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第三十九話 それぞれの想い

 俺は暑くなったので部屋から出た。


「星でも見ようかな」


 玄関から外に出て飛んで屋根に座った。


「涼しいな。風もあんまりないし」


 空を見ると沢山の星と下弦の月があった。


「綺麗だな~。やっぱり元の世界より星が多いのかな?」


 俺はしばらく空を見上げていた。すると玄関の開ける音がしてエレイヤが屋根に飛んできた。


「エレイヤか」

「よぉ」

「なんの用?」

「アルトきゅんが中々帰ってこないし、二人で話したいって思ってな」

「そういえばお前と一対一で話したことってほぼないよな」

「だから色々聞きたくってさ」


 エレイヤはそういうと俺の隣に座った。


「星が綺麗だな」

「そうだな~」

「ちゃんと聞くけどさ、アルトきゅんはなんでルイナっちの家に住んでるんだ?」

「それは~……色々あってな」

「色々って?」

「お前が信じなさそうなこと」

「信じるから」

「めんどくさくなりそうだから言わないよ」


 元の世界のことめっちゃ詳しく聞かれそうだし。


「ちぇ、まぁいいか。あとアルトきゅんって俺のことどう思ってる?」

「それはどういう意味だ」

「普通にどう思ってるか」

「う~んと、音の力がカッコよくて、元気だし、面白い子だなって思ってる」

「俺って可愛いか?」

「え、うん、まぁ、俺がお前と同じ年齢なら一目惚れしてるかもな」


 俺はエレイヤから目を逸らしながら言った。


「にひひっ、ありがとうな!」

「なんでこんなこと聞くんだ。なんかあったか?」


 エレイヤは空を見上げた。


「……私ね、同じ学年の人から女と見られてないって言われてちょっと気になってたんだ。昔から男みたいに遊んで話して過ごしてきて私って本当は女じゃないのかもって思ったときもあった。別に興味があるのはギターだけで男なんて気にしてなかったんだ。でも最近好きな男ができてな。けどその人にはもう恋人がいるんだ」

「そう、なのか」

「初めて見た時からカッコいい人だなっと思って年上の人だけど話しかけたら面白くてたくましい人だった。あんまり会えないけど会ったら優しく話してくれてその人といるといつも楽しくて……。だからもっと女を磨かないといけないのかなと思ってな」

「別にお前はお前でいいと思うけどな。口調は悪いけど普通の女の子みたいに可愛いところもあるし、お前のその性格が魅力になると思うけど。その好きな人にもっとアピールしたらいいんじゃないか?」

「……はぁ~、こういうのを鈍感っていうんだな」


 エレイヤは俺を呆れた顔で見た。


「鈍感?」


 最近……もう恋人がいる……年上……あんまり会えない……。


「おまっ!まさか!」

「ここだけ勘がいいのかよ」


 エレイヤは俺に体を向けた。


「その通り、私はお前に一目惚れしたんだよ」


 エレイヤは恥ずかしりながらもしっかり目を見ていった。俺は開いた口が閉じなかった。


「べ、別にお前にはルイナっちがいるから付き合ってほしいとかは言わないけど、これからも来たら私と、話してくれないか?」

「あ、あぁ、話すよ。これからもずっと」

「ありがとう」


 そういうとエレイヤは立ちあがった。


「あぁ~、すっきりした。本当にありがとうな、話聞いてくれて。じゃあ俺はもうみんなのところに戻るよ」


 エレイヤが屋根から少し歩いて降りようとすると立ち止まった。


「どうした?」


 するとエレイヤがこっちに走ってきた。


「えっ、ちょ」


 俺の頬に温かくて柔らかい感触が伝わる。


「お、お前、い、今……」

「にひひっ、大好きだぞ」


 エレイヤはそう言い残すと屋根から降りて家に入っていった。


「な、何だったんだ」


 俺は今あったことを思い出す。


「あいつは俺のことが」


 俺にエレイヤが好きという恋愛感情はない。ただやっぱり恥ずかしくなってくる。でもエレイヤも俺の気持ちをわかってそうだったし、それをわかって言ったんだからルイナと仲が悪くなるっていう展開もなさそうだと思うけど。


