、確かに」
「さすがに片手で押すのは難しいぞ」
「う~、仕方ない。新しいカイロちゃんを開けるしか」
「えりってバランス感覚良いほう?」
「え?う~ん、どうだろう。組体操が出来るくらいには」
「なら二人乗りするか?」
「あ、危なくない?怒られるよ?」
「大丈夫。前に体重63kgの和樹を乗せたことあるから。裏道通ればバレないし先輩も彼女と乗ってたからな」
「先輩がやってたから自分も良いって先生には通じないよー」
「じゃあ乗らないのかー?」
「乗る」
「乗るんかい」
「だって早く帰りたいし」
「はいはいー。とりあえず裏道まで走るぞ」
ゆう君は自転車を押しながら走り私も付いて行って、学校を後にして裏道まで来た。
「ここまで来ればいいかな」
「ちょっと、マジで、死ぬ。もう、無理」
「ちょっと走っただけ息上がり過ぎだろ。ほら乗れよ」
ゆう君は自転車に乗って、私も恐る恐る荷台に跨って乗った。
「その乗り方パンツ見えるからやめといたほうがいいよ」
「ふぇ⁉ちょ!変態!」
私はゆう君の背中を殴った。
「痛っ!わざと見たわけじゃないし注意しただけだろ!」
「で、でも、恥ずかしい、から」
私は照れ隠しするようにゆう君のお腹周りにしがみついて背中に顔をうずめた。
「だからって殴んなよ」
「もういいから早く行って……」
「わかりましたよー」
ゆう君は自転車をこぎ始めて細い裏道を安定して進んでいく。ゆう君にしがみついてるおかげで私も安定している。
ゆう君の体温かいな~。体もがっちりしてる。というかもしかして私手繋ぐより凄いことしてる⁉
意識すると体が熱くなってきた。
大丈夫かな⁉ゆう君に恥ずかしがって熱くなってるって気づかれてないかな⁉こいつ暑苦しいとか思われてないかな⁉私みたいな女に抱き着かれてキモいって思ってないかな⁉
ごめんなさいごめんなさい、こんなチビでブスで運動音痴で変に茶髪で胸もない女で。
「ゆう君、ごめんね。さっき注意してくれたのに殴って」
「んー?別にわかってくれたならいいよ」
「やっぱり私なんかと付き合わないほうがいいよ……」
少し声が震えてしまった。別れたくないのに別れたほうがいいって言うのが物凄く辛かった。
そんな私でもゆう君は、
「はぁ?なーにメンヘラぶってんだお前。相思相愛なのになんで別れなくちゃいけねーんだよ。えりが自分をどう思おうと俺はえりの全部が好きなんだからな?」
その言葉がどれほど嬉しかったか。ずっと覚えている。
ゆう君の顔は見えなかったけど耳が赤くなっていた。
「あんまり卑下するなよ、えり。背が低いの気にしてるみたいだけど俺は小さくて可愛いって思ってるし」
「か、かわぁ⁉」
「運動音痴なのも可愛いし、頭も良くて勉強も努力も出来るし、茶髪も可愛いから自信持てよ」
「ふぇ~」
私は恥ずかしくてただ息を漏らすことしか出来なかった。
「自分なんかとは付き合わないほうがいいってどっちかと言うと俺のセリフだろ。えりと違って勉強も努力も出来なくてゲームばっかりやってるからさー」
「そ、そんなことないよ。ゆう君は確かに勉強は出来てないけどやれば出来るよ。ゆう君は優しくてカッコいいよ……」
「あ、ありがとう」
沈黙が流れ、私達は裏道から広い道に出た。もう少ししたら分かれ道だから分かれないと。
そう思っているとゆう君は私の家の方の道をそのまま走った。
ゆう君、私の家まで送ってくれるんだ。やっぱり優しいな。
自転車は住宅地に入り私の家まで来た。
「ありがとね。家まで送ってきてくれて」
「それくらいいいよ。じゃあまた帰ったらチャット送るから」
「ま、待って」
私は勇気を出してゆう君を引き留めた。
「ん?」
「今日は私の家で一緒にゲームしない?」
「い、いいけど」
私はゆう君を家に入れて二階の私の部屋に入った。
2週間休んでました。イルです。
この2週間、この話にあるようにに南本えりかとアルトの中学時代の話をずっと考えていましたが中々いい感じのラブラブストーリーが思い浮かばず少しずつしか書けてませんでした。そのおかげで粗方思いついたので来週は投稿できそうです。
しかし思いついたはいいものの本当は『第四十九話 始まりの恋』のように一話で終わらせたかったのすが長くなってしまいそうです。どれくらい二人は仲が良かったのか、えりかの気持ちはどんなだったのか。それを伝えられたらいいなと思います。
長くなりましたがこれからも見てくれたらとても嬉しいです。
ではまた来週~。




