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森の錬金術師

 王都ドォールムで実力を伸ばす特訓をしていたアレクだったが……ドレミレ大森林やエルフの里や風の精霊の聖域で、珍しいキノコや薬草を入手したことで錬金の素材を大量に溜め込んでいた。

 手持ちのレシピで素材を消費し切れない、ながらも薬を作って薬屋であるドロシーの店に買取をお願いしに持ち込んでいた。


 かなり古い外観の薬屋は相変わらず物語に出てくる魔女がいそうな雰囲気を放っている。

 扉を開けると扉に取り付けられたベルが店内に“カランカラン”と響き渡る。

 怪しげな薬品や薬草独特の香りを嗅ぎながら、アレクは奥のカウンターに真っ直ぐ歩いていく。


 アレクの視線の先にあるカウンターでは、老婆が気だるそうに薬の整理をしていた。

 カウンターに近付いてくる人の気配に老婆が顔を上げると、その目が“カッ!”と見開かれる。


「久しぶりだねアレクちゃん!まったくしばらく見ないうちに立派になって、私は嬉しいよ」

「お久しぶりですドロシーさん……なかなか顔を見せられずに、すみません。冒険者の方で国外に行くことが多くて」

「あぁ、構いやしないよ!グラウェからアレクちゃんが活躍してる噂は聞いてるからね。もうBランクになったそうじゃないか?そりゃ薬屋に来てる暇なんてないだろう」


 孫の活躍を喜ぶ、おばあちゃんのような反応にアレクも自然と笑みがこぼれる。

 旅で集めた素材で作った薬を買取ってもらっていると、アレクはドロシーにドォールムにいる錬金術師について質問する。


「そういえば、ドォールムには珍しい薬とかを作ることに精通している方とかいないんですか?実は色々な珍しい素材を沢山手に入れたので、多少金銭を支払ってもレシピとかを教えてくれる方を捜してるんですが……」

「うん?珍しい薬かい?そりゃ〜いることはいるけど……アレクちゃんの期待してるような者じゃないと思うよ?」

「いるんですね?一応、聞きますけど……どんな方なんですか?」


 興味が湧いたアレクは、ドロシーの言う人物について詳しい説明を求める。


「元々は毒薬を作る優秀な錬金術師だったんだけどね〜ある時から変なものを作ることに執心しだしてね……何度も爆発や騒動を起こすから街から追い出されて、壁の外で未だに実験を続けているようだよ。ウチにも、またに素材を買いに来てるから間違いないよ」

「謎の多い方ですね……その方なら確かに珍しい錬金のレシピとかも知ってそうですが」

「一応、大まかな住んでいる場所は分けるけど……会いに行くのはお勧めしないねぇ」


 それでも興味があったアレクは、ドロシーから例の錬金術師の住処を聞き出すと、薬屋を後にするのであった。



 ===============================



 次の日には、アレクはアマリアと一緒にドォールムの壁の外に住むという錬金術師を捜して、ドォールム近郊の森を彷徨っていた。

 昼間でも光が通りにくい鬱蒼うっそうと茂った森の中を進んでいる。

 本来ならドォールム近郊ということもあり、1人で探索を行おうとしていたのだが……。


 しかし仲間達に秘密で、こっそりと行動していると普段と様子が違うことをアマリアに勘付かれ、結局2人で探索に出ることになる。

 またには1人で自由に行動したいと思っていたアレクが、ブツブツと文句を言っているとアマリアから説教を受けることになった。


「どんな危険があるかも分からないのに、単独行動するなんてリーダー失格じゃないの?アレクに何かあってパーティーの皆が残されることにらなっても何とも感じないの?大体、アレクは――」


