第六十一話 アスノ町
地竜を預けて町を歩いた。人混みをかき分けて進む。
「す、凄い町だな」
「うん、元の世界みたい」
俺とえりは辺りを見渡した。
「アルトとえりかちゃんの世界はこんな感じだったの?」
「ここまで近未来な感じじゃないけどビルとかは同じだ」
「へ~」
「うぉ~!なんだあれ!虹色にキラキラ光ってすげー!」
「すごく大きい綿あめ!あれ食べたい!」
エレイヤとヨミは見たことのないものばかりを見てはしゃいでいる。
「コラ!二人とも任務ってことを忘れちゃダメよ!」
副団長が怒りながらも目をキラキラさせている。
「やっぱりガヤガヤして落ち着かねぇなぁ」
ガルアは頭を掻く。
「ガルアはこの町に来たことあるのか?」
「2回くらいな。これで3回目だ」
「そうなのか。でもせっかくだし楽しもうぜ」
「はぁ~」
ガルアは大きくため息をついた。
「それじゃあ僕は情報を集めてくるよ」
「はい。頑張ってください」
団長は人混みに消えていった。
「私達はこの町を気を引き締めながらも楽しみましょう!」
『おぉ!』
副団長とエレイヤとヨミが掛け声をあげる。テンション上がってるのこの3人だけなんだよなぁ~。
俺達は副団長に着いていった。
「もう歩き疲れた」
「なにこれぐらいでへばってんだよ!次はあっち行こうぜ!」
「アルトお兄ちゃん、このお煎餅美味しいから食べてみて」
俺はエレイヤとヨミに手を引っ張れられて町のあちこちを歩いていた。
「このハンカチ可愛い~!買っちゃおうかな~」
「ルイナちゃん!これも可愛いよ!猫ちゃんがたくさんいる~!」
「奥のほうにも可愛いのたくさんあるよ!ほらこっちこっち!」
ルイナとえりと副団長はアクセサリーショップではしゃいでいる。
そしてガルアはどっかいった。
「おい、副団長達から離れすぎると完全にはぐれるぞ」
「大丈夫だって。ルイナっち達はあの店から当分出てこねーし、ガルガルは多分会えるさ!だからあれ見てみようぜ!」
「アルトお兄ちゃん、このチョコシェイクも美味しいから飲んでみて」
「一回どっか座ろうぜー」
「仕方ねーなー」
座れるところを探していると装備アクセサリーという店の近くに来た。気になって中に入った。
中には指輪やイヤリング、ネックレス、スカーフ、ミサンガなどが置いてあった。
「おーい、座れるところを探すんじゃなかったのかよー」
「あぁ、ごめん。ちょっと見させて」
「早くしろよ~?」
俺は『力の指輪』という指輪を取ってみた。小さい赤い魔石が埋め込まれている。
「あっ、見つけたー!」
「ルイナか」
ルイナ達が可愛らしいレジ袋を持ってやってきた。
「何見てるの?」
「力の指輪って書いてあるけどはめたら力が上がるの?」
「さぁ?」
「知らねーのかよ」
「はい、力が少しですけど上がりますよ」
代わりに副団長が答えてくれた。
「試しに付けてみようっと」
俺は右の人差し指に力の指輪をはめた。少し大きいな。すると指輪から微かな魔力が出てきて俺の体を纏った。
なるほど、魔力で体を強化出来るのか。これくらいの魔力でどれくらい力が変わったんだろう。
「ルイナ、一回本気で殴っていい?」
「私も本気でガードするけどそしたらこの店吹っ飛ぶわよ」
「それもそうだな。まぁあんまり変わった気がしないしいいか」
俺は指輪を取って元の場所に置いた。
「これは魔力濃度レベル1のやつですね。一番低いのでアルト君くらいの強さだと特に変わりません」
「魔力濃度レベルってのがあるんですね」
「はい。最高でレベル5で値段も高くて中々手に入らないんですよ。この店の魔力濃度レベル5のアクセサリーはネックレスみたいですね」
