第六十六話 騎士団会議
翌日。
「あぁ~、好きなだけ飲んで気が済むまで寝て朝に起きれるなんて最高ね!」
「うぇ~、頭痛いし吐きそう。あんなに飲むんじゃなかった」
「ほどほどにしろって言ったのに……」
皆で朝ご飯を食べるため椅子に座るとえりはルイナに寄りかかって俯いていた。
「よくあんなに酒飲めるなぁ~」
「エレイヤも16歳になったらルイナくらい飲みそうな感じがする。あとヨミも」
「美味しかったらたくさん飲むかもな!」
「私もアルトお兄ちゃんと一緒に飲みたい」
「何年掛かるんだろーなー」
今日は土曜日だが、何をしようかな。旅の疲れを癒すためにみんなでゆっくり家で休んでいるか。
朝ご飯を食べ終わり歯を磨いてそう思っていると玄関がノックされた。
「は~い」
ルイナがドアを開けると鎧を被った兵士がいた。
「お久しぶりです。ルイナ様」
「あ、あなたは確か、エスタル国第36兵団所属の」
あぁ、前に国王様に呼び出された時に来た兵士さんか。ルイナよく覚えてたな。
俺はルイナの後ろにやってきた。
「アルト様もお久しぶりです。また急で申し訳ありませんが本日の騎士団会議にお二人が緊急招集されました。騎士団本部にご同行願います」
ルイナは口を開けて俺を見た。『私達何かした⁉』という顔だ。
「はい、行きましょう」
俺はルイナの肩に手を置き隣に来て兵士さんに言った。
「ありがとうございます」
「あ、えりとヨミとエレイヤはどうする?」
「えっ、どうするって言われても……」
えり達は目を合わせて困惑している。
「この三人も連れて言ってもいいでしょうか?」
「はい、問題ないと思われます」
「じゃあ三人とも来い」
俺達は兵士さんの肩に手を置いた。
「着きました」
相変わらずテレポートは一瞬だな。周りを見ると前に門が開いてありその先にめっちゃ広い庭と豪邸が見える。床は橋の上で左右を見ると水が流れている。
「なっ、なに今の!」
「急に周りが変わったぞ!」
えりとエレイヤが大声を出してビックリしている。
「ただのテレポートだよ。大声だすな」
「て、テレポート、か。し、知ってたよ?」
「はいはい」
兵士さんに付いていき豪邸に向かって歩いていく。
花がたくさん咲いていて綺麗だな。
「アルト、なんで私達呼ばれたんだろう」
ルイナが小声で話しかけてきた。
「ん~、思い浮かぶ理由としては、旅のことか、騎士団殺人鬼を見た人から事情聴取するかかな」
「そ、そうね」
それか副団長をいじり過ぎて団長に脱団の話を聞かされるためか。
歩き続けると豪邸の前に団長と副団長が話していた。噂をすればか。
「やぁ、みんな。昨日ぶりだね」
団長は兵士さんに手を小さくあげると兵士さんは『失礼します』と言って豪邸に入っていった。
「なんで俺達呼ばれたんですか?」
「それはね、旅の報告と騎士団殺人鬼を見た人から事情聴取するためだよ」
なんか当ってたし。
「やっぱりですか」
「そういえばアルト君、ルイナちゃん。国王様が会いたがっていたから会ってみないかい?」
「え、あ、はい。俺も騎士団に入るの決まってから会ってませんでしたしお礼を言いたかったので」
「私もです」
「よし、付いてきて」
「ヨミちゃんとエレイヤちゃんとえりかちゃんは私に付いてきてね」
俺とルイナは団長に付いていきとある一室の前に来た。団長はドアをノックした。
「二人をお連れしました」
「入ってよいぞ」
部屋の中から国王様の声がした。団長はドアを開けてドアの横に立った。
中に入ると国王様が椅子に座ってお茶を飲んでいた。
『お、お久しぶりです。国王様』
「うむ。二人とも元気そうで何よりじゃ」
俺とルイナが国王様を前にしてガチガチに緊張していると
『わっ!』
「うわぁ!」
「ひゃぁ⁉」
『ははははは~』
サリス君とサリアちゃんが俺とルイナの顔の横に出てきて驚かせてきた。
「び、ビックリした」
『あっははは~、久しぶり~。お兄ちゃん、お姉ちゃん!』
「サリス君、サリアちゃん。ひ、久しぶり。どこにいたの⁉ってかなんで浮いてるの⁉」
「ふふっ、私達ね、てんいまじゅつ?っていうの覚えたの!」
「あと鍛えて、飛べる詠唱魔法も出来るようになったんだ!」
転移魔術⁉メイ先生のは物を転移させる魔術だったが自分を転移させるとなるとさらに難しいはずだが。
しかもまだ小学生くらいなのに詠唱魔法とは。詠唱魔法と転移魔術もそれなりに魔力がないとすぐ尽きるのに。相当鍛えたんだな。
「二人とも凄いね」
『ありがとう!』
「そ、それより、国王様。私とアルトを騎士団に入れてくださってありがとうございました」
