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エルフの里の揉め事2

 何者からか命を狙われたアレクは、キアから護衛させることになり、エルフの里での生活を送ることになる。

 その2人の様子に感情を逆撫さかなでされた、エルフ至上主義を掲げるもの達がアレク達の前に姿を現す。

 アレクが訓練所に現れたエルフ達をボコボコに撃退していると、どこからともなくカイン達とベラが現れ、エルフ達を次々に縛り上げ捕らえていく。

 その様子を唖然と見ていたキアが、平然と指示を出しているアレクに詰め寄る。


「ちょっと!これはどういうことですの?アレク?」

「うん?さっきも言わなかったけ?こいつらが出てくるのを待ってたんだよ。カイン達とベラには裏方をお願いして、待機してもらってたんだ」

「いつからですの!?いつから罠を仕掛けてましたの?」

「えっと、俺達がエルフの里に帰ってきた、次の日からかな?」

「では、カイン達やベラも知っていたのですか?」


 エルフ達を縛り上げていたカイン達とベラが、笑いながら返答してくる。


「いや〜知ってたけど、俺らは別に何もしてないしなぁ〜主に動いてたのはベラだし」

「そうそう、元々はアレクや私達を囮にしてエルフの不穏分子を引っ張り出すのが目的だったのよ?」

「結局は、僕達ではなく風精霊の使徒である

 、アレクさんが狙われたんですけどね……」

「あとは、姉さんが自然と注目を集めてくれたから、それを利用させてもらったってわけ!」


 ベラが、悪戯っぽい笑顔でキアの肩を叩く。

 その笑顔を見てキアは、1つの事実に辿り着く。


「まさか……アレクと私が恋仲だとかの噂を流したのは……」

「うん?あぁ、それも私の仕業だよ?エルフ至上主義の者達には絶好の攻撃材料でしょ?」

「ベラぁぁぁぁ!!」


 先程までの恥じらいのある顔の赤さではなく……真っ赤な怒りに染まった顔で、キアがベラの元に駆けていった。

 ベラも姉の怒りを察して素早く逃げ、追いかけっこをしていた。

 しばらく、騒いでいたキアをアレクが何とかなだめ、ベラがエルフ至上主義者を守護に引き渡すために現場を離れている間に、事情をキアに説明する。



 ===============================



 始まりは、風の精霊からの頼みからだった……。

「これは、アレクに頼むことではないと思うのですが……もし、聞いて頂けるならお願いします。実はエルフの子らが外の世界に興味を持てるよう、きっかけを与えてほしいのです。私達が、エルフの子らに精霊の聖域を守る役割を与えてしまったことで……エルフの子らを縛り付け、追い込んでいるのではないでしょうか?」


 風の精霊とエルフは協力関係にあるが……エルフ達の種としての衰退が原因となり適正が失われつつあると風の精霊は話した。

 適正がないと力を授けたり、精霊を見たり話したりできないこともあり、風の精霊は助言すらできない状況に追い込まれる。


 そして、その適正とは人で言うところの感性だと風の精霊は考えていた。

 感性とは風の精霊であれば……森を揺らす風・街に吹き抜ける風・海から流れる風と様々な場所や受ける者によって姿や印象が違うことであり、そういった様々な風を感じることができる感性を持つ者が、精霊と心を通わし適正を得ることできるのだ。


 ここで最初の問題である、エルフ達は閉鎖的な部分があるために、そういった感性が衰退していきている、という話にもどってくる。

 その原因の一端となってるのが、精霊側にもあると考えた風の精霊はアレクを通りして、エルフに外の世界を知ってもらうことを選んだのだ。


 そして、話はエルフの里へと移っていく。

 長老であるエドアルの意思を確認したアレクは、風の精霊とのやりとりを彼に伝える。

 風の精霊の姿を見たり、話を聞けるようにするためにはエルフ族に外の世界を知ってもらう必要があり、意識改革が急務だと話した。

 アレクが考えた手段を、いくつか説明するとエドアルが難しい顔をし始める。


「どうしましたエドアルさん?何か問題でも?」

「えぇ、アレクさんの案は、どれも魅力的なのですが……大きな問題があります」

「その大きな問題とは?」

「エルフ族の中にいる、エルフ至上主義者の存在です……。彼らが絶対にアレクさんの案を邪魔してくると考えられます。最悪、アレクさんの所為にして悪行を行い、罪を擦りせつけられれば……人族とエルフ族の間にヒビが入り、それどころではなくなってしまうでしょう」

「なるほど……それなら先にエルフ至上主義者の方々を片付けてから意識改革に取り組みましょう!」


 悪い顔で笑うアレクにエドアルは、不思議な表情を受かべる。


「何かいい策が、おありなんですか?」

「えぇ、とりあえず俺が風精霊の使徒になったことを噂として流してもらえますか?そうだな……この策を明かしていいのは、俺とエドアルさんとカイン達とベラだけにしておきましょう」

