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第百二十話 黒炎

 俺とガルアはヒュドラーの子供を倒しながら道を進んでいっていた。俺は闇魔法で一体ずつ倒している。


「くっ、脚の傷が開き始めたな」


「無理するなよ」


「んなこと言ってもこいつらが襲い掛かってくるんだから仕方ねーだろ」


「ちっ、あと少しで全滅だからそれまで耐えろ」


「わかってるよ!」


 俺は手を横に振りながら闇魔法をいくつか出してヒュドラーの子供に撃った。ガルアも殴ってヒュドラーの子供を潰した。


「魔力感知はないしこれで最後だな」


「脚の調子はどうだ?」


「また血が出始めた。そういえば血を止めるには何かで押さえればいいんだったな」


 俺は水魔法で雑菌をできるだけ洗い流すとちょっと躊躇って着ているコートを少し斬った。そして斬ったコートの切れ端を脚に強く巻き付けた。


「本当にこれで血が止まるのか?」


「この世界じゃ回復魔法があるからそういう知識はないんだよな。俺の世界じゃこれが普通だから多分大丈夫だろ」


「曖昧だな」


「そんな医学的なことは詳しくねーんだよ」


「これで歩けるか?」


「歩いたらどうせ傷口広がるだけだし飛んでいくか」


 俺は詠唱魔法で浮いた。詠唱せずに飛べたら穴に落ちずに済んだんだけどなー。


「これならいけそうだな」


 俺とガルアは先に進んでいった。


少し経つと湖に着いた。他に道はない。湖を見ると底の方が明るい。


「この底にいけばどこか地上に繋がってるかもな」


「そうだな」


「傷が水に染みて痛そうだけど行くしかないか」


 俺は湖の前に立って飛び込む準備をした。しかしガルアは動こうとしない。


「どうした?早くいかねーと」


「……俺は、これが終わったら騎士団を辞めることにする」


「えっ⁉なんでだよ⁉」


「お前に嫉妬してお前を危険な目に合わせちまった」


「なんだ、そんなことかよ。俺はもう気にしてないぞ」


「俺はお前を殺すことになってたかもしれないんだ」


「でももうしないだろ?まぁルイナには恨まれるだろうけどな」


「……俺はお前になんの償いもできてないのに許してくれるのか?」


「だから許すって。償いはルイナに怒られることだけでいい」


「ははっ、お前は本当にお人好しだな」


 ガルアは笑った。


「うるせーよ。ほら早くいくぞ」


「おう」


 ガルアは俺の隣に立った。


「お前は前俺と戦った時にお前が勝ったのは守るものがあるからだと言ったな」


「そういえばそんなこと言ったな」


 あの日はルイナが風邪を引いていたな。


「お前は守るものがなくても強い。だから自信持てよ」


「はっ、お前言われなくても少しは自信あるっての。それより、ガルアだって騎士団に必要な強さ持ってるんだからもう辞めるとか言うなよ」


「そうだな。アルト」


 こうして俺とガルアは湖に潜っていった。




「はぁっ!」


 私はアルトがいなくなった寂しさを紛らわさせながらヒュドラーに向かって氷魔法を撃っていた。かなりヒュドラーの皮膚が凍って死んでいる。もしかしたら火傷させること以外にも凍らせるのも良かったのかもしれない。


「全員良くやった!これで一気に決めるぞ!」


 リーザ団長は最後の首を斬って火傷させた。そして騎士団全員が一気に詠唱魔法を撃った。ヒュドラーは為す術もなく詠唱魔法をくらって爆風で砂ぼこりが立つ。爆風が収まるとヒュドラーの姿はなく肉片が散らばっていた。


「まだ油断をしないでください!」


 ドロシー団長の声で騎士団はまだ警戒を続けた。すると肉片が動きだして一つに固まりだした。


「っ!魔導師や魔術師は防御魔法を展開してください!」


 何かを見たであろうドロシー団長は叫んだ。私も防御魔法を展開し、すぐさま強固な防御魔法が作り上げられた。


 ヨミちゃんが上空から私の隣に来た。


 集まった肉片から紫色の魔力が出始める。魔石強化された八岐大蛇とケルベロスと同じ魔力。その魔力はヒュドラーの元の形を成していくと体から大量の毒の煙を吐いた。防御魔法のおかげで誰もその煙を吸わずにすんだ。