「うむ、二人の活躍はミラス団長から聞いておる。予想以上に活躍してくれてわしも満足じゃ」
『ありがとうございます』
「ねぇねぇ、お兄ちゃんお姉ちゃん、遊ぼ~!」
「こらサリア、二人はこれから大事な会議があるのじゃ。邪魔をしちゃいかんぞ」
「むぅ~、おじいちゃん嫌い!」
「そ、そんなこと言わないほしいのじゃ」
「さ、サリアちゃん、国王様は悪くないから嫌いにならないであげて」
「お兄ちゃんがそういうなら」
「ありがとう。アルト君」
涙目でお礼を言われた。どんだけ孫が好きなんだ。
「そろそろ時間じゃろう。ではまた会議で会おう。アルト君、ルイナさん」
『はい、ありがとうございました』
そう言ってサリス君とサリアちゃんに手を振って部屋を出た。
「お礼が出来て良かったね」
「はい」
再び団長に付いて歩いていく。
「二人は国王様とお孫様とも仲が良いんだね」
「ま、まぁ、国王様はともかくあの二人とは少々色々ありまして」
「へ~」
会議室と書いてある部屋に来た。
「この中には各エスタル国騎士団の団長がいるし、国王様も来るから失礼のないようにね」
『はい』
静かに部屋に入ると中は緊張した空気に包まれていた。横に長い机の椅子に7人の団長が座っていた。
「ここにいてね」
俺とルイナが団長の後ろの壁に立った。少しするともう二人の団長が来て椅子に座った。そして国王様が部屋に入ってくると団長が全員立ち国王様に礼をした。俺とルイナも合わせて礼をした。
国王様は皆が見える縦側の椅子に座った。
「これから騎士団会議を始める」
国王様が言うと今度は皆座ったまま礼をした。さっきと違って国王様の顔が怖い。
「9日前に開始した第二騎士団の旅の結果、三人の騎士団殺人鬼を倒すことに成功した。のち一人を確保し、一人は死亡を確認、もう一人は生死を確認出来ていない。間違いないな、ミラス団長」
「はい。その三人全員に会ったのはこのアルト君です」
全員俺を見る。こ、怖い。
「アルト君こっち」
団長が立って小声で話しかけてくると国王様とは逆の縦側の机の前に立たされた。
「一人目のビアンカはどのように接触し、倒したのだ?」
国王様が俺を睨む。
「え、えっとですね。ロナ町の昼間にビアンカが踊り子をしているの見て、ビアンカが私に近づいて気に入られて23時半に一人で働いている店に来てくださいと書いてある紙を渡されました。そしてその時間に行き、二人きりになったところで麻痺魔法をかけられ私が気を失ったあとビアンカの家の地下に運ばれ目を覚まして戦っているところを皆が助けてくれ、倒しました」
上手に説明出来たかわからないが必要なところは説明出来たと思う。
「なるほど。ドラクはどうしたのだ?」
「ドラクが豪華客船のパーティーの主催者だったのでパーティーに紛れ込み、船は破壊しましたが倒すことが出来ました。もっと作戦を考えれば殺さずに済んだかもしれないのでそこのところは申し訳ありませんでした」
俺は頭を下げた。えりにとどめを刺させたのも反省どころだ。
「最善を尽くせたのなら良い。それより最後のジェリカはどうだ?」
「ジェリカはネイノス町に六ヶ月前から強い人を一ヵ月に一回洞窟に入れろと言っておりそれを利用して洞窟に入りジェリカを戦おうとしたところで魔石強化された魔物に食われ自滅しその魔物も倒しました」
「ふむ、報告書通りじゃな」
ただの事実確認だったのか。
俺は座って報告書らしき紙を見ている団長達を見た。全員全ての団長が強そうだ。
俺から左の手前に座っている老人は片目に包帯を巻いており、近くに松葉杖が掛けてある。この人がジェリカに襲われた第一騎士団の団長なのだろうか。国王様並みに髭が長いな。
その後ろにはミラス団長がいるってことは左側が第一、二、三、四、五騎士団の順番で右側が第六、七、八、九、十騎士団の順番なのだろう。
「一つだけ謎なのだが、報告にあったアルト君が赤黒い魔力を纏い元の力より何倍も力が上がったとあるのだが何なのだ?」
「それは私にもわかりません。なぜそうなったかというと合体魔法を使おうとし逆流したのですが何故かその魔力が自分に取り込まれて力となりました」
「そんな話聞いたことがないのう。皆はあるか?」
全員沈黙を貫く。
「誰も知らぬか」
「それを今することは出来ないのか?」
第八騎士団の団長と思わしき人が言った。女の人でポニテの赤い髪にキリッとした黄色い目。どこかヘルサ先生らしき面影を感じる。
「わかりません。試してみたいのは山々なのですが合体魔法をまた逆流させるとなるとリスクが大きすぎるので出来ないのです」
「ふんっ、そうか」
な、なんか怒らせちゃった?
