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異世界やりこみドMプレイ〜持たざる者から始めます〜  作者: 塚木 仁
1章 【少年期 修行と検証の日々】
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初めての依頼とアイテムボックス

拠点に落ち着いてから1週間後

ルシアとアレクは2人で朝から冒険者ギルドを

訪れていた。ルシアは依頼書を眺めると

1つをボードから取りアレクに渡す。


「ぼーや、この依頼を受けるから

受付に行ってきてくれ。パーティ申請は

済んでいるから問題なく受けれるはずだ」


そう言われ依頼書を受け取り受付へ向かう。

「すみません、この依頼を受けたいのですが……」


受付の女性は、前に登録してくれた女性だった。

「はい、かしこまりました。ギルドカードを

見せて下さい……はい、大丈夫です。ルシアさんとパーティを組まれている方ですね」


テキパキと書類を処理し木札を渡される。

「依頼内容は、指定の薬草採取。指定以外の薬草採取は追加報酬が発生しますので余裕があれば挑戦してみて下さい。

この木札が依頼を受けた証明になります」


依頼の指定薬草やそれ以外の薬草の名前を

頭に入れ、木札を受け取る。

「はい、分かりました。ありがとうございます」


「依頼の期限は、3日で期限を過ぎると

依頼失敗になりますので注意して下さい」

そういうと受付の女性は、にっこりと微笑んだ。


受付の女性に一礼し、師匠の元へ戻る。

「師匠、受付終わりました」


「よし!では、早速出発しようか」


ルシアとアレクは、足早に正門から出ると

王都から1番近い森に向かっていった。


1時間もすると森の深くまで2人は来ていた。

「ぼーや、魔力探知で薬草を探してみろ。

薬草は魔素を含んでいるから集中すれば

見つけられるばすだ。あと周囲の警戒も

怠るなよ?」


師匠の指示を聞きながら魔力探知を始め

集中して薬草を探す。

「これかな……地面に微量の魔力を感じる」


アレクを先頭にして薬草を探し、見つけたら

それをルシアが鑑定する。

「ぼーや、鑑定のスキルを覚えるには様々な知識や豊富な経験がいる。私が鑑定した

薬草について詳しく教えるから、しっかり

覚えるんだぞ?」


「はい、師匠!お願いします!」

それから同じことを繰り返し薬草を見つけては

説明を受け、実際に手に取り匂いを嗅いだり

一部を食べたりしてアレクは自分のアイテムボックスに薬草を入れていく。

早々に指定の薬草5つとそれ以外の薬草も

大分、集まり。それからはストック分と

して薬草集めは続いた。


2時間程、過ぎた時。突然に頭の中で

ポーンと機械的な音がした。

「うお!なんだ!?」

思わず声に出してしまう。


すると今度は、頭の中で女性っぽい声で

アナウンスが流れた。

『アイテムボックスの機能が解放されました』


(誰?っていうかアイテムボックスの機能が解放された?……ちょっと色々なことが

いきなり過ぎて困るわ!)


すると最初の驚いた声に反応して

師匠が話しかけてきた。

「どうした?突然、大きな声を出して?

デカイ虫でもいたか?」

からかってくる師匠の顔を見て今のことを

相談してもいいものかと考えてしまう。


(こんなことを相談できる人なんて師匠しか

いないんだし話しても師匠なら面倒なことにはならないばず……)

そう判断して、思い切って相談してみる。


「実は、今……〈説明中〉……という事が

あったんですよ!」


師匠は、驚いた様子で話を聞くと。

「ぼーや、できるか分からないが……

ぼーやのアイテムボックスを鑑定しても

良いか?もちろん、調べた内容は正直に話すし他言もしない」


師匠の真剣な顔に後押しされ頷く。

「分かりました。お願いします」

(アイテムボックスの大きさなどは

誤魔化して話していたが隠していたことは

師匠なら咎められないだろう、あの頃は

出会ったばかりだったしな)


