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第百二十五話 悩み

 ロビン団長から魔術を教わって3日後、学校で4時限目が終わるチャイムが鳴り、俺は弁当を食べる前にトイレに行って出てきた。


 はぁ~、ホワイトデーまであと2週間か。やっぱり手作りの方が嬉しいとだろうしなんとか美味しいチョコの作り方を教えて貰わないとな~。でもそういうのは女子が知ってそうだから渡す人に教わるってのは変だよなぁ~。


 俺が悩みながら道場に戻ろうとするとメイ先生が目の前に立っていた。


「そこの『手作りチョコ作りたいけど作り方知らないどうしよう』と思ってそうなアルト君!」


「……エルフは心を読む力を持ってるんですか?」


「いえ、私の勘です。勘を外してアルト君にツッコまれなくて良かったです」


「で、どうしたんですか?」


「私が手作りチョコの作り方を教えてあげましょう」


「え、本当ですか⁉でもメイ先生にも渡す予定なんですよね」


「そんなこと言ってたらチョコを作るの間に合いませんよ」


「それもそうですね。ぜひお願いします」


「では5時限目に家庭科室に行きましょう」


 そう言ってメイ先生はどこかへ行った。


 さてと、お腹減ったし早く道場に戻ろう。


 俺は生徒がたくさんいる廊下を歩いて道場まで向かっていく。


「よぉ、アルト。こいつついにヘリアに告るんだってよ」


「まだ付き合ってなかったのかよ。絶対成功すると思うけど頑張れよ~」


「おう!もうやるしかねぇわ!」


「アルト先輩~。もう帰りたいです~」


「あとは飯食ってつまんない授業聞くだけだろ。頑張れよ」


「簡単に言ってくれますね。はぁ~、頑張りま~す」


「やばやばやばっ。アルト助けてくれ。あいつずっと追ってくんだけど」


「おいおい、廊下は走るんじゃねーぞ。あとお前が100%悪いやつだろ。ほら」


「あ~もう最悪。アルトお前あとで覚えてけよ」


 なんで俺が悪いんだよ。


 そうして道場に着いた。


 生徒ともかなり仲良くなったな~。しかも最近は、


「あっ、アルト先輩!こっちです!」


「……人多いな」


 道場で昼ご飯を食べる人がいる。

 最初はミスリアだけが来て、次の日はミスリアの友達が来て、また次の日にはさらにミスリアの友達が来て、またまた次の日にはミスリアの友達の彼氏とその友達がやってきて、またまたまた次の日はミスリアの友達の彼氏の部活の先輩が来て、と次々と増えていき道場はいっぱいになった。


 俺は座って昼ご飯を食べている生徒の間を通ってルイナやヘルサ先生やミスリアがいるところまで歩いていく。


「ねぇ、アルト先輩!この弁当可愛くない⁉」


「そうだな。お前が作ったのか?」


「そう!最近弁当作りにハマってるの。今度アルト先輩に作ってあげるね!」


「おっ、アルト。このおにぎりくっそ不味いんだけど」


「お前前にもそんなこと言ってただろ。それ誰が作ったの?」


「俺。俺マジで料理の才能ないわ。はっはっは」


「はっはっはじゃねーよ。なら弁当買えばいいのに」


 俺は何度か絡まれながらルイナとヨミの隣に座った。


「随分と人気スポットになったわね」


「そうだな。ちょっと賑やか過ぎるけどまぁいいだろ」


「そうね。でもアルトとヘルサ先生と三人で食べてた頃が少し恋しいわ」


「私もあまり賑やか過ぎるのは苦手なのだがな。まぁ生徒が楽しんでいるのなら仕方がない」


「俺は誰と一緒に食べてても楽しいけどな」


 ミカヅキもいてくれたらな。あいつヒュドラー討伐のときは姿現さなかったし。一応あいつからもチョコ貰ったんだしホワイトデーのお返しも作らないとだけどどうやって渡せばいいんだ。まぁそのときになってから考えるか。


