第三十七話 パフォーマンス
「早くしないと席なくなちゃうわよ」
「はいはい」
3時半になりパフォーマンスの時間になった。なんとか前のほうを席を取った。
「パフォーマンスってどんなんだ?」
「ネタ系とかダンスとかね」
「ふ~ん」
実はこのパフォーマンスはヘルサ先生とフィアーナ先生から見に来て欲しいと言われた。多分あの二人も出るのだろう。
が、一時間経っても二人は出てこない。普通にパフォーマンスは笑えるし、すごい。ただいつ出てくるのだろうとそわそわする。なぜか嫌な予感がするからだ。すごーく嫌な予感がする。
「あの二人はいつ出てくるんだ?」
「多分もう少ししたら――」
ルイナが言ったとき、ちょうど二人が出てきた。
「やっとか」
ヘルサ先生は剣で硬い物をスパッと斬っていく。フィアーナ先生も魔法で的の真ん中を当てたり魔法を自由自在に操ったりした。周りからは歓声が沸く。
普通に凄いがこれだけなのだろうか。
『それでは皆さん校庭に集まりください!』
アナウンスが聞こえると皆、席から立ちあがって校庭に向かう。
「なにがあるんだ?」
「ふふ、それはね。ヘルサ先生とフィアーナ先生の勝負よ!」
「え⁉あの二人が戦うのか」
「毎年あるんだけどすごい見応えあるわよ」
「へ~」
俺たちも校庭に集まった。校庭は物凄い人の数だ。
「どっちが勝つんだろうな~」
と言っているとフィアーナ先生が俺のほうに向かってきた。
「ねぇアルト君、ちょっと……」
「へ?」
『さぁ!今年はこの学校の人気者!アルト君が参戦だ!』
あーい。
「ごめんなさいね。ヘルサちゃんがアルト君も入れようって言ってきて」
「あ~いいですいいです、わかりました」
「ほんと⁉ありがと~」
はぁ~、なんでこうなるんだ。
『アルト先輩~!頑張ってくださ~い!』
俺は優しく笑顔で手を振った。1年生の女子はキャーキャー言っている。一方でルイナとヨミは俺を睨んでいる。
「まぁいいや。やるか」
『勝敗は少しでも攻撃が当たったら負けになります!』
なんだその鬼畜ルールは。ゲームでもノーダメでクリアしろとかサブミッションみたいのがあるが敵が強すぎるだろ。
俺とヘルサ先生とフィアーナ先生は三角形上に立った。辺りが静まり返り緊迫した空気になる。二人とも真剣な顔をしている。ちょっと怖い。
この勝負は1対1対1だ。どちらを攻撃するのかと二人の動きに警戒するのが重要になるか。
『それでは勝負~、スタート!』
俺は刀を抜くと同時に闇魔法の魔力を付与した。
最初に仕掛けたのはヘルサ先生。フィアーナ先生に剣で攻撃を仕掛けるが防御魔法でガードされた。ヘルサ先生はそのまま防御魔法を壊そうとしている。
とりあえず俺は距離を詰めるか。
俺が走って二人のほうへ行っていると後ろから気配がした。後ろを向きつつ刀を振った。やはりヘルサ先生がおり振りかぶってきた剣を刀でガードした。ヘルサ先生は剣をそのまま力で押してくる。
多分俺の後ろにはフィアーナ先生が来るはず。
予想どおり俺の後ろでフィアーナ先生の刃のような風魔法が撃たれた。
それを俺はヘルサ先生の剣を振り払って横にかわした。ヘルサ先生は向かってくる風魔法を剣を斬った。その衝撃でかなりの風圧がくる。
俺は休まずフィアーナ先生に向かって土魔法を撃った。フィアーナ先生はジャンプして避けたが俺はすぐさまそこを狙い、空中で刀を振った。防御魔法でガードされたが防御魔法ごと地面に叩きつけた。そしてヘルサ先生が来るのも予想がついたので後ろに来たヘルサ先生に向かって剣が振り下ろされる前に闇魔法を撃ったが剣でガードされるもフィアーナ先生と同じように地面に落とした。
周りからは歓声が沸く。が、気にしている場合ではない。
俺はまだ空中にいて二人は態勢を整えようとしている。ヘルサ先生の動きは普段から知っているのでまずはフィアーナ先生からやるか。
空に風魔法を撃ってフィアーナ先生に向かっていき刀を振った。フィアーナ先生はギリギリ防御魔法でガードした。するとヘルサ先生もフィアーナ先生に向かって剣を振った。
フィアーナ先生を倒すことを目標にしたのか、もしくは俺を油断させるためか。とりあえず刀をいつでもどこにでも振れるようにしておかないと。いや俺から仕掛けるか。
俺はヘルサ先生の背後に回り刀を振ろうとしたとき地面が動き俺は空に打ちあがった。
フィアーナ先生の土魔法かっ!
