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第百十五話 水の占い術師

「風呂の時間だ。班に分かれて入れ」


 リーザさんが来て数十人が大浴場へ向かった。


「アルト、今日は体訛ってない?」


「ん~、少しだけな。また戦うか?」


「えぇ、そうしましょう」


 俺達はホテルの訓練場に来た。すると既に誰かが戦っていた。


 一人は盾と剣を持った男と、もう一人は淡黄色の魔導師の服を着た小柄の女性がいる。


 男は女性に剣を振るが全て避けられている。一方、女性の方は男の隙を突いて弾丸のように飛ぶ槍型の水魔法を撃っている。めっちゃ痛そう。


「あの人強そうだな。完全にあの男の人の動きを読んでる」


「あれは読んでるというより先を見てるわよ」


「ん?何か知ってるのか?」


「多分あの人は『水の占い術師 ドロシー・フレイ・ミュエル』さんよ」


「有名なのか?」


「有名よ。あの人は未来をかなり的確に見ることが出来るの」


「え?チートじゃん。そんな人に勝てる人いるの?」


「いるんじゃないの?先は読めてもそれに対応出来るかどうかだし」


「へ~。ちょっと戦ってみたいなー」


「では、戦いましょうか」


「うおっ!いつの間に」


 俺の前にドロシーさんがいた。ドロシーさんは鉛色の長い髪と銀色の目をして魔女のような黒い帽子をしている。目を見ていると引き込まれそうな気がする。


「戦うって、良いんですか?」


「それを聞きたいのはむしろこちらです。あなたは期待の新人だから」


「俺はドロシーさんと戦えるのは光栄です」


「それは良かった。それではこちらに。あぁ、お金は私が払います」


 俺とドロシーさんは少し離れた場所に立った。


「自己紹介がまだでしたね。私は第六騎士団団長、ドロシー・フレイ・ミュエルです。どうぞお見知りおきを」


 第六騎士団の団長だったのか。リーザさんとノエル団長と同じ女性団長か。ノエル団長と同じでしっかり者のような感じがするが言葉が少し棒読みだな。見た目で判断してはいけないが本当にこの人が未来を見れるのか?


「よろしくお願いします。俺は」


「第二騎士団所属アルト・アギル・リーヴェ。17歳。魔法剣士。得意属性は炎、闇。武器はバリス刀、ですね」


「よ、よくご存じで。それじゃあ行きますよ!」


「どこからでもどうぞ」


 俺は炎と闇の合体魔法を飲み込み、一心斬絶を抜きながら合体魔法の魔力を付与した。そしてとりあえず真っすぐ走り、ドロシー団長に一心斬絶を何度か振った。が、それは全て避けられた。


 完全に読まれてるな。なら。


 ドロシー団長は一心斬絶を右に避けられた。すぐに俺は左手で炎魔法を撃った。しかしそれも左に避けられた。俺はドロシー団長に手を向けて魔法を撃つと見せかけて後ろの土を土魔法でドロシー団長の背中にぶつけようとした。避けれられると思ったがしっかりと当たった。


 ドロシー団長は後ろから押され、俺はそこに向かって一心斬絶を突き刺した。しかしそこにはドロシー団長はいなかった。


「なっ!どこに⁉」


 俺はすぐ後ろを向いたがいなかった。


「上です」


 ドロシーさんの声がして上を向く前に上から魔法が来てることを感じた。すぐに俺は後ろに避けたが、避けた先に球体の水魔法が既に撃たれており、俺は対応できずに水魔法に当たった。


「んっ⁉」


 俺の周りに水が纏わりつき体が浮いていく。目の前にドロシー団長がいる。俺は構わず一心斬絶を振ろうとしたが後ろに飛ばされて壁にぶつかった。


「くっ!」


 すぐにドロシー団長の方を見ると槍型の水魔法に囲まれていた。一発ずつ俺に向かって来る。


 俺は一発目の水魔法を斬り、二発目を避けたが目の前に三発目が来ていた。それを何とか左下に避けるがさらに二発同時に来ていた。


 これは避けられない。片方を斬ってその先に行こうとしたがその先にもう水魔法が用意されているのが見えた。


 なら両方を斬るしか。そう思ったがもう片方の先から大量の水魔法が向かってきていた。


 片方を斬っても無理、両方を斬ってもその次の攻撃に対応出来ない。詰みか。俺は水魔法をくらった。


「ぐあっ!痛ってぇ~」


「アルト!」


 俺が膝を付くとルイナが叫んだ。別にまだまだ大丈夫なことくらい分かってるはずなのに心配しやがってな。


「これで、私の能力は分かってもらえました?」


「流石ですね。まさかここまでとは」


「では今回はこれで終わりに――」


 その瞬間に俺はドロシー団長の後ろに闇魔法を出して撃った。それはドロシー団長に当たり砂埃が巻き上がった。


 本当に当たったのか?


