第六十八話 秘密
副団長とルイナに引っ張られて医務室に来た。
「今すぐ骨折回復をお願いします!」
俺はハイプリーストの人に腕を出して回復してもらった。
「魔法で治せるのはこのくらいです。完全に治るには2週間はかかりますのであまり激しい運動はお控えください」
「はい、ありがとうございます」
俺はギプスを付けた腕を首で吊るして医務室を出た。
「マジなんなのあのくそ女。アルトに骨折させるとかホント許せないだけど」
「流石に俺もあいつは嫌いだな。今までの人生の中で一番嫌いだと思う」
「私もあのお方は尊敬はしてますがあまり好きではありません」
「アルトお兄ちゃんを傷つけるやつ、殺す」
「マジ殺す」
「お前ら落ち着け」
「でもゆう君改めて見たけどカッコよかったよあれ!スーパーサ〇ヤ人の赤黒いバージョンみたい!」
「そりゃどうも。意外と出来たから自分でもビックリしたけどな」
あの人とは二度と戦いたくない。これで大剣を折ったの弁償しろとか言ったら今度は寸止めじゃなく半殺しにするかもしれないなー。
「アルト君、大丈夫かい?」
団長が歩いてきた。
「骨折したんですから大丈夫じゃないですよ」
「それもそうだね。リーザ団長が謝りたいって言ってたよ」
「謝りたい、ですか」
「ダメよアルト!一生会わないほうがいいわ!」
「まぁ、これでどんな感じかで考えるよ」
「また大怪我をさせられるかもしれないのよ⁉」
「謝りたいって言うんだから攻撃はしてこないだろ」
「罠かもしれないわ!」
「お前は疑い過ぎだ。それで団長、リーザさんはどこにいるんです?」
「う~ん、まだ本部にはいると思うけど詳しくはわからないな」
「じゃあ探してきます」
「ちょ!アルト!私も行くわ!」
「お前が来たら喧嘩になりそうだから来るな」
「嫌よ!絶対に一緒に行く!」
意地でも一緒に行こうとするルイナの頭を撫でた。
「俺は大丈夫だ。俺を信じて待ってろ」
「……わかった。これで傷一つでも付いてたら怒りに行くからね」
「あぁ」
結構ルイナもちょろいんだよな~。
俺は本部内を歩いてリーザさんを探し始めた。これですれ違いになってルイナ達のほうにリーザさんが行ったらどうしよう。
しばらく歩いたが見つからない。そして迷子なんじゃないかと疑われたりした。リーザさんがどこにいるか聞いてみたが皆、わからなかった。
「闘技場に行ってみるか」
俺は闘技場に向かおうと3階から2階の階段を降りているとリーザさんが横を通り過ぎるのが一瞬見えた。リーザさん後ろを付いていく。
どうしよう、見つけたのはいいけどあっちから謝りたいって言ってるのに俺からどう話しかけよう。さっきめっちゃ怒ったから話しかけにくい。気づくまで後ろを付けようか。
考えているとリーザさんは部屋に入っていった。いつ出てくるかわからないし一応部屋の前で待っておくか。
部屋の前に立つと中から話し声が聞こえてきた。
「お姉ちゃん!久しぶり!」
この声は、もしかしてリーザさん⁉声のトーンが高い!
