第七十七話 買い物
今日の夜になり、それぞれの寝床に行った。俺はえりのいる屋根裏部屋に上った。
「えりー、ちょっといいか?」
「うん~?なに~?」
「何やってんの?」
「ストレッチ」
えりは布団に座って足に手を付けていた。
「ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
「どしたの~?」
えりは胡坐をかいて俺も布団に座った。
「お前何か悩んでないか?」
「悩み?う~ん。特にはないかな」
「本当か?」
「本当だよ」
「本当に本当だな?」
「ほ、本当だって。なんなの?」
「不安に思ってることもないのか?」
「な、ないけど」
「そうか……」
「だからなんなの⁉」
「お前の心に何か暗い感じのものがあることに気づいたから、何か心配な事や不安なことがあるのかと」
気づいたの俺じゃないけど。
「どういうこと?」
「いや、何もないならいいよ。悩みや不安があったらいつでも言えよ」
「わ、わかったけど。なんなのもう」
「じゃあおやすみ」
俺は自分の部屋に戻ってベッドに横になった。
見た感じではなんもない普通のえりだったがどうなんだろう。メイ先生の勘違いとかだったらいいんだけど。
えりのことや俺の赤黒い魔力だったり考えることは少ないが不思議過ぎて頭が痛くなりそうだ。俺は一旦考えることをやめて眠りについた。
「じゃあ行ってくる~」
「へーい、楽しんで来いよ~」
「私がいない間に変なことしちゃダメよ?いってきま~す」
土曜日になり、朝にルイナとえりは出かけた。俺がジェリカの洞窟に言ってる間に二人で買い物に行くって約束をしていたそうだ。俺が頑張ってたってのに平和なこと話しやがって。
「邪魔者はいなくなったし、私を襲ってもいいんだよ?」
「邪魔者はお前だよ」
「せっかく久しぶりに二人きりになったんだからいいじゃん」
そう、今家にいるのは俺とこの問題児、ヨミである。
「お菓子欲しい」
「朝ご飯ちょっと前に食ったばっかりだろ。お腹減ってるならおかわりすればよかったのに」
「小腹が空いたの。ご飯よりお菓子のほうが美味しいし」
「我慢しろ。もうちょっとしたらあげるから」
「今欲しいの。一個だけ、一個だけでいいから」
「はぁ、わかったよ。一個だけな」
俺は棚の上にある重たい箱を開けてチョコでコーティングされているクッキーの袋を一個だけヨミに渡した。箱が重いのは浮いて取られないようなのと風魔法で動かせないようにするためだ。
「ありがとう、アルトお兄ちゃん。大好き」
「そりゃどうも」
箱を元に戻して、ヨミは袋を開けてクッキーを口に入れた。今日は夕方までルイナとえりは帰ってこないし何しようかな。
「ヨミはどっか行きたいところとかないのか?」
「アルトお兄ちゃんとデート出来るならどこでも」
「あぁそう。じゃ適当に町歩くか」
俺とヨミは支度をして家から出た。今日は曇っている。
「アルトお兄ちゃんってなんでエロいの興味ないの?」
「逆に聞くがなんでお前はその歳してエロに興味があるんだよ。てかなんでそういう知識どこで知ったんだよ」
「それは色々あったからだよ」
「色々ってなんだよ」
「……私がまだアルトお兄ちゃんに会う前、捨てられてた時に路地裏に薄い本が落ちていてエッチなことや用語がたくさん書いてあって知ったの」
「お前理解力良すぎだろ」
「得意属性が星の人って普通の人より頭良いんだって」
「そうなのか。あと思い出したくないかもしれないけど、捨てられて俺とルイナと会うまで何日くらい経ってたかわかるか?」
「多分13日だと思う」
「そ、そんなにだったのか。それまで食事とかどうしてたんだ?」
「捨てられる時に二万円だけ貰ったの」
「なるほどな~。それまで一人だったんだろ?」
「うん」
「お前よく頑張ったな」
「あと一日会うのが遅かったら自殺するところだった」
「あ、あの時会えて良かったよ、マジで」
「私も良かった」
「ヨミの親はこの町にはいるのか?」
「この町にはいない。他の町からここの町に来て捨てられたから」
「二万円くれたのはいいけど最低な親だな~」