なんとか態勢を整えて地面にいる二人のほうを見ると近くに手をこちらに向けたフィアーナ先生がいた。
「なっ!」
俺はどうすることも出来ず、フィアーナ先生の風魔法をくらった。体が傷だらけになった。
『おっとここでアルト君がダメージをくらってしまった!ここでアルト君は終了です!』
「くっそ、悔しいな~」
俺は詠唱魔法で浮いて二人から少し離れた。勝負はまだ終わっていない。
ヘルサ先生は地上にいて、フィアーナ先生はまだ上空にいる。
「山から降りし風よ、廻れ廻れよ嵐の如く!」
フィアーナ先生はヘルサ先生に両手を向けて詠唱する。
「嵐廻山颪!」
フィアーナ先生の撃った詠唱魔法の風は廻りながらヘルサ先生に向かっていく。見た感じだと威力も凄いし、範囲も大きい。ヘルサ先生に逃げれる場所はない。
「この一筋の剣、透き通る水のように全てを貫け!」
ヘルサ先生も詠唱をし、剣を後ろにして構えた。
「水剣一心!」
ヘルサ先生は剣をフィアーナ先生の詠唱魔法が当たる瞬間に前に突くと、剣の形をした高水圧の水が出てきた。二つの詠唱魔法がぶつかり合い、ヘルサ先生の周りは大量の砂ぼこりが舞う。反発しあう力がびりびりと伝わってくる。
だがヘルサ先生のほうの力が上でフィアーナ先生の詠唱魔法を押していった。
「ぐっ!」
「はぁっ~!」
最後の気合でヘルサ先生の詠唱魔法はフィアーナ先生の横腹を斬った。その詠唱魔法はそのまま天に消えていった。
『この勝負~、ヘルサ先生勝ちぃ!』
歓声と拍手がこの校庭に響く。ヘルサ先生は剣を鞘に納めて一礼した。俺とフィアーナ先生はヘルサ先生のもとへ行く。
「やっぱりお二人とも強いですね」
「アルト君も中々だったぞ。さすが私が鍛えてあげたことはある」
「筋肉に囲まれて私も幸せだったわぁ~」
「それでフィアーナ先生、質問があるんですが……」
「……わかりました。それじゃあまた明後日にお願いします」
俺はフィアーナ先生と、ある約束をした。
「で、この次はなにがあるんです?」
「次はほとんどパーティーみたいなものだ。好きに歌ったり踊ったり食べたり戦ったりだ」
「へぇ~」
「アルト君はまずその傷を彼女に癒してもらいなさい」
「はい」
俺はルイナたちがいるところに走った。すると音楽が流れて校庭にいたひとが真ん中のほうへ行き、言ったとおり歌ったり踊ったり食べたり戦ったりしている。みんな楽しそうだ。
「アルトお兄ちゃんお疲れ様」
「ああ」
「アルトにしてはよくやったじゃない。ほら回復してあげるわ」
「ありがとう」
「俺ちょっと行ってくる!」
「私も私も!」
「なら私も」
エレイヤとえりとヨミは楽しそうに校庭の真ん中に行った。
「疲れた疲れた。嫌な予想は的中か」
俺はルイナに回復魔法をかけてもらった。
「これで治ったわ」
「ア、アルト先輩!」
気が付くと後ろに一年の女子が何人かいた。
「あの、勝負は負けてしまいましたけど、その、すごくカッコよかったです!」
「あ、ありがとう。応援してくれたのにごめんね」
「いえ!全然!」
ルイナのほうを見ると顔がぴくぴくと動いている。怒りを我慢してるんだな。
「そ、それと失礼なんですが……握手してください!」
「わ、私も!」
「私も!」
俺は一年の女子に囲まれて握手をせがまれた。
「握手するのはいいけどみんな落ち着いて」
「みんな~、アルトは握手したくないって言ってるわよ~。だから早く帰ってね~」
「す、少しだけでいいので」
