第九十二話 アルビノ逆転性質個体
「俺もルイナっちの家に住みたいな~。自分の家にいるよりルイナっちの家にいるほうが居心地いいのによ~」
「お前は自分の家があるだけでもいいだろ」
「でもルイナっちの家の方がみんないるしいいんだよ~」
「みんな私の家を気に入ってくれたみたいで良かったわ。あの親が住んでたってのが気に食わないけど」
「どんだけ親嫌いなんだよ」
「大っ嫌いよ。私の気持ちを考えずに私への愛を一方的に押し付けて」
「自分が愛されてるって分かってるんならいいだろ」
「私のためっていうのは分かってるけど私の意見なんか聞いてもくれないのよ⁉あぁ~、もう思い出しただけでイライラする~!」
ルイナがイライラしていると何かが猛スピードでこっちに向かっているのに気づいた。
「あれってまさか」
見るとポニーテールの赤い髪の人が向かって来ていた。もしかしなくてもリーザさんだ。数秒で俺達の前にやってきた。
「こ、こんにちは。今日はどういったご用件で?」
「新しい剣が完成したから戦いに来た」
「えぇ~?今からですかー?」
普通にめんどくさいし怪我したくない。
「そんなに戦いたいなら私と戦いましょう?アルトも疲れてるんですから。ねぇリーザ団長?」
ルイナが怖い笑顔で言った。
「ふん、誰だろうが良い」
リーザさんは右手を横に伸ばすと腕から魔法陣が出て横に移動すると手の上に大剣が出てきて掴んだ。すると周りに熱気が押し寄せた。
剣は両刃の刃先が炎を纏っていて樋が溶岩のように色めいている。
「だ、大丈夫か?ルイナ。無理しなくていいんだぞ」
「イライラしてたから丁度いいわ。それにリーザ団長とは一回戦ってみたかったのよね~」
不穏な空気が流れ始めた。さっきまで綺麗な夕焼けが見えていた黒い雲に覆われていた。
止めようかどうか迷っていると聞き覚えのあるサイレンが町に鳴り響いた。
「こ、これは」
「魔物接近の警報!ギルドに行くぞ」
剣を魔法陣の中に入れて消したリーザさんに俺達は付いていって町のギルドに来た。
ギルドでは何十人かの人が集まっていた。
「私は第八騎士団団長のリーザ・エルメルト・ナイルだ。何があった?」
リーザさんはすぐに受付の人に聞いていた。
「西にある森から約二百匹の魔物がこの町に向かっていることが確認されました!今この町にいる冒険者を集めています」
「なるほど。ならば私も戦おう」
「ご協力感謝いたします!」
リーザさんは緊張して待機している冒険者達に近づいた。
「私は第八騎士団団長、リーザ・エルメルト・ナイルだ!此度の戦いは私が指揮を執ろう!この私がいる限り失敗はさせない!全員生きて帰ってくることを約束しよう!それにここには私以外にも騎士団の人間が3人いる。3人とも高校生だが腕は私が保証する。だから私に付いてこい!」
『オォオォー!』
リーザさんの言葉で士気が上がった。なんでリーザさんが団長になったのか不思議だったが分かった気がする。
俺達は町の西側に飛んで来た。遠くの森から多くの魔物が来ているのがわかる。
「予定通りの配置に着け!」
『はい!』
俺以外全員リーザさんによって分けられた部隊ごとに位置に着いた。
「先ほど言った通りお前は最前線で自由に動け」
「は~い」
俺は適当に返事をして皆の一番前に降りた。ヘルサ先生と魔物の実戦訓練は何度もしてきたがここまで多くの魔物と戦うのは魔王の幹部と戦った時以来だな。あの時よりは緊張はしてないがその緊張感の無さが仇にならないといいけど。
「勝利を我らに!進めぇ!」
『オォ!』
俺達は魔物に向かって走った。その中でも俺は誰よりも速く走り、一心斬絶を抜きながら闇属性の魔力を付与した。そして斬り上げながら闇魔法の斬撃を飛ばした。俺に向かってきた数体の魔物はそれにより4体ほど斬り倒された。そこで俺は止まり、死んだ魔物を飛び越えて向かってくる魔物を斬った。