「……お父さんは最後まで捨てるのは反対してたけどお母さんが捨てないのなら離婚するって言って仕方なくだった」
「子供より妻を選んだのか。まぁ結局はどっちもクズだったってことだな。よし、しんみりした話は終わりにして楽しい話をするか」
俺は話題を変えてヨミと話しながら町を歩いた。
「アルトって昔から天然なの?」
「もっちろん。昔から罪なことばっかり言うんだから~」
私とえりかちゃんは話しながら商店街に向かっている。
「やっぱりそうなのね。アルトって恥ずかしいことを恥じずにサラッと言うわよね。だからこそ恥らせ甲斐があるけど」
「ルイナちゃんも悪よのぅ。ゆう君の照れ顔可愛いもんね~」
「そうなのよ!基本無表情のアルトが頬を赤らめて目が泳いでいる姿を見るともう可愛すぎて死にそうになるの!」
最近は中々照れてくれないから少し面白くないけど。もっと甘えようかしら。
「ルイナちゃんってゆう君のこと大好きだよね~。ルイナちゃんはゆう君と会った時からそんなのだったの?」
「全然。会った時なんか全く魅力も感じなかったし、ちょっと顔が良いくらいとしか思ってなかったわよ。けど何故か安心出来て同じようなものを感じたから」
「同じって性格?」
「う~ん。性格とかじゃない何か」
「何かってなにぃ~?」
えりかちゃんはつんつんと肘で突いてくる。
「と、とにかく何かよ!」
「なるほどねぇ~」
「そういうえりかちゃんはアルトと初めて会った時どうだったの?」
「え~、初めて会った時なんて小学校の入学式の時だから覚えてないよ~」
「じゃあ仲良くなり始めた時は?」
「なり始めか~。ただ優しくてちょっと大人びていたからどんな人か興味が湧く人だったな~」
「へぇ~、優しいのも昔からなのね」
「ほとんど昔から変わってないよ。諦めないようにしてること以外はね」
「アルトって昔はそんなに諦めやすかったの?」
「ゲームとサッカー以外はね。勉強もしないし掃除もしないし優しいけど人を説得するのもめんどくさくなって諦めるし、とにかくみんなのゆう君のイメージはすぐ諦める人だったな」
「そういう年頃だったのかしらね」
「多分ね。でも今のゆう君は変わって何事にも諦めないようにしてるから、私も頑張るようにしてるんだよね」
「えりかちゃんってアルトのこと好き?」
「えっ?好きって?」
「だからDo you love アルト?ってこと」
「友達としては好きだけどやっぱり恋愛感情はないかな。一回私から振って別れちゃったしなんかそういう感情がなくなっちゃったんだ」
「ふ~ん。そういえばなんで別れたの?言いたくなかったら言わなくてもいいけど」
「最初ゆう君が私と同じ高校に行くって言ったけど全然勉強もせずに無理って言いだしたから別れたの」
「そ、それは確かにムカつくわね。彼女のためなら勉強くらいしなさいよって言いたいわね」
「ほんとそれだよね。今のゆう君とは大違いだよ」
「あとアルトやえりかちゃんが言ってるよく言ってるゲームってどんな感じなの?」
私はえりかちゃんにゲームについて教えてもらった。
「は、はくしゅん!あ~、もうちょっと温かくしたほうがいいのか?」
「ルイナお姉ちゃんとえりかお姉ちゃんが噂してるんじゃない?」
「ありえるな」
俺達は公園に来た。誰もいないな。
「少しだけ鍛えるか」
俺とヨミは向かい合って両手を組んだ。そしてお互いに魔力をぶつけ合う。これで効率良く魔力が消費され魔力量が増えやすくなる。ちなみにヨミの魔力は星属性の魔力で強いので俺も魔力をそこそこ使い、俺も魔力量が増やせるので良い。
ヨミは八岐大蛇と戦ってから自分の魔力量を増やしたいと言い出してよく家で暇な時にやっている。
「私の魔力量も増えたかな?」
「前よりかは増えてるだろうな」
「じゃあ魔力多くするね」
「はいよ」
俺とヨミはぶつけ合う魔力を多くした。周りの砂が少しだけ飛んでいく。
「そういえば前から思ってたんだけど、アルトお兄ちゃんとえりかお姉ちゃんって異世界から来たんだよね」
「え、えっと……いつから気づいてたんだ?」
「えりかお姉ちゃんが来た時くらいから」
