第百十六話 3人の団長
俺達はそれぞれ浴場に行った。俺は男風呂の脱衣所で服を脱いでいる。
ドロシー団長凄かったな。あんなチート能力を持った人もいるんだな~。占いでも色んなことが分かってたし。
そういえば俺とえりが異世界から来たってことは分からなかったのか?ドロシー団長もルイナの秘密を知ってるだろうし言ってないこともありそうだな。あと俺は悪魔の、ルイナは天使の加護が付いてるって言ってたけど本当なのか?それにこの世界は悪魔と天使がいるんだな。確かにルイナは天使だがなんで俺が悪魔なんだ。俺が天使だろ。いや悪魔もカッコいいけど怖いな。
もしかして俺とえりをこの世界に来させたのは天使と悪魔の仕業だったりするのか?ドロシー団長は過酷な未来が来ると言って、マギナ団長もルイナに厳しい困難が、とか言ってたし俺とルイナが殺し合う運命になってたりして。そ、そんなはずないよな。そうじゃなくてあって欲しい。
ヨミの占いはもうとにかく幸せって感じだったが、えりの占いは詳しくは言われなかったよな。何かを隠しているのか、ただ単に本当にそれだけだったのか。今度会ったら聞いてみるか。
俺は服を脱ぎ終わり、温泉に入って鏡の前に座り体を洗い始めた。少しすると誰かが俺の後ろを通り過ぎて隣に座って体を洗い始めた。
その人は黒い前髪が目まであり黒い目をしている。日本人に似た見た目の人だな。
「あ~、マジ疲れた。なんであの森あんなに魔物いんだよ」
これは俺がいることを分かって俺に聞いてるのか?それはないか。相槌でも打っとくか?いややめとくか。
「そもそもなんで俺が団長なんだ。俺にリーダーとしての才能なんてないだろ」
めっちゃネガティブだな。あとやっぱりこの人は団長なのか。励ました方がいいのか?
俺が色々と悩んでいると隣にいる団長は俺を見た。
「うおぉ!だ、誰だあんた!いつからそこに⁉」
気づいてなかったのか。
「第二騎士団から来ました、アルトです」
「あ、あぁ、あのアルト君か。えと、俺は第十騎士団団長のロビンっス。よろしくっス」
団長なのになんで後輩キャラみたいな喋り方なんだ。
「よろしくお願いします。ちなみにロビン団長が来る前からここに居ました」
「マ、マジか……さっきの聞いてたっスか?」
「あぁあのネガティブ発言のことなら」
「はぁ~、全然俺団長らしくないっスよね」
「ん~、まぁ言動だけだとそうですけど団長に選ばれたなら実力はあるんじゃないですか?」
「でも俺、力は強くないっスよ。なんならティナより魔力量少ないと思うし」
「なら指揮力とかじゃないですか?」
「そうかなぁ?そうだったらいいけどなぁ~」
「ロビン団長は団長になってどれくらい経つんですか?」
「そろそろ1年経つっスね~」
「まだまだこれからじゃないですか。大丈夫ですよ」
「これからっつっても今が重大だから今出来ねーと意味ないっスよ」
俺がこれ以上どう励まそうか考えるとロビン団長はハッとした。
「わ、悪ぃ!困らせちまって。年下に相談するなんてカッコ悪いなー俺」
「俺は何も問題ないですよ。カッコ悪いなんて思ってませんから人生経験の少ない俺で良ければいつでも相談に乗りますよ」
「優しいなアルト君は。でも立場的に相談はしないでおくっス」
「そうですか。というかなんでそういう口調なんですか?」
「えっ⁉ウザかったりするっスか?」
「いやそうじゃないですけど俺は団長でも年上でもないのでタメ口でいいのにと思って」
「あぁ~、よく言われるっス。たまにウザいって言われたりして、自分でも直そうとはしてるんスけど」
「俺はそのままでもタメ口でもいいですよ」
「そう言ってくれるのはありがたいっスけど、アルト君は強いし指揮力もあると思うから実質アルト君の方が上っスよ」
「能力が上か下かなんてどうでもいいですよ。今はロビン団長が団長なんですから」
「そ、そうっスか?ならいつも通りにするっス」
「それで良いと思いますよ」
俺とロビン団長は体を洗い終わり、湯船に浸かろうとすると誰かが先に入っていた。金髪で青緑色の目をしている人で、脚を組んでいる。
「ご機嫌よう!お二人とも」
「どもっス。アルト君、こちらは第九騎士団団長のレオンハルト団長っス。貴族でもあるっス」
ロビン団長は俺と湯船に浸かりながら説明してくれた。
