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黒剣のゴーレム

 一度はアレクに胸を貫かれ倒れた、黒剣のゴーレムであったが……鎧の内側から灼熱の炎で身を焦がしながら、凄まじい熱量の炎を纏って蘇る。

 その姿は、まるで炎の魔人のように近寄りがたい迫力にアレク達は、思わず後ずさる。

 しかし、予想外に突然ゴーレムの下半身が崩れ出し、黒剣のゴーレムは床に大きな音を立てながら衝突する。

 自ら発している炎に耐えられずに自壊し始めたゴーレムを見て、アレクは我に返りパーティーメンバーに指示を出す。


「ミカ!アイス・ジャベリンで攻撃しまくれ!アマリア、とりあえず大盾で皆をガード!カインは皆の援護だ!あれに接近戦は危険過ぎる!」


 皆もアレクの指示に我に返り、行動を開始する。

 アレクは、アイテムボックスで武器を交換して魔弓を取り出して構える。

 黒剣のゴーレムは左手で床を掴み、右手で黒剣を引きずりながら這ってアレク達に近付いてくる。

 すると、まだ10mほど距離があるのに黒剣のゴーレムが、燃える黒剣を頭上に掲げる。

 意味不明な行動に、困惑する《漆黒の魔弓》だったが……アレクだけは嫌な予感を覚えて大声を出す。


「皆、大盾の陰に隠れろおぉぉぉ!!」


 アレクの言葉にパーティーメンバーが反応し、行動を開始した直後……燃える黒剣が大きく床へと叩きつけられる。

 すると、“ドオオオオォォォ!!!”と真っ赤に燃える火柱がアレク達、めがけて迫ってくる。


(炎による遠距離攻撃かっ!大盾だけで凌ぎ切れるのか!?)


 黒剣のゴーレムの攻撃を凌げるか、迷っていたアレクにアマリアから声が掛かる。


「アレクっ!盾に【付与】を!!」


 アマリアからの短い言葉だったが……一瞬で、その意図を理解してアレクはアマリアの構えている大盾に【付与】+【水魔法】を発動する。

 スキルを発動した直後に、“ドオォォン!!”と大盾に火柱が激突し、アレク達の周りは炎に包まれる。

 耐熱装備でない部分が、焦げ臭くなっていくのを感じながらアマリアは炎に耐える。

 そして、大盾を必死に構えながら自己治癒ライトヒールの魔法を発動して、ガードと同時に回復を図る。


 やがて、汗だくになりながら盾の構えを解いたアマリアが膝をつく。

 盾を支えていた腕は、手甲以外の部分に痛々しい火傷を負っていた。

 限界まで回復魔法を使っても防ぎ切れなかったダメージが、火柱の威力を物語っていた。

 カインが、すぐにポーションを取り出しアマリアの腕に振りかける。

 攻撃を仕掛けようと、黒剣のゴーレムを見つめるアレクとミカエラの先には両手で黒剣を床に突き刺し、支えにしている姿があった。


 黒剣のゴーレムとアレクの間には、火柱によって発生した溶岩のように溶けた通路ができていた。

 これを耐え切ったアマリアに感謝しながら、アレクは魔弓を構えて【雷鳴弓】を発動して黒剣のゴーレムに放つ。

 ゴーレムに、トドメをさせるかと思ったが……驚くべきことに矢が、ゴーレムに当たる寸前で燃え尽きてしまう。


「なっ……!?どんだけ、表面温度が高くなってんだよっ!!」


 アレクの【雷鳴弓】が、無効化されてしまったが……続いてミカエラのアイス・ジャベリン×5が黒剣のゴーレムに向かって放たれる。

 アレクの【雷鳴弓】のように無効化されずに、魔法は体にぶつかったが……攻撃が効いているようには見えなかった。

 それでも、唯一のゴーレムに届く攻撃手段である魔法を必死にミカエラは、放ち続ける。


 何度も何度も魔法を放ち続けた、おかげで黒剣のゴーレムの動きが鈍くなるが……魔力ポーションを飲みながも魔法を放ち続けたミカエラは、魔法を連続使用したことによる精神疲労で気絶してしまう。