「久しぶりだな。リーザ、元気にしていたか?」
聞いたことのある声。誰の声だっけ。
「うん!今日ね、お姉ちゃんが言ったアルトって子と戦ってみたよ」
「おぉ、どうだったのだ?」
「凄く強かった!でも骨折させちゃったの」
「なっ!アルト君は無事なのか⁉」
「う、うん。命に別状はないよ」
「なぜ骨折などさせたのだ」
「だ、だってお姉ちゃんが前に、戦うときがあったら殺す気でいけって。でもあれは比喩表現ってやつでしょ?だから死なない程度に攻撃したんだけど」
「い、いやあれは冗談だ。他の団員に大怪我をさせるのはいけないことだ」
「そうなんだ。ごめんなさい、私彼に謝りたいの。嫌われちゃったから」
「早く謝ったほうがいい」
「でも許してくれるかな。彼に凄い怒られたの」
「許してくれなくても謝るのは大事だ」
「わかった。行ってくる」
こ、これってヤバくね。
俺が逃げようとする前に部屋のドアが開き、リーザさんと目があった。
「えっ」
「ど、どうも」
「どうしたのだ?」
リーザさんの後ろから来たのは
「ヘルサ先生⁉」
「アルト君!その腕、大丈夫か?」
そのとき一つの辻褄が合った。さっきの声はヘルサ先生。そしてエルメルト・ナイルはヘルサ先生の苗字だ。リーザさんがお姉ちゃんと言っていたということは
「二人は姉妹⁉」
「あぁ。すまない、うちの妹が骨折をさせてしまって。リーザも」
「申し訳なかった」
リーザさんの喋り方がさっきと違う。
「完全には許しませんけど許しますよ」
「ありがとう。あ、あといつから部屋の前にいたのだ?」
「えーっと『お姉ちゃん!久しぶり!』ってところからですね」
「じゃ、じゃあ会話聞いてたの⁉」
急に声と喋り方が変わった。
「は、はい。リーザさんなんか変わりましたね」
「リーザはな、私の前ではいつもこんな感じなのだ。昔から純粋だが純粋過ぎで問題を起こすことも多々あるが可愛い妹だ」
「もうお姉ちゃん!子ども扱いするのやめてよね!」
純粋過ぎるって骨折させてはいけないっていうのもわからないとかなんでこの人団長やってんだ。これがナチュラルサイコパスか。
「それよりリーザさん、結局俺の力について何かわかったんですか?」
「合体魔法が体に吸い込まれて力が上がったこと以外なにも」
「わからなかったんですね」
「なんの話をしているのだ?」
リーザさんはヘルサ先生に俺の力のことを教えた。
「そんな話聞いたことがないな」
「お姉ちゃんもか~。なんなんだろ~あれ」
「そういえばあの大剣を折ってしまったことは俺も謝ります。すみません」
「リーザの大剣を折ったのか⁉」
「はい。力いっぱい押したら斬れちゃって」
「私もビックリした。あの魔力と合体魔法が強い証拠だね」
「リーザの大剣は作るのに一年半も掛かった代物なのだが、それを容易く斬るとは」
「押し返そうとしただけなんですけど、ごめんなさい。弁償します」
なんか俺が悪く感じて自分から弁償すると言ってしまった。
「いやいいよ。そろそろ新しい大剣欲しかったから。副団長に言ったらそれで充分って言われて作らせて貰えなかったからね~。いい口実が出来た」
リーザさんのキャラが変わりすぎて慣れないな。
「わかりました。みんな待ってますからそろそろ行きます」
「あぁ、お大事にな」
「ごめんなさい。これからも頑張ってね」
「はい」
俺は部屋を出て玄関に向かった。そして1階に降りようとすると3階からまさかの人が降りてきた。
「え、ミスリア⁉」
「アルト先輩!」
なんでここにミスリアが⁉
「見つかっちゃいましたか」
「どうしてここに」
「私、実は騎士団の研究部員なんですよ」
「研究部員。ミスリアが」
「信じられませんか?ほら、証拠にちゃんと書いてありますよ」
ミスリアは名札を見せる。『エスタル国騎士団研究部員 ミスリア・エドワード・レノオール』と書いてある。何気にミスリアの苗字初めて知った。
「ま、マジか。いつからなんだ?」
「高校生になってからです。このことは秘密にしてほしいのですが」
「わ、わかったけどなんで?」
