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第八十七話 クリスマスイブ

 俺とルイナはソファーに座った。


「アルトももう寝るの?」


「いや、まだしたいことがあるから」


「なに?したいことって」


「ちょっと待ってろ」


 俺は自分の部屋に行ってとあるものを持って後ろに隠して戻った。


「ルイナにもう一つプレゼント」


 俺は隠していたものをルイナの前に出した。


「お花?」


「桔梗っていう花。まぁ作り物だけどな。はい」


 俺はルイナに作り物の白色の桔梗を渡した。


「桔梗の花言葉知ってるか?」


「えぇ、知ってるわよ」


「し、知ってんのかよ」


「私を侮るんじゃないわよ。もしかしてドヤ顔で言おうとしてたぁ?」


「くっ。で、でも本当に知ってるのか?言ってみろよ」


「『永遠の愛』。そして白色だから『清楚』じゃないかしら~?」


 ルイナはドヤ顔で正解を言ってきた。クソが。


「合ってるよ。まぁお前は清楚じゃないけどナ!」


「いじはっちゃって可愛いわね~」


 ルイナは頭を撫でてきた。


「あぁもう、悩んで買って来たのに」


「ふふっ、ありがたく受け取っておくわ。それと、やっぱり私達似てるのかしらね」


「どゆこと?」


「ちょっと待ってて」


 ルイナは自分の部屋に行くと後ろに何かを隠して戻ってきた。


「はい、どうぞ」


 俺の前に出されたのは赤色の花だった。


「これは?」


「名前わかんないの~?」


「わ、わかんねーよ」


「これはストックという花で花言葉は『愛の絆』、『豊かな愛』で赤色だから『私を信じて』という意味もあるわ」


「へぇ~。ははっ、確かに考えること同じだったな」


「私のも作り物だけど本当の花と違って枯れないからね」


「俺もそう思って買ったんだよ。ありがとう」


 俺は作り物のストックを受け取った。


「花言葉にあるように私を信じてよ?」


「いつも信じてるけど」


「悩みがあるならちゃんと私に言いなさい。アルトってよく一人で悩みを抱え込むから私まで悩んじゃうのよ」


「なんでお前が悩んだよ」


「そりゃ彼氏が悩んでてそれを私に言ってくれないと悩むでしょ!アルトだって逆の立場ならそうなるわよ」


「あ~、うん、確かに……けど俺の悩み多いしわからないことしかないぞ」


「それでも人に言うことで少しは気持ちが楽になるはずよ」


「なら、わかったよ。じゃあまず一つ目。俺のあの力は何なのか」


「それは私にもわかんないわ」


「知ってる。国王様も知らないしミカヅキさえ初めて見たって感じだったから本当に世界初のことをやってるんじゃないかと思ってるんだが」


「そうかもしれないわね。私もやってみようかしら」


「やめとけ、メイ先生がやってみても出来なかったんだから」


「えっ、大丈夫だったの?」


「メイ先生は周りの魔力を吹き飛ばす技を持ってるから大丈夫だったよ。そして悩み二つ目。ヨミの戸籍について」


「私もそれは考えてたわ。もう私とアルトが結婚して養子ってことでいいんじゃないかしら」


「俺らまだ未成年だろ。それに簡単に結婚するとか言うんじゃねーよ」


「そうだけどどうするのよ」


「う~ん。まぁ今は保留でいいか。で、悩み三つ目。ミカヅキについて」


「あの強すぎる子ね。アルトはあの子に勝てると思ってる?」


「勝つしかないだろ。魔王の幹部も魔王も」


「そうね。私も強くならないと」


「あと前にあいつと戦った時に刀を通して伝わって来たんだが、あいつ俺と戦ってる時楽しいと思ってるのに辛いって気持ちがあるんだ。あれはどういう意味なんだろ」


「辛い、ねぇ。なんででしょう?」


「俺の考えではあいつは戦いたくて戦ってるんじゃないと思うんだよ。最初会った時俺を殺すのが使命とか言ってたから誰かに命令されてやってるんじゃないかってな」


「そうかもね」


「それで悩み四つ目。えりのこと」


「えりかちゃんがどうかしたの?」


「メイ先生からの聞いたんだがえりには心に深い闇があるらしい」


「深い闇?えりかちゃんに?」


「あぁ。全くそんな風見えないんだけどな」


「……元の世界にいた頃のえりかちゃんと今のえりかちゃん、何か違うところってある?」


「え?う~ん別に何も変ってないと思うけど」


「そう。もしかしたら別人だったり、と思ったんだけど」


 なるほど、偽物説か。あり得るのか?けどあの背の低さ、断崖絶壁の胸、時々人に甘える性格、巨乳への執着、そしてあの重度の厨二病は完全にえりだ。俺が昔あげた十字架のネックレスも持っている。


