第四十二話 嘘か真か
次の土曜日。
私は近くの高校に通っている一年のミスリアと言います。
私のお兄様は成績優秀でちょっと強がりな所がありますがとても優しいお人です。でも私は成績も普通、運動も出来ない、臆病で周りに流されてたり変な人にも絡まれたりする人間です。
ですが私にもちょっとした幸せが訪れました。あの学校の人気者、アルト先輩と買い物に行くことになったのです。今日はその日、町の中心部にある噴水の広場で待ち合わせ中です。
「そ、そろそろなんだけどな~」
「お~い、ミスリア~」
後ろから声がした。
「ア、アルト先輩!ってどうしたんですかその顔!」
「あはは、これは、その……」
俺とミスリアが会う一時間半前。
「はぁぁ⁉一年のミスリアちゃんと買い物ぉ~⁉」
「な、なんだよ。可哀そうな子だったからいいだろ、約束したんだから。いいから黙って朝ご飯食え」
「あのねぇ!彼女がいるのに他の女と買い物と行くってどういう意味かわかる⁉どういう意味かわかる⁉」
「浮気者って言いたいのか?」
「そうだけどそうじゃない!アルトがそういう性格っていうのはわかってるからそこまで言わないけど言うわ!」
「さっきから意味不明なんだけど。結局なんなんだよ」
「だ~!もう!」
ルイナは俺の襟元を掴んだ。
「ミスリアちゃんに変なことしたら許さないわよ。されてもね!」
「それはどうだろ――」
「ふん!」
ルイナは俺にビンタをした。
「痛ってええ~!」
「わかった?」
「わかった、わかったから」
「冗談で言っただけなんだけどな~」
「アルト先輩も大変なんですね……」
「んで、まずはどこに行きたい?」
「えっとアルト先輩に私の服を選んで頂きたいのですが」
「服⁉」
「い、嫌でしたか?」
「嫌じゃないけど俺あんまりファッションってものがわからなくて」
「それでもアルト先輩に選んで欲しいんです!」
「ミスリアがそういうんなら行こう。選んであげるよ」
「あ、ありがとうございます!」
前会った時より顔色が良くなっている。笑顔も幸せそうだ。
「それじゃあさっそく服屋に行こう」
「はい!」
「アルト先輩、こ、これでいいのでしょうか」
「ああ!バッチリだ!」
俺がミスリアに着させたのは黒くて裏地が赤いドレスのような服。カッコいい服だ。どっちかというとルイナに着させたいところだが女の魔導士に服を選ぶとしたらこれしかないだろう。
今まではルイナと似た真っ白な服だったので真逆の色だが個人的にはこっちのほうがいい。
「アルト先輩が言うならこれにします」
「お金は俺が払うよ」
「そ、そんな、前に助けてもらったのに。私の家はお金持ちなのでこれくらい」
「いいからいいから」
俺達はレジで服を買って服屋を出た。
「……どうしてアルト先輩はそこまで私に優しくしてくれるのですか」
「どうしてって、う~ん。強いて言えば先輩だから?」
「どんな先輩でもそんなことをしてくれる人はいませんでした。みんな私をお金だとしか思ってなくて……」
「それは酷いな。だからこそミスリアにとっていい先輩でありたいから優しくしてるんだよ」
「アルト先輩……」
「あっ、別に後で礼をたっぷり返せなんて思ってるわけじゃないからね⁉」
「ふふっ、わかっていますよ、アルト先輩」
「お、おう、そうか、ならいいけど」
一瞬可愛らしい笑顔に動揺してしまったが俺はすぐにルイナのことを思い出して落ち着かせた。まぁエレイヤと同様に可愛いだけで好きになることはないだろうな。
先輩っていうのもやっぱり疲れるけど悪いもんじゃないな。
そのあともミスリアと買い物は続きミスリアの緊張も解けていった。
「今日はこの辺りにしましょうか」
「なら送っていくよ」
「本当にアルト先輩はお優しいですね。まるでお兄様のように」
「ミスリアのお兄さんってどんな人なの?」
