第七十一話 七烙岩
俺は騎士団訓練所を離れてトレッド町という町に来てリーザさんの後を付いていっている。
「あ、あの、どこに行く気なんですか」
「武器屋だ」
「な、なぜ」
「新しい剣を買うためだ」
「それにどうして俺が付いていかなければいけないんですか」
「お前が折ったあの剣をより強いと思う剣を選んで貰うためだ」
「俺がですか⁉」
「あぁ」
「あの剣より強い剣ってそうそうないと思いますけど」
「探せばある」
めんどくさいことに付き合わされたなぁ~。
この町は武器や防具を作ることが発展している町らしい。俺も見て回りたいところだが今は従っておこう。
「まずはこの店だ」
大きな武器屋に来た。この店は色んな武器が置いてあるのと量が多いのが売りらしい。品質はそこそこらしいけど。
リーザさんは大剣が売ってある場所に来た。
「いいのあります?」
「ふむ」
リーザさんは風属性の魔力が込められた細くて長い剣を取った。
「どんな感じです?」
俺がそう言い終わるとその剣の切っ先が俺の首元にあった。
「私には合わないな」
「危なっ!俺のほうに振った意味ありますか⁉」
リーザさんは無視をして剣を元の位置に戻して歩き始めた。
初めて手に取ったはずの剣で俺との間合いをはかって首に当たらないくらいの距離に立つのは流石というか、なんというか。
リーザさんは次々と強そうな武器を手に取り俺に向かって振ってくる。
「これもダメだな」
「やっぱり普通に売ってあるような武器なんかじゃ合わないと思いますけど」
「次の店に行くぞ」
結局俺が選んでないし、なにがしたいんだか。
大きな武器屋を出て今度は小さな武器屋に来た。ここは近接武器だけ取り扱っている店。と言っても剣が豊富だ。
「これはまぁまぁだな」
「俺に振る必要ありますか?」
「ある」
それだけ言ってリーザさんは次の剣を見に行く。
「だから理由を聞きたいんですけど」
「何もないところに振るより的があったほうがいいだろう?」
「俺よりヘルサ先生連れてくれば良かったのに」
「……あのさぁ、お姉ちゃんを的するわけないでしょ」
また急に口調が変わった。この人は二重人格なのだろうか。
「的じゃなくても剣選びならヘルサ先生なら詳しいと思いますけど。それに、リーザさんは俺なんかよりヘルサ先生とデートしたほうがいいじゃないんですか」
「お前は私と今デートしていると思っているのか?」
「思ってはないですけど状況的にはそうかなと」
「あっそ。んで、お姉ちゃんは忙しいから誘っちゃ悪いと思って誘わなかっただけ」
「俺が知ってるヘルサ先生は瞑想か剣術の練習しかしてないイメージがあるけど忙しいんですね」
「お姉ちゃんは知らないところで色々とやってるんだから。ほら次の店行くよ」
俺とリーザさんは小さな武器屋を出て次の武器屋へ向かう。
「お前はさ、剣術を知らなかったからお姉ちゃんに教えてもらうことになったって聞いたけどもう十分強いし習わなくてもいいんじゃないの?」
「ヘルサ先生曰くまだまだなので習う必要はありますよ」
「はぁ、なんでお姉ちゃんこんな奴に教える気になったんだろ」
「こんな奴と一緒に剣を選びに行くなんて気が知れませんね」
「お前が折ったんだろ」
「でも新しい剣が欲しいって言ってたじゃないですか」
「そ、そうだけど」
「リーザさんが何考えてるか全然わからないんですが」
「いいから行くぞ」
「はぁ」
その後も何軒もの武器屋を見て回わった。
「もう帰ってもいいですかぁ~」
「ダメだ」
「やっぱり特注で作ってもらうしかないですよー」
「仕方ないな」
駄々をこねた事によってやっと気分を変えてくれるそうだ。口調も戻った。
「素材を手に入れるぞ」
「い、今からですか⁉」
時刻は14時半になっていた。
「急げばすぐに手に入る。飛ぶぞ」
俺とリーザさんは詠唱魔法で飛び町を出た。そして30分ほど飛んで火山地帯に来た。
「はぁ、はぁ。疲れた」
「このくらいで音を上げるな」
「休憩もないし、リーザさん速いし、寒いし、目が乾くし、首が痛いんです」
炎魔法を調整して暖かい魔力を魔力を纏らせていたが、高速で飛んでいると寒すぎてと意味がなってしまう。魔力を多くしてもいいが火傷する可能性があるのでやめておいた。