 まぁ、エレイヤが頑張って気持ちを伝えてくれたんだし、いつか少しぐらい期待に応えるようなことしないとな。


 俺は水魔法で顔を洗って自分を落ち着かせた。するとまた玄関の開ける音がして今度はヨミが来た。


「さっきエレイヤお姉ちゃんが顔赤くしてたけど何かあったの?」

「と、特にはないけど。んで、お前はなんで来たんだ」

「私もお話ししに来た。ルイナお姉ちゃんとえりかお姉ちゃんも私の後に話しに来るって」

「俺は二者面談をする先生か」


 ヨミは俺の膝を上に座って胸にもたれかかった。


「星が綺麗だね」

「エレイヤと同じこと言ってんな」

「アルトお兄ちゃんはさ、なんで私の力に怖がらなかったの?」

「なんでって言われても……怖くなかったから?」

「なんで?」

「まだ聞くか。えっと、その力で助けてもらったし、カッコいいから?答えになってるかわかんないけどお前はカッコいいし可愛いよ」

「……そういってくれたのはアルトお兄ちゃんだけだよ。ありがとう」

「俺の周りにいる人はみんなそういってくれそうだけどな」

「私の力で同じ歳くらいの人を助けたことあったんだけど、私、少し強く力を使うと目が赤くなって気迫に満ちていって、助けた人に悪魔って言われたの。次の日にその人が重い病気にかかっちゃってみんな私のせいだって、悪魔のせいだって言ってきて私に石に投げてきたり水魔法で溺れさせられそうになったりして……」

「ヨミ……」


 ヨミの声がどんどん震えていく。大変だったんだな、で済むものでもないか。


「私、人を助けてもみんなが不幸になるだけなんだなって思ってきて……でも親に捨てられて、アルトお兄ちゃんに会って、優しくしてくれたんだからもう一回人を助けてみようってやったらこんな素敵な場所に来れた」


 ヨミは涙を手で拭いて鼻をすすって俺のほうを見た。


「私を見つけてくれてありがとう。アルトお兄ちゃん」


 鼻と耳が赤くなっていて潤った目をしているその顔は悲しそうだがどこか幸せそうな顔をしていた。


「どういたしまして」


 俺はヨミの頭を優しく撫でた。ヨミは幸せそうに笑った。


「何か俺に出来ることがあったらいつでも言えよ」

「ふふっ、じゃあさっそくだけど」

「早いな」

「キスしよ」

「それは出来ない」

「ケチだな~」

「ある意味悪魔だよな、お前は」

「じゃあほっぺでもいいからして」

「なんでそんなキスしたがるのかわからんが、それくらいならまぁいいか」


 俺は目をつぶるヨミの頬に恥ずかしいがキスをした。


「こ、これでいいだろ」

「私もお返しに……」

「いらな――」


 ヨミは俺を言葉を聞きもせずエレイヤにされたほうとは逆の頬にキスをした。


「ったくお前はしょうがないな~」


 キスをし終わるとヨミはうつむいた。


「どうした」

「き、キスするのって恥ずかしいね」

「今更かよ」

「恥ずかしいからもう戻る」


 ヨミは俺の膝から立ち上がると走って降りて家に入った。


「あいつにも恥ずかしいっていう感情があってちょっと安心したな」


 って俺は子供のキスだけで恥ずかしがってるとかバカか。


 俺はキスされたところを拭いた。ルイナにバレたらヤバいし。


「次はどっちが来るのか」


 玄関の開ける音が聞こえてえりが屋根に飛んできた。


「ヨミちゃん泣いた跡があったけどゆう君泣かしたの?」

「俺といえば俺だけど悪いことじゃないよ」

「ふ~ん」


 えりは俺の隣に座った。


「わぁ~、星が綺麗だね」

「はいはいそうですね」

「適当だな~」

「お前はなにを話しに来たんだ」

「えっとね、私この世界に来てもう1ヵ月くらい経つんだけどね、元の世界のこと考えちゃうんだ。学校とか友達、家族のこととか。やっぱり会いたいって思っちゃうんだ」

「俺も時々そう思うよ」

「ゆう君もなんだ……私たちって本当に元の世界に帰れるのかな」

「帰れるさ。でも俺はルイナとヨミとエレイヤを置いて帰るわけにはいかない」

「そう、だよね。ゆう君はすごいな、一人で異世界に来ても動じずに、しかも色んな人と仲良くなってるし強くなってる。騎士団訓練だって血が出て痛いはずなのに頑張って耐えて、魔王の幹部とも戦ってる」

「異世界に行きたいって言ったのは俺だし、仲良くなったのはルイナのおかげだし、訓練で頑張ってるのはルイナに負けたくないからだし魔王を倒すのを手伝なきゃならないし、魔王の幹部と戦ったっていっても実際に戦ったわけじゃないし攻撃くらってヨミに助けてもらわなきゃどうなってたか。だから俺はすごくなんかない」

