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第三十四話 文化祭

 3週間後の日曜日の朝。


「ほら早く~!」

「はいはい。ヨミ、寝癖があるぞ」

「アルトお兄ちゃん直して」

「ゆう君は~や~く~」


 今日はルイナの学校の文化祭がある。騎士団訓練の休み手紙を出して出ようとしている。


「自分で直せよな~」

「そう言いつつ直してくれるアルトお兄ちゃん大好き」

「あぁそーですか。よし、行くぞ」


 ヨミと手を繋ぎ、俺とルイナとヨミとえりは学校と向かった。




「じゃあ私は出し物やらないといけないから。始まって一時半後に一回の階段に集合ね」

「ああ、お前のとこも行くよ」


 文化祭の実施時間は9時から18時。校舎内の出し物は15時半くらいに終わり、17時半まで校庭で色んなパフォーマンスがあるらしい。二クラス合同で80人が約4回、20人ずつ交代する。ルイナは『先にやっておいて後はアルトと回りたいから』と言って最初の一時間半に出る。


 昨日は校内開放で生徒だけだったので俺は行けれず、今日は一般開放なのでみんなで行くことになった。

 ルイナのところはお化け屋敷だそうだ。異世界でもお化けに怖がるんだな。


 9時になり、校門から次々と人が来る。結構来るんだな~。


「とりあえず校庭を回るか」

「ワッフルがある!アルトお兄ちゃん!ワッフルがあるよ!」

「すっごくいい匂いだよゆう君!」

「わかったわかった。食べたいんだろ」


 ルイナから貰ったお金でワッフル3つを買って、ハチミツをかけてもらった。


「ほらよ。服にハチミツこぼすなよ」

「ありがとう」

「ん~、甘くて美味しい~」

「立ってるのもなんだから椅子に座るか」


 俺たちは人混みを抜けて、大きいテントが張られて長い机に白いテーブルクロスがある食事スペースに座った。


「あ~、美味しかった。ゆう君もう一個買ってきて」

「私も」

「めんどくさいな~。まぁいいや、ちゃんと椅子開けといてな」

「死守します!」

「いや命を賭けなくていいけど」


 俺はまた人混みを抜けてさっきのワッフル屋に来た。4人ほど並んでいる。


4人目の人の後ろに立つと嗅いだことのある人の匂いがした。前にいる4人目の人の髪はピンクの髪のツインテールとアホ毛、ヘッドホンを掛けている。


「お前、エレイヤか?」

「ん?おぉ!アルト!」


 エレイヤは俺の言葉に反応して振り向いた。


「なんでここに?」

「いや~、文化祭があるって聞いてよ。楽しそうだし、ついでにお前らに会えたらいいなって思って来た」

「なるほどな。で、今はワッフルを買う途中、と」

「そうだ!」


 あの大きいエレキギターは持ってない。こいつにも常識はあったようだ。


「今はヨミとあと友達一人と食べてるところだからお前も一緒に食えよ」

「いいのか⁉やった!」


 こいつも結構可愛いところあるんだな。


「って、お前の番来てるぞ」

「あっ、ごめんごめん」


 エレイヤと俺はワッフルを買い、ヨミとえりの所に戻った。


「おかえり~、ってその人は?」

「あっ、あのうるさい人だ」

「エレイヤって言って、前にルイナと戦ったことがあるんだ」

「エレイヤ・サウド・ラスクだ。よろしくな!」

「南本えりかです。よろしくね」

「よっしゃ食べるぜ!」

「ハチミツこぼすなよ」


 俺は二人にワッフルをあげて椅子に座って食べた。


「ん~、うめ~」