師匠は、俺の前に立つとスキルを発動する。

「【鑑定】……」


鑑定を終えた師匠は、説明をしてくれた。

「ぼーやのアイテムボックスに

《回復薬生成》という項目があった」


「回復薬生成?うーん、どうするんでしょうねそれは?」


試しにアイテムボックスに手を突っ込みながら

《回復薬生成》と念じてみる。


すると、アイテムボックスの中の薬草で

生成できる回復薬の種類と必要素材が

頭の中に浮かんできた。

「なにこれ!すごっ!」


一瞬、テンションが上がるが

よくよく確認してみると2つしか生成

できないっぽい。


師匠も、興味深々でこちらを見ているが

2つしか生成できないと知ると残念そうな

顔をしていた。

「ぼーや、とりあえず生成してみたらどうだ?依頼に関係ない薬草なら使って構わんぞ?」


「そうですね、実際に使ってみないと

分かりませんもんね」

師匠に、促され《回復薬生成》を使用する。


実際に使ってみた結果

生成できるのは回復率25%のポーションと

回復率50%のポーションだけだった。


この世界で低級ポーションと中級ポーション

と呼ばれるレベルのものだったが……

(これ、あんまり使えなくね?)


師匠も、なんだか微妙な顔をしていた。

「ぼーや、良かったな……アイテムボックスの薬草がゴミにならずにすむぞ……」


「師匠……、そう思うなら もう少し

声を張って喋って下さい」


冷静に考えても、薬草を集めなくては

使えない機能だし。ポーションの生成・販売

を商売にしても労力と資源(薬草)にも限り

があるから大量には生成できない。自分の使う分と小遣い稼ぎくらいにしか使えない。


「将来、薬草の大量栽培に成功したら

この機能を使って隠居するのもいいかも

しれませんね……」

田舎で畑を耕す自分を想像しながら

アイテムボックスを、そっと閉じた。


唯一、救いだったのは回復薬生成を行うと

ポーションが自動的に細長い試験管に

コルクで蓋をした状態で出てくることだった。

(試験管の方が、貴重だし使えるわ!)


「そういえば、機能が解放された条件って

何だったんでしょうか?薬草の種類とか?」


つまらなそうに師匠が答える。

「そんなことか、今日ぼーやに教えた薬草の

種類は何種類だ?」


「えっと……10種類ですね、あっ……!」


「そういうことだ、今後は色々な種類の

物をアイテムボックスに入れてみれば新しい

機能が解放されるかもしれんな……

使えるものかは、知らんが」


「…………」


気持ちを切り替え、その後は

師匠の錬金に使う素材集めを手伝い

昼頃には冒険者ギルドに戻っていた。


「ぼーや、依頼完了を受付で報告してきて

くれるか?薬草は事前に小袋に移しておくのだぞ?」


言われた通りに人目につかない場所で

薬草を小袋に入れ受付に持っていく。


「すみません、依頼が完了したので

確認をお願いします」

朝と同じ受付の女性に依頼の報告を行う。


すると女性は驚いた表情すると完了報告を

確認してくる。

「え?もう依頼を完了されたのですか?早くても1日は掛かる依頼ですよ?」


半日もしないうちに依頼が完了せいで

疑われるが嘘ではないので現物を

女性に渡す。

「はい、指定の薬草と指定外の薬草があります」


「……確かに依頼の指定薬草と指定外の薬草

ですね……疑って、申し訳ありません」

女性は、素直に頭を下げる。


「あっ、いえ、頭を上げて下さい。僕の力

じゃなくて師匠のおかげで早く終わりましたので疑われても仕方ないですよ」

(実際、俺がいなくても師匠だけなら瞬殺の

依頼だろうからなぁ)