 しかしその毒の煙は出続けている。


「どうする。煙を吸うと一瞬にして体中に毒が回るぞ」


「息を止めている間にあのヒュドラーを倒せる確証はありませんね」


「俺の魔術で一時的にあの煙を無害にできますがそれもその間にあいつを倒せる確証はないっスね。撤退も視野に入れるっスか?」


「撤退してあの災害魔物を自由にしてはいけないだろう。なんとかここで仕留めなくては」


「んこと言ってもどーすんだよ。あいつを一瞬で消し飛ばすには相当な火力がいると思うぞ」


 団長達が集まって考え始めた。


「ヨミちゃんは詠唱魔法連続で撃てる?」


「できないと思う。星魔法でも今のヒュドラーの再生能力に勝てるかどうか」


「そうよね」


 悩んでいると防御魔法にひびが入っていることに気づいた。


「皆さん、防御魔法が!」


 私はすぐに団長達に教えた。


「あの煙は魔法を打ち消す能力も持っているのか!」


「時間がありませんね。どうします」


「まずは息を止めて攻撃をし、息が続かなくなったらロビン団長が魔術を使い煙を無害にし、魔術が消えたらまた防御魔法をするしかないだろう」


「しかし、それで耐久戦になればこちら側が確実に不利です」


「でもするしかありません」


 かなり絶望的な状況になってきた。


「大丈夫かな」


「大丈夫よ。心配しないで」


 私はヨミちゃんの頭を撫でた。でもヒュドラーは今は毒の煙を吐いてるだけだがスピードや攻撃力は上がっているはず。このままだと私達は死ぬか撤退するかどっちかの可能性が高い。


 アルト……。アルトならこの状況ならどうするのかしら。アルトなら良い戦術を思いつきそうね。今こそ、アルト、あなたが必要なのに。


「とりあえずその作戦でいきましょう!もうすぐ防御魔法が壊れます。壊れたら息を止めて全力で攻撃を!」


『了解!』


 不安がりながらも騎士団は答えた。防御魔法が壊れていく。


「必ず勝つぞ!」


 リーザさんがそう言い、防御魔法が壊れた。


 その瞬間、一筋の赤い炎と漆黒の闇が混ざった刀が毒の煙を斬り裂いた。


「あれは……」




 俺とガルアは湖の底まで潜りその先を泳ぐと上に太陽の光が見えた。それを目指して泳いだ。


「ぷはっ!」


 地上に出れたことを確認して、陸まで泳いだ。


「無事に出れて良かったな」


「あぁ。傷はどうだ?」


「痛いけど大丈夫だ。で、ヒュドラーは……」


 魔力感知すると嫌な魔力を感じた。


「これって」


「魔石強化されたときの魔力だな」


 魔力感知された方向を見ると80m先くらいに紫色の魔力の体のヒュドラーがいた。ヒュドラーの体から大きな防御魔法に向かって毒の煙が出ている。あそこにみんないるのか。


「早く行かないとマズそうだな」


「そうだな」


「どうした?」


「ガルア、俺がただ自分の力に酔ってるガキじゃないってことを証明してやるからよく見てろよ」


 俺は一心斬絶を抜いて手を横にし、炎と闇の合体魔法を逆流させて飲み込み、合体魔法の魔力を一心斬絶に付与した。そして息を止め、ヒュドラーに向かって飛んだ。


 ヒュドラーの首を1本斬り落として黒炎で切口を燃やしたが火傷しない。ヒュドラーは突然現れた俺に驚きながらも8個の口から毒を吐いてきた。俺はそれを走りながら避けてもう1本斬り落とした。しかし斬り落とした2本はすぐに再生していく。


