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第百二十九話 ホワイトデー

 3日後、今日は3月14日。この日、高校の卒業式が行われた。


「卒業生、退場」


 泣いている先輩、カッコつける先輩、ふざける先輩、眠そうな先輩、心の中で泣いてそうな先輩などたくさんの3年生が卒業証書を持って、拍手が鳴り響く体育館を出ていく。


「アルトお兄ちゃん、拍手するの疲れた」


「もうちょっと頑張れ」


 俺とヨミとえりは体育館の後ろの方に座っていた。


 なんだかんだ高校に入らずに過ごしちゃったな。まぁ勉強めんどくさいしいいんだけど中卒ってのはなぁ……。今後何かに響く可能性もあるし来年度から入るのも考えとかないとな。でもそれだとヘルサ先生と訓練する時間もなくなっちゃうし。いやヘルサ先生と訓練する時間が少なくなって良いのか?そんなこと言ってもぶっちゃけヘルサ先生との訓練は大事だし。う~ん……。


 気づくと3年生は全員体育館を出ていた。


 卒業式が終わり、俺達は体育館を出た。そしてしばらく経つと校舎が騒がしくなった。


「よし、行くか」


 俺はサンタのような袋を抱えて校舎に入った。生徒が色んなところで話している。俺は3年生の階に来た。


「ア゛ール゛ート゛ーく゛~ん~゛!ありがとうね゛~!アルト君のおかげで魔法上手くなったよ!」


「おおっと、テレーズ先輩。いえいえ、俺はちょっとコツを教えただけですよ。それに泣きすぎです。あと、ご卒業おめでとうございます。それと……」


 俺は袋からラッピングされた箱を渡した。


「チョコのお返しです。ありがとうございました」


「えっ、これ手作り?」


「はい。頑張って作りました」


「ありがとねぇ~。ヤバい、優しすぎてまた泣きそうぅ~」


「ちゃんと水飲んでくださいね。これからも頑張ってください」


 俺はテレーズ先輩の別れを言って廊下を進んでいく。


「おっ、アルト君~。今までありがとね~」


「マジうちらアルト君来てから学校の楽しみ増えたから最高だったわ~」


「勉強は嫌だけどまだ高校いたいよね~」


「レナ先輩、エリン先輩。それは良かったですけど大学で問題起こさないでくださいね。そしてご卒業おめでとうございます。で、これが……」


 こうして俺は3年生の女子に祝いの言葉とお返しのチョコを渡していった。



「はい!また会いましょう!」


 これで3年生のチョコは渡し終わった。これだけでも疲れたがまだ1年と2年生のが残ってる。


 まぁ話すのは楽しいし頑張るか。


 俺は2年生、1年生の階を回ってチョコを渡した。そして俺は1時間半ほど掛けてチョコを渡し終わった。



「あぁ~、やっと終わった。みんなまだ帰ってなくて助かった」


 俺は道場に来て寝っ転がった。


 ルイナとヨミとえりはまだ生徒と話してるんだろうな。


「お疲れ様」


 そう思っているとルイナがやってきた。


「おう。ルイナは先輩と話せたか?」


「えぇ。いっぱい話したわ」


 ルイナは俺の横に座った。


「なら良かった」


「相変わらずアルトは人気者ね。それにチョコも全部手作りだなんて」


「まぁな。ずっとチョコ作り頑張ってたのはルイナも知ってるだろ」


「もちろんよ。失敗作を全部食べるものだから体壊さないか不安だったわ」


「多少ニキビは出来ちゃったけどな。しばらくはチョコ食べたくないな」


「早くアルトの作ったチョコ食べたいわね」


「帰ったら渡すよ。それまでに楽しみにしてろ」


「えぇ。とっても楽しみだわ」


 俺は上半身を起こした。


「俺達もあと1年したらここを出ないとな」


「そうね。ここで過ごせるのもあと1年ね」


「1年後には魔王倒してたりするのかな~」


「このまま順調にいけばあるかもね」


「もし魔王を倒したらルイナはどうするんだ?」


「う~ん。アルトとヨミちゃんとえりかちゃんと一緒にゆっくり過ごしながら学校の先生にでもなろうかしら。アルトはどうするの?」


「俺は~……どうしようかな。ギルドで金稼ぎしようかな」


「元の世界には、戻ろうとしないの?」


「こんな楽しくて大事なものがたくさんある世界から去れるわけないだろ」


「でももしこの世界と元の世界が行き来出来るとしたらしばらく元の世界にいたりする?」


「ん~、いや、行き来出来たとしても元の世界では俺は行方不明扱いだろうしいきなり現れたら混乱が起きるだろ。だから戻る気はないかな。まぁ出来るなら俺がこの世界に来る前の状態の家族に会いたいけどな。んで、どうしてそんなこと聞くんだ?もしかして元の世界に戻る方法を見つけたのか?」


