第七十九話 酔い
その後も騎士団の女性と何人かと踊った。
「もうこんな時間か。そろそろミスリアと踊らないと終わっちまうな」
すると丁度ミスリアを見つけた。少々目立つ色の服を着ているのでわかりやすい。
「ミスリア、丁度良かった。踊らないか?」
「ア、アルトせんふぁい」
「どうした⁉」
ミスリアは顔を赤くして呂律が回ってなかった。
「ちょっと飲み過ぎてしみゃいまして」
「そ、そうか。踊れるか?」
「はい、らいじょーぶれしゅ」
と言いながら俺の肩にもたれ掛かった。
「無理そうだな。付いてこい」
俺はミスリアと肩を組み、水を取って大広間を出てバルコニーまで来た。外に池と花が見え空には満天の星空とほとんど欠けている月が見える。
「ほら水飲め」
俺はグラスに入った水をゆっくりミスリアの口に流し込んだ。
「ありがとうございますアルト先輩。少し楽になりました」
「なんでそんなに飲んだんだよ」
「研究部員の方がたくさん飲ませてきたので」
「そういうことか。無理なら無理ってハッキリ言えよ?」
「はい、これからは気を付けます。あの、少し体を貸して頂けないでしょうか」
「あぁいいよ」
ミスリアは俺の右肩にもたれ掛かった。まだ辛いのか。俺は背中を撫でてあげた。
「すみません。ご迷惑をおかけして」
「大丈夫だよ。ゆっくり深呼吸しな」
俺がミスリアの背中を撫で続けていると誰かの足音がした。音がしたほうを見るとガルアがこっちに向かってきていた。
うわ~、気まずくなりそうだから来てほしくないな。
ガルアが近くに来て俺に気づき俺を見た。
「な、なんだよ」
「いや、なんでもねぇ。お前浮気性なんだな」
「なんでもなくねぇじゃねーか!しかも違うわ!」
「そうか」
そう言ってガルアは興味なさそうに歩き始めた。
「どこ行くんだよ」
「外でタバコ吸いに来たんだよ。んじゃな」
ガルアはどこかへ行ってしまった。
「ごめんなミスリア、大きい声出して」
「いえ大丈夫です。もうしばらくこのままでいさせてください」
「いくらでもいいよ」
またミスリアの背中を撫でていると足音がして今度リーザさんが来た。
まーためんどくさそうな人が来ちゃったし。
リーザさんは俺を見るや否や睨んできた。
「なんですか」
「お前の性格がよく分かった」
「多分リーザさんが思ってることは間違ってますよ。俺は一筋なんで」
「それが本当ならばな」
「本当ですって」
リーザさんは来た道を戻っていった。
なんか誤解されまくってんだけど。まぁ仕方ないか。
「リーザ団長との関係はどうなったんですか?」
「相変わらず悪いよ」
「そうなんですか。大変ですね」
「ヘルサ先生からはなぜか仲が良いって思われてるけどな」
そしてまたミスリアの背中を撫で続けていると足音がして見ると酔っ払って酒瓶を持ったメーラさんが来た。
「あ~れ~?アルト君じゃ~ん」
「めっちゃ酔っ払ってますね」
騎士団の皆さんにメーラさんはかなりの上戸とは聞いていたがこれはルイナより酒好きそうだな。
「まだまだ飲めるぞ~」
メーラさんは持っていた酒瓶の酒を口に含むと口から炎が出て俺とミスリアに向かってきた。俺は炎に手を向けて水魔法で守った。
「危ないですよ。城燃やしても責任取れるんですか」
「だいじょぶだいじょぶ、これしきの炎で城は燃えないよ~」
そう言いながらメーラさんは左肩にもたれ掛かった。
「あれっ、ミスリアちゃん、だっけ?」
「あ、はい。お久しぶりですメーラさん」
「久しぶりー。カッコいいドレスだねー。しかも大きくなったね~」
「ありがとうございます」
「勝手に肩借りて会話しないでください」
「いいじゃん、女の子二人くらいもたれ掛かかられてもだいじょぶだろ~?」
「女の子一人とおばさん一人の間違いでは」
「なんか言ったかー?」
「いえなにも」
ミスリアとメーラさんにもたれ掛かられているとまた足音がした。見るとルイナがさっきまで顔を赤くしていたのが嘘のように鬼の形相をして俺を睨め付けていた。
「ル、ルイナ」
「なにをしているの?」
