第三十話 汚い方法
ルイナは背中から血が出ていたが飛んで元の位置に戻った。
「もう止めといたほうがいいんじゃないの~?」
「ふふ、私は絶対に勝つのよ。たかがこのくらいで私が降参すると思う?」
「へ~。じゃあ勝ってみせてよ」
「簡単よ」
エレイヤは再びエレキギターを弾き始める。
「先生。ルイナは勝てますかね?」
「ふん、彼氏が弱気になってどうすんだ。彼女を信じろ」
「信じてますよ。いつだって」
「ルイナお姉ちゃん負けるような人じゃない」
「そうだな」
俺はルイナを見るとルイナも俺を見ていた。ルイナは一瞬ニヤッとするとエレイヤに視線を戻した。
「あいつ何か作戦があるのか」
ルイナは手をエレイヤのほうに向けた。するとエレイヤがドーム状の土の壁に囲まれ、衝撃波がなくなった。
「こんなものすぐ壊してやる!」
俺も壊されるだけと思ったが、ルイナは風魔法を使って物凄いスピードでドーム状の土に近づき手を当てると、ドーム状の土の壁の周りが氷になった。
エレイヤは土の壁を壊すとドーム状の氷越しにだがすぐ近くにルイナがいてビックリし、一瞬だけ指が止まった。
「わっ!」
そこを見逃さずルイナは氷に穴を開け、手でエレイヤのエレキギターを持ち、上にも穴を開け、力いっぱい上に上げて、奪い取った。
「よっし!」
ルイナはすぐさま穴を直しエレイヤをドーム状の氷に閉じ込めたまま逃げた。そしてエレキギターを氷漬けにした。
「これでどう!」
すっごい汚い方法だったがエレイヤからエレキギターを取った。汚い方法って言ったら『アルトのせい』って言われそうな気がする。
「おい返せ!そしてここから出せ!」
「嫌よ。あれ~?自力で出られないの?」
「で、出られるに決まってるだろ」
エレイヤは大きい声を出し、声だけで衝撃波を出しているが氷にひびも入らない。
「くそ、声だけじゃ……」
「やっぱり出られないんだぁ~」
あいつ自分が有利になったらめっちゃ煽るじゃん。これには俺も飽きれるな。
「うっ、うう、頼むから返して、くれ~」
ついにはエレイヤは泣き始めた。
「じゃあ降参する?」
「降参だ。降参するからぁ~」
「エレイヤ君の降参により、ルイナ君の勝利!」
ルイナは氷を消してエレキギターを返した。そして俺はヨミをお姫様抱っこしたままルイナのところに降りた。
「お前最低だな」
「勝てばいいのよ。少し生意気だったからさっきのはいい教育になったんじゃない?」
「ルイナお姉ちゃんお疲れ様」
「ありがとね」
エレイヤはエレキギターを抱きしめて涙を拭いている。
「アルト君もう魔法を消していいぞ」
先生も降りてきて言った。
「そういえば学校に魔法で覆ったのって」
「あれをくらうと学校の窓が割れそうだったのでな」
「そういうことだったんですか」
生徒も危ないし、金がかかるしな。魔力調整出来て良かった。
俺は学校の一面を覆っている闇魔法を消した。生徒は『あれ?終わったの?』という顔をしている。
魔法があったせいで声が届いてなかったのか。ということはあのルイナの煽り発言は生徒に聞こえてないな。
ルイナが勝ったことがわかった生徒は歓声をあげた。
「ルイナちゃんよくやったなー」
「血大丈夫⁉」
ルイナの友達が心配している。さっきの煽りを聞いていればみんなドン引きだったのに。
「みんなかりがと~!私勝ったよ~!」
「いつからそんなに心が汚くなられたのか」
「アルトのせいよ」
「やっぱりか」
ルイナは背中を怪我を回復魔法で治した。そこまで深い傷ではなかったようだ。
俺はヨミをルイナに預けて、ずっとエレキギターを抱きしめてるエレイヤに近づいた。
「ぐすっ、何だよ」
「お前凄い力だな。カッコよかったよ」
「そうかよ」
「あの凄い衝撃波と強風はなんなんだ?」
「あれは音の詠唱魔法みたいなやつで、特定の曲を弾くことで効果を発揮するんだ」
「なるほどな。次は俺と戦ってくれよ」
「また今度な。今魔力が半分以下だから」
