第四十四話 新第二騎士団
『僕は、君より年下だ』
そんな子が騎士団殺人鬼だったなんて。それに団長よりも強い。今度会ったときが最後かもしれない。いや、でも団長は生きて帰って来てるから最後ってわけじゃないか。
それにしてもあの子からは殺気を感じなかった。
『君たち騎士団を皆殺しにすることさっ!』
皆殺しって言ってたけどあれは脅しだろうな。それでも結局、殺すわけでもなく致命傷を負わせるだけ。何がしたいんだか。
『嬉しいこと言ってくれるね』
見た目も声も普通の女の子っぽい感じだったけどな~。
『じゃ、また会おう』
次までにはもっと強くなってないとな。
目を開けるといつもの天井を見える。窓から朝日が差し込んでいる。
もう朝か。まだ眠いがみんなの朝ご飯を作らないといけない。
俺が体を動かそうとすると全身に激痛が走った。
「いっ!」
一瞬だけ大声をあげてしまった。昨日、いや今日、騎士団殺人鬼と戦ったときの痛みがまだ体に残っている。
今のでみんな起きてしまったかもしれない。
「どうした?足でも攣ったか?」
左からエレイヤの小さい声が聞こえた。
「そういうわけじゃないんだけど、まぁ後で言うよ」
「おはよう、アルトお兄ちゃん」
いつの間にかヨミが俺の上に乗って横になっていた。少し痛いが我慢しよう。
「おはよう、ヨミ」
「ふふっ」
そのままヨミは目をつぶった。
「ここで二度寝されても困るんだけど」
「ヨミみんはいいよな、子供だからなんでもアルトきゅんにできて」
「こっちは少し迷惑だが。ってお前もヨミみたいにしたいのか?」
「え、あぁ、まぁ、えっと……うん」
「はぁ~、バカかお前は。ほらヨミも退けろ」
「むぅ~」
俺はヨミを元の位置に体から落とした。
「じゃあ次は俺がやる」
「マジでバカかお前、何やってんだ」
エレイヤはヨミと同じように俺の上に乗って横になった。
「落ち着く~」
「重たいから早くどけ」
「アルトお兄ちゃんは私のもの!」
「アルトきゅんは俺のものだ!」
「強いて言えばルイナのなんだけど。そんなことより、俺の上で暴れるな。痛いんだよ」
「どこが痛いんだ?俺が直してやる。ヨミみんより役に立つだろ」
「私のほうが癒せれるよ。エレイヤお姉ちゃんよりずっとずっと癒してあげるよ」
「二人とも互いを蹴落とそうとするな。しかも二人とも回復魔法使えないだろうが」
「あっははは」
見るとえりが笑っている。
「ごめん、起こした?」
「ううん、ずっと起きてたよ。そしたら三人とも面白いんだもん。あははっ」
なぜかツボに入ったようだ。
「と、とりあえず三人とも起きてルイナの部屋で着替えてこい。俺は朝ご飯作るから」
『は~い』
三人とも部屋から出てルイナの部屋に行った。
「体中痛ってーなぁ~。あの子の強さが体に染み渡るぜ」
俺は痛みが走る体を動かして着替え、キッチンへ行き、朝ご飯を作った。
『いただきまーす』
「エレイヤ、お前学校はどうするんだ?」
「サボる!」
こんな自信満々にサボり宣言するやつ初めてみた。
「あ、だから明日も明後日もここに泊まらせてもらうぞ!」
「はいはい」
「それで、なんでアルトきゅんは起きたときなんで大きい声あげたんだ?体が痛いからか?なんで痛いんだ?」
「えっと、体が痛いから声あげて、なんで痛いかと言うと……」
俺は騎士団殺人鬼とあったことを話した。
「え⁉今大丈夫なの⁉」
「痛いけど大丈夫だよ。骨折とかもしてないと思う」
「え⁉それで無事に帰ってこれたのか⁉」
「無事ではないけど傷とかはないかな。運が良かっただけ」
「え⁉アルトお兄ちゃんって私のこと結婚したいくらい好きなの⁉」
「うん、それは違うな。ヨミはどさくさに紛れて変なこと言うな」
「でもアルトお兄ちゃんが元気で良かった」
「心配してくれてありがとさん」
そう言って俺は朝ご飯の後片付けをした。
「これで終わりと。そういえばあの火事になった家の人は大丈夫かな~?」
「アルトきゅん、手紙が来てるぞ」
「手紙?ルイナかな?」
ルイナではなく副団長からだった。赤色の手紙を見てみると『緊急招集』と書いてある。
「緊急?」
その手紙の内容は
『アルト君に確認したいことがあります。できるだけ早く今から騎士団訓練場へ来てください』
