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ゲームに飽きたから異世界に行ってみた。  作者: イル
第四章 騎士団殺人鬼
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第五十八話 八岐大蛇

 俺は罠など気にせず全力でまたダンジョンを進んでいた。


 あの魔物、名前を付けるなら完全に『八岐大蛇(ヤマタノオロチ)』だ。神話だと強い酒で酔わせて眠らせて斬り殺したって話だが、そんな酒ないし、多分肉体強化されたあいつにそんな理性は働かない。


 団長とガルアに時間稼ぎを頼んだが大丈夫だろうか。


 最初来るときと違ってすぐにさっきの部屋の来た。


 左の壁が全てなくなり大きな穴が開いていて雲に覆われた空が見える。ここから出たのか。


 ジェリカがいたガラスの向こう側の部屋に行くとエレベーターが見える。急いでボタンを押すと扉が開き乗った。


 3つ階へのボタンがある。どこに魔石があるかわからないが近いところから行ってみよう。


 久しぶりに乗ったエレベーターにちょっと懐かしさを感じると階に着き扉が開いた。


「ここは。うぐっ、くっせ~」


 魔物の臭いを無理やり甘い匂いで誤魔化してより変な臭いになっている臭いがする。


 そこら中に魔物の血や魔石の欠片がある。部屋に隅には魔物の死体らしきものが袋に包まれて積まれている。


「ここにはないか?」


 俺はエレベーターの乗って下の階に行った。


「この階は……」


 見ただけでわかったがジェリカの部屋だろう。生活感のある部屋だ。


 部屋はピンクだらけで香水の甘い匂いがする。俺はこういう匂いは好きではない。中身が空のお菓子の袋やジュースのペットボトルとお酒の缶が机に置いてある。ドレッサーの上にはたくさんのメイク道具がある。ベットの近くには服や下着が散らかっている。