「そうか。あぁ、俺は異世界から来た人だよ」
「異世界ってどんなとこ?」
この質問に答えるのがめんどくさいから言わなかったが言わなきゃいけないか。
「えっと、簡単に言えば魔法と魔物がいない世界、かな」
「平和なの?」
「いや、殺人だってたくさんあるし貧しい人達もたくさんいるから平和でもないかな。俺がいた世界の人はこの世界の人ほど体が強くなくてな。銃や刃物ですぐに人を殺せてしまうから日々死ぬ人が絶えないだよ」
「なんで人を殺すの?」
「俺が住んでた国では恨みやら孤独だからとか人間関係が悪いからだな。親からのストレスとか、男女関係とか」
「アルトお兄ちゃんは人を殺したことあるの?」
「あるわけねーだろ」
「だよね。良かった」
こんな話をしているとえりがドラクを殺したときのことを思い出してしまう。メイ先生が言っていた深い闇はこのことだったりするのだろうか。
「アルトお兄ちゃんとえりかお姉ちゃんって異世界にいた時に付き合ってたんだよね」
「そうだけど?」
「元カノってことだよね?」
「そうなるな」
「今の彼女と元カノがいるってマズくないの?」
「俺も最初そう思ったけど案外気まずそうでもないからな。むしろ俺の話で意気投合してるし」
「確かにね。ところで二人はどこまでいったの?」
「何がだ」
「キスはしたの?」
「してねーよ」
「一緒に寝た?」
「小学生の時に泊まりに行って何回かな」
「エッチなことは?」
「するわけねーだろ」
「つまんないね」
「お前が満足する日はこねーよ。そろそろ終わるか」
俺とヨミは手を離した。すると手に冷たくて小さな白いものが落ちてきた。
「雪か」
「おぉ~、すごいね~。積もるかな?」
「さぁ、どうだろ。今日はそこまで積もらなさそうに見えるけど」
「積もったらいいな~」
「雪好きなのか?」
「うん、綺麗だし遊べるし食べれるからね」
「お腹冷やすから食べるなよ」
俺達は公園を出て再び歩きだした。
「楽しかった~。やっぱりルイナちゃんってなんでも服似合うよね~」
「えりかちゃんだって全部似合ってわよ」
「ホント?ありがとう、また二人でいこうね~」
私とルイナちゃんは今日一日町を歩き回って他の町にも行った。久しぶりに女子と買い物に行けてとっても楽しかったしゆう君の話もたくさん聞けたから良かった。
『ただいま~』
「おかえり、ルイナお姉ちゃん、えりかお姉ちゃん」
「おかえり。雪降ってたけど大丈夫だったか?」
「心配しなくても大丈夫よ」
「雪付いてるぞ、えり」
ゆう君は私の髪に付いた雪を払ってくれた。
「ありがとう、ゆう君」
するとルイナちゃんがゆう君に近づいて少し屈んだ。
「なに?ついに俺に服従する気になったのか?」
「違うわよ!私の髪にも雪付いてるの!払って!」
「あぁ、お前髪白いからわかりずらいんだよ。あと大丈夫って言っただろ」
「これに対して大丈夫って言ったんじゃないわよ!」
「はいはいわかったよ」
ゆう君はルイナちゃんの髪に付いている雪を払った。
「ありがと、それじゃ荷物置いてくるから」
ルイナちゃんは自分の部屋に入り私も屋根裏部屋に上って今日買ったものを置いた。
ルイナちゃんとゆう君、理想のカップルって感じだな。行方不明になってたのを心配してた自分がバカみたい。私もミラス団長と付き合ってみたいな~。でもミラス団長にはクレス副団長がいるし。私が幸せになる日はいつ来るんだろう。だからって今が幸せじゃないってわけでもないけど。
「あいつ、いつもより甘えてるように思えるんだけど」
「気のせいじゃない?いつもあんな感じだよ」
「そうか?」
下に降りるとゆう君とヨミちゃんの声が聞こえた。部屋から出てきたルイナちゃんと一緒に手を洗って晩御飯を作り始めた。
ヨミ「今回はセリフ多くて嬉しいな」
アルト「いつもこのくらい喋ればいいのに」
ヨミ「喋ってるよ。でも暇な時間はカットされてるからいつも喋ってないように見えるだけ」
アルト「じゃあ暇な時間なに話してるんだ?」
ヨミ「アルトお兄ちゃんの好きな所とカッコいい所と可愛い所とかルイナお姉ちゃんの下着の色の話」
アルト「なんてこと話してんだよ」