「あ、えっとこれはですね。二人とも酔ってしまったので体を預けられていただけであって決して俺から何かしたわけじゃないですよルイナさん」
「へぇ~、そうなの……」
ルイナは腕を組んで静かに俺を見続ける。怖い。
「ルイナ先輩。アルト先輩は何も悪くないので怒らないであげてください」
「ミスリアちゃんが言うなら」
「なんで俺の言うことは聞かないんだよ」
「アルト先輩、ありがとうございました。おかげで楽になりました」
「あぁ、なら良かったよ」
「では私は」
ミスリアは申し訳なさそうに頭をちょこちょこ下げながらルイナの横を通って戻っていった。
「その人は?」
「メーラさんだよ」
メーラさんを見ると目を瞑って寝そうになっていた。
「お~い、起きてください」
「ん~?もう朝か?」
「夜です。日にちも変わってませんよ」
「まだか。私を家まで連れて帰ってくれ~」
「おばさんなんですから一人で帰ってくださいよ」
「誰がババアだ」
「ババアまで言ってません。ほら立ってください」
メーラさんを引き離した。
「んぁ~、もうダンスは終わったから帰ってもいい時間だよな」
「そうですね」
「んじゃ~、お先に~。また訓練で戦おうな~」
「はい。お疲れ様です」
メーラさんはふらふらしながらも帰っていった。
「アルトってよく女の子に纏わりつかれるわよね」
「纏わりつかれるって言うな。どんな女がいても俺の愛する人はルイナだけだよ」
俺はルイナの頭を撫でた。
「そ、そんなこと言われなくても十分分かったわよ」
「なら良かった。それとさっき照れてたルイナ、可愛かったよ」
「ふ、ふんっ、それを言うなら照れて顔赤くして心臓バクバクさせてたアルトだってちょ~可愛かったわよ」
「ならお互い良い物見れたってことで」
「ふふっ、そうね」
俺とルイナは手を繋いで大広間への道を戻り始めた。
「ルイナは酔っ払って辛くないのか?」
「私は酔っ払ったことなんてないから辛くもないわよ」
「あーそー。にしてもいつ見てもお城の中ってすごいよな~。ルイナの資産なら城の一つくらい作れるんじゃねーの?」
「作れるかもしれないけど要らないわよ。私は普通の家で好きな人と一緒に普通に過ごせたらそれでいいもの」
「まぁ俺も城で住むよりあの家で住むほうが絶対いいだろうしな。そういえば住む場所がないからルイナの家に住んでたけどそろそろ他の家探して移り住もうと思ってるんだけど」
「えぇ!なんでよ!私は別に住んでもらっても構わないのよ⁉」
「でも『住む家がなくて女子高生の家に住んでる』って思うとなんかキモいから」
「でも私はアルトに住んで欲しいのよ!そもそも私とアルトは結婚するんだから一緒に住んでても問題ないでしょ⁉」
「一緒に住むのは成人してからか、結婚してからのほうがいいだろ」
「良くない!」
「だって未だに誰にもルイナと一緒に住んでるなんて言えないからさ」
「言えばいいじゃない!私は何も思わないし誰も貶しはしないわよ!多分!」
「多分って。とりあえずは保留にしとくか」
「なんで私の気持ちわかってくれないのよ」
「いや一緒に住みたいのはわかるし俺も同じ気持ちだけどこの世に同棲してる高校生っているか?」
「いるかもしれないし現にここにいるじゃない!」
「俺達以外だっての。常識と恋愛の壁は大きいからそこは我慢してくれ」
「お願いだから一緒に住んで欲しいなー」
俺達は大広間の近くまで来た。なにやら騒がしい。ワイワイ楽しんでるような声ではない。
「なにかあったのかしら」
「……まさかっ!」
「あっ、アルト⁉」
俺は何かの気配に気づいて大広間の前でドタバタしている人達に走って声を掛けた。
「何があったんですか!」
「何者かが城の結界を破って襲い掛かって来たんだ!」
「やっぱりか」
アルト「次回絶対めんどくさいやつじゃん」
ミスリア「頑張ってください!アルト先輩ならなんとかなりますよ」
アルト「ありがとう。そうだよな、俺主人公だしなんとかなるよな」
ルイナ「そしてなんとかなったあとは仲良く平和な同棲生活よ!」
アルト「やっぱりなんともならないかもナー」