 部屋の奥には罠について書いてる付箋がたくさん貼ってあるホワイトボードがある。


 色々試行錯誤してるんだな。とか思ってる場合じゃない。


「ここにもなさそうだな」


 ということは最後の階か。


 俺は再びエレベーターに乗って下の階に行った。


 着いて扉が開くとすぐ近くに扉があった。


「ぱ、パスワードか」


 扉の横にタッチパネルがあり数字を入れるようになっている。


「う~ん、ゲームなら急ぐ必要もないから戻って調べたりするんだが今は無理だなー」


 誰か今すぐここの攻略wiki作ってくれ。


「まぁ仕方ない。ここは知恵よりも力で行こう」


 俺は扉の前に立ち思いっきり扉を殴った。すると扉はふっ飛んでいった。


「い、以外とすぐ開いたな」


 扉の先に行くと神々しく蒼い光を放つ大きな魔石があった。


「おぉ、これか」


 俺は両サイドにあった階段を下りて魔石の目の前まできた。


「今日は本気で殴ってばっかりだな」


 と言いつつ右手と右足を後ろに引き、魔石目掛けて右ストレートをかましてやった。


 しかしひびが入っただけで壊れはしない。


「ちっ、今日殴った中で一番硬いのが魔石かよっ!」


 と言ってまた魔石を殴る。ひびが全体に広がっていく。


「早く壊れろよぉ!」


 俺がもう一度魔石を殴ると魔石は一気に崩れていった。


「よ、よっし。これでルイナ達も戦えるはず!俺も急いで戻らないと……」





 俺が魔石を壊すために洞窟に入ったあと――。



「私達はもう少し近づきましょう!」


 私達はあの魔物からギリギリ見つからないくらいのところまで来て木に隠れた。


 稲を収穫し終わった畑の中で団長とガルアが魔物の前に出た。


「僕がやつの的になりながら戦う。ガルアさんは隙を突いて」

「おう」


 団長は剣を抜き、魔物に向かって走っていく。


 3つの顔が団長に迫るが団長は飛んでかわし、他の顔の首を踏んで背中を斬った。


「はぁっ!」


 しかし少量の血が出るだけで大したダメージが入っていない。


 そのまま飛び越えた団長を尻尾が掴もうとしたが団長は後ろに下がって避けた。


 魔物は向きを変え再び団長を捉える。


「はぁ~!」


 魔物の背中にガルアのパンチが入った。魔物は一瞬体を震わせたが尻尾でガルアを叩き潰そうとする。


「ちっ」


 ガルアは避けて距離を取った。


 力の差は歴然。このままじゃいつかはやられる。アルト、早くして。


「えりかちゃん、ヨミちゃん、エレイヤちゃん、戦う準備は出来てる?」

「私はいつでもいいよ」

「私も大丈夫」

「俺もギターもオッケーだ!」

「わかった」


 団長は魔王の幹部と戦ったときのように凄い速さで二本の剣で連撃している。ガルアも隙を突き、拳や蹴りをくらわせて動きを少しだけ鈍らせている。


 魔物は団長を集中的に攻撃し始めた。8つの顔が団長に向かっていく。


「くそっ」


 団長は剣をクロスしてガードする。団長は吹っ飛んでいき、木にぶつかった。


「ぐっ!」


 魔物は距離を詰めさらに追撃しようとする。


「団長!」


 ガルアが団長を助けようと走るが魔物の8本の尻尾が邪魔をして前に進めない。


「どうするか……」


 魔物と団長の距離があと一歩というところで空間が歪んだ。魔物の足が止まった。


「これは……」


 空を見るとひびが入っている。


「結界が……」


 また空間が歪み空のひびが大きくなっていく。


「みんな行くわよ!」


 私達は飛び出て魔物に向かっていった。


 空間が歪み、空が割れ、結界が消え、霧がなくなり太陽が出てきた。


 アルトが魔石を壊してくれたのね。遅いんだから。後で怒ってやるわ。


「我を怒らす愚か者よ、全てを凍らす絶対零度の氷に飲み込まれ、華やかに散りゆくがよい!」


 私は詠唱魔法を撃って魔物の尻尾を3本凍らせた。魔物は叫び声を上げる。


「おっしゃ!久しぶりにやるぜ!」


 エレイヤちゃんは魔物の上からエレキギターを弾き始め最後にじゃららんと鳴らすと物凄い衝撃波が魔物を覆いつくすように出た。魔物は上から衝撃波で押さえつけられ、時々血が噴き出してきて小さな傷がたくさんできた。


 その間に団長は距離を取った。


「はぁっ!」


 えりかちゃんがかなりの魔力を使い雷魔法を撃った。地面が削れるように進んでいき魔物に当たった。さすがに貫通はしなかったが深い傷を負わせられた。


 エレイヤちゃんも距離を取った。


「汚れし魔物よ、無垢なる流星に破壊され、宇宙の塵となれ」


 ヨミちゃんは目を赤くし気迫に満ちて魔物を真上に大きな魔法陣を作った。


「魔破壊流星」


 魔法陣から巨大な隕石が出てきて魔物にぶつかり爆発した。魔物は背中に火傷を負って周りの地面がえぐれていた。


 私が凍らせた尻尾はまだ凍っている。そこに団長が飛んで回転しながら斬り落とした。


 魔物の尻尾からは大量の血が溢れ出てきて叫んでいる。


「これで大分体力は減らせたと思うけど……」


 魔物は体をジタバタさせながらも向きを変えて4つだけ顔を上にいるヨミちゃんのほうに向けた。


「な、なにをする気なのかしら」


 魔物は口を開け、口が赤く光ったと思うと赤い光線が高速でヨミちゃんに向かっていった。


 私のスピードではヨミちゃんに光線が届くまでにヨミちゃんのところまでいけない。


「ヨミちゃん!」


 そう叫んだとき、山のほうから何かが飛び出てヨミちゃんを掴んで光線を避けた。





「よっと」


 俺の横に魔物の光線が通り過ぎていく。俺はヨミをお姫様抱っこした。


「危なかったな」

「ふふっ、私ならあの光線にも対抗出来たかもしれないけど、アルトお兄ちゃんが山のほうに見えたから助けてくれると思ったよ」

「ったく、俺が来なかったら危ないところだっただろ?」

「そんなことないよ」

「まぁいいや。それよりあいつをどうするかだな」


 俺達が魔法を使えるようになってもあいつも魔力を使えるようになっただけだ。


 俺はそのまま地面に降りた。ちょっと足が痛い。無駄にカッコつけて風魔法を使わずに180メートルくらいから降りるんじゃなかった。


「どれだけ待たせればいいんだよ」


 隣にガルアが来た。


「時間稼ぎお疲れ様。ってことであとはこいつを倒すだけなんだが」

「このまま攻めればいけそうだな」

「上手くいけばな」

「私がやってみる」

「ヨミ?」


 ヨミは俺の腕から離れ、浮くと力を出した。目の前だったので気迫で一瞬体が浮いた。


 い、いつになく凄い気迫だな。それか近いからそう思うだけか?


