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第九十九話 隠し事

 厳しい困難か。俺は聖人ではないから絶対に一緒にいるなんて言えるわけではない。無責任なこともマギナ団長の前では言えそうにない。


 俺は自分勝手だから自分の意見を素直に言うのが一番だ。例えそれでマギナ団長に呆れられても。


「それは誓えません」


「アルト君、なんで――」


「ルイナが厳しい困難に遭ってもルイナは一人でも立ち向かいます。そして俺はそれを手伝うだけです。ルイナは立ち向かうまで時間が掛かるかもしれませんがその間にも俺は手伝うために一人で強くなりますよ。共に歩んでいたらルイナは困難に向き合えず俺頼りになってしまいそうなので。ルイナが困難に向き合う時は少し背中を押すだけです。なのでルイナに厳しい困難に遭った時はそれぞれで歩み、ルイナが困難に立ち向かう時は俺が勝手に手伝いますよ」


 ルイナの気持ちを考えない自分勝手な意見。ルイナならそうする、ルイナためにそうした方がいいという勝手な思い込み。でも俺とルイナがお互いがお互いをよく知ってるからそうだとハッキリと言える。


 マギナ団長は少し笑みを浮かべた。


「アルト殿はまだ若いのによく考えてよく理解しておるのう。ではわしはこれで」


 マギナ団長は温泉を出た。


 これで良かったのかな。わかんねーや。


「ちっ、なんだその話か。なら早く言いやがれ。ったく無視ばっかりしやがって嫌われたかと思ったじゃねーか」


「ルルフ団長、見た目に反して可愛いところあるんですね」


「誰が可愛いだ!殺すぞお前」


「すみません。ルルフ団長もルイナに秘密にしていること知ってるんですか?」


「あぁ知ってるが?」


「教えてくれませんか?」


「ダメだ。バカかお前」


「ですよねー」


 とりあえずルイナに関して騎士団には秘密にしていることがあることが分かった。けどそれをなぜ俺にまで秘密にするんだ?やっぱり俺がルイナに近い人間だからか?それともそれを知ったら俺がルイナを幻滅するかもしれないから?でもマギナ団長はルイナが困難に遭う時の話をした。なら俺は関係なくルイナ自体の問題。ならやはり俺がルイナに近いからか。


「あっれ~、もうマギナ団長上がっちゃったの~?」


 俺は驚きながら声がする方を見た。そこにいた人は背が少し小さく水色の長い髪に黄色い目をしている。


「えっ⁉」


「あっ、君ってバリス刀と闇魔法を使う魔法剣士の子だよね?」


「そ、そうですけど」


 その人は声も顔も女だ。でも下半身に男のあれは付いている。これは俗に言う男の娘というやつ⁉


「あはは、びっくりしたかい。彼は第五騎士団クリスティナ団長だ。女性のように見えるが正真正銘の男だよ」


「僕は女と思ってくれても大丈夫だよ。よろしくアルト君」


 クリスティナ団長は俺の隣に座って湯船に浸かると俺の手を掴んで握手してきた。


「は、はい。よろしくお願いしますクリスティナ団長」


「あっ!てめぇ!俺より後に会ったのに俺より先に握手すんじゃねー!」


 ルルフ団長は湯をバシャバシャ立てながらクリスティナ団長から俺の手を奪って握手した。


「よ、よろしくな。アルト」


「はい、ルルフ団長」


「も~、自分から握手してなに恥ずかしがってんのさ」


「う、うるせぇ!」


 二人とも男なのになんでこんな可愛いんだろう。ルルフ団長は元の位置に戻っていった。


「あの、クリスティナ団長」


「僕のことはティナって呼んで欲しいな」


「ではティナ団長」


「団長はいらないってー」


「で、でも敬意は払わないと」


「ティナって呼ぶのが君とって僕への敬意だ。そう呼ばないと君を敬意がないって国王様に訴えるんだからね!」


「で、ではティナ、と」


「敬語もいらない!」


「えぇ~、さすがにそれは。なんでそんなに拘るんですか?」


「僕はみんなとフレンドリーな関係になりたいんだ。でも他の団長以外誰もティナって呼んでくれないんだ。アルト君はそういうのやってくれるよね?」


「なんでそう思うんですか」


「だってアルト君の周りの女の子全員呼び捨てでしょ?ミスリアちゃんも言ってたよ。呼び捨てで良いって言ったらすぐに呼び捨てで呼んでくれたって」


「よくご存じですね。ミスリアは年下なので」


「いいからいいから敬語は使わずに話してね」


「じゃあティナ」


「うんうん。なんだいアルト君?」


 クリスティナ団長、ティナは嬉しそうに身を乗り出した。


「騎士団殺人鬼に襲われて大丈夫だったか?」


「いや~あれは怖かったな~。国王様呼ばれて帰りにアスノ町にでも寄ろうかなって思ったらヤバい魔物に一斉に猛烈なアプローチを受けてね。あの時はもう死ぬかと思ったよー」