 アレク達と黒剣のゴーレム、お互いに満身創痍になりながらも戦いは、決着に向かっていく。

 最初に動いたのは、黒剣のゴーレムだった。

 崩れた下半身の残った部分で器用に跪き、黒剣を天に掲げ両手で上段の構えをとる。

 間違いなく、全てを賭けた一撃を放とうとしている様子にアレクは、恐怖する。


(くそっ!もう、攻撃手段がない!アマリアの腕は回復したけど……恐らく、あの攻撃は、先程より強力な一撃だ。今のアマリアじゃ耐え切れない!何か!何かあのゴーレムに届く攻撃手段は、ないのか!?)


 必死に現在の戦力で、黒剣のゴーレムを倒す方法がないかアレクは、考える。

【思考加速】を発動し一瞬の間に何十通りの攻撃手段を思考し鼻血が出るほど、頭を回転させる。

 そして、唯一あのゴーレムに届く攻撃手段を思いつく。


 アレクは、アイテムボックスに手を突っ込み《武具作成》を選択しウルティムを使用した武器を作り出す。

 それは、本来なら騎士用の馬上槍としてや重装騎兵用の突撃槍として使われる身の丈ほどあるランスだった。

 先端が鋭く尖り円錐型をし、敵を突き刺して攻撃することで最も威力を発揮する武器である。

 それは以前、グラウェ武具店でコピーした武器の1つであった。


 アレクは【思考加速】で、引き伸ばされた時間の中で必死にランスを作り出す。

 既に黒剣のゴーレムは大剣を振り下ろそうとしている……先に攻撃されれば確実に死ぬ!アレクはアイテムボックスから完成したウルティム製のランスを取り出すと、そのまま槍投げのようにランスを逆手に持ち【身体強力・極】+【槍術】+【付与】+【雷魔法】+【風魔法】+【投擲】を同時に発動する。


 同時発動で、体に負荷が掛かり意識を失いそうになるが……必死に意識を繋ぎ止める。

 満身創痍な仲間達の前に出ると、左足を力強く踏み出す。

 体重を掛けた左足からスパイラル状にエネルギーを集め足・腰・胸へと、体をしねらせてランスに力を集中する。

 身体中の筋肉がブチブチと切れ、全身の骨がギシギシと軋む音がする。

 それでも、今できる全てを乗せて必殺の一撃を黒剣のゴーレムに向かって放つ。


(狙うのは……頭っ!!)


 この時アレクは、敵の弱点などを深く考えたわけではなく……最初のアレクの頭部への攻撃を黒剣のゴーレムが避けたことを無意識に思い出し、体が自然と黒剣のゴーレムの頭を狙っていた。


