第三十三話 騎士団殺人鬼
「ふぁ~、おはよ~」
「おはよ~アルト」
「おはようゆう君」
「おはようアルトお兄ちゃん」
「みんな起きるの早いな~」
今日は日曜日だが騎士団訓練を休む。用事があると第二騎士団宛に手紙を書いて外に飛ばした。
「これでおっけーね。さぁ食べましょう」
『いただきます』
「どうだ?えり。二日目の異世界は」
「起きたときびっくりしたけど普通だよ~」
「そうか、良かった」
「昨日は意外と早く寝れたな~」
「お前寝るのは早いよな」
「寝る子は育つって言う、けど……」
えりはルイナの胸をじっと見つめた。
「な、なに?えりかちゃん」
「ルイナちゃんってよく寝るほう?」
「う~ん。そこまででもないかしら」
「そうなんだ」
えりは自分の胸を見た。
「なんでこんなに違うの~!」
「お前まだ気にしてたのか」
こいつは中学の時から胸を気にしていた。なぜそこまで気にするのか理解できないが。
「おかしいでしょ!中学からなんにも変わってないんだけど⁉」
「お前の胸、断崖絶壁だもんな」
「うるさい!」
「ま、まぁまぁ。えりかちゃんもいつかは」
「それを信じて高校2年生まできたけど全く変わらず、身体測定も虚しいまま!身長さえ伸びない!」
「とりあえず座って落ち着け」
「うぅ~。異世界の子はみんな大きいのかな?」
「そ、そんなことないわよ。小さい人も何人か……何人か」
「ルイナちゃんは何カップなの~?」
「え?え~と、Dくらいかなぁ~」
ルイナは頻りに俺を見ながら言った。
あぁ、これを誘ってるって言うんだな~。全力無視しよう。
「少しわけてよ~」
「今は食べましょう?えりかちゃん」
「は~い」
俺が目を逸らしたから効かないと思って諦めたなあいつ。
「アルトお兄ちゃんはつまんないね」
「ヨミはそのよくわからん性格直した方がいいぞ」
「やだ、無理」
「はいはい」
皆食べ終わって俺は朝ご飯の後片付けをしている。もう魔法の調整も出来るようになったので前より早くなった。
「ゆう君すごいね!」
「最初は全然出来なかったんだけど俺も成長したな~」
「私もいつかやってみたいな」
「出来るようになったらご飯の片付けはえりに任せる」
「それはゆう君の仕事でしょ~」
「お前はなにもしなくていいよな」
「私は魔法を覚えるのが仕事~」
「そうですか~」
俺とえりが話しているのを見ているルイナの顔がなぜか怒っているように見える。
「よし、終わったしえりの魔法の練習を」
「ちょっとアルトいい?」
「ん?」
ルイナは俺の手を引っ張って俺の部屋に入った。
「どうしたんだ?」
「あのね、私とアルトは付き合ってるのよ?他の女の子と楽しそうに話しているところ見ると腹が立つのよ」
「ああ嫉妬か。って言ってもえりはここに来たばっかりだし、俺が側にいてやったほうが安心するかなと」
「それもそうだけど程々にね」
「了解~」
俺とルイナは部屋を出た。するとヨミが何かを持ってやってきた。
「お手紙来てる」
「手紙?あ、副団長からだ」
俺は手紙を開けて読んでみると
『わかりました。ちゃんと用事を済ませてくださいね。それと騎士団の皆に言っているのですが、団長とこの一週間連絡が取れていないのですが何か知りませんか?知っていたら教えてください。知らない場合は何もしなくてもいいです。ではまた』
「だって」
「ミラス団長って一週間前、魔王の幹部と戦ったあとに騎士団全本部にそのことを伝えに行くって言ってたわよね」
「うん。そのことは副団長も騎士団の人も知ってるだろうし、何かあったのか?」
「でも団長の力なら大丈夫だと思うけどね~」
「そうだな。よし、じゃあえりに魔法を教えるか」
「やった~!」
「今日はルイナが教えてあげてくれ」
「わかったわ」
「お願いします!ルイナ先生!」
「よ~し、先生についてきなさ~い!」
一方、騎士団訓練所の本部では
「多分あの二人も知らないと思うけど一応」
「副団長、心配し過ぎですって。いつものことじゃないですか」
「そうですよ。団長ならまたどうせどこかで食べ歩きしてますよ」
「そう、ね。心配し過ぎよね。うん」
「ほら、訓練しましょう」
副団長が本部から出ようとすると扉が勢いよく開いた。
「副団長!ミラス団長が血だらけの状態で帰ってきました!」
「えっ!」
副団長達は急いでテレポート場所に走っていった。そこには何人もの人だかりができている。
「団長!ミラス団長!」
副団長は人を飛び越えて団長のもとにやってきた。団長は壁に背を付けて、全身刃物で斬られたと思われる傷だらけで致命傷はないが大量に血が出ている。
「団長、大丈夫ですか⁉」
「ク、レス、回復、を……」
「わ、わかりました!」