「無事生きててよかった」


「アルト君は適応能力が高いね~」


「正直これ辛いんですけど」


「ダメダメ。そのままだよ~」


「わかったよ」


 湯に浸かってるってのになんか疲れたな。ティナを襲ったのはDr.ロストだろうな。そしてDr.ロストは魔石で強化した魔物を使う戦い方か。八岐大蛇みたいな魔物とはあんまり戦いたくないんだが。でも今は騎士団殺人鬼よりもケルベロスだ。


「ティナのジョブと得意属性はなんなの?」


「僕はハイプリーストだよ。得意属性は土!」


「ハイプリーストでも団長になれるんだ」


「非戦闘員だからこそわかることもあるんだよ」


 ルルフ団長が自分にも聞いてほしそうに俺をちらちらと見てる。


「ルルフ団長のジョブと得意属性はなんなのですか?」


「俺か?俺はな、シーフだ。得意属性は風だ」


「シーフですか。シーフというと盗賊の感じがしますけど」


「まぁな。でも俺は盗賊なんかしねぇよ」


「シーフってどんな感じなんですか?」


「武器は短剣やナイフと小型拳銃。罠を仕掛けたり解いたり、気配を探ったり消したりするのが得意だ。感覚を鍛えないといけないのが難しいところだな」


「なるほど。では今度気配察知のコツ教えてくれませんか?」


「おぉ!いいぜいいぜ!俺がバッチリ教えてやる!」


「アルト君はすぐに人と仲良くなれるね」


「そんなことないですよ。このお二方が気軽に話しかけてくれるので仲良く出来るだけです。リーザさんとは大違いです」


「あの子は腕だけは確かなんだけどね~」


「あいつ俺がどれだけ話しかけても全然聞いてくれねぇんだぞ」


 リーザさんは団長の間でも嫌われてそうだな。やったぜ。


 俺達は少しして温泉から上がって体を拭いて用意された水色のパジャマを着た。そして髪を風魔法と炎魔法を調節して乾かした。


 俺とミラス団長はルルフ団長とティナにおやすみを言って上の階に上がり大広間の前に戻ってきた。


「団長」


「どうしたんだい?やっぱり女性側の部屋は無理だったかな?」


「それは良い、いや良くもないですけどそれじゃなくてですね。あのもう一つ隠していることを聞きたいんですが」


「……いいよ。言ってごらん」


 これで団長の機嫌を損ねなければいいけど。


「副団長は力を隠してませんか?」


 力以外にも何か隠してるようにも見えるが、俺は副団長にミカヅキから守られたときに一度絶大な力を実際に見た。副団長はあれを特殊な炎魔法と言っていたが俺は炎属性とは違う属性を感じた。それが何の属性かはわからない。これで団長が答えてくれればいいが。


「……アルト君は鋭いね。ルイナちゃんの秘密と同じ答えになって申し訳ないが、何の力を隠してるかは言えないが確かにクレスは力を隠している。でもそれはクレス自身のためだ。クレスはもう二度と人を傷つけないように、僕はクレスが傷つかないようにそれを隠している」


 今の言葉からすると副団長は自分の力を自分で制御出来ず昔誰かを傷つけたのか?それを団長が一緒になって隠そうとしている。


 隠す必要はなんだろう。なぜ公表しないのか。力を恐れられるからか、許されない力を持っている、とかくらいしか思いつかないな。あとは力を嫉まれるからとかだがそれはないか。