「わかった」
エレイヤは立ち上がった。
「今度戦うときは絶対わた、俺が勝つからな!二人ともだ!」
一瞬私って言いかけたがエレイヤは校門に走っていった。と思うと止まった。
「どうしたんだ?」
「あの……近くに宿屋ってないか?」
聞くところによるとエレイヤは、〈ミノル町〉から昨日の戦いを見て戦ってみたいと思って早起きして来たとのこと。なぜ俺たちがこの学校にいるのかわかったかは、この学校に氷使いの強い魔導士がいるという噂を聞いたことあるからだった。後先考えずに来たので帰る竜車もなければ、魔力も少ないので飛んで帰ることも出来ないので宿屋を探しているらしい。てかこの世界には竜車があるんだな。
と、いうことで俺とルイナとヨミとエレイヤは宿屋の前に来た。雨が降ってきたがルイナが頭上に氷を作り傘替わりにしている。
「すみません。今改装中で」
と、いうことでルイナの家の前に来た。
「ちょっと待って!なんで私の家なの⁉宿屋は⁉」
「だって近くの宿屋が改装中だからここしかないじゃん」
「だからって私の家に泊まるわけ⁉」
「だって他の宿屋遠いし、雨降ってるし、金も使わなくて済むじゃん。てか中学生だけで宿屋に泊まるの無理じゃね?」
「そ、そうだけど。そうだけどさぁ~」
雨がまた強くなってきた。
「エレイヤもここに泊まっても問題ないだろ?」
「俺は別にいいけど」
「私は嫌!」
「よし入っていいよ」
「お邪魔します」
「私がこの家の所有者なのにぃ~」
俺たちは家に入り、俺はルイナの鞄をルイナの部屋前に置いた。エレイヤは壁にエレキギターとヘッドホンを置いた。
「アルトお兄ちゃん、あの人ここに泊まるの?」
「そうだけど?」
「ふ~ん。変な気を起こしちゃダメだよ」
「なにもする気ないっての」
「そう……つまんない」
そういうとヨミはルイナのところに行った。なんなんだあいつは。
俺もルイナのところに行くと
「でもエレイヤちゃんの寝る場所はどうするのよ」
ちゃんとちゃん付けで呼ぶんだな。
「あー……じゃあ俺がソファーに寝るからエレイヤは俺のベットで寝――」
「それはダメ!絶対ダメー!」
「うるさいな~」
「俺がソファーに寝る。それでいいだろ」
「ごめんな。ソファーで」
「ただ泊まらせてもらうんだからそれくらい我慢する」
「そうか」
「あとアルト、だっけ?お前はここに住んでるのか?」
「まぁ色々あってな」
「そうなのか」
変な風に捉えられなければいいが。
俺たちは手を洗い、ルイナは4人分のご飯作った。エレイヤは食欲はあるようだ。3杯も米をおかわりした。
「ぷげ~、もうお腹いっぱいだ~」
「よく食ったな」
「ほらお風呂入るわよ。パジャマは私の貸してあげるから」
「うい~」
ルイナとヨミとエレイヤは風呂場に向かった。ヨミはいつも風呂に入るときは手を振っていく。本当にいい子だな。一部の性格だけ変だが。
しばらくして三人とも風呂から上がってきた。ヨミが小走りで俺のもとにくる。
「ちょっと大きいけど貸してくれてありがとな」
「どういたしまして~」
あいつら少し仲良くなってるな。
「じゃあ次は俺が入ってくるよ」
そのあと風呂に入り、上がって、ルイナが2本だけ酒を飲みたいと言って飲みエレイヤはルイナの酔いっぷりに少しビックリしていた。
「ほら背中に乗れ」
「ふぁ~、アルトぉ~」
いつもどうりルイナをおんぶしてベットに運ぼうとすると辺りが一瞬光った。
「ん?今のは」
するとゴロゴロと雷の音がした。ヨミが俺にしがみつく。
「雷怖い」
「大丈夫だヨミ。雷まで降りだしたか」
エレイヤのほうを見ると顔が強張ってるように見える。
「エレイヤどうした?」
「ひぇ⁉なんだ?」
「いやなんか固まって動かないからさ」
「ちょっとぼーっとしてただけだ。気にするな」
「そうか?」
俺はルイナをベットまで運んだ。ヨミもルイナのベットに入った。
「ヨミおやすみ」