ここでやっと前線にいたギルドの剣士達が追いついてきた。後ろからも魔導師の魔法も飛んできている。リーザさんも前に出てきた。新しい大剣を炎を巻き上げながら軽々と振り回している。あれを見るとリーザさんとは戦いたくなくなるな。
ちなみにヨミには星魔法は撃ってもいいが詠唱魔法は撃つな、と言ってある。詠唱魔法を撃つと大穴が空いてしまうからな。
上から気配がすると近くにいたギルドの人に鷲型の魔物に向かって急降下していた。助けようと思ったが後ろから電気を纏った弾丸がその魔物を打ち抜いた。ナイスだ、えり。
しばらく周りのギルドの人を助けたりしながら魔物と戦っているとルイナとエレイヤが前線にやってきた。
「お前ら、後ろでサポートしてろよ」
「私だってこの町を守るために貢献したいのよっ!あと私はまだイライラしてるの!」
「俺も強くなった力試したいんだよ!」
ルイナは地面に手を置くと周りの魔物が少しずつ凍っていき氷魔法を撃ちまくった。エレイヤも軽く飛んで下にいる魔物に向かって音魔法を使って叫ぶと衝撃波が出て魔物が傷だらけになった。前より音魔法の威力が上がっている。エレキギターは家にあるから持っておけばもっと強かっただろうな。
二人のおかげで魔物の動きが鈍くなって戦いやすくなった。魔物もかなり少なってきた。みんな軽傷だしこのままいくと勝てるな。
そう思っていると地響きがした。見ると森の方から大きい魔物が来ていた。
「あいつがあの森の頭領らしいな」
リーザさんが俺の隣に来た。
「あの魔物、オーガ、に見えますけど違うんですかね?」
オーガらしき魔物は白い色をしていた。普通オーガは赤いはずだ。
「オーガで間違いない。ただアルビノ逆転性質個体だな」
「アルビノ逆転性質個体?」
「稀に生まれたばかりの生物が大人並みの魔力量を持つことがある、というのを知っているか?」
「あぁはい。前に学校の図書室の本で知りました」
「そいつのことをアルビノ逆転性質個体と言うのだ」
「つまりはあのオーガは普通の個体より強いってことですか?」
「そういうことだ。ここは協力して倒すぞ」
「リーザさんも協力するとか言うんですね」
「はぁ⁉いいから早くお前の彼女も呼んで来いよ!」
急に口調が変わったな。俺は戦ってるルイナを見るとすぐに気づいて俺とリーザさんの前までやってきた。
「なに?」
「あのオーガをお前の氷魔法で凍らせて動きを止めろ。その間に私とアルトで倒す」
「なんで私がリーザ団長の言うことを聞かないといけないのかしら?」
「嫌ならするな。私のアルトだけでなんとかする」
「ルイナ、リーザさんの命令を聞くのは嫌だろうけどこの戦いの指揮官はリーザさんだ。お願いだから聞いてほしい」
「アルトが言うなら聞いてあげるわよ。動きを止めればいいのよね。任せて」
ルイナは余裕そうに歩いて後ろに下がっていった。
「リーザさん一人であいつなんとか出来ないんですか?」
「やろうと思えば出来るけど安全じゃないし倒すのに時間かかるからね。だから三人でやった方がいいでしょ」
「わかりましたよ。ちゃんと息合わせてくださいね」
「なんで私がお前と合わせないといけないの?お前が私に合わせるんだよ」
「えぇ~」
文句を言いたかったがオーガが近くまで来てしまったので我慢した。
「じゃあ行きますよ」
「言われなくても!」
俺とリーザさんはオーガに向かって走った。白いオーガは俺に向かって大きな右拳で殴り掛かってきたが一回転してかわして腕に乗ると腕を斬りながら顔に向かって走った。オーガは斬られていく右腕を痛んで手を上に上げて叫んだ。それによって俺はオーガの右腕から落ちていき右肩に刀を刺すと重力に伴って右腕を斬りながら落ちた。さすがに右腕を斬り落とすことは出来なかったか。
