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第百八話 ぶつけ合う

 私、ミスリアはケルベロスの報告書を持って第二騎士団の訓練場にいた。


 ほとんどの人は目を通してるはずだけどアルト先輩達はまだ見てないはずだし、私が渡しに行こう。


 そう思ってアルト先輩達がいる場所を、何故か心配した顔をしているクレス副団長さんに聞いて向かった。


 マギナ団長さんが直々に教えに来てるって言ってましたけど、どんな訓練受けてるのでしょう?


 言われた場所に着くとそこには白い光魔法と黒く赤い闇と炎の合体魔法が激しくぶつかり合っていた。


「……なんですかこれ~⁉」


 私の大声に気づいて呆れた顔したルイナ先輩と目をキラキラさせたえりか先輩が近づいて来た。


「おはよう、ミスリアちゃん。ビックリしたわよね」


「うんうん!カッコよすぎてビックリしちゃうよね!」


「あぁこの状態のえりかちゃんは気にしないでいいわ」


「あれはアルト先輩とマギナ団長でいいのですよ、ね?」


「えぇそうよ」


 周りの地面は砕け散っている。どちらも互角の威力。


「い、いつまで続くんでしょう?」


「多分アルトの魔力量がかなり減るまででしょうね。何か用があるの?」


「えっと、ケルベロスの調査報告書を持ってきましたので見ていただこうと思いまして」


 私は報告書をルイナ先輩とえりか先輩に渡した。


「……ふ~ん。やっぱり魔石は風魔法の魔力が込められてたのね」


「はい。その魔石強化によりケルベロスは身体強化と爪風刃という技を手に入れました。ケルベロスは持久力に優れていましたから倒すには数十名の犠牲を必要とすると思っていましたが、あそこまで犠牲を少なく出来たのはアルト先輩をおかげなんですよね」