「エレイヤちゃんは中学生?」

「ん?そうだけど」

「一人で来たの?」

「ああ」

「すごいね。友達と一緒に来ないの?」

「昨日夕方に文化祭があるって聞いて誘う時間もなかったし、元々はアルトらに会えればなって思ってきたから」

「そうだんだ~」

「そもそもお前友達いるのか?」

「いるに決まってんだろ」

「へ~、その友達も大変なもんだな」

「どーいう意味だよ!」

「言ったとうりだ」

「なんだと!」

「まぁまぁ」


 えりがエレイヤを軽く押さえる。


「はぁ~、ルイナっちも大変だな」

「お前ルイナのことそう呼んでんのか?」

「悪いか?」

「いや悪くないけど、お前がそんな呼び名を付けるとは」

「別にいいじゃねーか呼び名くらい。アルトも付けてほしいか?」

「いらな――」

「じゃあお前はアルトきゅんだ!」

「なんでそんな萌えの敬称なんだよ!てかいらないって言っただろ!」

「アルトきゅん、可愛い!それでいこうよ!」

「私も、そう呼びだい」


 二人は目を輝かせる。


「えりはそもそもその名前で呼ばないだろ!ヨミは普通に呼べ!」

「まぁ、ゆう君ってニックネームも今は私だけしか使ってないしね~」

「私もやっぱり普通に呼ぶ。だって私にとってはお兄ちゃんだし。ね、アルトお兄ちゃん?」


 ヨミは可愛らしい笑顔をした。


「さ、さぁな」

「ふふっ。あっ、でも私にとっては飼い主でもあるから、アルトご主人様?」

「ぐっ、そんな顔でそう呼ぶのはやめろ」

「ゆう君照れてるね」

「照れてるな」

「うるさい!ほら食べ終わったから次いくぞ!」

「あっ、待ってアルトご主人様!」


 こいつ


 俺は片手でヨミの口を閉じ、もう片方の手で抱っこした。


「ちなみに二人が言わなくても俺は言うからな」

「ったく好きにしろ」


 俺たちはルイナのお化け屋敷の教室に向かった。



「ここか」


 多目的室にあると聞いてきたが結構広そうだな。先に入ってる人の叫び声がする。


「みんな大丈夫か?」

「お、俺は大丈夫だ」

「わ、私も」

「むぐぐぐ~ぐぐぐむっぐぐぐむ~ぐ~ぐ」

「いや二人は声震えてるしヨミはなんて言ったかわかんねーよ」


 俺はヨミの口から手を離した。


「アルトお兄ちゃんと一緒なら大丈夫」

「そ~ですか」

「入りますか?」


 受付の人が言った。


「あ、はい。四人でいいですか?」

「はい、どうぞ。走ったりしないでくださいね」


 そういうとドアが開いた。


「アルトきゅん先に行けよ」

「はいはい」

「おんぶして」

「仕方ないな~」


 俺がヨミをおんぶして、俺、エレイヤ、えりの並びで入った。入るとドアが閉まり暗くなって冷たい冷気を感じる。


 これはルイナの氷属性の魔力か。ってことはルイナは裏方なのか?


 遠くのほうで女の叫び声と皿が割れる音がした。


「うひゃあ!」


 エレイヤがびっくりして俺の腕にしがみついた。


「ちょ、ちょっと」


 えりも俺の腕にしがみついた。


「おい、大丈夫ならなんでしがみつく」

「い、いや~、ちょっと寒いな~って思って」

「わ、私も少し寒くなって、ね。体寄せ合ったほうが暖かいじゃん?」

「そうだけどさ。まぁいいや、先に行こう」



 一方ルイナは……



 次の人が入ってきたわね。あっ、アルト達だ。って!エレイヤちゃんもいるしなんでくっついてるのよ!

 ヨミちゃんはまだしも、えりちゃんとエレイヤちゃんめ~!絶対驚かせてやるんだから!