「ダメって言ってるでしょ~」
「少しだけ!」
「ダメって!」
「少し!」
「ダメ!」
もうダメだこりゃ。俺はどさくさに紛れて抜け出した。
「あれっ、アルトは?」
「みんな、探そう!」
「あっ、待てこらぁ~!」
俺は校舎裏まで来た。
「ここまでくればいいか」
校舎裏は静かで少し暗く草が生えている。
「ここに来るのは初めてだな」
歩き進めていると人の声がした。男二人と女一人の声。
バレないようにその声のほうに近づいてみると校舎のへこんだ壁の場所に、いかにも悪そうな男と壁に追い詰められている女子がいた。
あの二人の男、ルーイン組ではなさそうだな。全体的に金色でヤンキーって感じがする。それとあの女子はこの学校の子だろう。紺色の長い髪に水色の目でルイナのようなドレスのような服でおとなしそうな子だ。
「嘘付けよ。もっと持ってんだろぉ」
「ほ、本当にこれだけなんです」
女子の手には札がある。
「金持ちなんだからこれだけのわけねぇ~よなぁ~、お嬢さん」
「本当です。信じてください」
ずっと黙って見ているわけにもいかない状況だな。
「すみません。何をやってるんですか」
「あ、あなたは!」
「あぁ?なんだこのガキ、友達か?」
「ち、違います!この人は関係ありません!」
「まぁなんでもいい。おいお前、金出せ。出さなかったどうなるかわかってんだろうなぁ!」
「さぁ?どうなるんですか?」
「こいつっ!」
「待て待て」
もう一人の男が今にも殴りかかろうとする男を押さえる。
「威勢のいいガキだ。俺たちは悪だがチャンスをやろう。今金を出せば俺たちはなにもしない。この娘にもな。ほらどうする?」
「自分で悪いと思ってるのになんでやってるんですか?バカなんですか?無能なんですか?」
「こぉのぉガァキィ!後悔してもしらねぇからな!いくぞ!」
「おぉ!」
二人の男は俺に殴りかかってきた。
1分後……。
「も、もう許してくだせぇ!」
「なんでもしますから!」
二人は腹を押さえて地を這っていた。
「威勢のいいガキはどっちなんだか。おいお前ら!」
『ひぃっ!』
「二度とこんなことするんじゃねぇ。そしてあの子からどれだけ金取った?」
「お、覚えてません。かなりの額です」
「なら今持ってる金全部出せ」
「わ、わかりました」
「結構持ってるじゃねーか。貰ってくぞ。それと今からお前らを帰すが、帰ってボスに今あったこと報告するんじゃねーぞ、面倒だからな。こちとらあのガルアともダチだからな、そこんとこ覚えとけ」
「あ、あのガルアと⁉」
「わ、わかりました!今あったことは忘れます!」
「よしいい子だ。ほら帰れ」
『ひえ~!』
二人の男は飛んで学校を出て帰っていった。
「典型的なクズだな」
俺は女子のほうへ向き直った。
「大丈夫でした?」
「は、はい。助けていただきありがとうございます、アルト先輩」
「いえいえ、これどうぞ」
俺は男から取った金を渡した。
「それはアルト先輩が貰ってください」
「俺は金に困ってないし、元々は君のお金みたいなもんだし受け取ってよ」
「あ、ありがとうございます」
彼女は財布にお金を入れた。結構パンパンになった。
「さっきの勝負、とてもカッコよかったです」
「はは、さっきも言われたよ」
「め、迷惑でしたか?」
「ううん、そんなことはないよ。で、なんであんな男に目をつけられたんだ?」
「私の家は、お金持ちなんです」
「だからか」
