第七十話 魔力切れ
「魔力が切れて気を失っているだけですね。数分したら起き上がるでしょう」
「わかりました」
俺とヨミは医務室のベットに寝ているルイナの隣で椅子に座っていた。他のみんなはもう昼なのでお昼ご飯を買ってくるといって一旦町に行った。
「ルイナお姉ちゃん、大丈夫かな?」
「ただの魔力切れだからまぁ大丈夫だろ」
内心かなり心配だが。
俺とヨミが静かにルイナの顔を見ていると
『お兄ちゃん』
後ろを向くといつの間にかサリス君とサリアちゃんがいた。二人の手には氷の刀がある。
「ど、どうしたの?」
「これ忘れてたから」
二人は刀を渡してきた。
「あぁ。ありがとう」
まだ残ってたのか。あんな短時間でこんな完成度の高い魔力武器を作れるなんてやっぱりルイナは凄いな。
「お兄ちゃん、腕大丈夫?」
「俺は大丈夫だよ。心配してくれてありがとう」
「お姉ちゃんは?」
「魔力切れで寝てるよ」
「二人ともすっごく強いんだね!カッコよかった!」
「ありがとう、サリアちゃん」
ヨミを見ると二人をジッと見ている。そういえば初対面だったか。
「ヨミ、この二人は国王様の孫のサリス君とサリアちゃん。んでこっちはヨミ。俺の家族みたいなやつだ」
俺は交互に紹介した。
「サリス・フォーリア・シャーロットです!」
「サリア・フォーリア・シャーロットです!」
『よろしく!』
「……私はヨミ、です。よろしくお願いします」
サリス君とサリアちゃんの元気な挨拶と違い、ヨミは静かに挨拶する。二人よりヨミの方が背が高い。ヨミの方が歳上だろうな。
ヨミの苗字、本人も覚えてないからないと少しだけ気まずいかな。
「いいな。私もお兄ちゃんみたいな家族が欲しかったー」
「アルトお兄ちゃんは私の物だから」
「おい。強いて言えばルイナのだ。強いて言えばな」
「私のでもあるもん」
「はいはいわかったよ」
ルイナが聞いたらどう言うか。ルイナの顔を見て起きてないことを確認した。
「中々目覚まさないな~。魔力を分け与えるって出来ないのかな」
「出来るよ。粘膜を合わせて魔力を流せばね」
「そ、そうか」
「ちなみに上の口でも下の口も可能だよむぐっ」
「おい。マジでそれ以上何も言うなよ。国王様の孫がいるんだ、教育に悪すぎんだよ」
俺はすぐにヨミの口を右手で塞いだ。二人はキョトンとしている。
まぁ、要するにキスでもしたら魔力を分け与えられるってわけか。数分したら起きるらしいしそれだけのためにキスするのはやめておこう。
しかしこいつは子供なのにどれだけのことを知っているのやら。今はストレートには言っていないがいつか爆弾投下しそうだな。
「ん、んん」
「ルイナ!起きたか?」
「ア、ルト」
「ここは、医務室?」
「あぁ、魔力切れになって倒れたから連れてきたんだ」
「ルイナお姉ちゃん」
『お姉ちゃん』
「ヨミちゃん。二人も」
「みんなは今、昼ご飯を買いに行ってるところだ」
「そうなのね」
「お疲れ様、ルイナ」
「えぇ、頑張った甲斐があったわ」
「この氷の刀凄いな」
俺は氷のバリス刀を見せた。
「まだ残ってたのね。ほんっとよくやったわ私」
「流石ルイナは天才だな」
「まぁーね~」
「あっ!ルイナちゃん起きてる!」
みんなが帰ってきた。それぞれ言葉を交わして安心し、お腹が減ったので買ってきてくれた弁当を食べようとする。
「二人はどうするんだ?」
「僕達もご飯食べてくるよ」
「またね~、お兄ちゃんお姉ちゃん」
サリス君とサリアちゃんは転移魔術で行ってしまった。
「ヨミと違っていい子だな~、あの二人は」
「どこがどう違うのか教えて。いい子になるから」
「今度よ~く教えてやるよ」
「体によ~く教えてね」
「お前な」
俺達は弁当を食べ終わった。
「ご馳走様~。それで団長。これからどうするんですか?」
「みんなはもう帰ってもらってもいいよ。僕とクレスは騎士団訓練場に行くよ」
「わかりました」
んじゃ、今日は帰って休もうかな。
「あ、そういえばあの八岐大蛇の討伐報酬で135万貰ったのでみんな分けときます」
「そ、そんなに高いのね」
「僕の分はいらないよ。アルト君が貰っておいて」
「そんなこと言わずに団長もあげますよ。みんなで倒したんですから」
俺は団長にとりあえず51万円をあげた。団長と副団長とガルアの分だ。
「一人17万円でいいですよ」
「ありがとう。しっかり貰ったよ」
そうして俺達は団長と副団長に手を振ってテレポートで家に帰ってきた。俺はソファーに座り込んだ。
「はぁ~あ~。疲れた。まさか骨折させられると思わなかったな~。何気に人生初の骨折だし」
「わざとじゃなくてもムカつくわね。いつか私も戦ってボコボコにしたいわ」
「アルトきゅん!俺もお金~!」