「おやすみなさい。また明日」
「ああ」
電気を切って部屋を出た。
「俺はソファーで寝るんだったな」
「毛布は用意したけどなにか気になることある?」
「ない」
「んじゃ、おやすみ~」
俺は自分の部屋に入ってベットに入りそのまま寝た。
ふと、大きく長い雷の音が聞こえて目が覚めた。うっすら目を開けるとまだ夜だった。
う~ん。雷がうるさくて寝れないな。
寝返りを打つと何かに当たった。目を開けてみるとエレイヤの顔が目の前にあった。
「うわっ!」
「しっ!静かにしろよ」
エレイヤはこそこそと話す。
「なんでここにいるんだ」
「な、なんでって」
するとまた大きく長い雷の音が聞こえた。
「ひぃっ!」
エレイヤは俺にしがみついた。体をプルプルと震わせている。
「お前まさか雷怖いのか?」
「そ、そんなわけねぇだろ。ひぃっ!」
「はぁ~。怖いなら怖いって最初から言えよ」
「だから怖くねぇって。ひゃぃ!」
完全に女子の声してビビってるじゃねーか。
「はぁ~、まぁ好きにしろ」
「う、うん」
俺は目をつぶった。雷の音が鳴るたびにエレイヤは体を震わせていた。
得意属性が音なんだから音にビビるなよ。俺はそう思いながら再び眠りについた。
「あああぁー!」
この叫び声は、二日前にも聞いたな。
体を起こすとルイナとヨミがいる。
「今度はどうしたんだ。ってそういえば」
隣にはぐっすり寝ているエレイヤがいる。
「一度では飽き足らずまた他の女と寝るなんて!」
「いやだから誤解が生まれる言い方やめろ」
「だから変な気を起こしちゃダメって言ったのに」
「別になにもしてないって」
「嘘よ!だって最初見たときめっちゃ近づいて寝てたもん!」
「それは俺から近づいたわけじゃなくて」
「んだよ。うるせーなぁ~」
エレイヤが起きてきた。
「おはよう」
「あぁ、おはよ。そういえば泊まってるんだったな」
「ねぇ!アルトに何したのよ!」
「んあぁ?何って別になにも」
「だったらなんでそこにいるのよ!」
「そ、それは……」
「ほら!なんかあるんでしょ!」
「こいつは眠れなかったからここに来ただけだ。本当にそれだけだよ」
「本当に?」
「ああ」
「嘘は、ついてなさそうだけど」
「じゃあもう着替えて朝ご飯にするぞ」
「はぁ~、私なんかアルトにベットに入ったことすらないのに」
「お前いつも俺が風呂入ってる間に俺のベットに入ってるだろ」
「え⁉なんで知ってるの?」
「風呂入ったあと必ずベットにお前の匂いがするんだよ」
「ルイナお姉ちゃんバレてたね」
「さぁヨミちゃんとエレイヤちゃんは私の部屋で着替えるわよ」
逸らしやがったな。エレイヤはベットを出てルイナの部屋にいった。
着替えて朝ご飯を食べ、エレイヤは礼を言ってエレキギターを持ったまま飛んで町に帰っていった。雨は止んでいたが外は冷えていた。
ルイナが俺に纏わせていた氷魔法を調整した冷たい魔力はとっくに消していたらしい。全然気づかなかった。
エレイヤに勝ったご褒美は頭を撫でることになり、恥ずかしかったが約束なので撫でてやった。ヨミが少しだけ嫉妬していた。
〔宿屋〕
・改装が終わると広くなって、花や観賞植物が増えて自然に囲まれた感じになるらしい
・料理も美味く、酒も種類があって人気
・ルイナは宿屋に泊まったことがないのでどんなところかよく知らない
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普段アルトが風呂に入っている間。。。
ヨミ「ルイナお姉ちゃん、何してるの?」
ルイナ「え?アルトのベットの匂いを嗅いでいるのよ」
ヨミ「犬みたいだよ。でも羨ましい。私もやる」
ルイナ「はっ!アルトが上がってきた!早くリビングに!」
ヨミ「ルイナお姉ちゃん!」
ルイナ「何?早くしないと」
ヨミ「枕のほうがいい匂い」
ルイナ「ホント⁉どれどれ!」
アルト「(あの二人絶対俺のベットに入ったな)」