「はい。断る勇気もなくいつもお金を渡してしまって。家族には迷惑をかけたくないので。特にお兄様には……」
「君のお兄さんがどうかしたの?」
「お兄様は私と違ってとても優秀で、いつも私を大事にしてくれる人なので迷惑をかけてはお兄様の未来に関わってしまうかもしれませんので」
「なるほどねぇ~。大変だったんだね」
「は、はい。あの、お礼と言ってはなんですが何か奢りましょうか?」
「いいよ、お金なら俺もたくさん持ってる」
まぁ俺のではないが。
「な、何かお礼だけでも」
「う~ん。じゃあ名前教えてよ」
「名前なんてお礼になりません!他になにか」
「とりあえず名前を教えてよ」
「私はミスリアです」
「ミスリアちゃんか」
「ちゃん付けじゃなくて大丈夫です!」
「んじゃあミスリア。俺が叶えられるような願いってある?」
「そんな、礼もしてないのに願いを叶えるなんて」
「いいから、なにかある?」
「で、では、あの、その、い、一緒に、買い物とか、してほしい、なんて」
「じゃあ俺はミスリアと買い物がしたい。それが返してもらう礼だ」
「アルト先輩……っていいんですか⁉こんな私が、その、おこがましいというか」
「これは俺の願いだ。いいかどうか聞きたいのは俺のほうだ」
「全然いいです!」
「良かった。ありがとう」
この子も相当怖い思いをしたと思うし、今は先輩らしくするか。ルイナがどういう反応をするかだが。
校舎裏を出ると土魔法で盛り上がった土の上でエレイヤがギターを弾いてるのが見えた。えりはエレイヤのギターのリズムに合わせて楽しそうにジャンプしている。ヨミは静かにえりの横でクレープを食べている。
「では私はこれで」
「もう行くの?」
「はい。片付けが残っていますので。それで、買い物についてはまた今度詳細を伝えますので」
「わかった。楽しみにしてるよ」
「ありがとうございました」
ミスリアは小走りで校舎に入っていった。
「はぁ~、優しい先輩ってのも疲れるな~。でも人助けができたからからいいか。さてとルイナのところに戻ってみよ」
「はぁ、はぁ、やっと見つけた。どこに行ってたのよ!」
「別に、そこらへん散歩してただけ」
「なんか女の匂いがする気がする」
「気のせいだって」
「お~い!アルトきゅんもルイナっちも来いよ~!」
「ゆう君、楽しいよ~!」
「クレープ買って!」
「ふふっ、みんな楽しそうね」
「そうだな。よし俺たちも行くか!」
「そうね、私たちも楽しみましょう!」
その後、文化祭はみんな幸せな気持ちで終了した。
が、俺の一日はまだ終わっていない。めんどくさいことに夜はこれからだ。
〔ヘルサ先生とフィアーナ先生の勝負〕
・前回はフィアーナ先生が勝った。
・本気でやると学校、いや町が壊れるので本気ではやらないらしい
・この戦いで女子がヘルサ先生に惚れることもしばしばある
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ルイナ「文化祭楽しかった~。特にあの数学の先生と国語の先生が戦ったのはね」
アルト「ホント、みんな戦闘狂だよな~。俺も何人かと戦わせられたし」
ルイナ「でもアルト全部勝ってたしいいじゃない」
アルト「まぁ騎士団に入ってない人の力が知れて良かったよ」
ルイナ「ふふっ、じゃあこの後はお楽しみのあれね!」
アルト「あれって?」
ルイア「次回わかるわよ」
アルト「また嫌な予感がする……」