「ううん、そうじゃないわ。ただいつまでも傍にいてくれるか確認しただけよ」


「前にも言っただろ。ずっと傍にいるよ」


「ありがとう。私もずっと傍にいるわ」


 落ち着いたルイナになっても俺への気持ちは変わってないみたいだな。安心した。


「ゆう君、もうチョコ渡し終わったの?」


 えりが道場に入ってきた。


「あぁ。ヨミは?」


「あっちで先輩達に囲まれてる」


 そういってえりは校庭の方を指さす。


「そうか。えりも先輩達と話せたか?」


「うん。また会えるといいね」


「会えるだろ。文化祭には絶対行くって行ってたし」


「そうだね」


 そうして俺達は3年生に別れを言って学校を後にした。



「ほら、チョコ好きのヨミにはいっぱいチョコ作ったぞ」


 家に帰って一息ついた俺はヨミに白黒で星柄のラッピングされた平たい箱をあげた。


「ありがとうアルトお兄ちゃん。大事に食べるね」


 ヨミは目をキラキラさせながら箱を開けると中には5×5に区分けされた中に色んなチョコが入っていた。


「おおぉ~……」


 ヨミは早速チョコを食べた。


「早いな。どうだ?」


「美味しい。世界一美味しい」


 ヨミは可愛い笑顔で答えた。


「それは良かった。いっぱいあるからあんまり一気に食べるなよ」


 俺はヨミの頭を撫でた。


「次はえりに。はい」


 俺はえりにハンドガンが描かれている箱を渡した。箱だけだと物騒だが。


「ありがとうゆう君」


 えりは受け取って箱を開けると中にはカラフルなマカロンが12個入っていた。


「わぁ!綺麗。ありがとね!」


「何気に一番作るの大変だったんだぞ。ありがたく食べろよ」


「分かってるよ~。頂くね」


 えりはマカロンを手に取って食べた。


「んん~。美味しい~」


 えりは美味しそうに頬に手を当てた。


「良かった」


「なんか私の作ったチョコより美味しくて苛立ちが」


「なんでだよ」


「私にだって女子としての威厳があるんだから」


「じゃあ女子やめろ」


「言われて出来るものじゃないから。来年はもっと美味しいの作るから」


「来年も楽しみにしてるよ」


 そして俺はルイナの方を向いた。


「最後はルイナだな。はい」


 俺は氷の刀が描かれた箱を渡した。


「ありがとう。素敵な絵柄ね。開けていい?」


「もちろん」


 ルイナは箱を開けた。中にはハート型のチョコレートショコラケーキがある。クリームと苺も乗っている。


「そ、その、ハートは恥ずかしかったんだけど、メイ先生が絶対そうしろって……」


「……ふふっ、ありがとう。とっても嬉しいわ」


 ルイナは笑顔を見せた。


「そ、それは良かった」


「頂くわね」


「あぁ」


 ルイナはフォークを持ってきて食べた。


「どうだ?」


「今まで食べたものの中で一番美味しいわ」


 ルイナはここ最近で一番の笑顔を見せた。


「っ!そ、そうか、それは良かった」


「あれあれ~?ゆう君目が潤んでるよ~?」


「うるさい」


 俺はルイナ達に背を向けた。


「アルトお兄ちゃんどうしたの?」


「いや、ちょっと、な。みんなが笑顔で美味しいって言ってくれて嬉しくてな」


「アルトお兄ちゃんらしくないね」


「お前もうるさい」


 俺はヨミにデコピンした。


「あうっ」


「ゆう君も愛いやつですな~」


「マカロン没収するぞ」


「ごめんって」


「ふふっ。ほらアルト。一緒にケーキ食べましょ」


「そうだな。みんなが喜んでくれて良かった」


 俺達は余ったチョコをおやつにしてコーヒーやココアを準備しているとエレイヤが玄関を勢いよく開けて入ってきた。


「はぁ、はぁ。やっと着いた」


「よう。エレイヤ」


「アルトきゅん!チョコくれ!」


「直球だな。ほらよ」


 俺は冷蔵庫から透明な瓶に入ったチョコレートプリンを取り出してエレイヤに渡した。


「おぉ!ありがとな!」


「瓶ごとプレゼントするよ」


「食べていいか⁉」


「あぁ」


 俺はエレイヤにスプーンを渡した。


「じゃあみんなでおやつにしましょうか」


 俺達は机に座ってそれぞれのチョコを食べたり余ったチョコを食べ始めた。