とだけ書いてあった。
「お、俺なんか悪いことしたっけ」
「アルトお兄ちゃんは悪いことなんてしない」
「まぁ行ってみるか。エレイヤも来るか?」
「もちろんだ」
ということで騎士団訓練場へ来た。いつもと違って静かだ。俺達は騎士団訓練場第二本部に向かった。
すると本部手前の掲示板のところに人だかりができていた。一人の団員の人が気づいて副団長に声を掛けた。
「来ましたね、アルト君」
「確認したいことってなんでしょう?」
「こちらに来てください」
俺は掲示板の前まで来た。
「こ、これって」
そこには一枚の貼り紙がある。そこには
『高校生も攻撃した。次はお前たち騎士団団員の家族だ』
と赤い文字で書いてあった。
「アルト君、騎士団殺人鬼に襲われたんですか?」
副団長は俺の肩を掴んで言った。結構痛い。
「は、はい。今日の0時30分くらいに」
「傷はなさそうですけど、大丈夫なんですか」
「はい。傷はないですけど痣がいっぱいで。運よく団長みたいにはなりませんでした」
「よ、良かったぁ~」
副団長は突然、力が抜けたように座り込んだ。
「副団長⁉」
「わ、私、アルト君になにかあったらどう責任を取ればいいのかわからなくて。良かった~」
「それより『高校生』ってことはもしかしてルイナも」
「それは大丈夫です。学校に連絡してルイナちゃんの安全を確認してもらいました」
「良かった」
俺は副団長に手を出して起こした。
「それと、この貼り紙に書いてあること」
「『次はお前たち騎士団団員の家族だ』ですか」
「はい。これはかなりマズいことになりましたね」
「そうですね」
今、騎士団全体の士気が落ちてる中、さらにこんなこと言われると
「副団長、俺、騎士団辞めるっす」
こうなるだろうな。
「そ、そんな、一緒にまだまだ頑張りましょう」
「騎士団にいると家族が危険になるっていうのに頑張れって言うんすか!」
「うっ、それは……」
「俺も辞めます」
「ごめんなさい。私も」
「僕も」
次々と脱団を宣告していく団員。副団長はなにも言えず、ただ立っていた。
そして残ったのは副団長と俺達のみ。副団長の頬に涙が流れる。
「また、誰もいなくなっちゃった……。もう誰も失わないって約束したのに……」
「……副団長、よくわかりませんが全員いなくなったわけじゃありませんよ。俺がいます。それにルイナだって」
「アルト君。いや、もうアルト君も脱団してください。これ以上アルト君もアルト君の家族にも危険な目に遭わせたくないから……。ルイナちゃんも……」
「副団長、言いたいことがあるんですが」
「……はい、なんでしょうか」
「まず一つ、俺とルイナには家族がいません。そして二つ、俺とルイナは危険なこと上等で騎士団に入ってます。今回だって騎士団殺人鬼から逃れられましたので大丈夫です」
「それは運が良かったって」
「運も実力のうちですよ。とにかく俺とルイナは絶対脱団なんかしません」
俺は副団長の潤った目を見て言った。
「アルト君は、強い人ですね」
「そんなことありませんよ。それにその堅苦しい喋り方もやめてください」
「……うん、わかったわ」
副団長は涙を拭いた。
「私もアルト君に負けてられない。騎士団殺人鬼だろうがなんだろうが倒してやるわ!」
「その意気です」
でも、第二騎士団ほとんどがいなくなってしまったのは辛い。戦力としては団長、副団長、それとさっきから静かに聞いているヨミやエレイヤ。えりはまだまだだがこれから強くなるだろう。そして俺とルイナ。これだけになるのか。やっぱりもう少しほしいところだが。
「うーっす。すんません、遅れました。ぁあ?なんでこんな人少ねぇんだ?」
「ガルアがいたか」
俺達は一旦落ち着いて本部って話し合った。
「なるほどなぁ。状況は理解した」
「団長は今どこにいるんです?」
「今はこのことを騎士団全本部に報告をしに行ってますよ」
「え、また一週間くらい掛かるんですか⁉」
「いや、今回は遊んでいる余地がないから本気で向かってます。今日の昼には帰ってくると思うけど」
「本気出したらそんなに早いのか」
「とりあえず今からどうするか話し合いましょう」