「多分本物のえりだと思うよ。ルイナは何か感じなかったか?」


「ん~、何も。会ってから今日までずっと変わらないしおかしな所もなかったわ」


「そうだよな~。とりあえず次の悩み。副団長が何か隠してる」


「団長のことが好きってことじゃなくて?」


「それは隠しきれてないよ。副団長は力を隠してるはずなんだよな。旅の時ミカヅキに襲われた時副団長が助けてくれたのは知ってるよな?」


「えぇ、副団長が助けてくれて追い払ったって」


「その時見た副団長の力は凄かったんだけど訓練では一回も見たことがないんだよ。それに副団長は時々何を隠すような仕草をしてるから」


「そうかしら。アルトはよく人を見てるのね」


「そうか?んじゃ無意識に副団長の意識してるのかな~?」


「ちょっと⁉さっきの桔梗の意味は⁉」


「冗談だよ。けど副団長は何かを隠してる。それも団長は副団長の秘密を知って団長も隠そうとしてる」


「よくそんなのわかるわね」


「団長と副団長の言動、行動を覚えておけばわかるよ。証拠はないけどな」


「アルトが言うなら信じるわよ。私も気を付けてみるわ」


「あぁ、ありがとう」


「にしても悩みって女の子のことばっかりじゃない。私の悩みはないの⁉」


「そんなにこと言っても周りには女ばっかりなんだから仕方ないだろ。団長やガルアは一人でも大丈夫そうだから。あとお前の悩みもあるぞ」


「何?ちゃんと言ってよ?」


「ちょっと待ってろ」


 俺は部屋に行って『勇者と魔王』の絵本を持ってきた。


「またプレゼント?」


「違うよ。これ、知ってるか?」


 俺は絵本を片手で持ってひらひらと見せた。


「わぁ、懐かしい。これでどこにあったの?」


「ベットの下の床下収納に」


「そんなのがあったのね」


「多分ルイナの親が入れたんだと思うけど」


「そう、やっぱり」


 ルイナの顔が少し暗くなった。親の話しをするといつも暗くなる。どれだけ嫌いなんだ。


「なんであそこにあったのかわかるのか?」


「さぁ?でもお父さんとお母さんがこの絵本を奪い取ったのは覚えてるわ」


「奪い取った?なんで?」


「それもわからないわ。私はこの絵本が大好きで騎士団に憧れ始めたのよ」


 ルイナは懐かしむように絵本をめくる。


「どうせ私にこんな幼稚な絵本じゃなくて普通の本を読んで欲しかったんじゃないかしら」


 だからって奪い取ることはないと思うが。また悩みが増えたな。


「そういえばこの『終焉神聖至高詠唱魔法』ってなに?」


「一つずつ説明するけど終焉詠唱魔法は物凄い魔力を使う詠唱魔法のこと。これが使える人はほとんどいないわ。そして神聖魔法は天使様からの加護を受けた者が使う魔法のこと。で、至高詠唱魔法は上位の詠唱魔法よ。副団長くらいの力なら使えるんじゃないかしら」