「とっても妹想いで家族を大事にしていられて頭が良くていつもカッコつけて剣術が強いように見せてますが本当はダメダメで……」
あれっ?そういえば金持ちで頭だけ良くて剣術がダメダメな人っていたような……。
「ミスリア」
「お、お兄様!」
上を見るとあのくそ雑魚有毒ナメクジ先輩が飛んでいる。
「ま、まさかミスリアのお兄さんって」
「シアンお兄様をご存知だったのですか?」
やっぱりか。
「ま、まぁ一応」
「遅いから見てみれば、まさかアルト君がミスリアの彼氏だったなんて」
「違いますお兄様!アルト先輩は彼氏ではありません!」
「そうなのか?まぁいい、ほら帰るぞ」
「は、はい」
「それではアルト君、また会おう。そしてミスリアの友達になってくれてありがとう、と言おう」
「アルト先輩!今度は私の家に遊びに来てください。お菓子もジュースもお酒もご馳走しますから!では!」
ミスリアは手を振ってシアン先輩と帰っていった。
「な、なんだったんだ、あの兄妹は」
兄妹であんなに性格が違うなんて。よく見れば髪色も目の色も似ていたな。
今日はミスリアにとって思い出に残る日だったらいいな。そう思いながら家に帰った。そしてルイナにぐちぐちと質問攻めされたのであった。
「合体魔法⁉よく出来たねアルト君」
「まぁあんまり耐えられませんけどね」
次の日、俺は騎士団訓練中、副団長と戦いながら話している。
「副団長は合体魔法出来ないんです?」
「今のアルト君と同じくらいなら出来るけど」
「へ~。って喋りながら弓矢避けるの集中出来ないんでもういいですか」
「あ、そうよね」
俺は戦いに集中した。
最近、騎士団訓練に行くのに少し気が乗らない。なぜなら一ヵ月と一週間前ほどにあった騎士団殺人鬼事件により騎士団の士気が下がっている。
そのせいで休む人が増えたりしてあまり楽しくない。元々騎士団訓練は楽しむところでないけど、ミラス団長やクレス副団長、団員の人とも仲良く話せるようになったのし、このままだと第二騎士団が崩壊してしまう。
さらには騎士団殺人鬼は第二騎士団のミラス団長以外にも他の騎士団の団長にも襲ってきたらしい。
それぞれ同じなのは黒いフードを被っているのと『騎士団殺人鬼』と言ったのと物凄く強い人間ということだけだ。それ以外は体格、声、武器や襲ってきた時間、日にちも違う。
だが襲われてない騎士団もあるらしい。結局、なにが狙いなのかわからない。どの団長も致命傷を負って帰ってくるだけ。
物騒な世の中になったものだ。
「あ~、つっかれた~。副団長はやっぱり強いな~」
「アルト君も騎士団に入った時よりかなり強くなってるからいつかは私より強くなると思うよ」
「それまでどれだけ時間いるんですかね~」
かすり傷が何個かある副団長と左腕に大きい傷がある俺は休憩所に向かっていた。すると団長がこちらに走ってきた。
「探したよ二人とも」
「え、俺もですか?」
「どうしたんですか、団長」
「回復させたいところだけど、とりあえず付いてきて」
ミラス団長は騎士訓練場第二本部に来た。
「今日からまた新しい団員が入ることになったからクレスも挨拶してくれ」
「わかりました」
「俺を呼んだ理由は?」
「そうそう、アルト君を呼んだ理由はね」
俺達はとある一室の扉の前に来た。
「こういうことさ」
団長は扉を開けた。そこには手に黒いグローブを付けようとするガルアがいた。
「ガ、ガルア~⁉」
「んぁ?よぉアルト」
「な、な、な、なんでお前が……」
「こちらは今日から第二騎士団に配属されることになったガルア・ダル・グレストさんだ」
「よろしくお願いします」
ガルアは丁重に副団長に一礼した。
「私は第二騎士団の副団長です。名前は……あまり言いたくないので副団長とだけ。よろしくお願いします」
ガルアと副団長は握手を交わす。
「え、ま、マジでガルアが騎士団に入るんですか」
「うん。二人とも知り合いなんだってね」