「そう!私はレオンハルト・ウィリアム・スカーレットだ。苗字くらいは聞いたことあるんじゃないのかい?」
そう言いながらレオンハルト団長は髪をかき上げた。
「すみません。あんまり世間に詳しくないので」
「えっ!ウィリアム家知らないんスか⁉」
「はははっ、いいさいいさ。これから知れば良い、アルトよ。気軽にレオ団長と呼んでくれたまえ」
「はい、ではレオ団長と」
「それで良い。それで、アルトよ、君の噂はよく聞いているよ。『黒炎刀の使い手』とね」
「えっ!そんなカッコいい二つ名付いてるんですか⁉」
「あ~、時々言われてるっスね」
「おぉ~!俺、もしかしてカッコいい?」
「急にナルシストになったっスね」
「私ほどではないが君も中々有名のようだね。これからも頑張りたまえ」
「はい!頑張ります!」
めっちゃモチベが上がってきた。
「ちなみにルイナに何か二つ名とかあります?」
「確かあの子は」
「『純白の氷姫』だな」
「おぉ~、姫っていうのは謎ですけどカッコいい」
「はははっ、いいじゃないか姫というのは。彼女は姫のように美しいからな」
「一応言っておきますけどルイナは俺の彼女ですから狙おうと思わないでくださいね」
「もちろん分かっているさ。彼女の方から言い寄られれば分からないがね」
「ルイナはそんなこと絶対しないのでご安心を」
「ふはははっ、愛の強い奴らだ」
「レオ団長は恋人とかいないんですか?」
「今まで付き合った人は数十人かいたが今はいない」
「レオ団長イケメンですもんね」
「はっはっは。褒めるでない。照れるだろう。アルトは付き合った人数はどれくらいだ?」
「ルイナを合わせると二人ですね」
「ほう。思った以上に少ないな。君ほどの実力と顔と性格ならば二十人ほどは付き合った人はいると思ったが」
「そうだったら良かったですけどね。でもすぐ別れるような人とは付き合いませんよ」
「フッ、君は見る目があるのだろうね。もしかしてその1人は君とよく居るという雷魔法を使う子だったりするのかい?」
「よ、よくわかりましたね」
「おおっと、冗談で言ったのだが合っていたとは。しかし、今カノと元カノが一緒にいて大丈夫なのか?」
「ま、まぁ俺も最初は不安でしたけど二人とも仲良いし、えりも友達として接してくれてるので」
「それでもまた君に惚れたらどうする」
えりが俺に?
『逃げるの?そうやって無意味無意味って!』
いや、そんなこと、ありえないだろ。あいつはもう俺に失望した。友達ならまだしも、恋人になりたいなんて思わないはずだ。
「……それはないですよ」
「そうか。はははっ、意地悪な質問をして悪かったな」
「1人も付き合った人がいない俺の前でそんな話ししないで欲しいっス」
「そうなんですか。ロビン団長もイケメンなのに」
「そ、そんなことないっスよ」
「なに、私の前だからといって謙遜しなくて良い。お前は髪を整えれば中々の顔になるぞ」
「そうっスかね」
ロビン団長が照れていると、扉が勢いよく開けられた。
「よう!久しぶりだな!ロビン、レオ!」
「うわっ、うるさいのが来たぞ」
「おっ!第二騎士団から来たアルトってやつもいるな!俺と色々と語ろうぜぇ~!」
その茶髪で茶色の目をしたエレイヤ以上にうるさい人は走って湯船に飛び込もうとした。しかし湯が浮き上がりその人にぶつかり吹き飛んだ。
「不意打ちとはやってくれるじゃねーかレオ!」
「お前はまず体を洗いたまえ。そして静かにするんだ」
そのうるさい人はとりあえず体を洗い湯船に浸かった。
「俺は第七騎士団団長、ゼクアだ!アルト、お前のことは知ってるぜ!よろしくな!」
「は、はい。よろしくお願いします、ゼクア団長」
「なぁ!お前の合体魔法を体に吸収して力を増すやつ凄いな!どうやったら出来るんだ⁉」
「えっと、合体魔法を逆流させてそれを飲み込むイメージして精神を集中させれば俺は出来ました。けど危ないのでやらない方が――」
そう言い終わる前にゼクア団長は既にやっていた。炎と光の合体魔法が体に逆流し、周りの湯が蒸発している。
「ちょ!危険ですよ⁉しかも風呂で⁉」
「もう何言っても無駄だよ」
ゼクア団長は目を瞑り痛みに耐えながら集中している。メイ先生でも出来なかったが出来るのか?
