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火のダンジョン攻略5

 40階層の主部屋で、全身プレートアーマーを象った2体の真っ赤なゴーレムと、アレク達は戦った。

 燃えるような大剣使いと、二刀流使いに苦戦を強いられるかと思われたが……まだまだ奥の手を隠していたアレクとカインは、新たな技“瞬槍”を駆使することで、危なげなく勝利を収める。2人の戦いを後方から見守っていたアマリアから驚きの感想が語られる。


「ちょっと!2人とも何で余裕で勝ってるのよ!?最初は、剣と槍を弾かれて苦戦する!みたいな空気出してたでしょ?」

「なんで……って言われても、最初は相手の戦力とかを確かめるために軽く攻撃を仕掛けて、様子見するものだろ?」

「ああ、アレクの言う通りだぜ。主部屋の魔物の強さを、ある程度調べるのは必要なことだからな!それはそうと……また新しい技を考えたのかアレク?横目で見たけど、大剣を綺麗に切断してただろ?」


 カインの言葉に、先程のアレクの戦闘の光景を思い出したアマリアが質問をぶつけてくる。


「そうよ!すごい硬いゴーレムが、あんなに簡単に切断されるなんて……どんな魔法を使ったのよ!?っていうかアレクもカインも接近戦、強すぎるでしょ?また2人と私の差が、あり得ないほど開いていくのを感じて唖然としたわよ!」

「あれは、正確にはスキルだけどね〜簡単に説明すると【雷鳴弓】の剣術版って感じかな?俺達が接近戦が強いは前衛担当だから……別に問題ないだろ?」

「スキル……スキルねぇ?私は自分が戦闘向きじゃないのは分かってるけど、それでも私だけ大盾で守ってるだけで……私だって見せ場が欲しいのよ!」

「お、おう……何か……ごめんな?」


 活躍の場が少ないことを怒っていたアマリアをパーティーメンバーで、なだめながら沈静化した主部屋で、アレク達は休憩に入るのであった。

 そして、ギルド情報では未到達エリアである41階層についてアレク達は、作戦会議を開始する。


「41階層からは、ギルド情報によると未到達の階層とされている……もしかしたら、宝箱などもあるかもしれないな」

「けど、アレク……宝箱なんて探してる余裕あるのか?アレクの【付与】があれば、俺達は問題なく活動できるとしても、長時間は無理だろ?」


 当然の疑問をカインが思い付き、アレクの考えを聞いてくる。


「今まで通りに、魔物が少ないなら無理しない範囲で、宝箱の回収を行ってもいいかと考えてね!下層に降りる速度も慣れてきて、だいぶ早くなってきてるし」

「まぁ、確かに降りる速度は実際に早くなってるし……魔物の数も下層に向かうにつれて減ってるから、41階層も更に減ってる可能性はあるな」


 そこまで話していると、2人の話を聞いていたミカエラが慎重案を出してくる。


「あ、あの〜宝箱回収をするなら、一気に行うのではなく……40階層に何回か戻りながら回収したら、どうでしょう?魔物が少ないならパーティーの消耗も少ないと……思うんですけど……?」


 アレク・カイン・アマリアが顔を見合わせ、次に全員の視線がミカエラに集まっていく。

 その視線を受けて、気まずそうにモジモジしてるミカエラ。


「「それだっ!!」」


 一斉に声を揃えてミカエラの意見に同意する《漆黒の魔弓》一同。

 その揃った声に、ビクッ!と肩を震わせるミカエラは小動物のように驚いていた。


「ミカの言う通り、魔物との遭遇回数が少ないなら、消耗を気にせずにダンジョン攻略してもいいわけだしな」

「ああ、それにダンジョンの構造を覚えながら宝箱の回収すれば、今後の役に立つぜ!」

「そうね!っていうか通常のダンジョンなら、それが正攻法よね?このダンジョンが特殊過ぎて忘れたわ」


 食料・水分・必要品の残量を確認したところ……余裕があることが分かったのでミカエラの案を採用して、宝箱の回収・ダンジョンの地図作成を主な目的として行動を開始した。


 41階層からは壁・床ともに黒焦げになっており所々にひび割れた箇所から赤い光が漏れている。

 マグマが冷やされたような光景に、上を歩いても燃えないかと不安を感じながらも、アレク達はダンジョン攻略を進める。


 焦げ臭い匂いが充満した通路を巡回しているゴーレムは、赤黒いプレートアーマーを象った戦士だった。

 燃えるような片手剣と黒い盾をを持った戦士型ゴーレムは、強さも格段に上がっていたが……1階層あたり1,2体しか出現しないため、1対4の戦闘になり問題なく処理することができる。