 そう思っているとヨミは魔物に手を向けると魔物の周りに大量の魔法陣が出てきた。魔法陣で魔物が見えないくらいにたくさん。


 するとそこから大量の隕石が出てきて魔物にぶつかって爆発した。それが数秒続き、地面は揺れて大きな爆発音と微かな魔物の悲鳴が聞こえる。


「す、凄い」

「こんな、ものかな」


 魔法陣が消えるとヨミはバタッと地面に倒れた。


「ヨミ!大丈夫か?」


 俺はしゃがんでヨミの頬に手を当てた。


「う、うん。ちょっと魔力がなくなっただけ、だから」

「よく頑張ったな」


 俺は魔物のほうを見た。魔物は傷だらけで横たわっている。


「倒したのか?」

「普通の魔物なら、あれで、倒せてると思うよ」


 ヨミは呼吸と整えながら言った。


「アルト~!」


 ルイナが手を振りながらこっちに走ってきている。


「お~」


 俺とヨミは手を挙げた。そのときだった。


 魔物から紫色の魔力が体から出てきて体を覆った。


「な、なんだあれは!」


 そして目を開くと今までにない叫び声をあげた。



「う、ぐぁ、頭が……」


 頭がガンガンする。魔物はずっと叫び声をあげている。皆、耳を塞いでうずくまっている。


 こ、このままだと意識が……。


 すると上空からたくさんの光線の矢が飛んできて魔物に当たった。魔物は態勢を崩し叫び声を止めた。


「あの矢は」

「皆さん!大丈夫ですか⁉」


 副団長が団長の近くに駆け付けた。


「団長、お怪我はありませんか?」


 副団長は弓を構えたまま、目で団長のほうを見る。


「あぁ、助かったよ」

「あの魔物は、魔石で肉体強化されてるのでしょうか?」

「うん。ただでさえ元が強いのにね。しかし今のは」

「魔石の力が発揮されたのでしょうね」


 団長達が話している間に魔物は態勢を立て直して3つの顔を俺とヨミとガルアのほうに向けるとさっきヨミに向かって放った光線を撃ってきた。


「ぐっ」


 俺は咄嗟に闇魔法でガードしようとし、手の平の向けた。しかし魔物の光線は副団長の光線の矢に撃ち抜かれ消えた。


「三人とも距離を取ってください」


 副団長の指示に従い俺はヨミを抱えてガルアと一旦距離を取った。


 魔物は副団長のほうを見て走り出した。


 さっきより少し速くなっている気がする。スタミナを考えずにただ突っ込んでるな。


 副団長は上に飛んで避けた。魔物は地面を削りながら止まる。副団長は上から光線の矢を一本撃つと分裂して魔物に向かっていく。


 しかし分裂した矢は魔物に当たったが突き刺さらず消えていった。


「くっ!」


 副団長は地面に降りると距離を取った。


 さっきはダメージは与えられたのに今のは効いてないのか?


 するとヨミは手を震わせながらも魔物のほうに手を向けた。さっきよりはとても少ないが魔物の周りに魔法陣を出した。気迫も全然感じられない。


 魔法陣からまた隕石が出て魔物にぶつかっていく。が、魔物は全然反応も見せない。


「あぅ」


 ヨミは気を失い魔法陣は消えた。


「ヨミ!ちっ、ガルア、俺はヨミを安全なところに運んでくる」

「あぁ、わかったが、逃げたりすんなよ」

「するわけねーだろ!」


 俺はヨミを抱えて走り出した。



 ヨミの星魔法も効いていない。あの紫色の魔力のせいか?副団長の矢も最初は効いてたのにさっきは効かなかった。だとすれば一度くらった魔法は効かない、それか今の短時間で防御力が大幅に上がったか。そのくらいだろうか。