「あまり目立ちたくないので……」
これが能ある鷹は爪を隠すということか。
「あっ、八岐大蛇ってアルト先輩が付けたんですよね」
「そうだけど」
「ネーミングセンスいいですね。あと天叢雲剣も。あれ私が回収したんですよ」
「そうなのか。な、なんかしっかり仕事してるんだな」
「お互い様ですよ。ミラス団長に渡そうと思ってたんですが渡しておきますね」
ミスリアは厚くなった封筒を渡してきた。
「これは?」
「八岐大蛇の討伐報酬です」
中を見るとお札が大量にある。
「えぇ⁉こんなに⁉」
「135万円あります。ギルドからの元々の報酬金額は104万円だったのですが魔石で強化されていた魔物だったので騎士団からプラス31万円させていただきました」
ミスリアは笑顔で当たり前のように答える。さすが金持ちは金銭感覚が違うなぁ。
「こ、こんなに要らないけどな~」
「アルト先輩はどうしてお金に困ってないんですか?欲しい物とかないのですか?」
ルイナの親の金のおかげでとか言えないしな。
「ん~と、あんまりないかな~?強いて言えば魔力濃度レベル5の力が上がる装備アクセくらいかな?」
「じゃあ私が取り寄せましょうか?」
「いやいいよ。そこまで困ってないし。このお金は山分けにするか。えっと1350000÷8は……」
「168750だ」
3階から今度はくそ雑魚有害ナメクジ先輩が来た。
「お兄様」
「シアン先輩も研究部員なんですか」
「あぁ。内緒にしていてすまなかったな」
「いえいえ。んで、168750円か。微妙だけどいいか」
「そういえば覚えてます?この服、アルト先輩に選んで買ってもらったやつですよ」
「覚えてるよ。やっぱり似合ってるって言いたかったけどミスリアが騎士団ってことに驚きすぎて言い忘れてた」
前に一緒に買い物に行ったとき買ってあげた黒くて裏地が赤いドレスのような服だ。普段はいつもの真っ白の服だった。
「ありがとうございます。騎士団の仕事をするときはこれを着てるんですよ」
「気に入ってくれたのなら良かったよ」
ヨミへの約16万は一応将来の貯金にしておくがエレイヤはどうしよう。中学生に大金をあげるのもな~。一度エレイヤの親にも会ってみたかったから親と会って渡しておくか。
「僕達は他の会議があるのでそろそろ行くよ。アルト君、これからもミスリアの彼氏でいてくれ」
「ちょ、ちょっとお兄様!」
「はい、騎士団の姿を見て惚れ直しましたから」
「アルト先輩もからかわないでください!もう!」
ミスリアは顔を赤くして階段を降りようとすると立ち止まった。
「さっきの戦い見させていただきました。凄くカッコよかったです。リーザさんは悪い人ではないので許してあげてくださると嬉しいです。その腕も早く回復することを願っています。それでは」
そう言ってミスリアとシアン先輩は階段を降りて会議室に向かっていった。
ミスリアを見ていると付き合う前のルイナを思い出すな。前は恋愛のこと言われるだけで頭おかしくなるやつだったのに今となれば
「アルト!やっと見つけた。遅いわよ。見つかったの?」
「まぁ、和解出来たかな?」
「無事で良かったわ」
ルイナは俺に抱き着いた。今となればこれだもんな。
「あのリーザさんはヘルサ先生の妹でヘルサ先生の冗談を本気に受け取ってああいう行動をとったらしいから許してやってくれ」
「そ、そうなの⁉な、なら少しは許すけど。ってそれどころじゃないのよ」
「どうしたんだ?」
「今度は私が戦わないといけなくなったの!」
「な、なんで?」
〔騎士団本部〕
・全団長が一ヵ月に一回会議を行う場所
・騎士団の情報が全てある
・ほとんど使うことはないが訓練場と闘技場がある
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アルト「今回は俺だけじゃなくてルイナも戦いそうだからなんか嬉しいなー」
ルイナ「ちょっと怖いわ」
アルト「天下無敵のルイナ様が怖気付いたのか?」
ルイナ「そんなわけないでしょ!やってやろうじゃない!」
アルト「ちょろ過ぎだろ」