「ケレスとキアには?」

「ケレスさんが、エルフ至上主義者ではないという確証がないので、まだ秘密でお願いします。キアは隠し事するのが苦手そうなので、知らせない方がいいでしょう」

「分かりました、ではベラには?」

「俺から事情を説明しておきますよ」


 こうして、エルフ至上主義者を釣り上げる策が始まり……ベラは噂を流しながらアレクの周りの監視を続け、仲間達はできるだけエルフの里で自由に過ごして至上主義者らをあおる役割を担っていた。

 予定通りに至上主義者らは、アレクを狙ってきたわけだったが……予想外にキアが動いたことで策が途中から変更されることになったのだ。


 本来なら囮はアレクだけで十分だったのだが……最初の襲撃を報告した際の、やりとりの裏ではアイコンタクトによる会話が行われていた。


「ってことがあってさぁ〜、その後は矢は飛んでこなかったけど……訓練所に向かって矢を放つなんて危ないよな?」

(最初の襲撃があったから、予定通りに皆は動いてくれ)


「あ、アレク!それは本当なのですか!?命を狙われた?エルフに?」


「これは、あってはならないことです!よりによってエルフの恩人であり、風精霊の使徒であるアレクさんを狙うとは……」

(早速、襲撃してきましたか……アレクさんを狙ってくるとは命知らずな連中ですね!)


 アレクとベラで情報交換を行っていたところまでは順調だったのが……ここから話の流れが予想外の方向に進み始める。


「いや〜、もしかしら誤射かもしれないじゃないか?そこまで怒らなくてもね?」

(あれ?キアが、凄く怒ってるんだけど……誰か止めてくれない?)


「エルフ族において、弓で誤射などありえませんわ!確実にアレクを狙っていると考えるべきでしょうね!!」


「犯人を捕まえて、尋問とキツイお仕置きが必要ですね!」

(えぇー!アレクさんが何とかして下さいよ!犯人を捕まえたらキツイお仕置きをしてもいいですから!)


 アレクは助けを求めて、カイン達に視線を送る。


「普通の矢くらいでアレクが死ぬとは思えないし……あんまり心配いらないんじゃないか?俺も矢くらいなら落とせるし」

(アレクなら、何があっても死なないだろうから安心して任せられるぜ!)


「それもそうね、アレクなら探知スキルで回避・撃ち落としも余裕だろうし……毒矢でも解毒剤とかも完備しているもんね」

(アレクなら余裕でしょ?でも毒とかには一応、気をつけてね)


「で、でも!気を付けて下さいね?エルフの秘術とかあるかも……しれないし」

(あとは一応、予想外の攻撃も警戒して下さいね!)


 面倒な空気を悟った仲間達に見捨てられたアレクは、キアのペースに巻き込まれていく。


「絶対に犯人を捕まえてやりますわ!明日からはアレクの傍を離れないので、そのつもりでお願いしますね?」

「いや、自分ことは自分で守れるから心配いらないよ?キアも忙しいんだし、俺の傍にいなくても……」

「いえ、これは決定事項ですわ!」


 こうして、キアの暴走を止めることができずに、キアはアレクの護衛として傍につくことになった。

 アレクにベッタリのキアが、エルフの里で注目されていることを知ったベラは、これを逆に利用して派手な囮にすることを考えつく。

 もちろん、面白半分でやったことだったので、アレクに事前に相談もしていなかった。


 結果的には、エルフ至上主義者らを、あぶり出すことに成功したのでアレクはベラに対して文句を言うことはなかった。

 キアに事情説明を終えたアレクが、守護にエルフ至上主義者らを引き渡す前に軽く尋問していたので、様子を聞こうと思っていると慌てた様子でベラがアレクの元に走ってくる。


「アレクさん大変です!ケレス守護長がエドアル様を人質に長老の家に立て篭っています!」

「……ケレスさん、やっぱり貴方は――」


 ベラの報告を受けたアレク達は、急いで長老の家へと向かうのであった。



 ===============================



 アレク達が報告を受けて、長老の家に向かうと……長老の家はすでに守護によって取り囲まれていた。

 エルフ至上主義者の捕縛の情報はベラにより秘匿され、エドアル以外の耳に入らないように気をつけられていた。

 しかし、間が悪いことにエドアルに報告を上げに、守護の1人がエドアルの執務室に向かうと、そこにはケレスがいたのだ。

 無理矢理に報告にきた守護から、報告を聞き出したケレス。


 そこで初めてケレスは、エルフ至上主義者を捕らえる作戦が進行していることを知り、自分に知らされずに事が進んでいることから、自身が疑われていることに気付いたのだった。