「いえ、受付として失礼でした。私は

セシリアと申します。また受付で何かありましたら私の名前を出して下さい。責任を持って対応させて頂きます」

受付としての矜持きょうじでもあるのか

セシリアと名乗った女性は子供のアレクにも

対等に接してくれた。


「もちろん、他の受付にも対応を徹底させますので安心して下さい」

その笑顔は、癒されるような魅力があった。


「話が逸れてしましましたね、では木札と

ギルドカードをお預かりします」


アレクは、子供だからと軽視しない。

セシリアに好意を抱くのであった。

「はい、お願いします」

依頼完了の報告を終えるとセシリアさんから

報酬の銀貨2枚を受け取った。

薬草は別の受付へ持っていくよう案内され

そちらに向かう。


受付で薬草を渡し、師匠の元に戻ると

受付を他の人と交代したのかセシリアさんが

師匠と話をしていた。


「ああ、今日の夜なら大丈夫だ。楽しみに

しているよ」


「はい、では後ほど酒場でお待ちしております。アレクさんにもよろしくお伝え下さい」


セシリアさんは、こちらに気付き

手を振りながら受付に戻っていった。


「師匠、どうかされたのですか?」


師匠は笑いながら、こちらを見ると。

「ああ、ぼーや。受付のセシリアとやらが

ぼーやに失礼をしたのでお詫びも兼ねて

食事と酒をおごってくれるそうだぞ?」と話してくれた。


「そんな、逆に申し訳ないのですが……」

アレクが戸惑っていると師匠が言葉を続けた。


「なに、以前の小競り合いの件もあるから

ぼーやが気にすることもない。セシリアと

やらも私と話してみたかったと言っていたしな」


アレクは話に納得すると予定を確認する。

「では、今夜は外で食事ですね。場所と時間は決まっているのですか?」


「ああ、場所と時間も確認したから

今夜は酒でも楽しむとしようか」


「僕は食事を楽しみにしときます。あと

師匠、依頼の報酬は……」

そこまで、アレクが口にすると師匠が

割り込んでくる。


「報酬は、ぼーやのものだ。私はいらんから

自分の為に使え」乱暴に、そう告げた。


「え?依頼は師匠も受けたじゃないですか!

報酬は、しっかり分けるべきでしょう!」


師匠は、顔を横に振ると。

「私は十分に稼いでいるし、依頼の報酬は

冒険者見習いにとっては馬鹿にできない。

ぼーやが自立できるように育てるのが

師匠の務めだ。恩を感じるなら、弟子として

立派になることで恩を返してみせろ」


諭すような口調で、そう言った師匠は

いつものように俺の頭をポンポンしてくる。


師匠の言葉を噛み締めるように受け入れる。

「分かりました、師匠に胸を張れる

立派な冒険者になって想いに報いたいと

思います!」


ルシアてアレクは笑い合うと

並んで拠点へと帰って行った。




その夜、ルシアとアレクとセシリアは

とある酒場に集まっていた。


「ルシアさん、アレクさん、本日は

お誘いを受けて頂きありがとうございます。

ここは私のおごりですので存分に

食べて飲んで下さい」


セシリアの挨拶が終わると3人はグラスを

合わせ食事を始めた。

ルシアとセシリアはワインも飲みながら

アレクは果物水を飲んでいた。


「セシリアさん、僕に さん付けは

やめて下さいよ!背中がかゆくなります!」


すると師匠も、それに続く。

「堅苦しい話し方はなしでいいぞ?今は仕事中でもあるまい?」


セシリアさんは笑顔になり、すぐに答えてくれる。

「分かりましたよ、ルシアさん、アレク君

これでいいかしら?ふふっ」


今日のセシリアさんは、冒険者ギルド受付の

制服ではなく私服だ。受付の時はバンダナで

隠れていた髪も出しており可愛い。


栗色の髪を、ゆるふわなボブにし

赤いリボンの付いた白のトップスに

薄いピンクのロングスカートを履いていた。


「改めて自己紹介させてもらいますね!