 俺は洞窟の入り口のところまで来た。


「ヨミ、よく頑張ったな」


 ヨミを地面に寝かせ闇魔法で覆った。


 俺は木の枝に乗り、魔物がいる畑に向かって高く飛んだ。団長が襲ってくる首を薙ぎ払っているのが見える。


 俺は空中で闇魔法をたくさん出して撃った。尻尾や背中に当たったが魔物は何事もないように団長を攻撃し続ける。


「くっそ、なら」


 俺は手を銃の形にして魔力を一点に集中させ闇魔法を撃った。魔物の尻尾に当たり血が出てきて攻撃が止まった。再度魔力を一点に集中させた闇魔法を次々と撃った。魔物に当たっていくがどんどん攻撃が効かなくなっていくように見える。


 地面に降りると傷口が塞がっていくのが見えた。再生能力があるのか。よく見れば団長が斬った尻尾も元に戻っている。


 俺は魔力をかなり多くし、一点に集中させて闇魔法を撃った。今度はまた血が出てきて魔物は少し叫んで俺のほうを向く。


 一度くらった魔法は効かないことはない。となるとやっぱり防御力が上がっているのか?いや、もしかしたら攻撃をくらうとその攻撃を耐えられるくらい防御力が上がるということかもしれない。そうだとしたらかなりマズい。


 団長と副団長とガルアは魔物に攻撃を仕掛けているがさっきより攻撃が効かなくなっており避けることにばかりになっている。


 えりとエレイヤは半ば放心状態になっている。ルイナは動こうとしていうが足が動いていない。


 とりあえずあの3人に落ち着いてもらうか。


 俺はルイナの隣に来た。


「足が震えてるぞ、ルイナ」

「ア、アルト。どうするのよあいつ。全然攻撃が効いてないわよ!」

「怒るなって。ダメ元でもいいからお前は氷魔法を撃て」

「わ、わかったわ」


 次はえりの隣に来て肩に手を置いた。


「ゆう君……」

「そんな不安そうな顔するな。俺がなんとかするし、お前は最強だろ?」

「で、でもあいつ、団長の攻撃も効いてないし」

「いいから今はお前も攻撃しろ」

「や、やってみる」


 最後にさっきから空中にずっと浮いているエレイヤの隣に来た。


 傍から見たら呑気な事やってるように見えるが結構大事な事だ。


「エレイヤ、大丈夫か?」

「アルトきゅん」


 エレイヤは泣きそうな顔で俺にしがみついた。中学生なのによく頑張ってるやつだ。


「難しいかもしれないけど落ち着け」


 俺はエレイヤの肩を掴んだ。


「お前は戦ってもいいし逃げてもいい。けど戦うことを選ぶならもう怖気づくなよ」

「……俺は、逃げない。戦ってやる!」

「よしその意気だ。でも本当に危なくなったら逃げていいからな。それとこいつを倒した後で一つだけ何でも言うこと聞いてやるよ」

「二つな」

「わかったよ。二つでいいから頑張れよ」


 エレイヤは魔物に向かっていった。



 3人とも戦ってくれている。さて、えりに『俺がなんとかする』って言っちゃったしどうすればあいつを倒せるだろうか。


 まずは目を潰してみるか?でも潰しても再生されるか。再生出来なかったとしても逆に暴れそうだしな。


 こういうときアニメとかなら今までの経験や聞いた話とかを思い出して打開策を生み出すんだが……。



『朝だぞ!起きろ!』


『言い訳はもう終わりよっ!』


『災難だったね、アルト君』


『特にアルトお兄ちゃんの唾液が付いた箸でくれた食べ物はね』


『あまり名前で呼ばないでほしいのだけれど、いいわよ』


『でもアルト先輩は本当に優しいですよ』


『良い結果を期待しているぞ』


『山をいくつか越えるからね』


『山手線ゲームのなんでも言うこと聞くっていうの覚えてるよね?』



 ぜ、全然役に立ちそうな記憶がないな。



『私の惚れたところまだ言ってくれないの~?』



 こんなこと思い出してる場合じゃない。ルイナが攻撃を受け吹っ飛ばされている。けどルイナの氷魔法で魔物をちょっとずつ凍らせることは出来ているみたいだ。とりあえず俺も戦いながら考えるか。


 俺も魔物に向かっていった。

アルト「マジでヤバスなんだけど」

ルイナ「そそそそんなことないわよ」

アルト「焦りまくりじゃねーか。どうか倒せますように」

ルイナ「わ、わた、私がいればよよよよゆーよ」

アルト「いつまで焦ってんだよ」

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