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第百十一話 バレンタイン

「アルト先輩!受け取ってください!」


「アルト君、はいこれ」


「アルト君、良かったら受け取って」


 今日は2月14日、バレンタインだ。


「ありがとな。ありがとうございます。あぁありがとう、ありがとう」


 俺は放課後に校庭で女子に囲まれ、ちゃんと渡してくれる後輩と同い年と先輩のチョコを貰い、もはや面白がって俺が抱えている貰ったチョコに余ったチョコを投げ込まれたりして、礼を言いながら忙しく受け取っている。


 数日前から俺にあげる人が多いというのはミスリアやメイ先生から聞いていたが実際に来ると予想以上に多く感じるな。


 ルイナ達は先に帰らせた。ルイナはどうせ見てるとイライラするだろうし、彼女が目の前にいると女子達も渡しにくいだろう。


 しばらく受け取り続けてやっと女子が渡し終わった。俺の腕には山のようにチョコレートがある。


「いや~、モテるって辛いな~」


「何を浮かれている」


「うおっ!ビックリした」


 一人で余韻に浸っていると後ろにヘルサ先生とフィアーナ先生とメイ先生がいた。


「い、いいじゃないですか。人生一番のモテ期かもしれないんですから」


「君には彼女がいるじゃないか。まぁいい。ほら、私達もくれてやる。これからも一緒に訓練してくれると私も助かる」


「あ、ありがとうございます。できれば休憩時間をくださいね」


「はい、私のもどうぞ。これからも筋肉触らせてねぇ?」


「ありがとうございます。ボディタッチは控えてください」


「私からも、どうぞ。特に危ない物は一切入っていないので安心して食べてください」


「ありがとうございます!アリに食べさせますね!」


「流石アルト君、今日もスルースキルが高いですね」


「うるさいですよ。てか本当に何か入れたんですか?」


「あぁ、それは本当に何も入っていません」


「ならちゃんと頂きますよ」


 俺はお三方からチョコを貰った。


「では、一度にチョコを食べ過ぎないようにしてくださいね」


「食べきれなかったら私に頂戴ね~」


「ちゃんと俺が責任をもって食べますよ」


 お三方は校舎内に入っていった。すぐに俺は校庭の木の裏に行った。


「いつまでそこにいるんだ?」


「わぁ⁉アルト先輩⁉」


 ずっとミスリアはこの木の裏にいたのを俺はずっと感じ取っていた。


「あ、あの、その、色んな人がアルト先輩に渡してて機会を窺ってたのですが」


「別に普通に来ればいいのに」


「す、すみません。それであの……チョコレートを受け取ってください!」


 ミスリアは俺の前に黒色の袋と赤色のリボンでラッピングされたチョコを出した。


「私、手作りで一から作ってみたんです。嫌でしたら受け取らなくて全然いいです!」


 まーた謙虚になりやがって。


「ありがとう。ちゃんと食べるよ」


 俺はミスリアのチョコを貰った。


「こ、こちらこそ受け取って頂きありがとうございます。それからいつも優しくしてくださりありがとうございます」


「俺もわざわざ作ってくれてありがとな」


「はい!で、では私はこれで」


 ミスリアは顔を赤くしてそそくさと飛んで帰っていった。


「これでくれる人は全員かな」


 俺は用意していた大きな袋を広げて貰ったチョコを入れた。


「よいしょっと」


 そして俺は袋を持って飛び、家に向かいながら、くれた人をメモ帳にシャーペンで書いた。


 俺は何度かメモ帳に書いた人の数とチョコの数を確認していた。すると俺の前に誰かが来たのを感じた。


「予想以上にモテるんだね君は」


 姿を見ず、声を聞いた瞬間に俺はすぐにメモ帳とシャーペンをポケットに入れ、一心斬絶を抜いて袋を持ったまま戦闘態勢をとった。


 俺の前にいたのは、ミカヅキだ。


「おっと、刀を納めなよ。僕は戦うつもりはない」


「でもお前、前に次に会ったら本気で戦うって言ってなかったか?」


「僕は『次に戦う時は』って言ったんだよ。君は人の話を聞かないのか?」


「お前から煽るなんて珍しいな。俺の癖がうつったのか?」


「そうかもね。それよりさっきも言ったけど早く刀を納めなよ。僕は戦うつもりはないから」


 確かによく見ればミカヅキから殺気は感じないし、武器も見えないし、いつもは黒いローブを着ていたが今日は灰色のパーカーでフードを被り、青いダメージジーンズを着ている。完全に私服って感じだな。俺は一心斬絶を納めた。