私はセシリア 4年前から冒険者ギルドで

受付を担当しています。歳は20歳で

趣味は新米冒険者にアドバイスをすることです」


それから順次に自己紹介を続け、話は

ルシアとアレクの出会いや旅の途中での修行

王都に着いてからの話に及び最後は

冒険者ギルドでの小競り合いに至っていた。


「いやーあの時のルシアさんは、怖かったですよねー」セシリアさんが苦笑いしながら

話を振ってきた。


「あのふざけた冒険者どもは、どうなったのだ?まさか、処分なしではなるまい?」

悪い顔でルシアが問いかけた。


「あの冒険者達は、以前から注意を受けて

いた問題のある人達でした。今回のことで

ギルド全体からも印象が悪くギルド長より

自主引退を勧められ、本人達の希望で

冒険者引退となりましたよ」

セシリアさんも、笑顔だが裏に黒いオーラが

見え隠れしていた。


雰囲気が一瞬、柔らぐとセシリアさんの

表情が真剣なものになる。

「ルシアさんとアレク君には嫌な思いを

させてしまい申し訳ありません。ギルド

としては後手に回ってしまい……」


そこまで話すと師匠が手の平を突き出し

セシリアさんに向けて話を止める。

「良い、その件は気にしておらんし

この食事と酒で十分に誠意を感じておるからな」


セシリアは安心したように頷いた。

「良かったぁ、2人には これから

冒険者ギルドを盛り上げてもらわないと

いけませんからね!」


「ん?盛り上げてるって何かやらされるんですか?僕に出来ること少ないですよ?」

セシリアの言葉に気になる部分に突っ込みを

入れてみる。


「ふふっ、冒険者ギルドに突如現れた

新星の謎の女冒険者とその弟子の男の子


女冒険者は上のランクの冒険者を、

あっという間に手も触れずに屈服させ。


ギルドにいた冒険者達が震え上がって

いる中で、1人平然と凄まじい威圧感を

受け流していた少年。それが2人の

冒険者ギルド内の評価よ!」


「師匠は、ともかく僕の評価が高いのは

納得できませんね……何もしてないのに!」

不満を漏らすと師匠が訂正してくる。


「いやいや、あの【威圧】を1番近くで

受けて平然としていた ぼーやは相当な

精神力の持ち主だぞ?」


「そうなんですか?っていうか僕が横に

いるのに何も言わず【威圧】を使う師匠も

どうなんです?」

(もし、俺が怯えてたら情けない姿を晒して

しまうじゃないか!)


「信じていたのさ、弟子をな……」

カッコつけながら空のグラスを口に

もっていく師匠

(あれは、何も考えてなかった感じだな……絶対そうだ……)


2人を見て笑いつつセシリアが話を続ける。

「そんな2人に冒険者ギルドとしても期待

してるってことよ。2人が頑張ってるとこを

皆が見れば、それだけでも良い刺激になると

思うわ」


そこまで話すと、何かを思い出したように

セシリアがアレクを見る。

「そうだ!アレク君、あなたに言おうと

思ってたことがあったの」


「なんですか?」


「アレク君は、まだ弓しか使えないのよね?

それなら元冒険者を紹介してあげるから

ギルドの地下にある訓練所で武術の指導を

受けてみない?」


こちらとしては有意義な申し入れだったが

気になることを確認する。

「その申し入れは、とても嬉しいのですが

その、お金がなくて……」

(情けない!実に情けない!!)


セシリアさんは優しく言葉を掛けてくれる。

「お金は必要ないわ、ギルドから今回の

迷惑料として出しておくし。私の知り合いに

頼むから金額も格安で済むからね!」


ちらっと師匠に目線を送ると。

「私が、ぼーやに武術を教えるより

専門の人間が教える方がいいだろう?

それに私と四六時中、一緒ではぼーやも

気が休まらんだろうからな?」

イタズラっぽい表情の師匠が視線を

返してくる。


師匠の許可も、貰えたので覚悟を決める。

「はい、ではセシリアさん。指導の件

よろしくお願いします!」


こうして、冒険者ギルドで武術の指導を

受けることが決定した。


















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