第七十二話 心配
「ってことで今日一緒に寝るのはルイナとエレイヤに決定」
「むぅ~、なんでグーだすの」
「ふふん、悪いなヨミみん」
「やった~!久ぶりにアルトと寝れるー!」
「ヨミちゃん、今日は一緒に寝よーねー。あぁ超カワ幼女と一緒に寝れる幸せ」
ご飯を食べ、風呂に入ったあとじゃんけんに勝って大喜びのルイナとエレイヤ、そしていじけているヨミと寝れることを幸せに感じるえりだった。
『おやすみ~』
俺とルイナとエレイヤは俺のベッドへ、ヨミとえりはルイナのベッドへ行った。そしてルイナとエレイヤは俺を挟んで横になった。
「なぁ、アルトきゅん」
「なに」
「二つ言うこと聞いてくれるんだよな?」
「そうだけどなに」
「じゃあ俺と抱き合って寝てくれよー」
「はぁ~、わかったよ」
俺はエレイヤに抱き着きエレイヤは満足そうな顔で抱き返した。
「ちょっと!隣に彼女がいるのに他の女の子と抱き合って寝るっての⁉」
「仕方ないだろ。何でも言うこと聞くって八岐大蛇と戦ってるときに言っちゃたんだから」
「なんでアルトは約束を守る人なのよ!」
「良いことだろーが」
「いいわよ。私も後ろから抱き着くし」
ルイナが後ろから抱き着いてきた。
「汗かきそうなんだけど」
「知らないわよ。別に私はアルトが汗かいてもいいし」
「ああそうですか」
考えることが同じなのか二人は同時に足を絡め合おうとしてきた。二人の足はぶつかると蹴り合った。
「喧嘩するな」
「ルイナっち、今アルトきゅんの所有権は俺のだぞ」
「アルトの所有権なんていつだって彼女である私よ。アルトから抱き着かれてるんだから足くらいいいじゃない」
「よくない。今日だけは俺の物だ」
「だから喧嘩するなって。ソファーで一人で寝るぞ」
「わかったよ」
「はぁ~」
二人とも渋々了承し、そのまま目を閉じて眠りにつこうとした。
しばらく時間が経った。
眠れない。疲れているのになんでだ。まだ体が緊張してるのだろうか。まぁ何がしてくるかわからないリーザさんと今日ほとんど一緒にいて剣の的にされて寒い中本気で飛んだりしてたからな。
目を開けてエレイヤを見ると安心した顔ですぅすぅと寝ている。
「アルト、起きてる?」
後ろからルイナが声を掛けてきた。
「起きてる」
「眠れないの?」
「まぁ」
「二人で少し話せる?」
「いいけど」
俺とルイナはベッドから静かに出てリビングの部屋を付けて椅子に座った。時間は0時を過ぎていた。
「で、なに。今日学校だろ」
「……アルト、私は心配なの。リーザさんはアルトを骨折までさせた人だからリーザさんとアルトが一緒にいると心配なの」
ルイナは本当に心配そうな顔で俺を見る。まぁそう思うのも普通だな。
「ルイナが思ってることはよくわかるけどあの人も悪い人じゃないんだ。あと、今リーザさんは剣を持ってないからまた骨折させられはしないと思うよ」
「分かってる。分かってるけどどうしても心配なの」
ルイナは肩を震わす。それだけ心配してるのだろう。幸せだが少し心が苦しい。
「悪かったよ。ルイナに何も言わずリーザさんに付いて行って」
リーザさんに逆らわないようにするため団長にだけ言って行ってしまったのが悪かったのだろう。
「私は、アルトにはどこにも行ってほしくないの。ずっと、傍にいてほしいの」
体も声も震わせてルイナは泣きついてきた。
「しかもエレイヤちゃんやミスリアちゃんもアルトのこと好きだしもしかしたら私なんかより二人のほうが好きなんじゃないかって思って」
「ルイナ……ホントに悪かったよ。ルイナの気持ち分かってるようで分かってなかった」
俺はルイナの頭と背中に手を添える。
「まぁエレイヤもミスリアも可愛いからそう思っちゃうよな。でも前にも言ったけどルイナ以外に好きな人はいない。これは未来永劫変わらないと誓うよ」
「本当?」
ルイナは涙を流しながら顔を上げて顔を見る。
「あぁ」
「もう勝手にどこにも行かない?」