「まぁ知り合いというか腐れ縁なんですけど」
俺はガルアを引っ張って団長と副団長から離れた。
「なんでお前が騎士団に入ってんだよ。てかお前みたいなやつが入らせてもらえんのか?」
「普通に騎士団訓練受けて合格しただけだが?」
「そ、そんなあっさりと……」
「俺はお前より強くなるために騎士団に入った。次戦うときは絶対俺が勝つ」
「はいはいわかったよ」
ガルアは団長のところに戻って色々と説明を聞いた。
前に戦ったのが六日前なのに、それから俺に騎士団の話を聞いては入ったってのか。行動が早いやつだ。
そのあとガルアは団長と戦い、俺よりも早く団長に一撃くらわせた。あいつ魔力で硬化させたら絶対俺に勝てると思うんだけどな~。
「アルト、あれマジ?」
訓練で戦い終わったルイナが俺の隣に来た。
「マジらしい」
「ヤバいわね」
「ヤバいよな」
俺はひとまず副団長とルイナと一緒に休憩所に行った。
「ガルアが騎士団に……どーなるんだろ」
「暴走族を騎士団に入れるなんて騎士団もどうかしてるわよ。でも心強い戦力にはなってくれそうじゃない?」
俺とルイナはベットの上で回復してもらいながら話している。
「だといいけど」
未だに信じられない。
「そのガルアって人、怖いの?」
「そうか、えりは知らなかったな」
えりとヨミはいつも休憩所にいる。俺はガルアと出会ったときのことを話した。
「そんな人によく勝てたね。二人とも凄い!」
「まぁ、二人掛りだし油断させて隙を突いただけだけどな。でも今の俺とルイナなら隙を作らなくても勝てると思うんだけどな~」
「当ったり前でしょ!この私とアルトが合わされば魔王だって倒せるわ!」
「それは言い過ぎだ」
「ならヨミちゃんとエレイヤちゃん、そしてえりかちゃんの力があれば魔王を倒せるわ!」
「えっ!私も⁉」
「あれっ、嫌、だったかしら」
「ううん、嬉しい。まさかまだ弱い私も入れてくれるとは思わなかったから」
「えりは訓練すれば俺と同じくらい強くなれるさ」
「ありがとう、ゆう君、ルイナちゃん。私もみんなみたいに強くなるから一緒に魔王、倒そうね!」
「ああ!」
「ええ!」
「私も、アルトお兄ちゃんみたいに強くなる」
俺達は拳を合わせた。
「絶対に倒そう!約束だぞ」
『うん!』
魔王なんてそうそう倒せるものではないがこのメンバーなら倒せる気がする。さらにガルアもミラス団長も副団長もいればきっと倒せるであろう。多分だけど。
「こんなフラグが立ちそうなこと言っちゃったけど大丈夫かしら」
「なんだ?弱気になってんの?」
「そんなわけないでしょ!」
「その調子なら大丈夫そうだな。んじゃそろそろ出るか」
「ふふっ、そうね」
俺とルイナはヨミとえりに手を振って訓練を再開した。ガルアと戦うことはなかったが、ガルアは何十人かと戦って何度か勝ったらしい。
ガルアは俺とルイナと違って大人なので毎日訓練場に来た。
〔ミスリア〕
16歳 女 8月3日生まれ 身長 165cm 体重 秘密
【特徴】
・長い紺色の髪
・水色の目
・黒くて裏地が赤いドレスのような服
【性格】
・内気
・兄と違って家の自慢はしない
・兄よりは強い
・読書が趣味
【ジョブ】
・魔導士
【得意属性】
・土
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アルト「今回本当なのか嘘なのか信じがたいことばっかりだったんだけど」
ルイナ「残念ながら全部本当のようね」
アルト「あのミスリアがあのくそ雑魚有毒ナメクジ先輩の妹なんて信じられるかよ」
ルイナ「いい加減その呼び名やめなさいよ。気づかれたら金持ちに消されるわよ」
アルト「まさか金持ちが騎士団殺人鬼だったりして⁉」
ルイナ「何言ってんの?頭大丈夫?」
アルト「冗談です。金持ちの人怒らないでください」