 こんな様子で森を探索している間、ずっとアマリアから説教を受けることになり、途中からアレクの目が死んでいた。

 魔物が出現するエリアではないことなら、アレクとアマリアは適度に気を抜きながら森を歩いていた。

 そんな時間が過ぎていったが……何かを察知したアレクが立ち止まる。


「どうしたのアレク?例の錬金術師さんの家でも見つけた?」

「いや、これは魔物だ。何かを追いかけている?」


 その言葉を聞いたアマリアは、アレクが視線を向けている方向に突然、走り出し魔法袋からメイスを取り出す。


「あっ、おい!アマリア!」

「もしかしたら、例の錬金術師さんが魔物に襲われてるかもしれないでしょ?こんな所に住んでる人なんて、限られてるんだし!」


 走り出したアマリアの後を追いながら、アレクは冷静に状況判断できている彼女も戦闘に慣れたものだなぁ、と考えるのであった。

 やがて、森の中から飛び出し開けた場所に辿り着く。

 目がくらむを我慢しながら、探知に引っかかった魔物の姿を確認する。


 それは異常に成長したブラックボアだった……通常なら1〜2mの体長の黒い毛皮と鋭い牙をを持つイノシシ型の魔物だが、アレクとアマリアの前にいるブラックボアは全長が4m以上ある大物だった。

