第九話 子供たち
「まずは魔法からよ。アルトの得意属性の炎からやってみましょー!」
俺達は結構広い公園にきた。ルイナは『ルイナ先生』が効いたのか、だいぶテンションが高い。
「ちょうど知りたかったんだ。どういう風にすればいいんだ?」
「とりあえず、安全のため手を上に向けて~」
「ほい」
「あとは体から熱が出るイメージをして、それが手に集まる感じのイメージ。そしてぼぁ~ってなる!さぁどうぞ!」
最後適当かよ。まぁやってみるか。
「ん~」
「手に集まったらぼぁ~!」
「ぼぁ~!出た!」
俺の手から5メートルくらいの炎が真っすぐ出た。
「おぉー、得意属性で初めてならこのくらいね」
ドヤ顔されないようにしっかり補正をかけたな。
「次は闇ね」
「扱いずらいって言ってたけど大丈夫かな?」
「弱気になってどーするの」
「弱気になったわけじゃないけど」
「まぁいいわ。じゃあ闇魔法の出し方を教えるわね。私もちょっとしか出来ないけど」
「先生にも出来ないこともあるんですね~」
「うるさいわよ!えっとまずは手を前に出して」
「ん」
「そして心臓にこう黒い感じのものがあるとイメージして、それを手に集める感じにして、外に出す!」
するとルイナの手の前にそこだけ光が当たってないような真っ黒の小さい球体が現れた。
それをルイナは誰もいない地面に向かって撃った。そこに半径3メートルほどの丸い穴ができた。
「うぉ!すごいな」
「ふぅ~、これでも小さいし狙ったところに当たらなかったんだから」
「それでもこの威力か。闇魔法すごいな!」
「空いた穴は土魔法で戻しとくわ。さぁ、アルトもやってみて」
「よしっ」
えっと心臓に黒いものがあるようなイメージをして、それを手に集めて、出す!
その瞬間体がドクンとなった。見ると俺の手の前に大きな真っ黒い球体がある。
「わっ、すごい!こんなに大きいの見たことない」
「ぐっ!おいルイナこれどうすればいい?結構つらいんだが」
「あぁそうだったわね、上に撃って!」
「はぁ!」
俺は闇魔法を上に放った。
「あとは任せて」
ルイナは氷魔法で球体を凍らせ、風魔法で切り刻んだ。
「すごかったわね~」
「これが闇魔法か」
「基本はね。でも得意属性が闇の人でもここまで大きかった人は見たことないわよ」
「そうなのか」
「少し休憩しましょうか」
俺たちは近くにあったベンチに座った。
するとさっきまで砂場で遊んでいたの子供たちがなぜか集まってきた。男の子4人で女の子3人の7人。みんな違うジョブなのか色んなタイプの服を着ている。
「ねぇ、お兄ちゃん。さっきの闇魔法ってお兄ちゃんの?」
「ん?そうだけど」
『きゃっきゃ』と子供たちは騒いでいる。
「兄ちゃんすごいね、学校の先生なんか全然闇魔法使えなかったのに」
「ふふ、まあな」
「お姉ちゃんも氷魔法すごいね」
「ありがとー」
子供たちは尊敬の目で見てくる。ルイナとは真逆だな~。
「僕に闇魔法の使い方教えてよ」
「私にも教えて~」
「う~ん、みんなにはまだ早いかな?」
『え~』
「他に教えてもらいたい属性の魔法ってある?」
「なら風以外の属性魔法教えて~」
「なんで風以外なんだ?」
「えっとそれはね、小学1年生は覚えやすく使いやすい風魔法を習うの。2年生は風魔法の応用。3、4年生は土魔法とと水魔法。5年生は炎魔法。6年生は4属性全部の応用みたいな感じなの」
「私たちまだ2年生なの」
「なるほど」
「炎魔法が4属性の中では一番難しいから5年生からなの。難しいだけで使っちゃいけないわけじゃないから」
「なんでみんなはわざわざ難しい他の魔法を教えてもらいたいの?」
「今使えるようになって学校の先生やみんなとか、家族に自慢したいから!」
俺とルイナは目を合わせると
「ルイナ」
「うん」
「よし今日はみんなで俺と一緒に、このルイナ先生に土魔法と水魔法を教えてもらおう!」
『やったー!』
「ふふん、さぁ私の生徒たちよ!そこに並びなさい!」
『はーい』
ルイナを前に子供たちは横に並んだ。俺はその端っこに立った。
「まずは水魔法から。手を前に出して!そしていつも水を飲む感じを思い出して、そしてそして手が濡れた時の感覚も思い出してぇ~。最後に手に力を入れる!はっ!」
ルイナの手の前に丸い水の塊ができる。
『はぁ!』