「……出来ねぇ!」
ゼクア団長の逆流した合体魔法は吹き飛んだ。
「えぇ?」
この人もメイ先生と同じで周りの魔力を弾き飛ばせるのか。見るの二回目でも困惑するな。
「何が足りないんだ⁉」
「いや、俺もよく分かってないので」
「そうか。じゃあ分かったら言ってくれ」
「やっと落ち着いたか。お前は相変わらず暑苦しい男だな」
「俺はいつでも熱いぜ!アルトも中々熱い心持ってるよな!」
「そ、そうですかね?」
「そうだ!前にリーザと戦っていただろ?骨を折られても戦い続けるお前から情熱を感じたぜ!」
「あれはリーザさんにイラついてただけですよ。ゼクア団長とリーザさんって仲良いんですか?」
「俺は仲良くしようとしてるんだけどあいつは俺のこと嫌いそうだな!」
「あぁ、そんな気がしました」
「アルト君はあれからリーザ団長との仲はどうなんスか?」
「う~ん、そこそこというかまだ微妙ですねー。俺も仲良くしようとしてるんですけどねー。でも仲が悪いわけじゃないですよ」
「アルト君は誰とでも仲良くなれそうな感じあるっスよね」
「そうかもしれないですけど、流石にただ性格の悪い人とか極悪人とは仲良くしたくないですよ」
「それは誰でもそうだろうな」
「お前は俺と仲良くしてくれるよな!」
「それはもちろん」
「おぉ!ありがとうな!風呂上がったら俺と戦おうぜ!」
「そのお誘いは嬉しいですけどさっきドロシー団長と戦ったので今は休みたいです」
「マジか~!あいつ先取りしやがってぇ~」
「また今度戦いましょう」
「おう!絶対な!」
「それで、皆さんのジョブと得意属性って何なんですか?」
「俺は格闘家だ!得意属性は炎と光だ!」
炎と光か。俺と似てるな。それに炎ならヒュドラーにも有効そうだな。
「私は剣士で武器はレイピアだ。そして得意属性は水だ」
レイピアと水か。貫通力は強そうだな。
「俺は魔術師で得意属性は風っス」
「え⁉魔術使えるんですか⁉」
「ま、まぁそれなりには」
「凄い。今度簡単なので良いんで教えてください!」
「お、俺で良ければいくらでも教えるっスよ」
「ありがとうございます!いや~楽しみだな~」
「アルト君は魔術好きなんスか?」
「はい!だって強くてカッコいいじゃないですか!魔法や詠唱魔法じゃできないことが出来るんですから!」
「そ、そうっスね……」
あっ。ヤバい。テンションが上がり過ぎた。
「やっぱりお前は熱い物を持ってるな!明日は俺の魔術も見せてやるからな!」
「ゼクア団長も魔術出来るんですか?」
「あぁ!とっておきの魔術が一つあるんだぞ!楽しみにしとけ!」
「楽しみしておきます。俺もとっておきの物があるので楽しみにしててください!」
「おう!でも前線に出過ぎるなよ!」
アルト「普通に話してるけど正直めっちゃ緊張してた」
ルイナ「だから女風呂に入った方が良いって言ったのに」
アルト「いやそれはもっと緊張するわ」
ルイナ「なら誰もいない時間に二人で入れば問題なし!」
アルト「あるわ」
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2週間ほど休んですみません。イルです。
3人も新しいキャラを作るのに苦悩してました。でもこれで団長10人出せました。当分新キャラは出ないと思います。
そういえばこの小説のあらすじを変えました。どこまで書いていいのかわからなかったですけど主要キャラの特徴とどんな内容かだけ書いてみました。
今回は温泉で3人の団長とお話しました。次回はドロシー団長と二人きり?
ではまた来週~。