第六十七話 リーザ団長
ここは騎士団本部の闘技場。観客席にはルイナ達、他の団長、その他関係者らしき人がいる。闘技場の真ん中の上には国王様とサリス君とサリアちゃんが座っている。天叢雲剣はルイナに預けた。
はい~、出ましたなぜか俺だけ戦わせれるやつ~。
なんでだよ。
「君がどれくらいの強さか、試させてもらおう」
なんでなんだよ。
「本気でやったほうがいいですよね?」
「もちろんだ」
睨まれた。怖い。ヘルサ先生そっくりだな。
「只今より第八騎士団団長リーザ・エルメルト・ナイル対第二騎士団アルト・アギル・リーヴェの勝負を始める。両者、礼」
国王様の進行で俺とリーザさんは礼をする。
「それでは、開始!」
銅鑼が鳴り、俺は刀に闇属性の魔力を付与した。リーザさんは武器を持っていない。しかし顔以外鎧を纏っているということは剣士ということは間違いないと思うが、魔法で戦うのか?
そういえばエルメルト・ナイルって聞いたことがあるような。
「バリス刀を使う若者がいるとは、珍しいな」
「これが好きですから」
するとリーザさんは右手を横にし、腕から魔法陣が出て横に移動していくと大剣が出てきた。それを持って肩に置いた。
これは副団長と同じような魔力で出来た武器か、テレポートか転移魔術、または投影魔術というやつか。
そしてあの大剣、刃の部分が溶岩のように色めいている。強力な炎属性の魔力が込められているのか。刃は片側だけだが大剣にしても結構大きい。2メートル以上あるし重そうだから刀でガードするのは難しそうだな。
さてどうするか。
「ほう、私の剣を見ても冷静に作戦を考えているとは、少しは出来そうだな」
「本当に作戦を考えているかはわかりませんよ。それと、高校生だからって最初からなめているのはどうかと思いますけどね」
「それもそうだな、すまない」
「和解ということで終わりに――」
リーザさんは一瞬で近寄って大剣を振り下ろした。俺は間合いを見切って後ろに下がった。
大剣は地面に刺さり地響きを立てる。そして俺は大剣を踏んだ。
「なりそうにないですね」
「ちぃっ!」
睨まれて大剣を上に上げた。俺はそれを利用し、上に飛んで闇魔法を撃ちまくった。リーザさんは大剣で闇魔法を斬った。
大剣を片手で軽々しく使う。どんだけ力持ちなんだ。
俺は後ろに風魔法を撃って近づきリーザさんに向かって刀を振った。
「ふっ!」
リーザさんは横に大剣を振った。衝撃で砂ぼこりが舞う。足を地に付け、全力で押すが微動だにしない。
「はぁっ!」
押し返されて手が後ろにいく。
くそっ、一旦引くか。
そう思い後ろに一歩下がったとき、リーザさんはさっきの横に振って押し返した勢いのまま一回転して大剣を再び俺に振ってきた。
マズい、この距離だと当たって――
俺は大剣を左腕にくらって右に吹っ飛び壁にぶつかった。
「ぐぁっ!くっ」
左腕が物凄く痛い。少し腕が変形している。多分、いや確実に骨折しただろう。そして斬られたところから血が出てきてるのと周りが火傷している。痛さで自然と涙が出てくる。
リーザさんは躊躇いもせず俺に切っ先を向け突進してきた。俺は左腕の痛みを我慢して遠くまで離れた。
「はぁ、はぁ」
「ふん、腕がまだくっ付いているだけでも良かったと思え」
「ははっ、さらに利き手じゃなかったなんて、なんて俺は運が良いんでしょうね~」
俺は冗談を言って涙を拭きリーザさんをしっかり見る。
「お気楽な奴だ」
そう言ってリーザさんは大剣を構える。
「ま、まだやる気ですか」
「私が終わりと言うまでだ」
ますますヘルサ先生と似ている。
「じゃあ今言いましたよ」
リーザさんは俺に向かってきた。くっそ、子供みたいな言い逃れは無視ってか。
「アルト!頑張ってー!」
ルイナの声が聞こえる。応援されたら逃げるわけにはいかねぇじゃねーかよ。と言っても勝機はない。今の俺に出来ることは。
俺は刀を収めてリーザさんの大剣を闇魔法で全力で防いだ。リーザさんは闇魔法を破ろうと押し続ける。
俺のお得意の必殺技!『交渉』
「このままやっても俺の負け、もしくは死だと思うですが」
「それがどうした」
「これ以上やる必要ありますかと聞いているんです」
少しキレた。話の通じない人は嫌いだ。
「必要はある。わかったか?」
「ではその理由をっ!聞かせてください」
闇魔法を破られそうになったが魔力を足して耐えた。最後まで人の話を聞けよ!