「あぁ」
「もう一人で突っ込もうとしない?」
「あー、う~ん。状況によっては~」
ルイナは顔を下げて涙を俺のパジャマに擦り付けた。
「わ、わかったから泣くな泣くな」
「一生私の隣にいてくれる?」
「それは結婚するときに誓うよ」
「わかった。じゃあその代わりに」
ルイナは顔を上げ、キスをしてきた。そしてすぐに舌を入れてくる。ビックリするからいきなりはやめてほしいものだが今はこれでルイナの気が済むならいいか。
俺もルイナの口に舌を入れる。数秒間お互いに舌を舐めるように舌を動かした。
「ル、ルイナ。もういいだろ」
「まだ、まだしたりないから。んっ……」
未だにキスの何が良いのかよくわからないが頭がぼーっとして力が抜けてくる。不思議な感覚だ。
「はぁ、はぁ」
「気が済んだか」
「う、うん」
それでもルイナ物足りないと言うようにうるうるとした目で見てくる。いつからこんな子になったのか。
「お茶でも飲んで落ち着け」
俺はルイナにお茶を注いだコップを渡した。
「ありがとう」
ルイナはお茶を飲み、深呼吸して椅子に座り俺も隣に座った。
「ごめんなさい、自己中な彼女で」
「大丈夫だよ。彼女のわがままくらい聞かないとな」
俺は机に肘をついてルイナを見る。
「そういえばアルトは甘えてくる人が好きだったわね。ならもっと甘えたら聞いてくれるかしら?」
「ほどほどにしてくれ」
「ふふっ。ねぇ、アルトって私とアルトに子供が出来たらどんな子だったらいい?」
「それはどういう意味だ」
「純粋にどんな子がいいかってだけよ」
ルイナは顔を少し赤くしてそっぽを向く。
「善人ぶれば生まれてくるだけでいいって言いたいけど俺は善人じゃないからなぁ、う~ん。男の子だったら剣術とバリス刀が好きで得意属性が闇か氷で団長みたいにイケメンだったらいいかな。女の子だったら、ルイナに似てくれればいいかな。あとずっと父親好きでいてほしい」
「そこは団長みたいにじゃなくて自分みたいにでいいのに」
「俺は自分がイケメンだとは思ってないからな」
「私もアルトと同じ考えよ。良かった」
ルイナは笑顔で少しの間目を閉じた。
「そろそろ寝ましょうか」
「あぁ」
俺とルイナは電気を消して部屋に戻った。エレイヤは部屋を出たときと変わらない態勢で寝ている。静かにベッドに入った。
「アルト、最後に」
「はいはい」
俺はルイナに少しだけキスをした。
「ふふっ、おやすみアルト」
「おやすみルイナ」
俺は起きたときバレないようにエレイヤに軽く手を添えてルイナは俺に抱き着いて寝た。
ルイナとエレイヤと寝た日から四日後。今日はエレイヤの家に行って魔物討伐のお金を渡しに行く。ついでに泊まらせてくれるらしい。
「ここが我が家だぜ!」
エレイヤに付いていってルイナとヨミとえりとミノル町にあるエレイヤの家に来た。
「ほー、ここか」
ごく普通の一軒家だ。
「お邪魔します」
玄関を開けるとエレイヤの母親らしき人がいた。
「いらっしゃい!よく来たな、みんな!」
さすがエレイヤの母親。娘と口調が似ている。
「エレイヤの名前で知ってると思うが私はラスクだ。娘が世話になってるな!どうぞ入れは入れ!今日はゆっくりしていけよ!」
「は、はい」
ラスクさんはピンクの長い髪でタンクトップを着て胸に包帯のさらしを巻いている。ガルアと同じ格闘家だろうな。
俺達はソファーに座ってリンゴジュースを出された。
「遠いところまですまねぇな!」
「いえいえ。こちらこそ急に押しかけてすみません。しかも泊まらせてもらえるなんて」
「気にすんなって!なんせエレイヤの愛人が来るだからな!」
「ちょ!母ちゃん!」
ラスクさんは俺の隣に座って背中をバンバンと叩く。普通にいてぇ。ルイナも笑顔を保っているが心の内ではイラついてんだろうなー。
「エレイヤがなんか迷惑掛けてねぇか?」
ラスクさんは肩に手を回してきた。ルイナさん、お願いだからキレないで!