レジのほうを見ると奥のガラスの中に蒼い魔石が埋め込まれたネックレスが見える。
「防御魔法を展開してくれるネックレスみたいですね。防御系のアクセサリーは人気がないので売れ残ってる感じだと思います」
確かに俺もいらないかな?いるとしたらヨミかエレイヤくらい。
買おうかな~。いやでもヨミとエレイヤなら大丈夫か?う~ん。
「まぁ値段も高いし今はいいかな」
こういうのもあるってことがわかって良かった。
「ねぇねぇそれよりアルト!この筆箱可愛くない⁉」
「か、可愛いんじゃない?」
「何よ、その反応」
「男子はそういうの聞かれても可愛いかどうかよくわかんないんだよ」
「そうなの?ま、いいわ。それで次どこに行く?」
「俺一回座りたいんだけど」
「浮けばいいじゃない」
「いやだから俺今魔法使えないんだって」
「そういえばそうだったわね」
「もう少ししたらお昼ですからどこかでお昼ご飯を食べましょう」
俺達は美味しい料理店へ行った。
「もう無理だぁ~」
「楽しかった~!」
外も暗くなり俺達はホテルに来た。俺の部屋はダブルベットが二つある。そしてこの部屋にいるのは俺とルイナとエレイヤとヨミとえりと副団長。団長とガルアはツインの部屋にいる。
なぜ女だらけの部屋に男一人だけ俺がいるのかというと、団長が『みんなアルト君といたほうが落ち着くだろうし、アルト君もルイナちゃんと一緒にいたほうがいいだろう?』という余計なお世話のせいでこうなってしまった。
まぁ慣れてるしガルアのうるさい鼾を聞くよりはいいか。ちなみにガルアとはちゃんと合流できた。
「女子の買い物ってホント長いな」
「迷っちゃうんだから仕方ないじゃない」
「もう動きたくない。もう今日は絶対戦えない」
「もともと戦わせないわよ。アルトには」
「はぁー」
俺は力が抜けるように仰向けでベットに倒れる。
「でも私もさすがに疲れたわ」
ルイナが俺の横に寝転がる。するとヨミが間に入ってきたと思うと、エレイヤがヨミと俺の間に入ってきた。
「エレイヤお姉ちゃん!邪魔!」
「抜け駆けは許さないからなヨミみん!」
「お前らは元気だな~」
「アルト君は本当にモテモテですね~」
副団長が微笑ましそうにニコニコしながらこっちを見ている。
「中学の時は全然モテてなかったのにね~」
「そんなことねーよ。ネットではゲームが強いからってモテてたよ」
「ネットじゃなくて学校でだよ!」
「学校でも南本えりかさんという方と付き合ってましたけど?」
「その天才そうな名前の御方以外の人からモテてないじゃん!」
「あ~確かにそのバカそうな名前の方以外は恋愛感情を抱かれてなかったですね」
「こんのぉ!」
えりは怒って俺に飛び掛かってきた。
「うおっ!」
俺にまたがり殴り掛かってくる右手を受け止めて、次に拳を振り下ろそうとする左手の手首を掴んだ。えりはそのまま手を押してくる。
「ぬぐぐぐ~」
「え、えりも結構力ついてきたな」
予想以上に力が強く、筋肉痛だったので押されている。本気を出せば余裕で押し返せるが疲れて本気を出す気にならない。
「誰がバカだって~⁉っとわっ!」
めんどくさくなって力を抜くと手がベットに付いてえりが俺の上に乗っかった。
「急に力を抜かないでよ!」
えりが四つん這いになって俺の目の前で叫ぶ。
「バカって言われただけで暴力を振ろうとするのもどうかと思うけど」
「ゆう君のバーカ!脳みそがない単細胞のバカゆう君!」
俺はえりの首を掴んで上半身を起こした。
「おい、俺にバカと言ったな。その不敬はその身を焼いても償いきれねーぞコラ!」
「ぐあっ!ブーメラン刺さってるよ!このこのこの!」