 そう思って砂埃をよく見ていると、


「残念ながらはずれです」


「うわっ⁉︎」


 いつの間にかドロシー団長が俺の隣でしゃがんでいた。


「アルト君は正々堂々と戦うのがお好きだと思っていましたけど違うようですね」


「せ、せめて1発くらい当てたかったので。団長相手にすみません」


「いえ、それも立派な戦術ですので。ですが私にはミーニングレスなのです。イェイ」


 ドロシー団長は右手でピースをした。意外とテンションが高い人だな。


「怪我は……ないようですね」


「未来の俺はないって言ったんですね」


「ご名答です。さぁ、立てますか?」


「はい」


 俺は立ち上がって一心斬絶を鞘に収めて、ドロシー団長も立ち上がった。


「ドロシー団長はどれくらい先の未来が見えるんですか?」


「限界は10秒先です。ふふっ、意外と短いと思いましか?」


「それでも戦闘中は十分ですよ」


「そうですね。さて、6秒後にアルト君の彼女が来ますよ」


 その通りにルイナは俺の隣にやってきた。


「アルト、怪我はしてない?」


「大丈夫だよ。ちょっと体がヒリヒリするだけ」


「もう、ドロシー団長に勝てるわけないでしょ?」


「別に勝とうと思って戦ったわけじゃねーよ」


「とりあえずアルトが無事で良かったわ」


「心配してくれてありがとな」


「二人はラブラブですね。私は占いも出来るので二人を占ってあげましょう。私の占いは当たりますよ」


「なら是非お願いします」


 ドロシー団長は俺とルイナの手を握って目を瞑った。少しするとドロシー団長はビックリした顔をした。


 怖いな。一体どんな占い結果が出るんだ?


 ドロシー団長は目を開けて手を離した。


「率直に言いますがアルト君、あなたは悪魔に取り憑かれています」


「えぇ⁉︎悪魔⁉︎」


「取り憑かれていると言っても悪魔の力を受けているだけです。加護のようなものですね」


「だからドロシー団長に攻撃が当たらなかったのか」


「アルトってどんな状況でもふざけるわよね」


「ふふふっ、アルト君は面白いですね。それでその加護ですが特に悪影響は及ぼしていません。それにルイナちゃん、あなたには天使の加護が付いています」


「て、天使?」


「はい。ですが加護の効果はアルト君の悪魔の加護よりは小さいです」


「じゃあルイナより俺の方が上ってこと?」


「今のはアルトが悪いから殴っても問題ないよねぇ?」


「ごめんて」


「天使の加護を持つ者と悪魔の加護を持つ者が付き合っている。となるともしかしたら何かあるかもしれません」


「何かって何ですか?」


「詳しくは分かりませんが世界を変えてしまうかもしれないことです」


「そ、そんなことが?」


 俺とルイナはお互いを見た。


「もしかするとの話しですので深く考えすぎないようにしてください」


『わ、わかりました』


「それと、二人には過酷な未来が待ち受けています。その時には自分と向き合う必要があるでしょう」


「過酷な未来、か。ルイナは大丈夫か?」


「アルトと一緒ならなんだって乗り越えるわよ」


「俺もだよ」


「微笑ましいですね。あっ、あと体の相性はこの上ないほどバッチリですので」


「そういうことは言わなくていいです」


 俺はドロシー団長に詰め寄った。


「ほ、本当ですか?」


「お前も嬉しがるんじゃねーよ」


「私とアルトお兄ちゃんの体の相性も占ってください」


「お前はいつの間に居たんだよ。あと聞いても無意味だぞ」


 ヨミとえりがルイナの隣にいた。


「あら、可愛い子ですね。この子はさっきの意味がわかっているのですか?」


「た、多分」


「教育に良くないですよ」


「別に俺は悪くないですー。こいつが勝手に知識を付けただけです」


「へぇ」


 ドロシー団長はしゃがんでヨミの手を握って目を瞑り、少しして目を開けて手を離した。


「あなたが噂で聞く星魔法を使う子だったのですね。まだ小さいのに大変でしたね。ですがアルト君とルイナちゃんに出会ったことでヨミちゃんの人生は幸せに向かっています。今でも十分に幸せと思ってますけどね」


 本当にそうならヨミと出会えて良かったな。


「ヨミちゃんはもっと強くなりたいと思っているようですがこのまま訓練していればしっかり強くなりますよ。辛いこともあるでしょうがね」


「アルトお兄ちゃんとの体の相性は?」


 俺はドロシー団長を睨んだ。


「アルト君が怖いので言いません」


「良い判断です」


「わ、私も色々占って欲しいです」


「はい、いいですよ」


 ドロシー団長はえりの手を握って目を瞑り、少しして目を開けた。


「……えりかちゃんもこのまま頑張れば強くなれます。これからどうするかはえりかちゃんの自由ですがね。すみません、そろそろ戻らないといけない時間でした」


「えっ、あ、はい。ありがとうございました」


 ドロシー団長はえりの手を離した。


「お時間取らせてすみませんでした」


「いえ、アルト君のと戦いも少しは楽しかったです。明日は頑張りましょう。では」


 ドロシー団長は訓練場を出ていった。えりの時だけ様子が違った気がしたが気のせいか?


「ここにいたか。風呂の時間だぞ」


 ドロシー団長と入れ替わるようにリーザさんが来た。


「結局アルトと戦えなかった~」


「別に大丈夫だろ。どうしても戦いたいなら風呂入ってからでもいいぞ」


「いやいいわ。それより今回は一緒に入りましょう!」


「だからそれは無理だって」

アルト「ドロシー団長最強過ぎない?」

ルイナ「でもアルトの精神攻撃すれば勝てるんじゃないの?」

アルト「いや流石に団長相手に煽ったりは出来ねーよ」

ルイナ「アルトにまだそんな良心が残ってたなんて……」

アルト「感動するな」


=======

コロナの猛威が続きますね。イルです。

外出自粛されてますが自分は普段からほぼ外出しないので変わらないですね。


今回はドロシー団長と戦い、占って貰いました。やっぱり戦闘シーンは表現しにくいです。

次回はケルベロス討伐の時と同じように風呂での話になります。


ではまた来週~。

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