 ケレスは焦った……今まで秘密裏にエルフの里に迷い込んだ人族を処理していたことや、今回のアレク暗殺の指示を出していたのことが自分の仕業だとバレたと思ったのだ。

 もし、まだバレていなくとも真実を知られるのは時間の問題……追い詰められたケレスは、傍にいたエドアルを人質に立て篭もることを選択したのであった。

 エドアルを人質にしたケレスは、報告にきた守護を部屋から追い出した。


 すぐに異常事態だと判断した守護が、ベラに急いで報告し、ベラが長老の家の包囲を指示していた。

 ここまでの経緯を説明されたアレクは、どうしたものかと悩んでいた。

 まだ、逃走してくれた方が何倍も良かったものの……まさか、立て篭もることを選択するとは考えていなかった。

 前世の刑事ドラマを思い出しながら、アレクは今後の展開に頭を抱えるのであった。


 ケレスの立て篭もりから、すぐに行動を開始したアレク達はキアとベラの家を対策本部として、エドアル救出の作戦会議を開いていた。


「守護の報告によるとケレス守護長……いえ、ケレスは2階にあるエドアル様の執務室に立て篭もっているようです」


 ベラが冷静な声で状況説明をしてくれていたが……アレクは、やるべきことをすでに決めていた。


「なら、やることは決まってる。外から陽動を仕掛け、裏から俺が侵入してケレスを制圧する!これだろ?」

「さすがに、それは強引じゃないか?相手が何かを要求してくるかも分からないのに」

「いや、たぶん分かるぞカイン。この場合は、先程捕らえたエルフ至上主義者の解放と安全に里を脱出させることを条件に、エドアルと交換だと言い始めるはずだ」


(ドラマや映画で、立て篭もる奴のとる行動は、ほぼ決まってるからなぁ。あとは金銭目的とか敵対してる者の殺害要求とかもあるけど、これは現実的じゃないからなぁ)


 そんなことを話していると、長老の家を取り囲んでいる守護から報告が入る。

 それは、たった今アレクがカインに言った内容と同じものだった。

 皆が驚いている中で、アマリアが別の作戦を提案してくる。


「じゃあ、麻痺毒の入った食べ物や飲み物を差し入れるのは?」

「それも難しいだろ……エルフは獣人ほどではないけど、嗅覚も鋭い。しかも、守護長までなれる実力者に通用する策とは思えない」


 アレクが自分の意見に対しての同意を、キアとベラに求めると2人からも同じ意見が返ってくる。

 しかし、アレクは自分が提案した作戦の成功率が、かなり低いことを気にしていた。

 いくら派手に陽動したとしても、エドアルを無傷で救出することは困難を極める。

 しかも相手は手練れで、隙を突くのも一苦労ときている。


 前世では、フラッシュバンや催涙弾などを使って、突入する映像を見たことがあったが……そんな便利なものは持っていない。

 時間と道具があれば、錬金で似たものを作れるかもしれなかったが……今は、そんな余裕がある状況でもない。

 なんとか作戦の成功率を上げようと考えているとミカエラが、控えめに発言する。


「えっと、アレクの雷鳴弓で狙撃するとか?」

「それじゃあ、エドアルさんも一緒に穴が開いちゃうんじゃないか?」

「そ、それは流石にダメですよね……」


 ミカエラと、カインが話しているのを頭の片隅で聞いていると、アレクの中に何か閃くものがあった。


(弓で狙撃……俺は突入するから無理だとしても、キアやベラなら?)


 単なる思い付きだったが、アレクはキアとベラに自分が考えていることを相談する。


「ベラ……2階の執務室には窓はあるか?」

「執務室に窓ならありますよ?正面から見て3つある窓の真ん中が執務室の窓です」

「エルフなら、そこからケレスを弓で狙撃することは可能か?」

「窓からケレスを狙撃ですか?そんなことは不可能です!相手の場所も分からず、相手が実力者であることを踏まえても当たる可能性は、ありませんよ!」


 アレクは少し考えると、ベラに再度問いかける。


「なら、相手の正確な位置が分かったら弓で狙撃することは可能か?相手に当たらなくとも陽動になればいいんだ」

「もし、相手の正確な位置が分かるなら……」


 そう言いかけたベラの視線がキアへと注がれる。


「もし、相手の正確な位置が分かるなら……私なら弓で狙撃するも可能ですわ!」


 キアが力強く声で、アレクの問いに答える。

 そんなキアを見つめながら、アレクは詳しい作戦を決めるためにキアと話し始める。

 こうして、人族とエルフ族による救出作戦が行われることになった。





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