えりは俺の頭を叩く。
「はーいそこまで。喧嘩はダメ!」
副団長が俺とえりを無理やり離した。すると団長とガルアが部屋に入ってきた。
「何やら騒がしい声が聞こえたけど大丈夫かい?」
「い、いえ、大したことではありません」
「そう、なら良かったよ」
団長はソファーに座った。
「それで、騎士団殺人鬼についての情報だけど今回は確定な情報はなかった。何しろ大きな町だから色んな情報がたくさんあって騎士団殺人鬼らしき事件の情報は少なかった。そして僕が騎士団殺人鬼なのではないかと思う情報は一つだけ」
「それは一体?」
「魔石屋と装備アクセサリー屋に時々来ては一度にたくさん買う人がいるらしい。もしかしたらあの魔石で強化された魔物もその人が強化したのではないか、と思ってね」
「そういえば騎士団殺人鬼のジェリカも知り合いに強化してもらったって言ってました。その知り合いが騎士団殺人鬼でその一度にたくさん買う人かもしれませんね」
「だから明日から魔石屋と装備アクセサリー屋で張り込みをしよう。その二つの店の人に聞いたら『前に来たのが一ヵ月前だからそろそろ来ると思う』と言っていた」
「なるほど、わかりました」
「詳しいことは明日伝える。何か質問は?」
「……特にないですね」
「よし、じゃあ明日に備えて今日はゆっくり寝よう。おやすみ」
そう言うと団長とガルアは部屋に戻っていった。
「それじゃお弁当を食べましょう。どうぞ」
副団長は買った弁当を配って俺達は弁当を食べてちゃんと順番で風呂に入った。今度は風呂が完全に一人しか入れなかったので助かった。
「アルト、一緒のベットで寝ましょ」
「アルトお兄ちゃん一緒に寝よー」
「アルトきゅん一緒に寝よーぜ!」
「副団長はどうするんです?」
「私はソファーで寝るから大丈夫よ」
「う~ん、俺はルイナとヨミと寝るだろうなと思ってたけど」
「はぁ⁉俺とは寝たくないのかよ~!」
「いや、ルイナは普通に彼女だし、ヨミはどうせエレイヤとえりと寝ろって言っても来るだろうしまだ小さい子供だしな」
「そうよねー!彼女なら一緒に寝るのが当たり前よね~!」
「さすがアルトお兄ちゃん、よくわかってる」
ルイナとヨミは嬉しそうに俺に抱き着く。
「な、なんでだよぉ」
エレイヤは涙目になり始めた。
「えぇ、ど、どうすればいいんだ。俺が疲れてなきゃ副団長と変わって俺がソファーで寝るけど今日はベットで眠らせてほしいんだよな~」
「じゃあ4人で寝ればいいじゃない」
「狭いだろー」
「それしか方法はないわよ」
「じゃあ私一人⁉」
「なら私がえりかちゃんと一緒に寝ましょう」
「ならそうするか~。ほらエレイヤ、泣くなよ」
「わ、わかった」
そのあと左からルイナ、ヨミ、俺、エレイヤの並びで寝た。少し暑かったがエレイヤの幸せそうな寝顔を見て我慢して眠りについた。
〔アスノ町〕
・エスタル国の首都
・国で一番の大都会
・魔物とはほぼ無縁の場所
・最新の機械がある
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ルイナ「アルトってバカってすぐいうわよね~」
えり「そうそう、バカ丸出しだよね~」
アルト「バカの言葉でぶちギレするとは器が小さいですね~」
ルイナ「は?キレてませんけど~?」
えり「何を根拠に言ってるの~?」
アルト「今にも魔法を撃とうとしているところから見てキレてるのかと思ったんですけど違うの?」
ルイナ「こ、これはあの、あれよ……」
えり「……」
アルト「はっ!ほーら、なんも言えなくなっちゃった~!そういうところを見てバカって言ってんだぐはぁ!」