 踏み出した左足の地面が凄まじいエネルギーに耐えられずに激しく砕ける。

 足が床に埋まりながらも……アレクはランスを発射する。

 その様は、まるで戦車から放たれる砲弾のごとく……エネルギーの爆発と共に敵を打ち砕く。

 カイン・アマリアが死を覚悟した次の瞬間……主部屋に轟音が響き渡り、皆の時が止まる。

 そして剣を天に掲げ両手で上段の構えをとったまま、黒剣のゴーレムの渾身の一撃は放たれることはなかった。

 カイン達の目に飛び込んでくるのは、頭部が綺麗に消し飛んだ火の魔人の亡骸だった。


 唐突に、燃える黒剣を支えていたゴーレムの体が塵になり“ガチャン!!”と黒剣が床に落ちる。

 その場に残ったのは、黒剣と大きな魔石だけであった。

 黒剣のゴーレム討伐を確認したアレクは、全身に激痛が走り意識を失った。



 ===============================



 しばらくして、意識を取り戻したアレクは、主部屋の中で横になっていた。


「よう!目が覚めたかアレク。戦闘直後に倒れたから焦ったぜ……でも、アレクのお陰で俺達は生き残れた。本当にありがとうな」


 すぐ横で恐らく介抱していくれていたカインが、目覚めたアレクにお礼を伝えてくる。


「いや、今回1番頑張ったのはアマリアだろ?それと、カインも援護ありがとう……助かったよ。ミカも気絶してたけど、今は大丈夫なのか?」

「そうだな……アマリアのガードには命を救われたな!俺は何もしてないさ。ミカなら、今はアマリアが介抱してくれてるぞ」


 アレクが立ち上がろうとすると、全身に痛みが走り、起き上がることすらできなかった。

 久しぶりの筋肉痛に苦笑いしながら、後処理のためにカインに黒剣と魔石とランスの回収を頼む。

 アレクの傍に回収されてきた黒剣と魔石をアイテムボックスに回収していると、カインが困った表情でアレクに相談してくる。


「アレクが投擲したランスが壁の奥に、めり込み過ぎて回収できないんだが……どうする?」

「あ……全力で投げすぎたか、仕方ないからウルティム製のツルハシで掘ってくれるか?」


 そういうと、アイテムボックスからウルティム製のツルハシを取り出してカインに渡す。

 ツルハシを受け取ったカインは、一生懸命にランスを掘り出し回収するのであった。

 沈静化した主部屋で、1日を休息に当てたアレクとミカエラは何とか自分で立てるまでに回復した。

 しかし、休息中に気になっていたことがあり思い切ってカイン・アマリア・ミカエラに聞いてみる。


「なぁ……ずっと気になってたんだけど、黒剣のゴーレムを倒した場所に炎みたいのが見えるんだけど……みんなには見えるか?」


 アレクには、筋肉痛で起き上がれなくなっている時から炎のような塊が、空中に留まっているのが見えていた。

 だが、カインとアマリアは気付く様子もなく、無視しているわけでもなさそうだったので見えないと判断して質問したのだった。


「炎?どこにあるんだそれ?」

「まだ、疲労が残ってるの?もう少し、主部屋で休む?」


 見えてはいけないものが、見えているのかと心配して2人がアレクを見つめてくる。

 反論しようとしたアレクだったが……ミカエラもアレクと同じ方向を見ていたので、ミカエラにも確かめてみる。


「ミカ?もしかして、俺と同じものが見えてるのか?」

「……はい、あの漂ってる炎の塊のことですよね?なんでしょう……あれ?」

「分からんけど、俺とミカしか見えてないようだな……仕方ないから正体を確かめに行くか」


 半信半疑のカインとアマリアに、アレクとミカエラが見えてるものについて説明し、一応すぐに戦える準備をして炎の塊の元に向かう。

 主部屋の中心付近にオレンジ色の炎が、ゆらゆらと漂っている。

 アレク達が、近付き炎を観察していると、こちらを認識しているのか“ピタッ”と動きを止めた。

 その武器を構えながら、アレクが独り言を呟く。


「これは……魔物なのか?」


 すると、その言葉に反応したのか炎の勢いが激しくなったと思うと頭の中に声が響きだす。


(誰が魔物じゃ!失礼な人の子め!!)


 幼い少女の声が頭の中に響きだし、文句を言ってくる。

 しかも、その声もアレクとミカエラにしか聞こえていないようだった。

 コミニュケーションが取れると判断したアレクは、以前の神様とのやりとりを思い出しながら、声の主に話し掛けてみる。


「失礼な問いだったみたいだな。そのことについては謝罪しよう……申し訳なかった」

(お?おぬし、私の言葉が聞こえるのか?驚きじゃ!)

「ああ、聞こえてるよ!俺は冒険者のアレクだ。あなたの名前を教えてもらっても?」

(私は、火の精霊じゃ!どうやら、おぬし達が私を解放してくれたようじゃな?感謝するぞ!)

