第六十五話 絵本
「も、もうお腹いっぱい」
「よくあんなに食えるな、お前」
ヨミをお姫様抱っこして家に帰ってきた。
今日は昼で終わった。生徒には俺達は神様に見えていたはず。
「はぁ~、昼からは家でゆっくりしよー」
俺はソファーに寝っ転がった。
「よっし!お酒飲むわよ!」
そういえば昨日の夜、飲みたいって言ってたけど木曜日だから明日まで我慢しろって言ったんだよな。
「昼だけど俺もお酒飲みたいな~」
ルイナから投げられたお酒の缶を受け取り、座り直して飲んだ。
「やっぱりお酒は美味しいな~」
「れしょれしょ~!夜まで飲みましょ~」
ルイナが酔って隣に座ってえりも酒を飲んで隣に座った。
「ん~、私ちょっと酔いやすくなったかも~」
えりが俺の肩に頭を乗せた。
「お前らアルコール回るの早すぎだろ。まさかバカはアルコール回るのが早いのか?」
「バカはアルトでしょ!」
「バカはゆう君でしょ!」
両サイドから怒鳴られた。耳が痛い。
「あ、ヨミ大丈夫か?。エレイヤがいないから暇だと思うけど」
「絵本読んでるから大丈夫」
「暇だったら言えよ」
ヨミは絵本を持って俺の部屋に入っていった。俺の部屋なのはもうツッコまないでいいや。
「アルトって優しいから本気で怒ったの見たことないんらけど、本気で怒ったことありゅの~?」
「俺だって怒るときはぶち怒るよ」
てかいつもルイナと喧嘩してるとき本気で怒ってないってわかってますみたいな言い方うぜーな。
「そうだよ~、中学のとき一人学校から消したからね~」
「えぇ⁉消したって⁉」
「お前は言い方が悪過ぎるんだよ。消したって言うより不登校にさせて引っ越させただけだ」
「結局ヤバそうじゃない!怪我でもさせたの⁉」
「俺は一ミリたりとも触ってないよ。ただ少し論破しただけ」
「そうそう。その人ねー、昔から嫌なやつだったんだよー。女子には嫌がらせしたり暴言吐いたり男子と男の教師には暴力振ったり。すぐ手のひら返ししたり貸した物は全て返さないどうしようもないDQNだったんだよ」
「どきゅん?」
「人間と言う名を持つ人間じゃない気狂いのことだよ。そいつ小学校の頃から一緒だったけどムカついたから一回反撃してみようと思って論破したらまさかあんなことになるとは」
「ど、どうなったの?」
「次の日からみんなからいじめられていって不登校になった」
「あれでゆう君の好感度上がったよね~」
「い、いじめって、何があってもいじめはダメよ!」
「んなこと言ってもああいう人は一回孤独を味わったほうが成長できるっしょ。しかも俺はいじめてないし」
「うわ~、優しいって言ったの撤回」
「なんでだよー、自業自得じゃん」
「それで、アルトはその人にぶちキレたの?」
「いや興奮すると頭が回んなそうだから静かにキレてたよ」
「へぇ~」
「ゆう君が一番怒るときってゲームしてるときだよね」
「それはお前もだし、そりゃチーミングやチーターがいたりラグが起きたらキレるだろ。それに対してお前は自分のエイム力や運が悪いかったりして怒るよな」
「だって敵を捉えてるのに銃の弾が真っすぐ飛ばないんだもん!ポケ〇ンとかも運ゲーじゃん!」
「わかったわかった。いや~、懐かしいな~」
「もう~、私のわからない話しないでっ!」
こいつ一定時間酒飲まないとだんだん酔いが弱くなっていくんだな。
「いいだろ別に。勝手に異世界に連れて来られたんだから」
「連れてきたのは私じゃないわよ!」
「じゃあ誰なんだよー」
「知らないわよ」
「ルイナは心当たりないの?」
「一切ないわよ。普通に夏休みを過ごそうと思ったら急にアルトが降ってきたのよ」
「これはルイナが自覚ないけど神様で夏休み一人で過ごすのが寂しいから力を使って彼氏になる男を異世界から連れてきたパターンだ」
「そんなわけないでしょ……多分」
「そうだったとしてもなんで私も?」
「う~ん。じゃあ俺も神で心のどこかでえりに会いたいって思ったからだ」
「えっ」
「アルトって時々天然よね」
「な、なんでだよ。えりは元の世界の人だし親友だし元カノだし会いたくなるときくらいあるだろ」
「ちょ、ちょっと!」
「ははっ、えりが恥ずかしがる姿も久しぶりに見るな」
「なっ!もう!赤竜の灼熱の業火に焼かれてしまえ~!」
「はっ!我には悪魔の加護が付いているといことを忘れたか!それしきの攻撃など効くはずがなかろう!」
「なら私の至高の魔法を受けてみよ!」
ルイナが俺達をジッと見る。
『あっ』
「……アルトとえりかちゃんってそういう言葉好きよね。詠唱魔法考えるの楽そう」
この世界の人だからあまりなんとも思わなそうだが元の世界だとドン引きものだ。俺とえりは少し顔を赤らめた。えりも人前で厨二病発動しても恥ずかしいようになったんだな。
「昔の話はこれくらいにしよう。なぁ、えり」
「うん。そうだね。他の話をしよう。うんうん」
「?」