「全然迷惑なんて」
「そりゃ良かった良かった!」
「それで、今日来た理由なんですけど」
「おぉ、なんだ?」
「俺達が旅に出ていたのを知っていますよね?」
「もちろんだ」
「その時に魔物を討伐して貰った報酬を山分けしているんですが、そこそこの額なのでエレイヤに渡すのはどうかと思って来たんです」
「そうだったのか。んで、いくらなんだ?」
「16万8千円です」
「16万⁉何人で山分けだったんだ?」
「8人です」
「えーっと、だから、1344000も貰ったのか⁉」
「はい。正確には135万ですけど」
「そんな強い魔物を倒したのか。やるじゃねーかエレイヤ!さすが私の娘だ!」
「俺だって強くなってるんだぜ!」
「このお金はとりあえずラスクさんに預けます」
俺はお金の入った封筒を渡した。
「いやー、あんたが気が回るやつで良かったぜ。エレイヤに上げてたらすぐに使い果たすからな~」
「そんなことないって!」
「まぁありがとな。しっかりと受け取ったぜ」
「はい。あっ、そういえば自己紹介がまだでしたね」
俺達は自己紹介をした。
「全員エレイヤから少しは聞いてたぜ。アルトとルイナとヨミとえりかだな。覚えたぜ」
ホント親子揃って同じだな。別にいいけど。
「アルトはその腕はどうしたんだ?骨折したのか?」
「あ、はい。ちょっと色々ありまして」
「大変だなぁ。おっと、すまねぇが私はご飯作ってくるから好きにしときな」
ラスクさんはキッチンに立って冷蔵庫から野菜と取り出した。
少しみんなと話していると誰かが家に入ってきた。
「ただいまぁ!今日はエレイヤの友が来るって聞いて急いで帰ってきたぜ!」
「おかえりサウド!もう来てるぞ!」
「父ちゃんおかえり!こちらが俺の友達、アルトきゅんとルイナっちとヨミみんとえりっちだ!」
「おぉ!今日は来てくれてありがとうな!」
エレイヤの父親は金髪で耳にピアスをしてタンクトップを着ている。やんちゃそうな格好だが良い人そうだな。サウドさんも格闘家だろう。
「お邪魔してます」
俺達はラスクさんに言われたような質問をサウドさんからもされて答えた。
「エレイヤ!出来たから机に運びな!」
「は~い」
ご飯が出来て机に運ばれてきた。机は二つ机がくっ付いている。多分俺達のために出したのだろう。
俺達は話しながらご飯を食べた。とても美味しかったが肉が多かった。そしてお風呂にも入らせていただいて持ってきたパジャマに着替えた。
「ふぃ~。うちの風呂小さくてごめんな」
「いやルイナの家の風呂を広すぎるだけだから大丈夫だよ」
「うちに色々楽器とかあるから見てみるか?」
「私も見たい~」
「こっちだぜ!」
階段を上って二階に来た。この世界の楽器も見てみたいな。
「ここだ」
部屋の中に入るとエレキギターやアコースティックギター、ヴァイオリン、ピアノ、ハープ、クラリネット、フルート、トランペット、トランボーン、チューバ、アコーディオン、木琴、鉄琴、ドラム、そして和太鼓まであった。部屋もそこそこ広いが楽器に覆いつくされている。
「す、すごいな」
「だろ?俺全部使えるんだぜ」
「へぇ~。エレイヤの音の力ってどんな楽器でも使えるのか?」
「あぁ!太鼓が持ち運べたら強いだろーな!」
「確かに強そう」