「超美味しいぜ!」


「良かった」


「エレイヤお姉ちゃん、一個あげるから一口頂戴」


「いいぜ」


「私もマカロン一個あげるから頂戴~!」


「おう!ルイナっちのも一口くれよ!」


「ええ、いいわよ」


 俺達は楽しい時を過ごした。



「ふぁ~。明日起きたらいっぱいニキビ出来てそう……」


「しばらくお菓子は控えないとな」


「仕方ないか~。おやすみゆう君」


「あぁ、おやすみ」


「おやすみなさい、アルト」


「おやすみ、アルトお兄ちゃん」


「おやすみ。また明日な」


 夜になり、俺達はそれぞれ部屋に入ってベッドに入った。


「さてと、みんなが寝付くまで時間を潰すか」


 俺はとある目的のために眠らず一心斬絶の手入れしたり読書をした。気が付くと1時間15分ほど経っていた。


「そろそろいいかな」


 俺はベッドの下の床下収納を開けて中にあったクーラーボックスを軽くベッドを持ち上げながらなんとか出した。


「よいしょ」


 クーラーボックスの中から箱を取り出して俺は静かに家を出た……。




「ゆう君~!もう行くよ~!」


「ふぁ~。あぁ、分かってる分かってる」


 次の日、俺は学校に行くために急いでいた。俺は玄関を出てルイナは玄関の鍵を閉める。


「やっとチョコ地獄から解放される」


「またアルトお兄ちゃんのチョコ食べたい」


「1年後な」


「ねぇ、アルト。昨日の夜、また外に出たでしょ」


「えっ。えーっと……はい」


「危険なんだからあんまり出ないでね」


「分かってるよ。さぁ、学校に行こう」


 俺達は詠唱魔法を唱えて飛んで学校に向かう。その途中で一軒の家の屋根を見る。そこには石と石の下に紙があった。


「あ~、まだ少し眠い」


 俺はそう言いながら下に下がり、その紙を取った。そこには……。




 昨夜。


「まさか、本当にあるとは。君はチョコ以上に甘いな」


 僕は初めてアルトと会った場所、家の屋根にやってくるとそこには三日月の絵柄が入っている箱があった。


 それを開けると中には紙と生チョコが9個入っていた。


 紙には、『バレンタインの時はチョコありがとうな。ちょっと苦かったけど美味しかったよ。いつかゆっくり話そうな』と書かれていた。


「ふっ、ゆっくり話す日なんて来ないさ。僕は君を殺すんだから」


 僕は生チョコを一つ手に取って口に入れた。アルトのチョコに毒が入っているなんて思うことさえ無粋なことだ。


「甘ったるいな。君らしい」



 いつか、ゆっくり話せる日が来たら、いいな……。



 いや、来るはずがない。君はあの方には絶対勝てないから。


 例え僕が君を殺せなくても、あの方に会えば君は必ず殺される。どうせ殺されるのなら僕の手で殺す。絶対に僕が君を殺す。絶対に……。



 出来るなら君を、殺したく、ない。



 目から雫が垂れる。どうしてだろう。


 僕はどうしようもない気持ちを埋めるようにもう一つ生チョコを取って口に入れた。


「んっ⁉辛っ!ゴホッゴホッ!辛い!」


 せき込んでいると、紙の端っこに小さくなにか書かれていることに気が付いた。


『一つだけ激辛チョコがあるから気を付けてね、ミカヅキちゃん♡』


「殺す!」




 俺が書いた紙の裏にそう書かれていた。


「ぷっはは。絶対気づかず食べただろあいつ。やっぱりあいつはからかい甲斐あるなぁ」


「アルト、どうしたの?急に下がって急に笑ってるけど」


「なんでもないよ。よっし!眠気も吹き飛んだしちょっと飛ばすぞ!」


「ちょ、早いわよアルト!」


 こうして俺達はいつも通り学校に行ったのだった。

1ヶ月ぶりです。イルです。

最近地震が多くて参っちゃいますね……。あんまり被害がなくてよかったです。


今回はホワイトデーのお話です。リアルじゃバレンタインの時期ですけどね。

というか丁度一年前くらいに投稿したお話がバレンタインでしたね。一年で1ヶ月分のお話しか描けてないの自分でもちょっと悲しいです……。


次回は副団長が行きたいと言っていた海のお話です!


ではまた次回!

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