するとオーガの後ろから飛んで背中を斬ったリーザさんがそのままオーガを飛び越え前に来て俺に向かってきた。合わせろって言ってたしそういうことだろう。俺は一心斬絶を一旦収めると手を組んで落ちてくるリーザさんの足を押し上げて飛ばした。
リーザさんは腹、胸を斬り左目を斬った。そして叫び声をあげるオーガの真上に来るとオーガに向かって大剣を向けると剣から炎が出てオーガの周りに渦巻いた。俺は巻き込まれる前に下がった。
やっぱりリーザさんは強いな。これでもう倒せそうだけど。リーザさんは俺の隣に降りてきた。
「まだ気を抜くな。第二ラウンドだ」
「え?」
オーガは咆哮を上げると炎が消え去った。するとオーガの肉体がどんどんムキムキになっていった。
「魔力で肉体を強化しているんだ」
「どうするんですか?」
「ここからが疲れるからこそのあいつだ」
リーザさんが後ろを向くとルイナの手から凄い魔力量の氷魔法がオーガに向かって飛んでいった。オーガの腹に当たるとすぐに全身が凍って氷漬けになった。
「行くぞアルト。同時に全力で叩きこむぞ!」
「了解です!」
リーザさんは俺から横に離れて、俺は闇と炎の合体魔法を逆流させて飲み込んだ。そして闇と炎属性の魔力を大量に一心斬絶に付与した。
俺とリーザさんは凍っているオーガ向かって走り飛ぶと一心斬絶、大剣を斬り上げて上に進んだ。
『ハァァ~!』
リーザさんとクロスするように斬り上げた。そしてリーザさんと同時に着地した。
「これでどうだ!」
「……まだ動くようだな」
「ま、マジかよ」
オーガはまた咆哮をあげながら氷を吹き飛ばした。どうしようと考えていると後ろから大きな電撃がオーガのみぞおちを撃ち抜いた。オーガは倒れていった。後ろを見ると遠くでえりが親指を立てていた。その瞬間、周りから大きな歓声が沸いた。
『ウォォー!』
誰もが生きて勝利出来たことに喜びをあげている。いつの間にか雲に覆われていた空は雲が消え、薄っすらと星が見えていた。俺は力を消し一心斬絶を収めてリーザさんの大剣も消えた。
「終わったな」
「みんな無事で良かったです。リーザさんの指揮良かったですよ」
「私だって団長だからねー。指揮くらいできないと」
「その急に口調変わるの合わせにくいんですけど」
「知らないよ。でも褒めてくれてあり、がとう。お前の立ち回りも良かったよ」
「そりゃどうも」
俺は後ろにいるルイナのところに行こうと振り向くと後ろから咆哮が聞こえた。見るとオーガが立ち上がって俺とリーザさんに両手を組んで潰そうとしていた。
ちっ、一心斬絶を抜くか魔法でガードするか。どうしようか。
と一瞬思ったがオーガの組んでいる両手に大きな隕石がぶつかり大爆発した。爆発の風圧と煙が消えるとオーガの手と顔が消し飛んでいた。オーガは完全に倒れた。
「大丈夫?アルトお兄ちゃん」
ヨミが俺とリーザさんの前に降り立った。
「あぁ、ありがとな」
「これもアルトお兄ちゃんが毎日私の手を握りながら打ち付けてくれたおかげだよ」
「お、お前は子供に何をやってるんだ」
「変な風に捉えないでください。ヨミには魔力をぶつけ合って魔力量を増やしてあげただけですよ」
俺達は町から出てきた兵士さんに後を任せてギルドの人達とギルドに戻った。
〔アルビノ逆転性質個体〕
・生まれたばかりの生物が大人並みの魔力量を持つ生物のことをいう
・この個体が生まれる確率ととても稀である
・普通のアルビノ個体と違い体が強く、五感が鋭く、寿命も長い
・人間のアルビノ逆転性質個体が生まれる確率は他の生物よりも低い
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アルト「ずっとそのJKみたい口調じゃダメなんですか?」
リーザ「無理。この口調で話すのはお姉ちゃんといる時だけ」
アルト「現に今話してますけど」
リーザ「これは今そういう気分だからー」
アルト「はぁ?何言ってんのぐはぁ!」