俺の手の前にもルイナが出した水魔法と同じほどの水の塊ができた。
「おっ、できた!」
子供たちを見ると誰もできていなかった。
「できなかった~」
「俺も~」
「私も」
「僕も」
「みんなもう一回よ!アルトなんかに負けちゃダメよ!」
『うん!』
「おい」
子供たちはもう一度挑戦し始めた。
俺は腹が立ったので出した水魔法を再び子供たちに教えてるルイナに向かって放った。ルイナはこっちをちらりとも見ずに片手を出し、氷魔法で俺の水魔法を一瞬で凍らせ、その氷の塊は俺のほうに向かってきた。
「うぉ!」
俺はとっさにさっき習った炎魔法を出して止めようとしたが全然溶けなかった。
ギリギリのところでしゃがんでよけた。そのまま氷の塊は後ろの地面に当たり砕け散った。
ルイナを見ると『じっとしてろ』という顔でこちらを睨んでいた。ルイナの実力を身をもって感じた。
『はぁ!』
子供たちはそんなことを気にせず水魔法の練習をしていた。
「できたぁ!」
「あぁ~ずるい~」
「もう一回よ!」
「私もできた!」
やればやるほど子供たちは次々と成功していく。
「僕にもできた~!」
「これで全員成功ね、イェーイ!」
ルイナの周りに集まった子供たちはハイタッチをしている。
「ルイナお姉ちゃんありがとー」
「いいのよ、あそこで馬鹿みたいに座ってるアルトと違ってみんないい子ね~」
「おい、俺もいい子なんだが?」
「え?どこが?」
こいつ。
俺もルイナの近くにやってきた。
「そういえばルイナお姉ちゃんとアルトお兄ちゃん、なんか喧嘩してたよね~」
「そうそうルイナ姉ちゃん怖い顔してた」
「だってよ」
「アルトは黙ってなさいよ!」
『あははは~』
「二人とも仲いいんだね」
「うん、とってもねー」
「何言ってるのよ」
「付き合ってるの~?」
「なっ!」
「もちろん!」
「ちょ、ホントに何言ってるの⁉」
『わー、ひゅーひゅー』
「結婚するのー?」
「うーん、どうしようかな~」
「何考えてるのよ⁉」
「あ、僕もう帰らないと」
「俺もだ」
「私も」
「そういえばもう昼か」
「また昼ご飯食べたらここ来るから、二人とも来てね~」
「うん、俺たちも食べたら来るよ」
『またあとでね~』
「はーい」
俺は子供たちに手を振った。さっきから黙っていたルイナを見ると
「ア~ル~ト~!」
「ん?なに?」
「何じゃないわよ!なんで子供たちに嘘教えてんのよ!」
「なんでって、ルイナが喜ぶかな~って」
「喜ぶわけないでしょ!」
「そう?喜んでみえたけど」
「なっ!」
ルイナはうつむいて黙り込んだ。
「お?どうしたの?」
「昨日みたいに詠唱魔法撃つわよ。今度は容赦しないわ」
「マジでごめんなさい!あとで子供たちには言っときますので許してください」
「許さないわ!一発殴らせなさい!」
「そ、それで済むならいいけど肩殴って」
「わかったわ」
「やさしくね」
「どうでしょうねっ!」
「ぐぁ!」
ルイナの本気らしきパンチが俺の肩に入る。
「痛ってぇ~!」
俺はうずくまって子供のように叫んだ。痛みが腹までくる。
「ふん!これくらいで許してあげるわ。これでも6割くらいしか力出してないんだから」
10割出してたら骨折してたかもな。
「あれっ、痛みがなくなった?」
「私が回復魔法を使ったのよ。ていうかこれを使えば何度でもアルトを殴れる⁉」
「やめろ!拷問か!」
「さぁ、私たちもお昼ご飯食べるわよ~」
「いつか本当にされそうで怖いな」
〔子供たち〕
・近くの小学校の児童
・幼稚園からの仲らしい
・好奇心旺盛
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ルイナ「アルトが生徒だったらすごくウザいわね」
アルト「俺は子供目線で言ってるだけだ。でももうルイナ先生には歯向かわないよ」
ルイナ「どうして?急にいい子になっちゃって」
アルト「あれ以上煽ると全身骨折じゃ許されなさそうだから」
ルイナ「そう。じゃあ許されなさそうなこと今からしてあげる!」
アルト「え?いやあれは例えばの話の中であって」
ルイナ「大丈夫、痛いのは最初だけだから。最後は痛みも光も音も心もなくなっちゃうけど」
アルト「あの、先生?ちょ、先生?ル、ルイナ先生⁉ぐあぁ~!!」
その後彼女は学校の七不思議の一つとなった。