 前世で例えると軽トラックの大きさがあるブラックボアは巨大な牙を、目の前の獲物に向けている。


 巨大ブラックボアの目の前には、女性が倒れ込んでいた。

 女性の姿を確認したアレクはアマリアに声をかける。


「アマリアはガードを!!俺は殺る」

「了解っ!」


 アマリアは魔法袋から大盾を取り出して、女性とブラックボアの間に駆け出す。

 アレクも、一瞬でアイテムボックスから疾風剣ラグトゥスを取り出して、ブラックボアに向かって走り出していた。

 アマリアは今にも襲われそうな女性を庇うだめに大声でブラックボアを威嚇する。


「こっちだぁぁ!!黒いのぉぉ!」


 アマリアの声に反応したブラックボアは、標的を女性からアマリアに変え、猛スピードで突進してくる。

 “ブウオオォォォォ!”と鳴き声を上げながら迫って来たブラックボアの牙を、アマリアは大盾で受け流してみせる。

 闘牛を行うマタドールのように、盾を逸らしながら器用に牙による直撃を避けていた。


 何度目かの衝突の際に、攻撃が直撃しないことにイラついたのか……ブラックボアは牙がアマリアの大盾に接触する寸前に、牙をしゃくり上げてくる。


「っ!!」


 予想外の方向から強い衝撃を受けて、衝突のエネルギーを逃し損ねたアマリアの体が浮き上がる。

 1mほど浮き上がった体勢でもガードの構えを解かずにアマリアはブラックボアを見据えていた。

 空中に浮き上がったアマリアに追撃を仕掛けようするブラックボアだったが……直後に燃えるような痛みを左前足に感じて悲鳴を上げる。


 悲鳴を上げたブラックボアの足元には、いつの間にかアレクがおり、疾風剣ラグトゥスで左足を綺麗に切断していた。

 片方の前足を失い、自らの重みに耐えられなくなったブラックボアは“ズゥン!!”と大きな音を立てながら倒れた。


 舞い上がる土煙を剣の風圧で払うと、アレクはブラックボアの背中に飛び乗り、そのまま脳天に剣を突き刺した。

 暴れようと、もがいていたブラックボアの動きは次第に鈍くなり、やがて力尽きる。

 その光景を着地し体勢を整えたアマリアが、警戒しながら窺っていた。


 巨大なブラックボアから剣を引き抜き、アレクが背から飛び降りてくる。

 風の魔法で剣に付着した血を拭うと、アイテムボックスにブラックボアを収納してしまう。

 そこまで見届けたアマリアも、メイスと大盾を魔法袋に収納すると倒れていた女性の方へ駆け寄っていく。


 アレクも周囲に新たな魔物がいないことを、確認しながらアマリアの後に続く。

 アレクが女性の元に着いた時には、アマリアによって治癒魔法を施され、横たわっている状態になっていた。


「ケガは大したことなかったのか?」

「えぇ、ブラックボアの牙で吹き飛ばされたようだったけど……止まった状態から吹き飛ばされたのか、傷自体は大したことはなかったわ」

「あとは脳に影響がないといいな」

「脳?えっと頭の中のことだっけ?確かに気絶してみたいだから、何かしらのダメージがあるかもね」


 女性の正確な状態が分からないので、下手に動かさずに目を覚ますのを待つことにしたアレク達は、女性を観察していた。

 女性は栗色の長い髪をしており、年齢は17,8歳ほどに見える。

 質素な私服を着ていたが……服からはかすかに薬品の香りが感じられた。


「彼女からかすかに薬品の香りがする気がするんだが……俺が確かめるのも問題があるし、ちょっとアマリア確認してくれないか?」

「確かに女性の匂いを嗅ぐなんて、変態的よね……本来なら私も遠慮したいけど、まぁ今回は事情があるからやるわ」


 アマリアが女性の首元辺りに顔を近付けて、“くんくん”と匂いを確かめる。


「アレクの言う通り、何かの薬品の香りがするわ。この人がアレクの探していた人なの?」

「いや、俺がドロシーさんから聞いた話だと目的の人は年配の男性だよ。もしかしたら、その人の家族かもしれないな……」

「そっか……でも、さっきの魔物は何だったのかな?この辺りは魔物の出現地帯じゃないのに、あそこまで巨大なブラックボアに遭遇するなんて」

「不思議ではあるけど……出現地帯でなくとも他から魔物が移動していた可能性もあるから、何とも言えないな。望みは薄いけど……この人が目を覚ましたら事情を聞いてみようぜ」


 しばらく様子を見ていると女性の目が、ゆっくりと開いていくのをアマリアが確認する。

 近くで横になっていたアレクにアマリアが、声をかける。


「アレクっ!目を覚ましたよ!」


 横になっている女性を覗き込むように、アマリアが優しく話しかける。


「大丈夫ですか?どこか痛いところはありませんか?」

「えっ……と……あな……たは?」

「私はドォールムで冒険者をしているアマリアと申します」

「アマリア……さん?」


 ゆっくりと意識が覚醒していく女性に、アマリアはできるだけ丁寧に状況を説明していく。

 最初は、ボンヤリとした様子の女性だったが……ブラックボアの話をすると大きく目を見開き、勢い良く上半身を起き上がらせると周りを見回す。


「まだ、あの魔物が近くにっ!?」

「いいえ、安心して下さい。あの巨大な魔物は彼と私で討伐しました」

「彼?討伐した?」


 アマリアの視線の先に、2人の会話を邪魔しないようアレクが座っていた。

 控えめに手を振ると自己紹介を始める。


「どうも、ドォールムで冒険者をしているアレクサンダーです。気軽にアレクと呼んでくださいね」

「えっと……アマリアさんとアレクさんが、魔物を討伐されたのですか?」

「はい、俺とアマリアが巨大なブラックボアは討伐しておきました。安心して下さい」


 アレクの言葉を聞いた女性は、安心したのか体の力が抜けて倒れそうになる。

 近くにいたアマリアに支えられながら、女性は静かに喋り始める。


「すみません、安心したら気が抜けてしまって……それに助けて頂いたのに名乗りもせずに失礼しました。私は錬金術師をしておりますエレナと言います」

「錬金術師ですか……では、ドロシーさんのところで素材を買われている、森に住む錬金術師の方の関係者ですか?」

「ドロシーさん……ええ、買っていますが、あなた達は?」


 不思議そうな顔をしてきるエレナに、アレク達が森に来た理由を説明すると一瞬、少しだけエレナが悲しそうな顔をする。


「それは、きっと私の師匠のことだと思います。宜しければご案内しますので、ついてきて下さい」


 そうエレナは告げるとアマリアに支えられながら立ち上がり、2人の前を歩き出す。

 アレクとアマリアは顔を見合わせると、エレナの後に続いて歩き出すのであった。




ご愛読、頂きありがとうございます。

この度、ブックマーク100件と50,000PVアクセスを達成することが出来ました。


これも、この小説を読んで頂ける皆様のお陰です。

これからも執筆を頑張りたいと思います!

拙い文章ですが……今後も努力を続け、良い作品にしたいと思います。

引き続き応援、宜しくお願い致します。



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