第七十八話 舞踏会
今日は日曜日だが騎士団訓練がない。夜に忘年会、というか舞踏会みたいなのがあるからだ。
昨日、ルイナとえりが買い物に行ったのも忘年会の服を買うためでもあった。俺はドラクの客船に乗った時のスーツがあるから買いに行かなかった。二人も乗った時のワンピースを持っているがワンピースではなくてドレスが着たいとのことだった。
17時になり、エスタル城に来た。
「うわぁ~、すっご」
受付を済ませて大広間に来ると大勢の人がいた。エスタル騎士団の色んな人がいる。上を見ると綺麗なシャンデリアがある。
「人酔いしそうね」
ルイナは相変わらず真っ白のドレスである。けどめっちゃ可愛い。これが黒だったら尚良。
「はぐれないように手繋いでおかないと」
えりは黒のドレスで十字架のデザインが施されている。よく似合っている。
「じゃあ私はアルトお兄ちゃんと繋ぐ」
ヨミは前から持っていた白黒のロリータの服。
「あっ、ズルいぞヨミみん!」
エレイヤはピンクのドレス。ピンク髪とよく合ってより萌えの塊になった。エレイヤとヨミは騎士団ではないが騎士団殺人鬼を倒す旅で一緒に戦った仲間ということで来てもいいことになった。
「こんばんは、皆さん」
「副団長、こんばんは」
副団長が近づいてきた。副団長は黄緑色のドレスを着ている。よくお似合いだ。
「団長は?」
「今は国王様とお話をされています。ちょっとしたら来ますよ」
「よう。遅れてねぇよな?」
後ろにガルアがいた。
「はい。大丈夫ですよガルアさん」
「お、お前も来たんだな」
「騎士団に入ったばっかりなんだしこういうのは出とかねぇとな」
にしてもガルアのスーツ姿似合ってねぇ~。笑いそうになったのを堪えた。
「アルト先輩!」
「ミスリア。ってその格好は⁉」
小走りで向かってくるミスリアに手を挙げるとともに驚愕した。ミスリアの服は赤と黒のゴスロリだった。高級感溢れる素材の服。さらに黒い宝石がはめられたチョーカー、赤い宝石のイヤリングをして黒いミニハットを被っていた。
「ど、どうでしょうか。アルト先輩の好みに合わせたつもりなのですが……」
「めちゃくちゃ良いよ!超カッコいい!」
「あ、ありがとうございます!」
「ちょっと、惚れる人違うんじゃないの?」
「いてててて、耳を引っ張るなって!」
「ふんっ」
「ルイナもそのドレス超可愛いし似合ってるよ」
俺がルイナを褒めまくっていると
「騎士団の皆。今日は集まってくれてありがとう。今年もよく頑張ってくれたの」
国王様が前に立ってスピーチを始めた。1分ほど話されたあと皆で乾杯をした。
「ん~、美味しいわね~」
「お、お前酒飲んでも酔っ払わないのか?」
「大勢の人の前ではしたなく酔っ払うわけないでしょ?あと私は酔っ払ったことなんてないわよ」
「そ、そうなのか」
「アルト先輩、良ければなのですが、あとでい、一緒に踊りませんか?」
「あぁ喜んで。上手く出来るかわからないけど」
「ありがとうございます!」
「私とももちろん踊るわよね?」
「そりゃもちろん。最初にルイナと踊った後で色んな人と踊るつもりだよ」
「ふふん~、やった~」
ルイナは俺に寄りかかってきた。やっぱり少しは酔ってるんだな。
「踊るまであんまり飲むなよ」
「わかってるわよ」
「相変わらず仲が良いね。こんばんは、みんな」
「団長、お疲れ様です」
団長は少量のワインが入ったグラスを持って白いスーツを着ていた。紳士的でカッコいいなー。
「リーザ団長も来ていたし挨拶してみては?」
「そうですね。では見つけ次第で」
「あ、そこにいるよ」
団長が指すところにリーザさんがいた。ちっ、なんでこんな近くにいるんだよ。
「アルト、行かないほうがいいわよ!」
「お前どんだけ嫌いなんだよ。めんどくさいけど行ってくるよ」
「あ~、アルト~、待ってよ~」
ルイナを振り払ってリーザさんの前まで来た。リーザさんは赤いドレスを着ていた。
「どーも、こんばんはリーザさん」
「お前も来ていたのか」
「俺が来てちゃ悪いですかね」
「そんなことはないがお前はこういう社交的な場所は嫌いそうに見えたからな」
「確かに気遣いばっかりしないといけないところは嫌いですが騎士団の皆さんともっとお近づきになるにはいいかと思いましてね」
「そうか」
「剣の完成まであとどれくらい掛かるんですか?」
「詳しくはわからないがまだ少し掛かるそうだ」
「そうですか。じゃあ完成したらまた戦いましょう。あの力も使えるようになってきましたので」
「え⁉そんなことお姉ちゃん言ってなかったよ⁉」
いきなり口調が変わった。
「ヘルサ先生には言ってませんからね。言うとすぐ戦いがって特訓もさらに厳しくなりそうですから」
「そ、そうだったのか。あぁ今度こそは勝って見せよう」
「ではまた」
俺はルイナ達の元に戻った。
「戻ったぞー」
「大丈夫?怪我してない?」
「話すだけで怪我はしねーよ。そろそろ安心しろ」
「でも心配なのよ」
これは心を許すまで時間が掛かりそうだな。
「そろそろダンスが始まるよ。自信はあるかい?」
「練習はしたので大丈夫だと思います」
内心怖いけど。
「ほら、ルイナ」
俺はルイナに手を差し出した。
「えぇ。ちゃんと踊りなさいよ?足踏んだら許さないから」
「出来ればな」
ルイナは俺の手を取った。
ほとんどの人が男女で手を組んで肩に手を添えている。踊るダンスはワルツ。ルイナは学校で習ったらしいのでちゃんと出来るらしい。
ちなみに俺の練習相手が副団長だったことは内緒である。
音楽が鳴り一斉に踊り始めた。
「あら、意外と踊れるのね」
「まぁな~」
いつもルイナとは息が合うので副団長とやった時より動きが合う。ただ問題は意外とルイナの顔が近いということだけ。副団長と練習してる時はワルツに集中していたから気にしていなかった。
「顔が赤いわよ。もしかして顔が近くてドキドキしてるのかしら?」
「うぐっ、そんなわけ、ないだろ」
「ふふっ、可愛いっ」
この野郎。ヤバい死にそう。落ち着け、落ち着け俺。今目の前にいるのはいつものただのルイナだ。ただちょっと綺麗なドレス着て少し化粧をした美しいルイナだ。
自分に言い聞かせているとルイナが顔を近づけてきた。
「大好きよ、アルト」
ぐあぁ~!ここで耳元で囁くという追い打ちをするとかこいつっ!