「火の精霊……解放……もしかして、黒剣のゴーレムを倒したことが関係してるのか?良かったら、説明してくれないか?」


 それから、火の精霊と名乗る者に色々なことを説明してもらった。

 事の始まりは、100年前にさかのぼる……火の精霊が聖域として治めていた土地に突然、ダンジョンが出現してしまった。

 火の精霊は眷属と共にダンジョンを排除しようとしたが……逆に炎耐性持つ魔物に取り込まれダンジョンを活性化させてしまう。

 それから100年、ダンジョンに囚われ精霊の力を永続的に引き出され続けた。

 意識もなく力を吸い取られていると不意に

 魔物の支配から解放され、気付くと近くには俺達がいた、というのが火の精霊が話してくれた説明だった。


「つまり、全ての原因は簡単に魔物に捕まった、お前の所為ってことだな?」

(違うわい!急に聖域に現れたダンジョンが悪いのじゃ!私は悪くないぞ?)

「いやいや、俺達みたいな冒険者に助けを求めることもできたりしただろ?他にも手段があったと思うし……」

(それは無理な話じゃ!おぬし達のように適正がある者にか精霊は見えない!向こうの魔法士の少年にも私が見えてるじゃろ?だから……うん?良く見ると、おぬしには適正がないようじゃ……原因は……)


 火の精霊が、ゆらゆらとアレクの体の周りを調べ始めるが、すぐに元の位置に戻ってくる。


(おぬし……精霊石の結晶を持っているようじゃな?その首に掛けてるのが精霊石じゃ!)

「首?もしかして、このネックレスか?」


 それは、アレクが故郷の村を出る時に母から貰った、親指ほどの大きさをした楕円形の薄い虹色に光る石のネックレスだった。


(そう!それが精霊石の結晶じゃ!良く、そんな大きな精霊石を持っていたな?今の世界では手に入らない貴重なものなんじゃが……)

「これは俺の母の家に伝わるお守りだと、聞いている。」

(そうか……なら、精霊と親密な関係になった者が、おぬしの先祖にいたのかもしれんぞ?)


 意外な情報を聞いていると、仲間達に説明するのを忘れていたことを思い出し、振り向くとミカエラがカインとアマリアにアレク達の会話を通訳していた。

 密かにミカエラに感謝しつつ、火の精霊と話を続ける。


「火の精霊の事情は理解した。だから、もうダンジョンを脱出してもいいか?俺達も、長期間のダンジョン攻略で疲れてるんだ」

(そう急ぐでない!まだ、ダンジョンから救ってもらった、お礼をしておらんじゃろ!それに、1つだけ頼みたいこともある)

「お礼は貰うけど……頼みってなんだよ?面倒事は御免だぞ?」

(何……難しいことではない。このダンジョンの最奥にある核魔石を回収してほしい。あれがあると、いつまで経っても聖域が復活しないのじゃ!)


 元々、ギルドから維持が求められているダンジョンではなく、核魔石は回収しようとしていたので、アレクは頼みを引き受ける。


「分かった。核魔石は回収することを約束する。」

(ありがたい!それでは、おぬし達に火の精霊から力を授けよう!精霊の力は、相性の良い者にしか授けられないのじゃ……あそこの赤髪の者と魔法士の者に力を授けよう!)


 すると、突然カインの持っていた長槍“銀翼”が光り始め……槍の穂先に黒い刻印が刻まれた。

 ミカエラも、胸元が光り始め……胸の中心に刻印の一部が現れる。

 わいわいと騒いでいるカインにミカエラが、事情を説明していたので、アレクは引き続き話をする。


「お礼は確かに受け取った。力を授けてもらい感謝する」

(まだ、おぬしに頼みをした分が残っているじゃろ?それ……おぬしには、これを授けよう)


 今度は、アレクの胸元が光り出し……虹色のネックレスに燃えるような朱色の小さな宝石が付け加えられる。


(これで、称号“火精霊の使徒”が得られたはずじゃ!ちなみに、これでいつでも私と話せるようになったから何かあったら呼ぶと良いぞ!)

「はっ?あ、おい!何勝手に使徒にしてるんだよ!おい!消えんな!?」


 言いたいことだけ、一方的に伝えると火の精霊は消えてしまった。

 色々と納得いかないアレクだったが……とりあえず、ダンジョン攻略を終えるべく気持ちを切り替えるのであった。



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