そんな雑談を酒を飲みながら話していると時間が過ぎていった。
「よ~!アルトきゅん!」
エレイヤが玄関から勢いよく出てきた。
「エ、エレイヤか。ビックリした」
「今日は早めに終わったから来たぜ~!」
「お前いきなり家に入ってくるって不法侵入だぞ」
「正当な理由があるから不法侵入じゃないぜ!ってことでアルトきゅ~ん」
エレイヤは俺に飛びついてきた。
「ぐっ、危ないな~。せっかくなんだから家族と一緒にいろよお前」
「親が好きな人と一緒にいて欲しいって言って行かせてくれたんだ!」
「自分と一緒にいるより娘の幸せを願う親とはいい親だなー。ってこっちからすれば別にそんなことしなくていいのに」
「今日学校言ったら集会で祝われたんだ」
「俺達もだよ。パーティーになったけど」
「マジかー!いいな~、俺なんか普通に授業して5時間目で終わったよ」
「まぁ早く終わっただけでもいいだろ」
「んで、二人は酔いまくってるんだな」
その通りルイナとえりは酔っていた。
「ふぇ~、ルイナちゃんは可愛いな~」
「そんなことないわよぉ~。えりかちゃんほうがー小さくて可愛いわよ~」
「どうしたんだこの二人、百合になったのか?」
「さぁ?なんか急に褒め合い始めた」
「気持ち悪いな」
ストレートだな。
「でもこの二人が百合百合してとこ見るのも面白いぞ」
「それはアルトきゅんだけだ」
「そうか?」
「そうだ」
「そうか。ルイナ、えり、もう寝るか?」
「まだまだ飲むわぁよ!」
「私もまだいける~」
「ほどほどにしとけよ。エレイヤ、ヨミは俺の部屋にいるからな」
「じゃあアルトきゅんも一緒にいこーぜ」
エレイヤは腕を掴んで俺の部屋に行こうとする。
「ア~ル~ト~!いかないでぇ~」
ルイナに袖を掴まれた。
「ルイナっちは酔いつぶれてるんだからいいだろ~!」
「酔ってなぁかなーわよぉ~。アルトは私の彼氏なのぉ~!」
両側から腕を引っ張られた。美少女からこうされるのは少し夢だったが実際にされるとめんどくさいな。
「お前はえりと百合百合してろ」
俺はルイナの手を振りほどいた。
「えぇ~、なんでよぉ~」
「さすがアルトきゅんだな!」
「ということでエレイヤの何でも言うこと聞くの一つ目な」
「えぇ!今のは違うだろ!」
「ちっ、仕方ねーなー」
俺はエレイヤと俺の部屋に入るとヨミが俺のベットに入って絵本を読んでいた。
「ヨミみん~」
「エレイヤお姉ちゃん、来たんだ」
「俺のベットに入ってなに読んでんだ?」
「『勇者と魔王』っていう絵本。今から110年前にあった話」
「へ~、そんなのがあるんだ」
「アルトきゅん知らないのか~?有名なのに」
「ま、まぁ。読んでみていいか?」
「うん。はい」
ヨミから絵本を受け取りベットに座った。
――昔、一人の青年がいました。その頃、世界は魔王の混沌の魔力に包まれていました。
青年は300年眠っていた聖剣を抜き、勇者となりました。その後、勇者は魔王を倒す旅に出ました。勇者は世界を回り、旅の中で3人の人間と、2人のエルフ、2人の獣人、1人のドワーフ、1人のリザードマンのかけがえのない仲間を手に入れました。
勇者と9人の仲間達は激しい戦いの末、魔王の元にやってきました。9人の仲間は魔王を結界で封印し、勇者は終焉神聖至高詠唱魔法で魔王をやっつけました。
しかし魔王は完全に倒せず今も世界のどこかで眠っているのです。世界がまたいつ混沌の魔力に包まれるか誰にもわからない。
16ページほどしかない幼児向けの絵本だったが中々興味深いな。てか終焉神聖至高詠唱魔法ってなんだよ。これが幼児向けとは凄いな。
しかし魔王は110年前から存在するのか。魔王が起きれば世界は混沌の魔力に包まれるのなら今はまだ起きてないのか?
勇者はやはり主人公って感じの人生を送ってるんだな。世界には獣人やドワーフやリザードマンまでいるのか。
「こんな絵本買ってあげた覚えないけどどうしたんだ?」
「アルトお兄ちゃんがベットの下にエッチな本隠してないか見てみたら床下にあった」
「お前は今だに俺のことを理解してないんだな。ってそんなところがあったのか」
ベットの下を見てみると床下収納が開けられていた。潜って中を見ると缶詰が5つだけあった。
「ここにあったのか?」
「うん。嘘じゃないよ」
嘘じゃないって言うと嘘に聞こえるけど本当だろうな。なんでこんなところに絵本が一つだけあるんだろう。
この部屋は前、ルイナの親の部屋だったからルイナの親が入れたのだろうか。
「ま、いっか。後でルイナに聞いてみるとしよう」
「じゃあしりとりしよーぜ~!」
「ふっ、俺にしりとりを挑もうとは地獄を見るぞ」
「望むところだ!」
アルト「はっ!ほらな、言っただろ。地獄を見ると」
エレイヤ「同じので責めてくるなよぉ!」
ヨミ「私は楽だったよ」
アルト「順番が俺の前で良かったな、ヨミ」
エレイヤ「次は辞書持ってきてやる!」
アルト「それはズルだよ!」