「それで、戦いにしか興味なさそうなお前がまだこんな明るい時間に何の用?」


「酷いね、僕だった興味があるものはたくさんあるさ。今日は君と話しに来たんだよ」


「おっ、ついに夜景を見ながらディナーでもするのか?」


「そこまではいかないよ。そこら辺をぶらぶらするだけさ」


 珍しいな、いつもは俺から誘いにいってるのにミカヅキからお誘いいただけるとは。家でルイナが待ってるけど。


「まぁいいか。お前とゆっくり話すことを俺も望んでたし」


「それじゃあまず、あそこのパン屋のパンを奢ってくれないか?」


「一文無しかよお前」


 俺とミカヅキは仲良くパン屋に入った。


「ふむ、チョコの入ったパンが多いんだね」


「そりゃバレンタインにちなんでだろうな」


「じゃあこれを一つ」


「はいはい」


 なんで前からずっと殺し合ってるやつにパンを買わないといけないんだ。いやいや、せっかくミカヅキが俺と話す気になったんだ。この機会を逃すわけにはいかない。


 俺はミカヅキにチョコチップの入ったパンを買ってあげた。そして俺とミカヅキは一緒に町を歩き始めた。ミカヅキはもぐもぐとパンを食べている。


「甘くて美味しいね、これ。君も一口いるか?」


「いらねーよ」


 いつものミカヅキと違って調子が狂うな。でもこうして落ち着いて見るとミカヅキって顔は可愛いんだよな~。でも可愛いって言ってもミカヅキはどうせ照れないだろうし。


「今日はいつもの質問はないのか?」


「だってお前答えないだろ」


「重要なことはね。それ以外のことだったら今日は答えてあげてもいいよ」


「今日は機嫌がいいんだな。じゃあ俺より年下って言ってたけど年はいくつなんだ?」


「確か16」


「なんであやふやなんだよ。てか1歳しか年変わらねーのかよ」


「君はもっと下だと思っていたのか?」


「いや、そんなに考えたことない」


「じゃあなぜ聞いたんだ」


「当たり障りないようなことを聞こうと思って聞いただけ。まぁ知れて良かったよ」


「他にはないのか?騎士団殺人鬼として重要なこと以外は何でも答えてあげるよ」


「なんでもか~。じゃあ今日の下着の色は?」


「……君は変態だったのか。僕の調べによれば君はそういうのには興味がないと思っていたが違ったようだ」


「だってなんでもって言ったから女として恥ずかしいことも答えるのかなと思って」


「あぁそうか、君はドSだったね。僕の照れ顔でも見ようとしたのか?」


「ご名答。けどお前は照れないようだな。つまんな」


「君の思い通りにはならないよ。あと照れはしないけど困るからそういう質問はやめてくれ」


「え~、じゃあ~……あっ、そういえばお前さっき俺の前に来た時、学校から追って来てたのか?」


「あぁそうだよ」


「ま、マジか。全然気づかなかった」


「アスノ町で君に気づかれてたからね。完全に気配を遮断したのさ」


「さっすがだな。ところで騎士団に入らない?」


「息をするように騎士団に勧誘するんじゃない。それに僕は騎士団の敵だ」


「その敵が今、騎士団である俺の金で買ったパンを食べ終わろうとしているんですけど?」



「君達は金に困ってるように見えないが、そんなにパン一つ程度の金が惜しかったのか?」


「パン一つ程度も買えないやつに言われたくない」


「僕だって買おうと思えば買えるさ。でも君に奢らせたくてね」


「うーわ、性格悪っ」


「君に言われたくない」


 ミカヅキはパンを食べ終わった。


「次はあそこのコロ揚げ屋に行こう」


 また食べるのか。ちなみにコロ揚げはコロッケだ。


ルイナ「悲報、バレンタインにメインヒロインが出ない」

アルト「俺がモテるがばかりに悪いな」

ルイナ「ウザい、すごくウザい。私という彼女がいるのになんで受け取るのよ!」

アルト「そう怒るなよ。まだバレンタインは続くんだから」

ルイナ「そ、そうよね。流石にバレンタイン中には私の出番が来るわよね」

アルト「この流れ、来ないやつだ……」


=======

より寒くなってきましたね。イルです。

最近、映画のバイオハザードを今更一からちゃんと見ました。グロいのと急に敵が出てきたりするのは全然大丈夫なんですけど無音から急に大きい音出すのはビックリするからやめてほしいです。でも良い作品でした。


今回はバレンタインにミカヅキがやってきました。アルトとミカヅキの会話を書くの好きなので楽しかったです。アルトとミカヅキの煽り合いは自然と頭に浮かんで書きやすいです。

次回もミカヅキと仲良く話し歩きます。


ではまた来週~。

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