第四十六話 騎士団殺人への旅
月曜日。
「そんなことがあったのだな。無事でよかった」
「無事ではなかったですけど、まぁ命に別状はなかったですしね」
今回あったことをヘルサ先生に話した。
「それで旅に出るために今、ルイナが校長先生にお願いしているところです」
「なるほど。それで、アルト君は覚悟できているのか?」
「もちろんです。しっかりと命の重みをわかった上で」
「ならその覚悟を私に見せてみろ」
「ヘルサ先生ならそんなこと言うと思いました」
「それなら話は早い。校庭にいくぞ」
「お願いします!校長先生!」
その頃、ルイナは校長先生に事情を説明して学校を長期休ませてほしいと頼んでいた。
「う~ん。つい先日修学旅行があって、もう高校二年生の後期だ。いくら成績優秀で騎士団への正式入団がほぼ決まってるとはいえ、学校を休ませるには~」
「お願いします!」
「私からもお願いします」
「フィアーナ先生!」
「フィアーナ先生から言われましてもな~……」
「私からもお願いです」
「メイ先生も」
「この休みでルイナちゃんは大きく成長するでしょう。ルイナちゃんなら遅れた学業もすぐ取り戻せると思います。校長、わかってくれないでしょうか」
「メイ先生が言うのなら仕方ありませんね」
「本当ですか⁉」
「ただし、帰ったら課題もちゃんとするんですよ」
「はい!ありがとうございます」
ルイナは校長室を出た。
「フィアーナ先生、メイ先生もありがとうございます」
「いえいえ、私だけじゃ何も出来なかったもの~。礼を言うのはメイちゃんだけですよ」
「わたくしは少し加勢しただけですので、お礼などいりません。ルイナちゃん」
「はい」
「気を付けていってくださいね」
「はい!ありがとうございました!」
メイ先生は保健室に戻っていった。
「ん?この音は……ヘルサ先生とアルト?」
ルイナとフィアーナ先生は校庭に向かった。
そして俺は校庭でヘルサ先生から猛烈な攻撃を受けていた。
「くっ、そ」
「君の覚悟はそんなものか!」
「ま、まだまだですよ!」
俺はヘルサ先生の剣を受け流して反撃した。しかし全く当たらない。
「ふん!」
「ぐっ!」
カウンターされ頬を少し斬られた。俺は一旦下がった。
「はぁ、はぁ」
「まだまだなのだろう?」
「えぇ、そうですよ」
俺は闇魔法をかなり魔力を使ってたくさん出した。
「はぁっ!」
ヘルサ先生はそれを物ともせず斬った。
「ちっ」
「それで終わりなのか?」
「いちいち煽ってきますね。じゃあ、本気でやらせてもらいますよ」
「目が変わったな。よし、来い」
俺はヘルサ先生に向かって走り、刀を振った。剣でガードされたがすぐさまヘルサ先生の背後に回り、刀を振った。それもガードされたが次は右側に行って刀を振る。
次々と色んな方向から攻撃を仕掛ける。
もっと早く動けるはずだ。もっと、もっと、もっと!
ヘルサ先生は汗をかきはじめている。もうどこから攻撃されるか勘で察知している。凄い人だな。けど――。
急にアルト君の姿と気配が消えた。どこだ。どこから来る。
背後から気配がした。
「そこだ!」
声と同時に剣を振った。だがそこには斬れて消えていく闇魔法があるだけだった。
「こっちですよ」
後ろから声がして振り向こうとしたが遅かった。私の首元には刀がある。
「私の、負けか」
私は肩の力を抜いた。
これが今のアルト君の実力か。いつの間にここまで強くなったのだろうか。嬉しいような気もする。だが本気の私にはまだまだ及ばないな。
「これで覚悟、受け取ってくれましたか?」
「ああ、アルト君なら大丈夫そうだ」
俺は刀を引いた。
「これって俺がヘルサ先生に初めて勝ったってことですよね」
「そうなるな」
「じゃあ俺はヘルサ先生より強いってこと⁉」
「思いあがるな。今のは本気じゃなかったからだ」
「え~、本当ですかぁ~?」
言った瞬間、目の前からヘルサ先生が消え、俺の首に剣が当たっており、後ろにヘルサ先生がいた。
「これを見ても本気じゃないと思うか?」
「い、いえ、すみませんでした」
「わかればいい」
ヘルサ先生は剣を収めた。
「その騎士団殺人鬼とかいうふざけたやつを頑張って倒してこい」
「はい!」
「アルト~!」
ルイナが玄関からやってきた。
「おぉルイナ、どうだった?」
「休んでもいいって!これで心置きなく行けるわよ!」
「良かったな。後はエレイヤのほうだけど」
「エレイヤちゃんなら大丈夫よ。それより傷だらけじゃない!回復してあげるわ」
「ありがと」
家に帰ったあと、エレイヤから手紙が来ていて、休んでもいいとなったそうだ。さすがというべきかなんというか。
そして今日一日、えりは騎士団訓練場に行っており、ヨミもついていっていた。ヨミが俺から離れるなんて珍しいもんだ。
これで準備は万端。あとは出発の二日後まで待つだけとなった。
出発当日。
「副団長~!」
「みんな!来なかったらどうしようと思った」
俺と、ルイナ、ヨミ、エレイヤ、えりと荷物を持って騎士団訓練場に行くと副団長の横には竜車があった。白い地竜がいる。