 やっぱり本気でやるしかないようだな。


 そう思い俺は一旦ヒュドラーから毒が届かない場所まで距離を取った。一心斬絶に付与している魔力を取り、一度深呼吸をし、一心斬絶を横にする。


「紅蓮の炎よ、深淵なる闇よ、我が刀を飲み込み、全てを灰に化せ、闇炎の刃!」


 一心斬絶に炎が流れ、その炎は闇に飲まれて黒炎へと変わる。


 俺は一心斬絶を構えてヒュドラーに向かって走った。


黒炎闇斬絶(こくえんあんきぜつ)!」


 詠唱魔法を唱えヒュドラーを斬った。ヒュドラーの体は再生する暇もなく切り刻まれていく。


そうして切り刻んだ肉片と紫色の魔力は黒い炎で焼かれて消えていった。


 俺は合体魔法を飲み込んだ状態を解除して一心斬絶を持ってる右手を上に挙げた。


「これが我が力!我が黒炎に飲まれるが良い!はっはっは~!」


俺は声高らかに言った。それは厨二病の俺が思い描いていたカッコいい魔法剣士であった。


「あっ、やばっぐおっ!」


「アルト~!良かった!ちゃんと生きてた!」


 騎士団の前で厨二病発揮したことに恥ずかしがっているとルイナが猛スピードで俺に抱き着いてきた。


「良かった!良かった!良かったぁ~!」


 抱き着きながら泣いてジャンプして喜んでいる。嬉しいけど苦しいし痛い。


「生きてるよ、生きてるから!」


 そう言ってもルイナは抱きしめ続ける。


「アルトお兄ちゃん、生きてるって、信じてたよ」


「ゆう君、生きてて、良かった……」


 ヨミもえりも泣いて隣にきて抱き着いてきた。


「心配かけて悪かったな」


「ヒュドラーは倒したのか?」


 リーザ団長がやってきた。


「はい。跡形もなく斬って燃やしてやりましたよ。俺が考えた詠唱魔法で!」


「そうか。ヒュドラーは討伐されたぞ!」


 リーザさんがそう叫ぶと騎士団全員が歓声を上げた。


 後ろからガルアがやってきた。


「どうだ。この詠唱魔法は俺が何回も努力して完成させたんだぞ」


「あぁ、凄かったぜ。お前は立派な騎士だ」


「へへっ」


 こうして魔王の幹部、ヒュドラーは討伐された。




 僕は遠くで騎士団がヒュドラーを倒すのを一人見ていた。


「あれが今のアルトの力か……」


 確実に強くなっている。戦う時が楽しみだ。


 そういえば僕の作ったバレンタインチョコは食べてくれただろうか。食べてくれてたら嬉しいな。


 ……戦うこともいいけど今はただ君と話したいよ。



〔レオ団長〕


 男 身長 182cm 体重 65kg


【特徴】

・金髪

・青緑色の目

・有名な貴族

・白いコートと白いマント


【性格】

・どんなときでも優雅さを忘れない

・家名を誇りに思い、責任を持っている

・実力で騎士団に入った


【ジョブ】

・剣士


【得意属性】

・水


=======

ルイナ「アルトが生きててよかった~!」

アルト「俺がいない間何かあった?」

ルイナ「大丈夫、何もないわよ」

リーザ「こいつはずっと情緒不安定だったぞ」

ルイナ「はぁ⁉リーザ団長もですよねぇ~?」

リーザ「私は違う。お前と一緒にするな」

アルト「よしヨミ、早く帰って休むか」

ヨミ「うん。やっぱりアルトお兄ちゃんがいないとね」


=======

生活リズムがぐちゃぐちゃです。イルです。

この一週間は寝る時間が朝になったり夕方になったり夜になったりまた朝になったりしました。どうなってるんだ…。


今回は騎士団とアルトの力でついにヒュドラーを討伐しました。そしてアルトの詠唱魔法ができました。ガルアとの距離も縮まりヒュドラー討伐回は色々進展があったと思います。


ではまた来週~!

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