「お化け屋敷なんて小学校の修学旅行ぶりだな~」

「よ、よく気軽にいられるな」

「お化け屋敷ってことがわかってるから怖くないだけだ」


 少し狭い道を通ると部屋に出た。周りには棚の上に日本人形がたくさん置かれている。


「うっ、さすがにこれは怖いな」


 俺は普通に日本人形が少し苦手だ。


 部屋は閉ざされていて薄っすら明るい。




 よし、普通なら炎魔法と風魔法を調整して生暖かい空気を上から送るけど、今回は特別に冷たい空気も分かれて送ってやるわ。




「ひっ、なんか生暖かくなってきた」

「私はさっきより冷たく感じるんだけど」

「俺は生暖かいのと冷たいのが来るな」

「私も」


 なんでこんな微妙なんだ。




 次は同じクラスのラミアちゃんが声を変えるマイクを使って幽霊みたいに話しかけるところよ。




「ねぇ……」

「ひぁっ!喋った!あいつ喋ったぞ!」

「落ち着けっての」


 一つの日本人形が白く照らされて、そこから声が聞こえる。三人とも俺を掴む力が強くなった。


「お友達になろうよ……」

「ひぃ!私は無理です、ごめんなさい!担当の者に代わりますので少々お待ちくださいぃ~!」

「誰なんだよ。しかも担当も誰だよ」

「ゆう君代わってぇ~」




 ふふっ、怖がってる怖がってる~。


「さぁ、ラミアちゃんどんどんいこ」

「おっけ~」




「お友達に、なってくれないの?……」

「君が友達の意味を履き違えてなければなるよ」

「友達って、ずっと一緒にいてくれる人でしょ?……」

「違うね、ずっとじゃない。一緒にいられるのは暇な時とか用事がない時とか何かを話したい時だし、いつかは離れるかもしれない。それが友達だ。もう一度意味をわかってから言うんだな」




「ルイナちゃんの彼氏怖いよ~。めっちゃ責めてくる~」

「ラ、ラミアちゃんごめんね、私が変わるわよ」


 アルトめ、キャラ設定に正論言うんじゃないわよ!




「何も言い返せないか?」

「意味ちゃんとわかったからお友達になろうよ……」

「ふ~ん、返せれるってことは録音した声じゃないのか」

「いいでしょ?……」

「う~ん、やっぱ無理。日本人形と友達とかヤバいからな。だから次の道開けてよ」




 くっそ腹立つ~!なんで上から目線なのよ!


 まったくも~、もういいわ。




「わかった……」


 すると壁の一部分が小さい棚ごと奥にいって道ができた。


「ありがとう」

「最後に、いい?……」

「ん?なに?」

「あなた付き合ってる人いるでしょ?……」

「うん、いるけど?」

「その人をこと、どう思ってる?……」

「え?えっと、見た目も性格も全部可愛いし好きだよ」

「なっ!……」


 日本人形は喋らなくなった。


「お、終わったの?」

「多分な。次いくぞ」


 俺たちは先に進んで行った。


 その後も仕掛けがあり、ロッカーが突然動き始めたり、後ろから近づくようにトラックのクラクションが鳴ったり、最後に死体がたくさんある血だらけの部屋を抜けようとすると死体が追いかけてきて教室を出て終わった。



「ふぅ~、中々怖かったな」


 三人を見ると半泣きで死にそうな顔をしていた。


「だから大丈夫かって言ったのに」


 俺はまだ怯えているヨミを抱っこして背中を優しく擦った。


「もう大丈夫だぞ、ヨミ」

「こ、怖かった。怖かったよ」

「よしよし」


 いつも落ち着いてるヨミが怯えているのを見るのは新鮮だな。


「一旦校庭に出て飲み物でも買うか?」

「あ、ああ」


 俺たちは校庭に向かった。その間も二人は俺の袖を掴んでいた。


〔文化祭〕


・毎年、数万人が来場する

・15時半から17時半までのパフォーマンスは大人気らしい

・生徒自体人数が多いので交代する時間が早く、生徒も楽しめる

・校庭の3分の1はライブステージとなっている


=======

ヨミ「アルトご主人様」

アルト「その呼び方はやめろ。で、なに」

ヨミ「呼んだだけ」

アルト「……お前にはしつけが必要だな」

ヨミ「嘘、私ピーをピーされてピーでピーピーピーされるの?」

アルト「……お前その知識どこで知った」

ヨミ「しっらな~い」

アルト「……この悪魔猫は捨てよう」

ヨミ「なんでもないです、ごめんなさい」

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