そして飛んでいる間を上を向いているので長時間飛んでいると首が痛くなる。かといって下を向いても飛んでいると首に重力が掛かって痛い。飛ぶということは意外と疲れることなのだ。
火山地帯はマグマらしき液体が流れている。見た目が完全にマグマだがマグマではないらしい。飛んでいる時とは違ってくそ暑い。
「で、なんの鉱石を取ればいいんですかー」
「七烙岩という鉱石だ。燃えている鉱石だから水魔法を手に纏わせて取るようにな」
「これですか?」
俺は近くにあった燃えている鉱石らしき物を指さす。
「あれは似ているが違う。七烙岩は七角形の形をしている」
「なるほど。そういえばツルハシとかないんですか?」
「そんなものがなくても」
リーザさんは少し歩くと七烙岩と思われる鉱石の近くに行って人差し指の爪に高密度の炎魔法を出して鉱石を根元から削り取った。
「こんな風に取ればいい」
「力技ですか」
「これが一番早いからな」
俺とリーザさんは分かれて七烙岩を削り取っていく。
「にしても暑いな~。ルイナも道連れにすれば良かった」
俺がぐちぐちと言っていると魔物が寄ってきた。角が燃えて体が赤いミノタウロスの魔物。
「骨折してるってときに地味に強い魔物が来たもんだ」
俺はミノタウロスに向き直って手を向ける。ミノタウロスの足を土魔法を使って固め、風魔法で体を傷を入れていく。
泣き叫ぶミノタウロスに向かって風魔法撃ち続けたまま歩き、目の前に来ると風魔法から闇魔法に撃ち変えた。ミノタウロスの腹が血だらけになって再び泣き叫ぶ。
「うるせーなー」
俺がそう言うとミノタウロスは大剣を横に振ってきた。俺はジャンプしてかわすと同時に刀を抜いて闇属性の魔力を付与した。そのまま刀を振り下ろして着地した。ミノタウロスは血を吹き出しながら半分に割れていった。
「ふぅ~。骨折してなければ派手に動いて一発で仕留めれたのに」
刀を鞘に納めて再び七烙岩集めに戻った。
そういえば昔はミノタウロスも中々手こずったに今は一発だもんなー。いや~、強くなった俺。最初は魔法剣士なんて本気で出来んのかと思ってたけど結構出来てるよな。
昔のことを思い出してると後ろから人の気配がした。瞬時に振り向くと
「誰もいない、か」
気のせいだろうか。やっぱり俺もまだまだだな。気配を感じとるのもまだ自信ないし。早くもっと強くなりたい。
「これくらいあればもういいだろう」
リーザさんが近づいてきた。後ろに大量の七烙岩を包んでいる水魔法が浮いている。その中に俺の集めた七烙岩も入れた。
「町に帰るぞ」
「はーい」
詠唱魔法で飛んで町へ向かう。
「リーザさんは寒くないんですか?」
「寒いに決まってんじゃん」
まーた口調が変わった。
「リーザさんのその口調が変わるのは何が原因なんですか」
「気分だよ。き~ぶ~ん~」
「そ、そうですか。俺とヘルサ先生以外にその本性を知ってる人っているんですか?」
「いないよ。お前とお姉ちゃんだけ」
「なんでみんなには隠してるんですか?」
「恥ずかしいし、団長なのにこんなんじゃ団員から頼りないと思われるでしょ」
「ということはリーザさんは自ら恥ずかしいことを俺にしているドMってことですね」
「はぁ⁉」
「冗談ですよ~」
「右腕も壊してやろうか」
「ごめんなさい、許してください!」
「ふんっ、バカが」
ヘルサ先生の脅しはそこまで怖くないがリーザさんの脅しは洒落にならない。
「七烙岩の見た感じだとまた炎属性の魔力が込められた大剣ですか?」
「もちろん。得意属性も炎だし」
「よくあんなデカい大剣を片手で振れますよね」
「昔からお姉ちゃんと師匠に鍛えられてきたからね」
「師匠がいるんですね」
「うん。師匠はお姉ちゃんの師匠でもあって、物凄く強いんだよ」
「ヘルサ先生より強いのか」
「お姉ちゃんが手も足も出ないくらい強い人」
「えぇ~!そんなにか。戦ってみたいな~」
「なんで?絶対勝てないのに?」
「なぜと言われても。強い人と戦ってみたいから、ですかね」
「意味わかんない」
「よく言われます。てかその人は騎士団にいるんですか?」
「いないよ」
「その人がいれば魔王の幹部を倒すのも楽になりそうですけど」