「なるほどな。俺もいつか終焉神聖至高詠唱魔法を使えるようになるのかな?」


「流石にそれは無理でしょ。終焉至高詠唱魔法ならまだしも天使様からアルトが加護を受けるなんてあるはずないわよ」


「いやわかんねーぞ。もしかしたらあるかもしれねーだろ」


「はいはいあるかもね~」


 ルイナはにやにやしている。でも機嫌が直って良かった。


「アルトの悩みはもうないの?」


「あぁ~、一応あと一つあるけど」


「なに?」


 ルイナの親のことはやめておくか。けどこの悩みは恥ずかしいけどルイナに聞けるし言ってみよう。


「言いにくいんだけど、ルイナに俺の愛が伝わってるのかなって……」


「……ぷっ、あはははは」


「わ、笑うところじゃないだろ」


「あはははは、ごめんごめん」


 くそ、言うべきじゃなかったか。


「ふふっ、大丈夫よ。ちゃんとわかってるから。私のこと好きじゃなかったらこんな花なんて買ってこないでしょ?」


「少しでも伝えるためにも買ってきたんだけどな。ちゃんと伝わってるなら良かったよ。よくふざけてルイナをバカにしたり他の女の子に可愛いやら言ってるけど一番はルイナだからな?」


「だ、だからわかってるって。そんなに不安ならそういうこと言わなければいいのに」


「でも楽しいから」


「それもわかってる。だからアルトがどんな人なのか全部わかってるから大丈夫よ。けど悩みはわかんないから教えてね」


「わかったよ、よしそろそろ寝るか」


 俺は立ち上がって部屋の電気を切った。


「悩み聞いてくれてありがとなルイナ。少しは楽になったよ」


「こちらこそ、私と付き合ってくれてありがとう、アルト。そして、メリークリスマス」


「おわっ」


 ルイナは俺の肩を掴んでソファーに引きずりこんで無理やりキスをしようとしてきた。今日くらいはいいか。俺とルイナは唇を合わせた。


 何秒、何分間かキスをした。


「……はぁ、もういいだろ」


「アルト。アルトはこういうの興味ないけど私はアルトに体を捧げてもいいのよ?クリスマスだし」


 ルイナは色っぽい声と顔で言ってきた。ど、ど、どうすればいいんだ。お前は良くても俺はまだ覚悟を決めてないんだぞ。急展開過ぎだろ。


「あ、あのそういうのは結婚してからにしよう。な?」


「……わかったわ。じゃあもっとキスして!」


 ルイナは首に腕を回して無理やりキスをしてきた。あぁもう、これでルイナ満足するならいいか。



 月の光を浴びながら冷たい雪が降るクリスマスイブの夜。ある者は愛人と愛を深め合い、



「ゆう君から久しぶりに貰ったプレゼント、ふふっ」


 ある者は大切な親友から貰った指輪を大事に思いながら就寝し、



「すぅ、すぅ、ん~、アルトお兄ちゃ~ん、もっとして~」


 ある者は想い人との幸せな理想の夢を見ながら眠り、



「はぁ~、早くアルトきゅんと会いたいな~」


 ある者は想い人を想像しながら眠れない夜を過ごし、



「オラァ!ほらまだまだ行くぞ!次はどいつから吹っ飛ばされたい⁉」


「ボス!もう終わってくだせぇ!みんなもうボコボコです!」


 ある者は仲間を相手に屈辱だったあの夜を思い出して修行に励み、



「クレス、これはクリスマスプレゼントだ」


「ありがとうございます。団長」


「最近あれは大丈夫かい?」


「はい。でも前の日にバレてはないですがアルト君が近くにいたらしく魔力だけ感知されてしまいました」


「バレていないのならいい。何度も言うがあの力は極力使わないでくれよ」


 ある者は彼女が二度と傷つかないように二人で秘密を守ろうとし、



「爺様、このようなバリス刀でお願いします」


「ぬっふっふ、お前、楽しそうじゃの」


「そうですか?」


「そんなお前は初めて見る。何かあったのか?」


「いえ、何も」


「ふん。お前が何を楽しもうとどうでもいいが使命は絶対に果たすのじゃぞ」


「はい」


 ある者は見つけた楽しみの人と戦うためと使命を果たすための準備を、




「今回接触した結果、彼の肉体、精神には何も問題はないようです」


「…………」


「あぁ、僕の魅力的肉体と魔力には気づかれてしまいましたが何とか誤魔化しましたよ」


「…………」


「これはこれはなんとも辛辣なお言葉。ですがそれには僕も気を付けます」


「…………」


「はい。では監視を続けます」


 ある者はどこの世界にもいない何かに報告をする。



 それぞれがそれぞれの気持ちを持ってクリスマスイブを過ごした。誰もがこの先に起こる悲劇など予想だにせず。

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