第五十六話 ダンジョン
俺達は男の家のソファーに座ってお茶を入れてもらっていた。
「ふぅ~、それで悪魔って?」
「この町の近くにある洞窟にとある女が住み着いてまして、そこの女に一ヵ月に一回強い人を洞窟の中に入れさせないといけないのです。そしてあの洞窟に入って帰ってきた人はいません」
「強い人を入れなかったらどうなるんですか?」
「この町の小さい女の子3人が人質に取られてまして、『来なければ3人とも殺す』と言われております」
「そんな、酷い」
「その洞窟に入った人は何人いるんですか?」
「6人です」
「ってことは六ヵ月前からいるのか。なんて野郎だ」
「もうこの町には腕の立つ方はいないんです。だからこの町に来る人に頼んでいるんです。先月は第一騎士団の団長様がたまたまこの町に来てくれていて行ってくれたのですが帰ってきませんでした……」
男がそういうと団長は目をつぶって何か考えると姿勢を正した。
「申し遅れましたが僕たちはエスタル国第二騎士団で、僕が団長です」
「えぇ!そうだったのですか⁉」
男は目を見開いている。
「そして第一騎士団の団長は生きいますよ」
「なんと、生きてらっしゃるのですね!」
男はさらに目を見開いた。ちょっとだけ反応が面白くて笑いそう。
「はい。かなり重症でしたが今はベットの上で休んでいることでしょう」
団長のときは一日でほぼ治ったのに第一騎士団の団長はまだ完全回復してないのか。
「はぁ~良かったです」
男は胸を撫でおろした。
多分その女が騎士団殺人鬼で間違いないだろう。
「よし、話はわかりました。僕が行きましょう」
「よ、よろしいのですか」
「はい、必ずその悪魔という女を倒してみせます」
「いや俺が行きますよ」
「アルト⁉」
「アルト君、今回は危険な任務だからここは僕に――」
「俺は三人の騎士団殺人鬼と戦ってまだ生きてます。だから今回も俺がやりますよ」
「……本当にやる気かい?」
「はい!」
俺は真っすぐ団長の目を見た。
「わかった。任せたよ」
団長は俺の肩に手を置いた。
「アルト無理しないでいいのよ!」
「大丈夫だって、今回も倒して帰ってくるよ」
「申し訳ありません。どうか生きて帰ってください」
男は俺のほうを見て手を合わせ神に祈った。
そして俺達は山をほんのちょっと登り洞窟の前まできた。洞窟の中は真っ暗だ。
「アルト気を付けてね、絶対死なないでね!」
「わかってるよ」
「ゆう君頑張ってね」
「ああ。騎士団殺人鬼を倒してくるよ」
俺はヨミとエレイヤの頭を軽く撫でた。
「死んだら許さねぇからな」
「ガルアとまた戦うまで死にやしないよ。じゃ、行ってきます」
「あぁ、気を付けて」
団長に向きなおったあと、俺は洞窟に入っていった。
炎魔法で周りを照らしているが特に変わったところはない。
「昨日一人騎士団殺人鬼を倒したばっかりなのに町に着いて悪魔を倒してと言われてもうこんな危険な所まで来てるとは人生は展開が早いもんだ」
一人でぶつぶつ言ってると急に壁や床が明らかに変わった。さっきまでただの洞窟だったのにここからコンクリートか何かで作られている。
そこから少し歩くとさっき通った道が勝手に岩で塞がれていった。
「閉じ込められたってわけか」
すると壁にある松明が付き、明るくなった。
「今度はずいぶんと小さい子だね~」
どこからか女の声がした。
「誰だ」
「私のこと知らないのに来たの~?ちょ~ウケる。とりあえずあんたはこのダンジョンを進んでくださ~い。そしたら私と会えるよ」
ダンジョン形式か。なら得意分野だな。
「わかった。あ~そういえば、お前騎士団殺人鬼だろ?」
「え~?なんで知ってんの?あんた騎士団の人間?ウケる~」
「何がウケてるんだが。まぁいいこのダンジョンを攻略しろってことだろ」
「そうそう、わかってるんなら早く行って」
腹の立つやつだな~。
俺は刀を抜いて歩き始めた。
少し歩くと曲がり角があり右に曲がった。その瞬間後ろの壁から矢が3本出てきたが警戒していたのでちゃんと刀で矢を斬った。
「おぉ~やるじゃん子供のくせに」
「うっせ~よ。てかこんな予知できる罠しかねぇのかよ。ウケる」
「は?まだまだこれよりすごい罠あるしこれただの挨拶みたいなやつだし」
「あっそ」
何気なく煽って再び俺は歩き始めた。
「と言っても本当に予知出来やすい罠ばっかりだな」
そういって俺は落とし穴の床が抜ける前に前に飛んで、飛んだ先にある棘が出る罠も出た瞬間に前に飛んだ。
「よいしょっと。まぁ現実の罠なんてこんなもんか」
歩き続けると広い部屋に出た。
「何もないのか?」
と思い一歩進むと大量の魔物達がテレポートしてきた。
「モンスターハウスか」