俺は楽器なんてハーモニカと鍵盤ハーモニカとリコーダーと篠笛しか触ったことないから少し羨ましい。てか元の世界にあるのと同じ楽器だったな。
「何か今使ってほしい楽器あるか?」
「あー、えーっとじゃあヴァイオリン」
「おーけー」
エレイヤはヴァイオリンと弓を手に取って弾き始めた。めっちゃ上手い。感動するほど上手い。
「どうだ?」
「すげー上手いな」
「ちょー上手いじゃんエレイヤちゃん!」
「エレイヤちゃん中学生なのに凄いわね」
「へへん。それほどでもないぜ」
「えりって楽器下手だったよな」
「そうだよ」
「ルイナは楽器上手いのか?」
「吹奏楽部の友達がトランペットやってて少しやらせてもらったら結構出来て練習すればプロ行けるって言われたわ」
「そうなのか。ルイナって基本なんでも出来るよな。それに対してえりは勉強は出来るのに音楽と美術と技術と家庭科と体育はダメだよな」
「実践系は無理なんだって!私才能ないし!唯一才能あったのゲームのエイム力だけだったから」
「羨ましいよ。俺は毎日エイム練習してるのにそれを数日で凌駕したからなぁ」
「唯一の才能を誰にもあげないよ!」
「そもそもあげれねーだろ」
「おう、うちの楽器を見てるのか?」
風呂から上がってきたラスクさんとサウドさんが来た。
「はい、エレイヤなんでも使えて凄いですね」
「小さい頃から色んな楽器に触って来たからな。それよりアルト、ちょっと話しがしたいんだがいいか?」
「は、はい」
俺はラスクさんとサウドさんに付いていってとある部屋に入った。見た感じ客間だろうか。
「まぁとりあえず座れ」
「はい」
俺は座布団に座った。机を挟んで前に二人が座る。
「話しってのはエレイヤのことだ」
「なんでしょうか」
「なぁ、アルト君よ。エレイヤと付き合う気はないか⁉」
サウドさんが目を見開く。やっぱりこの話か。
「彼女がいるはわかっている!だがなんとか付き合ってくれないか!」
「なぜ俺なのか、なぜそんなに必死なのか聞きたいですね」
「あいつは男みたいな性格だ。このままだと彼氏が出来る気がしない!そんな中エレイヤに好きな男が出来て女を磨こうとしてるんだ!」
ラスクさんも身を乗り出して話す。
「失礼だと思いますがラスクさんも男みたいですよ」
「私もそう思ってるから大丈夫だ!私に似たんだな!」
「自覚はあったんですね。で、そのラスクさんがサウドさんと言う素敵な方に出会えたならエレイヤもいつかは幸せになれると思いますよ」
本当は俺も心配なんだよな。俺に一目ぼれするくらいアホだし。
「私とサウドが出会えたのは奇跡だからエレイヤも同じ奇跡が起きるとは限らないからな!」
「確かにそうですね。ですが結局は俺にはルイナがいます。俺もエレイヤのことは気にかけていますが俺の愛する人は何があろうとルイナだけです」
「そうか……」
わかりやすく顔を下に向けて残念がる二人。これで諦めてくれればいいけど。
「では仕方ないな。付いてきてくれ」
二人は立ち上がって目を光らせる。嫌な予感が……。
アルト「ルイナのキスが無駄に上手いんだが」
ルイナ「は、はぁ?アルトのほうが上手いわよ?」
アルト「お前の真似してるだけだから」
ルイナ「私もアルトの真似してるだけだから」
アルト「いや俺はキスなんてどうすればいいか全然わかんないし」
ルイナ「私だってそうよ!」
ヨミ・エレイヤ『(爆発すればいいのに)』