騎士団の男二人が担架で団長を休憩所まで運んだ。
「あの団長が一体誰に」
「副団長。団長の体は少ししたら治ります。ですが貧血状態なので点滴を打ちます」
「わかりました」
団長があんな状態で生きて帰ってこれたのは奇跡なのだろうか。誰が何のために団長を攻撃したのか。団長がやられるということは複数人で攻撃されたのか。それとも団長よりも強い人にやられたのか。
突如舞い降りた事件に第二騎士団は不安を抱えた。誰も訓練にも身が入らない。
しばらくして傷が回復してベットの上で点滴中の団長の目が覚めた。
「こ、ここは……」
「休憩所ですよ」
「クレスか。良かった、戻ってこれたんだな」
「何があったんですか」
「まず水をくれないか。喉がカラカラなんだ」
「わかりました」
ひとまず団長は大丈夫そうだ。
「どうぞ」
「ありがとう」
団長は点滴を打たれてないほうの手で水の入ったコップを受け取ってごくごくと飲んだ。
「っぷは~。ふぅ~、すまないね」
「いえ、それより」
「何があったか、ね。僕にもわからないことだらけだ。まぁあったことを話そう。そう、あれは先週のことを全騎士団に伝え終わって昨日帰るところだった」
団長は目を閉じて話し始めた。
「昨日の夕方くらいか。僕は今日は歩いて帰れそうじゃないから宿に泊まろうと思ったんだ。部屋に入ってベットでくつろいでいる時に奴はきた」
「奴?」
「ああ。奴はいきなり部屋に現れたんだ。背はそれほど高くなく小柄な子で黒いローブでフードを被っていた。多分女だった。そして彼女は僕にこう言ったんだ」
『お兄さん、ごめんね』
「とね。そしてナイフで僕を斬りつけてきたんだ。一瞬でね」
「見えなかったんですか?」
「いや、動いているのは見えたけどとても対応できる速さじゃない」
「そんな……」
「そのあとなんとか僕は窓から外に出て他の屋根に飛び移って逃げたけどすぐに追いつかれて斬られて、逃げて、斬られての繰り返しだったさ。途中で何者か聞いたんだ。そしたら」
『僕?僕はね、う~ん。騎士団殺人鬼、かな?ナイトハンターやナイトキラーとでも好きに言うがいいさ』
「と、言った」
「騎士団、殺人鬼?」
「そのあともなぜこんなことをするのか聞いたら『使命だから』と言って僕は気を失ったんだ」
「なる、ほど」
理解が追いつかないが一応団長の身に会ったことはわかった。
「でも、確実に団長を殺せたのになぜ殺さなかったんでしょう」
「僕にもわからない。でも彼女は僕が倒れて気を失う前に『このくらいでいいか』と言ったんだ。つまり僕を殺すことが目的じゃなく傷つけることが目的だったんじゃないかな?と僕は思っているんだけど」
「そうだとしたらなんでそんなことをする意味があるのか」
「そこが僕にはわからない。彼女の正体も」
「とりあえずわかったので、みんなにも言ってきます。それと騎士団は狙われるとかもしれないということを」
「うん。僕はもうひと眠りしておくよ」
「はい」
そのことを聞いた第二騎士団の人は恐怖した。団長でも勝てないに人に襲われるかもしれない。その気持ちは収まることなく続いた。
「はぁ~!疲れた~」
「最初はきついよな」
俺たちはえりの魔法の練習が終わって家に帰った。
「あれ、また手紙がある」
「ホントだ。副団長からか」
その内容は団長が『騎士団殺人鬼』という人に襲われたということと、騎士団は狙われる可能性があるということ。詳しいことはまた来週に話すと書いてあった。
「騎士団殺人鬼、か」
俺とルイナは少し不安を覚えながらも、何事もなくヨミとえりと普通に生活をしていった。
〔ミラス団長の食べ歩き〕
・遠くに行って帰ってくるときはよく食べ歩きをする
・食べたところは手帳に記して点数を付ける
・食べ歩き中は顔を隠して他の人にバレないようにする
・食べ歩きをせず本気を出せば町をいくつ越えてても30分から1時間くらいで帰ってこれる
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えり「私の練習シーンがバッサリないんだけど~⁉」
アルト「まぁ俺と内容は変わらないし、変わってるの子供たちがいないってだけだし」
ルイナ「アルトったら、ま~た私に反抗してくるんだから」
アルト「面白いからな」
えり「私もいつかルイナちゃんと戦ってみたいな~」
アルト「やめとけ、あのルイナ先生と戦ったら全身骨折よりヤバいことされるからな」
ルイナ「よ~しよし、わかったわ」
アルト「あ、あの、ごめんなさい。ちょ、ちょっと笑顔で近づいてこな、あの、ルイナ先生⁉」
ヨミ「ただいま映像が乱れております。二日ほどお待ちください」