「すごいよ。私はゆう君に憧れる」

「そこまで言うんなら、ありがとう」

「……なんで私たち異世界に来ちゃったのかな」

「さぁ?異世界に行ってみたいなんてやつ沢山いるのになんで俺は来たんだろうな」

「誰かが召喚したのかな?」

「だとしたら召喚した本人くらい出てきてもいいだろ。可能性があるのはルイナだけどあいつがしたとは思ってないよ」

「ホントに~?それフラグなんじゃ」

「俺もそう思った。でもそんな素振りしないし、もしかしたらルイナの記憶は今消しているっていうやつかなとか思ったよ。それでも俺はルイナを信じることにした」

「私も信じる。なら誰が?」

「わかんねーよ。結局は召喚したやつの望みを叶えてやったら元の世界に帰れるんじゃねーの」

「どんな望みなんだよ召喚者~!」

「気持ちはわかるけど、夜に大声出すな」

「ごめんごめん」

「……他になんか話したいことあるか?」

「ない」

「そうか。悩みごととかあれば言えよ。この世界でお前のこと一番知ってるのは俺なんだからさ」

「うん!」


 えりは立ちあがると


「それでは私はこれで去るとしよう!雷の一瞬の光のように私は闇に紛れ消える」


 そう言ってシュッと家に入っていった。


「あいつも中々速くなったな。そろそろ銃を買いにいくか」


 次はルイナか。めんどくさそうだけど二人っきりの時間が出来たしいいか。


 玄関の開ける音がしてやはりルイナが飛んできた。


「えりかちゃん安心した顔してたわね。悩みでも聞いたの?」

「一応悩みかな?」

「へ~、みんな色んな顔して帰ってくるけど、どんなこと聞いたの?」

「い、色々」

「教えてくれないならいいわよ」


 ルイナは俺の隣に座った。


「星が綺麗ね~」


 もう何も言うまい。


 ルイナのほうを見ると期待した顔をしている。

 『君のほうが綺麗だよ』待ちだろうな。


「はいはい、ルイナのほうが綺麗だよ」

「やった~。ふふん」


 ルイナは俺の腕にくっついた。


「そういえばお前、お化け屋敷の人形の声お前だろ」

「え!わかってたの?」

「途中、間があったし、ボイスチェンジャー使ってたけど声質変わってたし、聞くことがお前だしな」

「わかっててあんなこと言ったの⁉」

「もちろん」

「ホント性格悪いわね!」

「お前に言われたくないけどな。で、お前は話すことないのか」

「逆にアルトはないの?」

「あるといえばある」

「なに?言ってみて」

「今更で聞きずらいんだけど、俺なんかのどこを好きになったの?」

「そ、それは……」

「お前が変になったのは騎士団訓練に初めて行った後のことだったから訓練のときに何かあったか?」

「え~っと、訓練でアルトと私、戦ったじゃない?あのとき好きになったの」

「す、好きになる要素あったか?」

「その、闇魔法使うときに諦めないところがカッコいいって思って、それで私の詠唱魔法とアルトの刀がほぼ互角ですごいって思って……好きになった」

「そ、それでなのか」

「後から気づいたけどアルトは不安そうな人には優しくしてあげて不安が解けたら裏表なくその人に話して、そういうところでみんながアルトに惚れちゃって、その性格は嫌なときもあるけど好き」


 ルイナの顔がだんだん赤くなっていく。


「アルトとなら楽しくいじり合って話せることができて幸せなの。アルトとなら自分を隠さず自由でいれるの。アルトとならどんな敵でも倒せそうなの。アルトとなら、これからも幸せにしてくれそうだから、私はアルトのことが大好き」