俺は真っ先に弓を撃ってきたケンタウロス型の魔物の矢をかわして首を斬り、次に後ろから飛び掛かってくるケロべロス型の魔物の口の中に刀を入れて斬り裂いた。
その後も次々と襲い掛かってくる魔物を斬っていった。
ちっ、魔法が使えればもっと蹴散らせるだけどな。刀の技術だけでちまちま倒さないといけないのか。
やっとのことで最後の魔物を倒した。
「ふぅ~、70体くらいいた気がするな」
俺が汗を拭って刀に付いた血を掃っていると地面から土のようなものが出てきてそれは大きな人型のものとなり、たくさん出来上がった。
「ゴーレムか。一度にこんなに作れるとはすごい魔導師がいるんだろうな」
「それ私が作ったゴーレムなの~」
「すごいすごい」
「なにその感じ。ちょ~ムカつくんだけど~。殺れ、ゴーレム」
いつもルイナに言ってるようなこと言っただけなのに。
ゴーレムは俺に向かってきた。
刀は魔物の血や体液で切れ味が悪くなっている。いつもなら魔力で付与してるから切れ味が落ちることはないんだけど。
俺は刀を地面に置いた。ゴーレムは右手で殴り掛かってくる。
「はぁっ!」
俺とゴーレムの右手はぶつかり合うとゴーレムの右腕はぶっ壊れた。
「おっと、そこまでなるとは思わなかった」
よろめいているゴーレムに向かって走り、脚を蹴って壊して前に倒れたところを後ろから飛んで頭の踏み潰した。そしてそのまま前転して態勢を整えた。
ゴーレムは形を失いただの土となった。
「ちょっとだけ足痛てーな~」
他のゴーレムが俺を踏み潰そうとしてきた。俺は後ろに飛んで避けすぐに脚を蹴って壊し頭の潰した。
全部同じ方法で倒せそうだな。知能がない相手は楽だな。
その後の同じ方法で倒していき辺り一面土まみれになった。
「これで最後っ!っと。ふぃ~魔法が使えないってのは不便なもんだ」
俺は刀を取ってどうしようか悩んでいると壁が開き道が出てきた。
「さっきからなんも喋らねーな。もしかしてゴーレムがあっさり負けていじけてるのか~」
煽ってみるが何の反応もない。
「まぁいいや、先いこ」
俺はまた歩き始めた。
一方、えり達は……。
「は~あぁ~、アルト~」
「ルイナちゃん、ゆう君なら大丈夫だよ。多分」
「多分でしょ~?アルトったら無茶し過ぎよ。ちょっと見えたけどあれダンジョン型の洞窟でしょ?何があるかわからないのに」
私達は洞窟の前の近くにある岩に座ってゆう君が帰ってくるのを待っている。
「ゆう君からしたらそういう場所は得意だと思うから」
「そうなの?」
「どんどん進んで行ってそう」
「……やっぱりえりかちゃんはアルトのことよく知ってるわね~。私も見習いたい」
「そ、そんなことないよ。ルイナちゃんだってゆう君のことよくわかってて扱いも慣れてるじゃん」
「あ、扱い慣れてるかしらね~?」
「一番アルトお兄ちゃんを知ってるのは私!」
「いや俺が一番アルトきゅんのことを知ってる!」
「ゆう君はモテモテだな~」
ふとミラス団長とガルアさんがキョロキョロしていることに気づいた。
「お二人ともどうしたんですか?」
「んぁ?いや何でもねぇよ」
「……ガルアさんも気になりますか」
「団長もっすか」
二人は何かわかったように話している。
「な、なんなんですか⁉」
「あ~、えっとな。魔物を全く見ねぇんだよ」
「そ、それは魔力封じの結界があるからとかじゃなくて?」
「かもな。それと、ここら辺にはかなり強い魔物がいるはずなんだよ」
「そう。魔王の幹部に匹敵するほどとも言われているくらいにね。ガルアさんは知らなかったみたいだけどそいつは人や魔物を食べ、魔力を吸収し自分の魔力にして力にする魔物なんだ」
「そんな厄介な魔物がいるんですね」
「そのような魔物が魔力封じの結界の中にいて魔力に飢えないはずがない。今の僕たちや住民の人は恰好の獲物だと思うけど」
「ならもしかしてこの洞窟の中に……」
「アルトもバカじゃねぇから危ないと思ったら逃げてくるだろうな。俺とアルトと団長ならまだ戦いながら逃げきることは可能だ」
「ゆう君……」
〔ゴーレム〕
・魔力で土などを固めて作られる
・魔石をコアに作るとさらに強くなる
・最近は人間と同じ大きさ、機敏性、人間以上の力を持つゴーレムの研究が行われている
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ルイナ「なんでアルトはこんな危険なところに行こうとするのかしら」
ヨミ「アルトお兄ちゃんはMだから危険なところに行くと興奮するんだよ」
えり「い、いやただ強い人と戦って強くなりたいだけだと思うよ?ゆう君、強い人と戦うの好きだから」
ヨミ「やっぱりMだね」
ルイナ「Mね」
えり「Mだったね」