「ゆう君!あれ竜じゃん!すごーい!」
「はいはい」
「この地竜は人に懐きやすいからね」
団長が竜車から出てきた。
「へ~!触ってもいいですか⁉」
「うん、そ~っとね」
えりは地竜の首をゆっくりと触った。すると地竜は首を曲げて顔でえりの腕を撫でた。
「ふぉ~」
えりは静かに感傷に浸っている。
「すまねぇ、遅れたか?」
後ろにガルアがいた。
「俺達もさっき来たばっかりだ」
「そりゃ良かった」
「全員揃ったね。それじゃあこの旅の目的について改めて確認しようか」
俺達は団長の前に並んだ。
「この旅は騎士団殺人鬼という僕とアルト君や他の騎士団の団長を襲ったやつを倒しに行く。僕もあれ以来対策を練ってきたつもりだが、どんな状況で会うかわからない。ましてや見つからないかもしれない。そのときは帰るしかない。そしてアルト君達はまだ未成年、危なくなったら必ず逃げてくれ」
「俺は逃げませんけどね」
「本当に危ないときは逃げてね。まぁこんなものかな。それじゃあ行こうか」
俺達は竜車の両隣にあるベンチに座って荷物のベンチの下に入れた。エレイヤの大きいエレキギターは竜車にピッタリ入った。
「綱は僕が持つよ」
「それで、まずどこに行くんですか?」
「まずは騎士団殺人鬼に襲われた第七騎士団の団長が襲われたときにいたロナ町にいくよ」
「わかりました」
竜車はロナ町に向かって出発した。以外と早い。元の世界の車と同じくらいだ。こんなに速度を出して竜車も地竜も俺達も大丈夫なのかと思ったが地竜は全然余裕そうで竜車も飛び上がることもなくスムーズに進んで行く。
「今日は天気がいいね」
「そうですね~」
副団長は団長の隣で話している。こう見るとカップルに見えるな~。
「私も隣に座りたかったな~」
俺の前に座っているえりが二人を眺めている。
「じゃあ無理やり入り込めよ」
「それは二人に悪いじゃん」
「じゃあ我慢しろ。それか俺を助けてくれ」
俺の体には右手にルイナ、左手にエレイヤ、太ももにヨミがいる。めっちゃ邪魔。
ガルアは俺達から一番離れたところに座って目をつぶっている。
「ゆう君はモテモテでいいな~」
「俺はルイナだけで十分なんだけど。お前ら暑苦しいからどけろ」
「そうよ、アルトは私だけで十分って言ってるんだからどきなさい!」
「お前もどけろって言ってんだよ」
「え~」
「俺は寒いからアルトきゅんにくっついてるんだ!」
「なら炎属性の魔力纏えばいいだろ」
「うっ」
「私はアルトお兄ちゃんの座り心地がいいから座ってるだけ。ここのベンチ硬い」
「じゃあルイナに座れ。あと、クッションもあるしそんなに硬くない」
「むぅ~」
俺はごちゃごちゃ言う皆を一人ずつどかした。
「そういえば団長」
「ん?なんだい?」
俺は団長のほうに近づいた。
「俺が襲われた日、他の騎士団の人は誰も襲われてないんですか?」
「そういえばアルト君以外にあの日は誰も襲われてないみたいだね」
「な、なんで俺だけ。それと騎士団殺人鬼に襲われた団長はどれくらいいるんです?」
「僕を合わせて5人だね」
「てことは最低5人はいるんですね。うわ~、大変そう」
「もう引き返して帰るかい?」
「大変って思っただけです。やる気はありますのでそのまま進んでください」
「了解したよ」
俺は元に位置に座った。
5人、か。俺と団長を襲ったあの子みたいな人ばっかりなのかな~?でも体格も全員違ったって言うし、変なおっさんとかだったらどうしよ。まぁ倒すだけだけど。
俺が色々と考えている間にも竜車はからからと音を立てて進んで行った。
約一時間15分後。
「見えてきたよ」
「おぉ!あれがロナ町ですか」
「うん」
竜車は橋を渡りロナ町に着いた。
「よっしょ、いい子にしてるんだよ」
地竜を竜車預かり所というところに預けた。お金を払うと少しの間、地竜の世話をしてくれるところだ。
「着いたのはいいですけどこれからどうします?」
「僕は別行動で聞き込みをしてくるよ。みんなはこの町を見て回ってきて」
「わかりました」
団長は一人で行ってしまった。
「こらこら、暴れちゃいかんぞ。この地竜は大人しい子だと思ったんじゃがの~」
竜車預かり所のおじさんが地竜をあやしている。他の地竜も興奮しているように見える。
「それじゃあみんな、はぐれないようについてきて」
副団長が先頭を歩き、俺達は副団長についていった。
〔竜車〕
・思ったより速い
・風があまり入らないように結界がある
・人が急に出てきたら危ないと思うが、急に出てきたとしてもかわされる。
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ルイナ「なんか嫌な予感がすんだけど~」
アルト「そりゃなんか嫌なことが起こるだろうよ」
ルイナ「嫌なことを乗り越えた先にまたすごく嫌なことが起こる気がする~」
アルト「じゃあ次回を楽しみにしとくよ」
ルイナ「う~、怖いわね~」