 ルイナは不意に俺を見て優しい笑顔で言った。その可愛い笑顔に俺はうつむいてしまった。まるで初めてルイナと会ったときのように。


「照れてるわねぇ~、ふふっ」

「て、照れてないっての!」

「ほら私は言ったんだからアルトも私の惚れたところ言いなさいよ」

「い、いつか言うよ」

「今!」

「今は無理。今は勘弁してほしい。本当にいつか言うから今は許して」

「ほーんとしょうがないわね」


 俺は深呼吸して自分を落ち着かせた。


「と、とりあえず、俺を好きになってくれて、あ、ありがとう」

「こちらこそありがとう。私を好きになってくれて」


 少しだけ沈黙が続いた。ルイナのほうを見るとまた期待した顔をしている。『キスをする流れよ!』って顔だな。


「お前はなんでそんなにキスしたがるんだ」

「あれっ?わかっちゃった?なんでって、そりゃキスしたら愛が深まるし欲だからよ。だからしましょうよ~」

「はぁ~、わかったよ」

「ん!?えっ!?ホントに言ってる?キスよ、キス。わかってる?」

「承知の上だよ」

「いっつもなら拒否してくるのに⁉」

「時々甘えてくる人が好きって言ったろ。時と場合によってはするよ。お前はいつでもどこでも言うからしてあげないだけだ。わかったら静かにしろ」

「で、でもそんな急に」

「いつもしてほしいって言ってるのに。ならしないか?」

「する!するわよ」


 ルイナは深呼吸して俺の目をしっかり見た。俺も覚悟を決めた。


 俺とルイナは互いの唇をゆっくり近づかせて、ついに触れた。


 ちゃんとしたキスなんてしたことないからよくわからないが、ルイナが口の中に舌を入れてきた。かなりがっついてくる。


 こいつホントに初めてかよっ――。


 少し息苦しいが、ルイナが攻めて負けているわけにもいかねぇ。


 俺は舌をルイナの口に入れてルイナの舌の周りを舐め回した。それにびっくりしたルイナは舌を引っ込めた。が、すぐに戻して仕返しで俺の舌も舐め回された。


 いつの間にか喧嘩のようになって攻めたり引いたりの繰り返しとなった。ふと我に返って口を離した。


『はぁ、はぁ』


 ファーストキスでこんなに長く激しく疲れるキスをしたやつなんているのか。


「はぁ、これで、満足かよ」

「えぇ、はぁ、満足したわ」


 俺とルイナは息を整えて座りなおした。けどキスをしたのが恥ずかしくなってなにも話せなくなった。


「……帰るか」

「う、うん。へくしゅん!」

「少し寒くなってきたか?早く家に入ろう」


 ルイナは鼻をすすり、俺とルイナは立ち上がって屋根から降りて家に入った。すっかり湯冷めしてしまったがこの世界には便利な炎魔法がある。炎魔法を調整した魔力を体に纏わせた。


 俺の部屋に入るとヨミとエレイヤとえりが俺のベットで寝ていた。


「こいつら」


 起こそうと思ったがぐっすり眠っているので起こせなかった。


「どうしよう」

「じゃあ私のベットで、寝る?」

「ん~、そうするか」

「えぇ⁉ホントに⁉」

「ならソファーで」

「わ、私のベットでいいから!」


 俺は電気を消してルイナの部屋に来た。


「うぅ~、なんで今日は聞き分けがいいのよぉ~」

「ほら寝るぞ」


 俺はルイナのベットに入った。


「わかったわよ、もう」


 ルイナは電気を消してベットに入った。


「か、顔が近い……」

「早く寝ろよ」

「アルトは恥ずかしくないの?この状況」

「そ、そりゃ恥ずかしいけど恥ずかしがってたら気まずいからさ」

「うぅ~」

「どうしたら落ち着いて寝てくれるんだ」

「わ、わかんないわよ」

「じゃあ」


 俺はルイナを抱きしめた。


「ふぇ!えぇ⁉」

「こうしてたら落ち着くか?」

「お、落ち着くわけないじゃない。余計にドキドキしちゃうから」

「やっぱり恥ずかしがるルイナは可愛いな」

「もうほんっとズルい……こうなったら私だって」


 ルイナもギュッと抱きしめてきた。


「ちょ、お前」

「ふふん。これで恥ずかしがってたらなんて言ってられないでしょ」

「くっそ……」

「これでアルトも落ち着けるかなぁ~?」

「あ、ああ、落ち着いたよ」

「ふふっ、私も落ち着けた」


 ルイナは安心した顔で目をつぶった。俺もそれを見て目をつぶった。


「おやすみなさい」

「ああ、おやすみ」

 


 うるさいし、めんどくさいし、ウザいし、煽ってくるし、負けず嫌いだし、意地悪だけど時々優しくて可愛いルイナが大好きだ。

 そして今の生活が幸せだ。みんな好きだ。


 今を守るために強くならないとな。とか言ってると事件が起きそうで怖いな。アニメみたいにならないことを祈るぜ。


俺はそう思いながら眠りに落ちていった。



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