エレイヤが隣に座って縋りついてきた。
「お前のは親に渡そうと思ってるよ」
「えぇ~!なんでだよー!」
「だって中学生にえーっと、168000円か。それ渡したら俺が親に怒られるだろ」
「そんなことないって親には内緒にするし」
「バレるだろ絶対。まぁエレイヤも命がけで頑張って戦ってくれたからあげたい気持ちもあるけどな、エレイヤの将来を考えるとだな」
「アルトきゅんは親かよー」
「普通にエレイヤの親がその金をエレイヤにあげるかもしれねーだろ」
「絶対貯金しようとするよ!」
「貯金も大事だよ。将来俺と結婚してお金がないと大変だろ?」
「それもそうだな」
「ちょっと⁉アルトと結婚するの私なんだけど⁉」
「とにかく貯金も大切だよ。親だって数万はくれるだろ」
「わかったよー」
「てかエレイヤは今日も泊まるのか?」
「もちろんだぜ!」
「親に心配かけてないといいけど」
「大丈夫だって」
「エレイヤって姉とか妹とかいないのか?」
「姉ちゃんがいるぜ。五つ年上のな」
「ふ~ん。何してるんだ?」
「姉ちゃんは世界中を回って他の種族の文化を調べてるんだ」
「へ~。凄い人なんだな。会ったら聞きたいな」
「今度帰ってきたら教えてやるよ」
俺達は夕方まで話してご飯を食べ、風呂に入り、早めに寝た。
翌日。
今日は日曜日なので騎士団訓練がある。しかし前までにたくさんいた騎士団の皆さんはいない。
寂しいな。第二騎士団のこの問題はまた保留となっているらしい。解散になって他の騎士団に入るかもしれない。そしたら団長と副団長とは離れ離れになる可能性がある。
「第二騎士団、これからどうなるのかな~?」
「なんとかなるでしょー。旅の成果も良かったんだし」
「なんとかなればいいけど」
「私ミラス団長と離れたくないよー」
「まだ諦めてないのか。団長には副団長がいるからな」
「ワンチャンいけるかもしれないでしょー!」
俺達はテレポートして騎士団訓練場に来た。すると懐かしいがやがやとした声が聞こえた。
「あ、あれ?」
脱団したはずの騎士団の皆さんがいた。
「どうなってんだ」
「私にわかるわけないでしょ」
「あっ、みんな~!」
副団長が走ってきた。
「何があったんですか?」
「昨日騎士団訓練場に行ったらみんながいてもう一度この第二騎士団に入らせてほしいと言って来たんです!」
副団長のはしゃぐ声に気づいて皆が俺達に近づいてきた。
「アルト君、ルイナちゃん、みんなすまなかった。家族を守るために騎士団に入ったのに俺達は騎士団殺人鬼の言葉に踊らされ情けないことをしてしまった」
全員頭を下げる。
「い、いえ戻ってきてくれたのならいいですよ」
「旅のことも聞いたわ。よく頑張ったのね。骨折までして」
「これは旅でなったわけじゃないので安心してください」
とりあえずみんなが戻ってきたので良かった。団長もみんなを快く迎え入れたらしい。そういえばあの『次はお前たち騎士団団員の家族だ』って書いたのはミカヅキだと思うけど本当に襲う気なのか聞いておけばよかった。今のところは被害はなかったらしい。
「今日からまたよろしくお願いします」
俺達は騎士団の皆さんに礼をした。
「おう!」
「えぇ!」
「もちろん!」
もうみんな大丈夫そうだな。これで安心だ。
それぞれ訓練に戻っていった。ルイナも女性の騎士団の方と一緒に行こうとする。
「骨折してるから今日は久しぶりにみんなの訓練を見ていようかな」
「ちゃんと大人しくしてるのよ。アルト」
「わかってるよ」
俺は訓練所内を歩いて周りを見渡した。
「流石だなー。ヘクトさんのレイピアの突きの速さは衰えてないし、エゼクさんの斧の一撃の重さも相変わらず凄そう。メーラさんの炎魔法も激しいし範囲が広くてカッコいいな、あれ見ると炎魔法を使いたくなる」
みんな変わってないな。俺も強くなったと思ったけど皆さんの戦いを見てると俺もまだまだだなと身に染みる。
「俺も戦いたくなってきたけどさすがにやめとくか」
しばらく我慢して歩き回っていた。すると団長が走って俺に向かってきた。
「アルト君、少しいいかい?」
「団長。どうしたんです?」
「君にお客さんだよ」
「お、俺に?」
団長に呼ばれて騎士団訓練所第二本部の一室に行くと昨日ぶりの人が座っていた。
「り、リーザさん」
「来たか。ミラス団長、少し借りてくぞ」
「え?」
アルト「戦いじゃありませんように。戦いじゃありませんように」
ルイナ「戦いだったら殺す。戦いだったら殺す」
アルト「骨折してるし流石に戦いはないと思うけど」
ルイナ「まーたわざとじゃないって言って何かするかもしれないでしょ」
アルト「まぁ死にはしないと思うし大丈夫っしょ」
ルイナ「と思うじゃん、よ」
アルト「主人公は死なないって信じてる」