「ご馳走さまでした。今日も美味かったよ」


「ありがとう。最近お弁当もちょっと工夫してるのよね」


「確かに前と比べたら味がちょっと変わってるな。前のも今のもどっちも美味しいけど」


「そんな褒めてもなにも出ないわよ。さて、今日はステーキにしましょうか」


「ちょろいな。昔は絶対そんなことなかったのに」


「もう、昔の話はやめて。昔は自分の気持ちに嘘付いてたから素直じゃなかったのよ」


「今はすっかり素直になっちゃてまぁ」


「うるさいわね。ちょっとトイレ行ってくる」


 ルイナはトイレに向かった。


「はぁ~」


「どうしたミスリア」


「い、いえなんでもありません。ただ、ルイナ先輩は完璧だな~と」


「まぁな。でもルイナだって完璧じゃないし、さっき言ったように昔のルイナは結構ダメダメだったんだぞ」


「そうなんですか?今も昔も変わらず素敵だと思いますが」


「確かにそうだが、昔はすぐに怒って問答無用で詠唱魔法撃つし、恋愛のこと言うとネジが外れるし、扱うのは難しかったんだぞ」


「そうだったのですね。昔から思ってたんですがルイナ先輩ってアルト先輩にだけ強く当たりますよね。どうしてなのでしょう」


「さぁな。あいつ出会ったときから俺にだけ当たり強いけど多分俺が煽ってたりしてたからだろうよ」


「出会ったときからなのですか?」


「あぁ」


「ルイナ先輩は初対面の方にはどう煽られても冷静だったはずですが」


「へぇ~、よく見てるんだな。でも言われてみればエレイヤになに言われても戦闘中以外はにこやかだったな。まぁ好きな人には意地悪したくなる人だったんだろ。仕方ないさ。はっはっは」