「私もそう思って小さい頃師匠に言ってみたけど騎士団には入らないってだけ言われた」
「そうなんですか」
話して飛んでいると町に戻ってきた。そしてとある鍛冶屋に入った。
「この七烙岩で大剣を作ってくれ」
「おぉ、こりゃ第八騎士団団長の姉ちゃんじゃねーか」
「久しいな」
「おうよ。隣の子は誰だ?」
さっきまで何かの鉱石を金槌で打っていた鍛冶屋のおじさんが俺を見る。
「俺は第二騎士団のアルト・アギル・リーヴェです。今回はリーザさんの付き添いでいます」
「ほう、若いのよくやるもんだ。姉ちゃんは坊主を気に入ったのか?」
「気に入ったわけではない。ただこいつが私の剣を折ったから連れて来ただけだ」
「この坊主が?そりゃ何かの間違いじゃねーのか?あれはかなり最上級の代物だぞ」
「私も間違いだと思いたかったが本当だ」
「こいつぁすげーなぁ。やるじゃねーか坊主」
鍛冶屋のおじさんは俺をジッと見る。
「あ、ありがとうございます」
「それで七烙岩で大剣を作ればいいんだな」
「ああ」
「とりあえずその七烙岩をこの中に入れてくれ」
リーザさんは水属性の魔力が込められた袋に七烙岩を入れていく。
「よっしゃ、お金は第八騎士団宛てでいいよな」
「うむ」
「じゃ、出来上がったら届けるからな。前の大剣よりもっとつえーやつを作るし前よりも早く作れるようになったからから楽しみにしとけよ」
「頼む。ではこれで」
リーザさんと俺は鍛冶屋を出た。外は暗くなっておりで18時を回っていた。ルイナ達流石に心配してるだろうなー。
「もう帰ってもいいですよね」
「どうしてもと言うならいいが」
「んじゃ、お疲れ様でーす」
「ま、待って!」
騎士団訓練所に帰ろうとする俺の腕を掴まれた。
「な、なんですか」
「本当に帰るの?」
「はい」
「そ、そう」
リーザさんは手を離した。俺は不思議に思いながらもリーザさんに背を向け再び歩き始めた。
「――」
微かにリーザさんの声が聞こえた。
「何か言いました?」
「な、何でもない!早く帰れ!」
「そ、そうですか」
最初は何を言ったか聞こえず聞き返したが後になってわかった。
『今日は連れ回してごめん』
あの人は俺のことが嫌いなのか違うのか。考えていることがよくわからん。とりあえず疲れたから帰って心配してるルイナとヨミとエレイヤに抱き着かれよて疲れを癒そうっと。
「アルト!」
騎士団訓練所に帰ると予想通りルイナとヨミとエレイヤに抱き着かれた。いつもなら鬱陶しいがリーザさんに気を張っていたため気を許す人が近くにいるとすごく落ち着く。
「大丈夫?なにかされてない?」
「見ての通りなんもないよ。少し連れ回されただけだ」
「アルトお兄ちゃん疲れた顔してる。早く帰って一緒に寝よ?」
「俺も一緒に寝る!」
「はいはい、今日はいいよ」
「えぇ⁉じゃあ私も寝るわ!」
「ならまた私一人になるから私も一緒に寝よー」
「さ、さすがに5人一緒に寝るのは俺のベッドでも無理だろ。せめてじゃんけんで二人にしてくれ。でも今は帰るぞ」
俺達を微笑ましいように眺めていた団長と副団長に別れを言って家に帰った。
〔七烙岩〕
・主に火山地帯に生えている
・ずっと燃え続けているが数十年間経つと炎が消えて砕けるがそこからまた新しい七烙岩が生えてくるので不死鳥の鉱石とも呼ばれている
・掴むときは水魔法を使わないといけない
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アルト「リーザさんって彼氏とかいるんです?」
リーザ「いないよ。男なんてみんなへなちょこばっかだし」
アルト「いたことはあるんですか?」
リーザ「3回だけ男と付き合った。けど全員雑魚だった。やっぱり私の剣を受け止めてくれるのはお姉ちゃんだけだぁ!」
アルト「リーザさんは一生ヘルサ先生が彼氏でいいと思います。はい」
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二週間休んでしまいました。イルです。
少し忙しくて小説を書く暇がありませんでした(あったけど)。すみませんゲームしてfateの映画見てあんまり頭使わないことばっかりしてました。あっ、あとおけおめです~。
ではまた来週~。