「お前が赤黒い魔力というものを纏えばいいだけの話だ」
「やっぱりそれが目的ですか」
『私が終わりと言うまでだ』と言われた時点で薄々感づいていた。
「わかっていたなら話は早いだろう」
「あなたはバカなんですか?リスクが大きいから出来ないと言いましたよね?」
この世界に来てから初めてこんなにキレたかもしれない。あの中学で引っ越させたあいつ以上の怒りだ。
「お前がどうなろうと知らん。その力が解明出来れば魔王の幹部を倒しやすくなり犠牲も少なく済むかもしれんのだ」
俺は闇魔法と風魔法をかなりの魔力を使って同時に撃った。リーザさんは大剣でガードしたが後ろに下がっていった。
「今から本気を出すのか?」
「……俺はな、お前みたいな一人の人間を犠牲に大勢の人を助けるような考えのやつは大嫌いなんだ。人の人生を潰すようなやつがたくさんの人を助けれるわけねーだろーがっ!」
「ほう、国王様がいる前でそのような口を叩くか」
「国王様なんて関係ねぇ!今戦ってるのは俺とお前だろーが!」
「ふざけるな」
「どこがふざけてんだよ!俺は真面目に自分を守ってんだ!ほら言ってみろよ!」
「……」
「ふざけてんのはお前だろ!高校生を虐めて楽しいか⁉」
リーザさんは俺をジッと見る。俺は深呼吸して落ち着いた。
「俺の不思議な魔力を見たいんだろ?ならお望み通り見せてやるよ!」
「アルト、ダメ!」
ルイナの忠告を無視して大量の魔力で闇と炎魔法の合体魔法を出そうとした。案の定逆流して俺の体が合体魔法に覆われる。
「ぐぁぁぁ~!」
するんじゃなかったと思うほど強烈な痛みが全身を襲う。けどここまで来たならするしかない。
「やってやるよこの野郎!」
俺はこの魔力を飲み込むことイメージし、精神を集中させた。するとあのときのように合体魔法が体に飲み込まれていき赤黒い煙のようなものが出てきた。
そして赤黒い魔力が俺を纏って髪が少し浮く。痛みが力になっていく。左腕の痛みは変わらないが。
「ははっ、やってやったよ」
俺はリーザさんに刀を向ける。俺は今凄く気分が良い。そして意外と出来ちゃったとビックリしている。
「ふん、見た目だけではないことをここにいる全員に見せつけてみろ」
「後悔してもしらねーぞ」
刀を抜いて合体魔法の魔力を刀に付与して構えた。そして俺は一瞬でリーザさんの目の前に来た。
アニメのように世界が遅く感じる。ことはないが自分の体が早すぎてあまり制御が効かないくらいに力が上がっている。
「なにっ⁉」
リーザさんはビックリしたが俺が振り上げた刀をガードした。俺は連撃をかける。1秒間に約7回ほど攻撃している。
「ほらほらぁ!解明出来るもんならしてみろよぉ!」
刀と大剣がぶつかり押し合う。
「くっ、これほどとはっ」
「だからなめんじゃねーって言ってんだろーがっ!」
俺は刀を思いっきり押しやると、大剣が折れて地面に落ちた。
「なっ!」
「チェックメイトだ」
俺は刀をリーザさんの首元に付けた。
「そこまでっ!」
国王様が立ち上がって叫ぶ。
「いえ、リーザさんが終わると言うまでと言われたので止めることは出来ません」
「ふっ、終わりだ。お前の力はわかった」
俺は刀を降ろして収めた。体を覆っていた赤黒い魔力も消え普通に戻った。少しくらっとしたが立ち直した。
「アルト!」
「ゆう君!」
「アルトお兄ちゃん!」
「アルトきゅん!」
「アルト君!」
ルイナとえりとヨミとエレイヤと副団長が駆けつける。
「大丈夫⁉今すぐ医務室に行きましょう」
「は、はい。わ、わかりましたから手を掴む力が強いですよー!」
俺は副団長とルイナに右手を掴まれて闘技場を後にした。
「あまりうちの可愛い団員を虐めないで頂きたいですね。リーザ団長」
「ミラス団長。これはあの力を解明するという理由もありますが彼の潜在能力を目覚めさせるためでもありました故のこと。しかし骨折をさせたのはすまなかった」
「潜在能力は目覚めさせてくれるのは良いことなのですが、もっと他に手段はなかったのですか?それと謝るなら本人にどうぞ」
「その通り。リーザ団長、今回のは少し問題がありますぞ」
「国王様!申し訳ありませんでした。反省しておきます。彼にも謝罪をします」
「うむ、次からはもっと他の方法を考えるように」
「いくら師匠の妹だからって今回は僕も少し怒ってるだから」
「も、申し訳なかった」
アルト「かつてなくわかりやすく甚大な被害が骨折、火傷、出血というね」
副団長「そんなこと言ってる場合じゃありません!ほら早く!」
ルイナ「そうよ!これで死んだらどうするの⁉」
アルト「だから痛いってー!右手も怪我するよ!」