「楽しそうだねアルトお兄ちゃん」


「結局のところ、今は完璧だからな」


「私も完璧になれるように頑張ります!」


「ミスリアはミスリアなりの完璧になればいいんだからな」


「はい!それでは私は教室に戻りますね」


「おう。授業頑張れよ」


 ミスリアは教室に戻り、トイレから戻ったルイナや他の生徒も教室に戻っていった。


「さて、アルト君。一緒に家庭科室に行きましょう。手作りチョコの作り方をお教えします」


「メイ先生。ただ教えただけなんじゃ」


「ふふっ、アルト君しては見当違いですね。チョコが食べたいだけです」


「いや理由酷いですね」


 俺とメイ先生は家庭科室に向かった。


「はぁ~、やっと静かになったか」


「さっきまでワイワイしてましたからね。ヨミちゃんが読みたい本があるらしいので私達は図書室に行ってきます」


「あぁ。ゆっくり読んでくるといい。ただし、読んだ本はちゃんと元の位置に戻すんだぞ」


『は~い』


 えりとヨミは図書室に向かっていく。すると入れ替わるように道場にフィアーナ先生が来た。


「ヘルサちゃん、ちょっといいかしら」


「ん?」





「はぁっ!」


「ふっ!」


 私達は西の森で周りにいた魔物を倒した。また魔物が活発になっているので少しでも魔物を倒そうということらしいが。


「別に私達がやらなくてもギルドの奴らに任せておけばいいのでは」


「ギルドの人も倒してるけど怪我人がどんどん増えていってるの~。理由はこの森で魔石強化された魔物がいるからよ」


「魔石強化、か。一体誰がこんな森に放ったのか」


「誰でしょうねぇ~。ただ絶対に性格が悪いってことは分かるわねぇ」


「ふっ、そうだな」


 魔物が次々と姿を現し、近づいてきた。


「魔石強化された魔物がいるなら本気を出さなければ危険かもしれんな」


「えぇ、そうねぇ。5時限目が終わるまで頑張りましょう」


 私とフィアーナ先生は覚悟を決めて魔物に立ち向かおうとした。その瞬間、上から物凄いスピードで無数の槍が魔物に向かって振ってきた。


「こ、これは……」


「なにやら、気持ちの悪い魔物がこの森にいるようじゃの」


 木の陰からメイ先生ほどの小さな背の人がやってきた。


「師匠」


「1ヶ月ぶりくらいじゃの。ヘルサ、フィアーナ先生」


『お久りぶりです』


「うむ」


「今日はどうしてここに?」


「メイにこの森の魔物の処理を頼まれてのう」


「なるほど。ではこれから一緒に倒しましょう」


「良い提案じゃが、もうこの森の魔物は全部倒してしまっての」


「さ、流石師匠ですね」


「メイだけでもこれくらい一人で出来たじゃろうに。『生徒に手作りチョコの作り方を教えたいからあとは任せました。ふんふふ~ん』とか言って浮かれおって」


「そうだったのですね。メイ先生はその生徒に期待しているようなので」


「知っておる。アルト・アギル・リーヴェ、じゃろう?」


「知っておられたのですね」


「メイのやつからも何度か聞いていたし、噂で聞くこともある」


「なら彼に訓練をしてあげてくれませんか?」


「どうしてもと言うならしてやってもいいが、儂が訓練をする原則から外れておる。さらに言えば、お主達だけでも教えられることはまだあるじゃろう」


「そうですね。ですがいつかは」


「そうじゃのう。もしも、何かあればそうすることにしよう」


「ありがとうございます。もしよければその時はルイナとえりかという子も一緒にお願いします」


 師匠は眉をピクリと上げた。


「ルイナ……ルイナ・エイス・セレーネか?」


「そうです。あの子のこともご存知だったのですね」


「うむ。騎士団が彼女に隠していることも知っている。彼女の両親とは何度か会ったことがあっての。彼女には一度も会ったことはないが、あの二人の子供なら儂が教えずともメイくらいの力を持つはずじゃ。まぁ、それ以上の力を求めるなら教えよう」


「そうですか」


「それより、そのアルトとルイナは仲が良いのか?」


「は、はい。二人は恋人同士なので」


「恋人……くふふ、なるほど、それは面白いのう。全くメイのやつ、なぜ教えてくれなかったのじゃ」


 私とフィアーナ先生は言ってることがわからず不思議な顔する。


「あの二人の願いは叶わなかったが、彼が一緒ならばそれで良かったのかもしれぬな」


「そ、それはどういうことでしょうか?」


「独り言じゃ。お主は気にせずとも良い。それより、儂は用が済んだからもう帰るぞ。良いことも聞けたし、とある用事もできたしのう」


「はい。森の魔物を倒していただきありがとうございました」


 私とフィアーナ先生は一礼した。


「うむ。そのアルトという少年と、ルイナという少女をお主らの手でよく育てるが良い」


 師匠はそう言い残して物凄いスピードで飛んで帰っていった。


「やっぱり何度見てもヘルサちゃんの師匠は凄いわねぇ~」


「自慢の師匠だ。あのお方が騎士団に入ってくだされば魔王も倒せそうなのだが……」


「そう一筋縄ではいかないものねぇ。でも今は言われた通りしっかりとあの二人を育てないとねぇ」


「そうですね。あの二人なら私達を超えるのもそう遠くないだろう」


「でしょうねぇ……もし、あの二人や騎士団が魔王を倒したらもう強くなるのをやめるのかしらね?」


「ルイナ君はずっと魔王を倒すという夢を持ってましたからそれの先はまだ考えていないでしょう。アルト君も同じようなものだ。しかしあの二人なら良い道を選ぶだろう。それに魔王を本当に倒せるなど分からない。魔王は110年ほどにいたがそれ以来誰も見ていないし、どんな力を持っているかなどほとんど分からない。魔王の幹部のことも知っていたアルト君も『魔王の名前が分からなければ自分が知っているかどうかも分からない』と言っていたし」


「この世は分からないことばかりねぇ」


『う~ん……』


 私とフィアーナ先生は頭を悩ませながら学校に帰った。

5ヶ月ほど休んですみませんでした。イルです。

最近忙しくて中々書く時間がありませんでした。って前回も同じようなこと書いた気がします……。

このままどんどん更新頻度が下がらないことを自分でも願ってます。


今回はアルトとメイ先生が手作りチョコを作ることにして、ヘルサ先生とフィアーナ先生が西の森でヘルサ先生の師匠と会いました。まだヘルサ先生の師匠は謎多き人物ですね。


次回は出来るだけ早く更新したいです。

こんなに更新が遅れてももし見てくれている人がいるならば、本当にありがとうございます。

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