「えぇ、元の世界の昔話で聞いた化け物と一緒だったとか言ってたわね」


「なるほど。それについて興味がありますね。アルト先輩から聞ければいいのですが」


 話していると急にぶつかり合っていた魔法が消えた。


「はぁ、はぁ。疲れた~。頭痛い」


「魔力回路ショートギリギリじゃの。よく頑張った」


 息を切らして汗を垂らしながらアルト先輩は合体魔法を飲み込んだ状態を解除した。


「もう少し腰を落として前に出している足に力を入れて、腕にはあまり力を入れないようにすると良いぞ」


「アドバイスありがとうございます。次から意識します」


 アルト先輩は私達の元にやってきてルイナ先輩から水を受け取って飲んだ。


「ふぅ~。あれ、ミスリア来てたんだ」


「はい、お疲れ様です。ケルベロスの調査報告書を持ってきましたので見ていただこうと」


「おぉ、ありがとう。休憩がてら見させてもらうよ」


「次は私ね。あれを見ると怖くなってくるわね」


「頑張れよ、ルイナ」


 アルト先輩は私から報告書を受け取って座って読み始め、ルイナ先輩はさっきアルト先輩がいたところに立って氷魔法を撃ち、マギナ団長の光魔法とぶつかり合った。


「……ミスリアさ、ケルベロスの死体ってどうなるの?」


 しばらく報告書を見ていたアルト先輩が私に聞いてきた。


「死体、ですか?利用出来る部位があれば回収しますが何も利用出来ない部位は焼却されます」


「へ~。あの爪武器に出来ないかな?」


「そういうのは私の担当分野ではないのでわからないんです。申し訳ありません」


 私はせっかく期待して質問してくれたアルト先輩に頭を下げて謝った。


「そうなんだ。あと謝らなくていいって」


「は、はい。すみません」


「だから謝らなくていいって」


 あわわ、アルト先輩に二度も同じことを言わせてしまった。それについても謝罪したいけど謝れない。どうしたら。


「お前マジで謙虚だな~。気にしなくていいから。ほら隣座れよ」


「お、お邪魔します」


 私はアルト先輩の隣に座った。


「あの、アルト先輩は武器が欲しいのですか?」


「まぁね。倒した魔物の部位を使って武器を作ったり防具作ったりってロマンあるだろ?」


「そうです、ね?私にはわかりかねますが確かに魔物の牙や爪、尻尾などは硬く鋭く軽いものもあるので武器や防具には最適だと思われます」


「だからいつかは強い魔物や生物を倒して色んな武器を作りたいな~」


「でしたら私がオーダーして作らせることも出来ますが?」


「気持ちはありがたいけどこういうのは自分ですることに意味があるんだよ」


「そうなのですね」


「ミスリアは将来やりたいこととかあるのか?」


「う~んと、貴族の私が言うのもなんですが使用人などになりたいですね。良ければアルト先輩やルイナ先輩に雇って頂ければ嬉しいのですが」


「使用人ってことはメイドか~。確かにミスリアがいると楽しそうだし人間性は安心できるな。ルイナが許せば考えておくよ」


「ありがとうございます」


 私は優しいアルト先輩にお礼をするとぶつかり合っていた魔法が消えた。ルイナ先輩も息を切らして汗を垂らしているがアルト先輩ほどではなかった。


「流石じゃの。いつかわしより強い魔導師になるだろうの」


「いえ、私もまだまだですので」


 ルイナ先輩は私達の前に来てアルト先輩から水を貰って飲んだ。


「お疲れ様です。ルイナ先輩」


「えぇ。ずっと魔法を出すだけってのも結構疲れるわね」


「次は私か~。見る分にはいいんだけどな~」


「頑張れよ。やってみると意外と早く終わるぞ」


「そうかな~?でも頑張ってみる!」


「応援しています。えりか先輩」


「ありがと~!ミスリアちゃんは天使だ」


 そう言ってえりか先輩はさっきルイナ先輩がいたところに立って雷魔法をレールガンを使って撃ってマギナ団長の光魔法とぶつかり合った。


「なんの話してたの?」


「何年後かに教えるよ」


「は?何よそれ」


「そ、それよりアルト先輩。ケルベロスやヒュドラーなどの元の世界の昔話のこと聞かせてほしいです」


「う~ん。ケルベロスとかの話はギリシャ神話で話すことが多いんだよな。俺もあんまり覚えてないし」


「ではアルト先輩の好きな昔話など聞かせてくれませんか?」


「じゃあ、日本神話の八岐大蛇が出てくる話をしよう。昔、須佐之男命という男がいて……」


 アルト先輩は八岐大蛇の元となったお話を簡短に聞かせてくれた。話を聞き終わると丁度ぶつかり合っていた魔法が消えた。


「うぁ~、頭痛い」


「よく頑張ったの。よく休むが良い」


 えりか先輩は私の隣に座り、アルト先輩から水を貰って飲んだ。よく見ると静電気で髪の毛が逆立ったり顔に張り付いたりしている。


「お疲れ様です、えりか先輩。髪の毛凄いことになってますね」


 私はハンドバックから櫛を取り出してえりか先輩の髪を整えた。


「ミスリアちゃんはいい後輩だな~」


「お褒めに与り光栄です」


 櫛をバックに戻すとマギナ団長がこちらに来た。私は一礼するとマギナ団長は軽く微笑んだ。


「さぁ、次はアルト殿じゃぞ」


「も、もう少し休憩とか」


「もしや、この程度で音を上げるわけではなかろうな?」


「あぁ、マギナ団長もそっち側の人間か……」


「何か言ったかの?」


「いえ!何でもないです!やりましょう!」


 アルト先輩とマギナ団長は再び魔法をぶつけ合った。


「そういえばアルト先輩って魔物と戦われてる時どんな感じなのですか?」


「いつも冷静って感じね。どんな状況でも冷静に状況を見て最善の行動をしてるわ」


「わ、私が思っている以上に凄い方なのですね。流石アルト先輩です」


「私が恐怖で動けなくなってもアルトが察して落ち着かせてくれて指示をくれるの。ちょっと癪だけどとってもありがたいわ」


「ゆう君、よくあんなに緊迫した状況で頭が回るよね。私もゆう君ぐらい強かったいいのに」


「同感ね~。こればっかりはアルトの才能だし、私も努力しないと」


「私も先輩や騎士団のお役に立てるよう努力します」


「私もゆう君にもルイナちゃんにもミスリアちゃんにも負けないように努力するからね!」


「はい!皆で頑張りましょう」


 こうして今日はずっとアルト先輩とルイナ先輩とえりか先輩と話してお三方はマギナ団長と魔法をぶつけ合っていた。


アルト「俺を褒めるなら俺が聞こえるところでしろよ」

ルイナ「は?褒めてないけど?」

アルト「そう?なら今褒めろ」

ルイナ「なんでよ」

ミスリア「アルト先輩は優しくてカッコよくて天才ですよ!」

アルト「はははっ、やっぱりミスリアは天使だなぐはぁ!」


=======

あけましておめでとうございます。イルです。

今年もよろしくお願いします。正月は餅食べまくりました。醤油餅最高です。あと最近体の調子が良いです。


今回はミスリア視点の回でしたね。ミスリアの兄のシアンの出番が最近一切ないのでどこかで出したいですね。

次回は訓練が終わって帰るような話です。色々あるかもしれませんしないかもしれません。


ではまた来週~。

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