「アルト君は僕以上に悩み事が多そうだね」


「団長が全部秘密を言ってくれたら少なくなるんですけどねー」


 少し皮肉気味に団長に言ってやった。


「アルト~!」


 後ろからルイナ達がピンク色のパジャマを着て温泉から戻ってきた。一人だけ見たことあるようなないような人もいる。


「ルイナ、この人は?」


「この方は第四騎士団のノエル団長よ」


「あぁあなたが」


 ノエル団長は黄色い目と水色の髪の長い髪で右目が隠れている。


「初めまして。第四騎士団団長ノエルです。あなたはアルト・アギル・リーヴェ君ですね」


「は、はい。よろしくお願いします。あの、ノエル団長って……」


「なんでしょう?」


「ティナ、じゃなくてクリスティナ団長に似てますね」


 さすがにティナがいないところではちゃんと呼ぼう。そう思って言い換えて言うとノエル団長は目を見開いた。


「まぁ。ティナと話したのですね。それに今ティナと?」


「え、あ、はい。何かいけなかったでしょうか?」


「いえいえ。実は私、ティナの妹でして」


「い、妹⁉」


「はい。初めてティナと呼んでくれる団員を見ました。姉のわがままにお付き合いいただきありがとうございます」


 ノエル団長は礼をした。ティナの方が姉なのにティナより礼儀が良い。


「そ、それくらい大丈夫ですので顔をお上げくださいノエル団長!」


「なにこれ。どういうこと?」


 ルイナ達は訳が分からずきょとんとしている。俺は温泉でティナと会ったことを話した。


「そういうこと」


「で、ノエル団長はなぜここに?この階は第一騎士団と第二騎士団の部屋のはずですが」


「私はこの子達と温泉で話して話が止まらなくなったので出来るだけ付いていこうと思いまして。でも時間も時間なのでそろそろ自分の部屋に戻りますね」


「そうですか。一つだけ質問いいですか?」


「はい、なんでしょう?」


「ノエル団長のジョブと得意属性はなんですか?」


「私は銃士で得意属性は風と炎です」


「わかりました。教えてくれてありがとうございます」


「いえいえ。それでは失礼します。ミラス団長、この子達は決して死なせないようにお願いしますね」


「もちろんです、ノエル団長」


 ノエル団長は笑顔で一礼すると上の階に上がっていった。


「さぁ、みんなそろそろ寝ないと」


「そうですね。おやすみなさい、団長」


「おやすみ。明日は頑張ろうね」


 団長は男側の部屋に入り俺達は女性側の部屋に入った。部屋中に布団が敷き詰められている。


「おっ、やっと来たか」


「遅くなってすみません、メーラさん」


「全然大丈夫だ。それより早く寝る布団決めな!」


 俺は端にある布団に寝ることに決めて横になった。


「で、ルイナとヨミとエレイヤは一緒に寝たいんだっけ?」


『うん!』


「じゃあルイナとエレイヤでじゃんけんして。ヨミは小さいからいいよ」


「やった!」


「絶対勝つわ!」


「俺だって!」


 二人はじゃんけんをしてエレイヤが勝ってすぐに布団に入ってきた。


「よっしゃ!」


「うぅ、私じゃんけん弱いのかしら。えりかちゃん、一緒に寝よ~?」


「うん。いいよ~」


「皆さん、寝る準備は出来ましたか?」


 副団長がパジャマ姿でやってきた。なんか新鮮だな。副団長に直接何を隠してるか聞いても無駄だよなー。


「はい。布団が少し狭いですけどね」


「相変わらず仲が良いですね。もう少ししたら消灯しますので。おやすみなさい」


「おやすみです。明日頑張りましょう」


 副団長は他の団員にも声を掛けたあとに消灯した。俺はヨミとエレイヤに軽く抱き着かれながら目を瞑った。


 考えることが多過ぎで辛いなー。時間があればいいけど今はケルベロスについて色々と考えておくか。


 俺は考えていくうちに段々と眠りについていった。


〔ルルフ団長〕


 男 身長 172cm 体重 74kg


【特徴】

・黒髪と目つきの鋭い黒目と右腕に大きな傷跡

・普段は黒いフードをして黒いマフラーで口を隠している

・腰の茶色のベルトに拳銃を入れるホルスターとナイフケースがある

・灰色のズボンには投げナイフがありポケットには煙幕爆弾や閃光手榴弾がある


【性格】

・口は悪いが誰とでも仲良くなろうとする

・下に妹が3人いて妹想い

・しかし妹3人からキモいと言われて傷ついている

・第三騎士団の団員からは愛されている


【ジョブ】

・シーフ


【得意属性】

・風


=======

ルルフ「な、なぁアルト。俺のこともルルフって呼んでもいいんだぞ?」

アルト「ルルフ団長のお気持ちはわかりますが辛いんで遠慮します」

ティナ「そうそう、アルト君の呼び捨ては僕だけのものだからね」

アルト「いやティナって呼ぶの辛いから。いやマジで。いやガチで嫌」

ティナ「呼び捨てでいいとは言ったけどキツイ言葉を言っていいとは言ってないよ⁉」

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