少しだけ足が遅れてしまった。それに気づいたルイナはニコッと笑った。それがさらに追い打ちだった。
心臓バクバクなのがよくわかる。ルイナに聞こえてそうで怖い。とりあえず今は心を落ち着かせるんだ。ルイナのことは考えるな。くそ雑魚有毒ナメクジ先輩のことでも考えよう。
ふぅ~、大分落ち着いてきた。そして俺はやられっぱなしじゃない。やられたらやり返してやるよ、この可愛いの擬人化みたいな野郎が!
「ありがとう。俺も好きだよ。いつもご飯作ってくれたり、服洗ってくれたり、弁当作ってくれたりしてありがとな」
「それくらいどうってことないわよ。どうしたの?急に褒めだして」
「一方的に愛を伝えられるものなんだろ?俺もちゃんと言わないとな」
「へぇ~。アルトが褒めるなんて珍しいわね。いいわよ、もっと言っても」
「世界一可愛いし、ルイナの笑顔で癒されるし、キスしてる時の顔うるうるして子猫みたいで襲いたくなるんだよな~」
「うぇ⁉な、何を言って」
「こんな風にね」
俺は一瞬だけキスをした。
「え、えぇ、はぅ」
「どうした?ちょっと足遅れてるみたいだけど?さらに手震えてるし」
「……そ、そろそろ相手を変える時間よ。じゃあまた後で~!」
ルイナは俺から離れて人混みに消えていった。
よし勝った。少し恥ずかしいしいささか攻め過ぎたがこれも致し方ないことだ。
「あっ、アルト君。踊りません?」
「いいですよ副団長」
俺はルイナがいなくなった方からやって来た副団長と手を組んだ。
「ルイナちゃんとはちゃんと踊れました?」
「はい、おかげさまで。ルイナには内緒ですよ?」
「わかってますよ。そういえばルイナちゃん顔が赤かったけど何かありました?」
「ちょっとからかっただけです。素直に反応して超可愛い彼女ですよ」
「アルト君も意外に素直なんですね」
「え?俺って素直じゃないイメージありました?」
「ご、ごめんなさい、少々プライドが高い人なのかと」
「あ~、確かに間違ってはないですね。でもルイナが可愛いのは認めざるを得ないので」
昔だったらこんなこと言えなかっただろうな。
「アルト君はルイナちゃんのことが大好きなんですね」
「えぇ。あ、あと副団長もそのドレスも可愛いですよ」
「ありがとうございます。アルト君もスーツ姿カッコいいですよ」
副団長としばらく踊り、別れた。
「喉乾いたし何か飲むか」
俺は人混みをすり抜けて大広間の端のテーブルの上にある水の入ったグラスを取って飲んだ。
「ふぅ~。やっぱり踊るのも疲れるな。女性に合わせるのも難しいし」
「お~、アルト君一緒に踊ろ~」
「メーラさん、もう酔ったんですか」
「まだまだ私は飲めるぞ。ほら踊るぞ!じゃないと炎魔法で燃やすからな!」
「わかりましたよー」
〔メーラ〕
29歳 女
【特徴】
・第二騎士団で一番の炎魔法使い
・見ていると炎魔法を使いたくなる
・子供の頃から炎魔法を使いまくって何度か家を火事にしかけたことがある
【性格】
・エレイヤと似ているがちゃんと女として生きている
・上戸
・炎を見るのが好き
【ジョブ】
・白魔導師
【得意属性】
・炎
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ルイナ「誰にダンス教えてもらったのよ」
アルト「え、え~っと学校の先生に」
ルイナ「学校の先生?ヘルサ先生?」
アルト「いやヘルサ先生じゃないんだけどさ」
ルイナ「女……女の匂いがするわ!絶対美少女みたいな人に教えてもらったのね!」
アルト「(なっ、こいつ!さりげなく副団長を褒めながらも当ててきやがった!)」