「わかった。ではミラス団長とアルト君を襲った騎士団殺人鬼については?」
「あの子の情報としては、外ハネしたくせ毛のショートで銀色の髪と赤い目をして、私より年下、名前はミカヅキ、名前が同じだから三日月の日に襲う、使っている武器はナイフ、フードを被っている、あととてつもなく強いということだけです。私と副団長が戦いましたが私は歯が立ちませんでした。副団長は結構押してましたが麻痺魔法の注射を打たれて逃げられました」
これも報告書に書いてあるんだろうが。
「よし、下がって良いぞ」
俺はルイナの隣に戻った。
「それで、これからの方針なのだが今は様子を見ようと思う。皆はどうだ?」
全員同意見と答える。
「では様子見ということで。おっと、忘れるところじゃった。魔石強化された魔物の死体を調べているとこの剣が出てきたのじゃ」
そう言って国王様がテレポートで鞘に納めてある剣を出して俺に投げた。
「うおっと。こ、これがですか?」
俺は鞘から剣を抜いた。ゲームにありそうな形の剣で黄金に輝き、鍔の部分が葉っぱが巻かれているようになっている。黄金の剣、シアン先輩の剣を思い出すな。
「あの魔物とその剣に名前を付けてほしいのじゃ」
「えっ、俺にですか⁉」
ルイナに足を踏まれた。
「私にですか?」
「うむ、倒したのは君じゃ。その剣も君にやろう」
「じゃ、じゃあ魔物の名前は『八岐大蛇』で、剣は『天叢雲剣』にします」
「ほう、良い名じゃな」
国王様は笑ってくれた。少しだけほっとした。
「それでは騎士団会議を終了とする」
皆、それぞれ部屋から出て行った。俺達は少し歩いて椅子があったので座った。
「アルト、そろそろ言葉遣いに注意しなさいよ」
「わかってるよ。てかお前なんも話さなかったじゃん。ずりーな~」
「知らないわよ。質問されたのはアルトなんだから」
「は~あぁ~、緊張した」
「ごめんね、急に立たせちゃって」
「いえ、終わったことなので大丈夫です」
俺は貰った剣をじっくりと見る。
本当の八岐大蛇は尻尾を斬ると剣が出てきたと言われていたが全く同じだな。俺が須佐之男命でこの異世界は、昔の元の世界説が出てきたぞ。
「でも俺バリス刀が使いたいから正直要らないんだよな~。団長に上げます」
「そう言ってくれるのはありがたいけどせっかくだしアルト君が持っていなよ」
「ならそうします」
俺は天叢雲剣を持って立ち上がった。
「団長、アルト君、ルイナちゃん、お疲れ様です」
副団長とえり達がやってきた。ヨミが走って俺の足に抱き着く。
「ケーキ美味しかった」
「良かったな」
「ゆう君何その剣!」
えりが目を輝かせる。
「あの魔物から出てきたんだってよ。八岐大蛇って名付けたよ。この剣は天叢雲剣」
「おぉ!完全に日本神話のパクリだけどいいね!」
「だって見た目からしてそうだったからな」
剣を抜いてえりがさらに目を輝かせているとさっきの第八騎士団団長の人が俺の前にやってきた。
「な、なんでしょう」
「私と戦ってほしい」
えっ?
アルト「ま~たこれだよ。なぜか俺だけ戦うやつだよ」
ルイナ「まだわかんないわよ。もしかしたら私になるかもしれないし」
アルト「だといいけど」
ルイナ「まぁアルトなら余裕で勝てるわよね」
アルト「無理だよ」
ルイナ「早いわよ」