「やっぱり騎士団殺人鬼を見つけて倒すしかないと思いますけど」
「そうだよね、でも姿もわからないからどうやって見つければいいんだろ」
「あ、そういえば俺、騎士団殺人鬼の顔見ました」
「えっ!ホント⁉どんなのだった⁉」
「えっと髪が銀色で外ハネしたくせ毛、または寝ぐせ?があって、赤い目をしてました」
「ふむふむ」
「んで、凛々しい顔でしたね。でも可愛かったですけど」
「な、なるほど?」
「あとは団長の言ってたことを同じですね。あっ、そうそう俺より年下らしいです」
「えっ、それが本当ならその子、本当に人間なのかな」
「確かに俺より年下なのに桁違いな強さですし、人間かどうか疑いたくもなりますが人間だと思いますよ」
「そんな子がこの世にいるなんて。騎士団に入ってくれたらどんなに心強い戦力になってくれるか」
「できるなら味方に付けたいですよね~」
「それはそうと、結局どーすんだぁ?」
「……騎士団殺人鬼を倒す旅に出ましょう」
「た、旅ですか」
「うん、帰ってくるのがいつになるかわかんないけど付いてきてくれる?」
「俺は命令に従うまでです」
「ありがとう、ガルアさん」
「俺もいいですけど、ルイナとエレイヤは学校があるし、そもそもみんなには危険な目に遭わせたくない」
「俺は学校になんか理由付けて休ませてもらうぜ。それに俺の得意属性を忘れたか?自分の身は自分で守れるさ!」
「私も、星の力はみんなが知ってる通り強い。私も私以外も守れる。子供だからってナメないで」
「私だって、秘密にしてたけどゆう君とルイナちゃんが訓練してるとき特訓してたんだから!大丈夫だよ!」
「みんな……よし!じゃあみんなで旅に出よう!」
『おぉ!』
こうして新第二騎士団は旅に出ることになった。このメンバーなら騎士団殺人鬼を倒せるかもしれないな。多分。
「おっ、帰ってきた」
夕方になってあの空飛ぶ新幹線が帰ってきた。扉が開き、ぞろぞろと疲れ切った生徒が降りてくる。
「アルト~!!」
この約三日ぶりに聞く声は。扉からルイナが凄い勢いで出てきて、俺にいきなり抱き着いてきた。
「ルイナ、うっ!」
その勢いで後ろに倒れそうになったが、右足を後ろに引いて耐えた。
「会いたかったよぉ~」
「俺もだよ。おかえりルイナ」
「ただいま、アルト」
いつものルイナだ。これも癪だけど落ち着くな。
『ひゅ~!』
ルイナの友達がにやにやしてこっちを見ている。よく見ればほとんどの生徒に見られていた。
「お、おいルイナ、そろそろ離れろ」
「やだ!もう今日は離れない!」
「くっそ恥ずかしいからマジやめてほしいんだけど」
そう言ってもルイナはさらに強く抱きしめてくる。
「仕方ない」
「ふぇ?」
俺はルイナをお姫様抱っこした。
「うぇ⁉ちょっとなに⁉」
「ほら先生も待ってるんだし行くぞ」
俺はルイナをお姫様抱っこしたまま生徒が並んでいる列の後ろに座った。そのあと先生の話を色々と聞いて解散となった。
「アルト~、ずっとこうしててぇ~」
「今回はそうしてあげるよ」
「やった~!」
ただ久しぶりだからやってあげてるのか、それとも自分がしたいのかわからないが、久しぶりだからということにしておく。
「ルイナっちと会ったら急に機嫌良くなったな」
「私もやる」
ヨミは飛んでルイナの上に乗った。少し重くなったがまだまだ余裕だ。
「ヨミちゃんもただいま~!」
「おかえり、ルイナお姉ちゃん」
ルイナは上にいるヨミを抱きしめた。ヨミも嬉しそうだ。
「えりかちゃんもただいま!」
「おかえり。私も会いたかった」
「ふふっ、私も。あ、エレイヤちゃんも来てたのね」
「よう、ルイナっち。相変わらずラブラブだな」
「そんなことないわよぉ~、えへへ~」
「そんなことある状態なんだけどな。まぁ帰るか。えり、ルイナの荷物持ってあげて」
「いいよ~」
「俺も持つ!」
ルイナ「修学旅行中ずっとアルトのこと考えてたのよ」
アルト「お前ちゃんと楽しめたのか?」
ルイナ「それはもちろん。夢の町、楽しかったな~」
アルト「ならそこのネズミのキャラの真似してみて」
ルイナ「いいわよ。ハハッ、全員皆殺しだ」
えり「そんなこと言わないし消されるよ⁉」