 赤黒いゴーレムを倒すと、燃えるような片手剣をドロップし、アレク達は片手剣を拾いながら探索を続ける。

 1階層を調べては、40階層の主部屋に戻ることを繰り返し時間を掛けたが……宝箱の回収とドロップ品の回収を終えることができた。

 ドロップ品は、ここまで到達できなかった冒険者達が装備していたものなのか……火耐性を上げる防具やアクセサリーがほどんどだった。

 気休め程度に、火耐性のある指輪や首飾りををパーティーメンバーで分けて装備し、41階層から50階層の探索と下層に降りるルートを確認し終わった。


 全ての準備を終えたアレク達は、本格的なダンジョン攻略を再開する。

 最下層までの最短ルートを進み、慣れた様子でゴーレムを処理しながら順調に階層を下っていく。

 46〜50階層のゴーレムは、変わらず赤黒いプレートアーマーを象った戦士だったが……燃えるような片手剣以外にも、槍や斧を装備した戦士型ゴーレムだった。

 それらの武器もドロップしたので、しっかりと回収しながらもアレク達は、最後の主部屋前に到着した。


 最後の主部屋だということはアレク達、全員が気配から感じていたことだった。

 主部屋の中からは、探知スキルを使ったわけでもないのに……凄まじい気配を放つ者の存在を、感知することができる。

 パーティーメンバー皆の顔色を確かめると、アレクは主部屋の扉の前に立ち、仲間達に語りかける。


「どうやら皆、主部屋からの気配を感じることができたみたいだな……中のやつは、中々の強さを持つ魔物……いや、ゴーレムなんだろう」

「この主部屋の外からでも分かる存在感は……既に魔物の範疇を超えてるだろ!」

「そうだな、カイン。この中にいるやつが恐らく、このダンジョンをおかしくしてる原因なんだろう……どうする?引き返すか?」


 皆が、この気配を感じて一瞬でも考えたことを、アレクは軽く口にする。


「別に絶対に倒さなちゃいけないわけじゃないし、俺は皆が引き返すって言っても反対したりしないよ」

「けど、アレク……それだと帰りが……」

「そうだな、アマリア。確かに引き返すとすると食料や水分が心もとない。それでも、無理して死ぬよりかはマシだろ?」

「………………」


 皆の表情から迷いが感じられ、気まずい空気がパーティーメンバーの間に流れる。

 そんな沈黙を破ったのは、普段は大人しいミカエラだった。


「アレクさんは、どう考えてるんですか?」

「俺は……、俺は挑戦したいと考えてる。格上な相手なのは分かってる……けど、ここで引いたら、俺達は何時まで経っても先に進めなくなる。勝算が高い戦いが、いつもできるわけじゃない……この先を生き残るには、不利な状況にも打ち勝つ力が必要なんだ……!」


 皆がジッとアレクの顔を見ると、先程までの不安に囚われた顔でなく、仕方ないという顔で見てくる。


「そうだな。常に勝利できる戦いなんてないんだし、アレクだったら絶対に勝てない相手に挑もうなんて言わないよな」

「私は、ゴーレムに大盾を殴られる覚悟を決めたよ……できれば、殴られたくないけど!」

「ぼ、僕も魔力を温存せずに全力で行きます!!」


 アレクは、仲間達に向かって何も言わずに頭を深く下げて一礼すると、すぐに後ろを向き少し震えた声で準備するように伝えてくる。皆が笑いを堪えているとアレクが、小さな声で呟いた。


「……がとう」


 気持ちを切り替えて、自分も戦闘準備と装備確認を済ませると仲間達に向き直る。

 そこには、ニコニコと笑顔を浮かべる仲間達が待っていた。

 アレクが、掛け声をかけて攻略に勢いをつけようとすると逆に仲間達から、声を掛けられる。


「「どういたしまして!」」

「……っ!!おい!そこは聞こえないフリして、流すところだろう!?」

「よし!アレクの珍しく照れてる顔も見られたし、みんな気合い入れて主部屋を攻略するぞ!!」

「「おう!」」

「納得いかねぇー!!」


 アレク達は、わいわいと騒ぎながら主部屋の扉を開くのであった。



 ===============================



 アレク達が、重く厚い石の扉を開けると主部屋の中から、熱対策をしているにも関わらず熱風が押し寄せてくる。

 それに怯むことなくアレク達は、歩みを進め主部屋の中に入っていく。

 やがて、主部屋の扉が閉まっていき……それとタイミングを合わせるように部屋の中の松明が順番に灯っていく。

 そして、アレク達の前に1体のゴーレムが姿を現わす。


 アレク達は、その姿に思わず息を呑む。

 2mほどの大きさの真っ黒に焦げたフルプレートアーマーを象った騎士が、そこに立っていた。

 身の丈ほどの黒曜に輝く大剣を地面に突き刺し、アレク達を待っている。

 アレク達が構えを取ると、地面から黒曜の大剣を引き抜き両手で構える。

 その瞬間、黒曜の大剣に火が入ったように剣身の腹の部分が熱く輝き出す。

 綺麗に並んだ溝からマグマのようなオレンジ色の光を放ちながら、黒剣のゴーレムが近付いてくる。


「いくぞっ!!」


 アレクの掛け声を合図に、全員が動き出す。まず前に出たのは大盾を構えたアマリアだった。

 既に武器は、腰に収納して両手で大盾を構えていると、黒剣のゴーレムの上段切りが凄まじい速度で迫り来る。

 “ガアン!!”と重い金属同士が、ぶつかる音が部屋に響き渡り、衝撃でアマリアが軽く吹き飛ばされていく。


 すぐに追撃に移ろうとする黒剣のゴーレムだったが……後ろから強い衝撃を受けて、よろめき膝をつく。

 次の瞬間!いつの間か、縮地で距離を詰めたアレクが黒剣のゴーレムの頭部をめがけて、高速の剣撃が放つ。

 しかし、黒剣のゴーレムは素早く立ち上がりながら身をよじり、頭部への一撃を避けるが……左肩の一部が砕け散る。


 この隙を見逃さずに、後ろから追撃を仕掛けるカインだったが……悪寒を感じて、とっさに縮地で距離を置く。

 するとゴーレムの黒剣が、赤く燃え上りながらカインの腹部をかすめる。

 凄まじい熱を感じながらも安全な距離まで離れ、傷を確認しないまま腰のポーチから中級ポーションを取り出し、素早く腹部に振りかける。


 すぐに黒剣のゴーレムに視線を戻すと、カインのいた場所に、燃える黒剣の袈裟斬りを放った体勢からゆっくりと構えを戻していた。

 アレクも黒剣のゴーレムから距離を置き、様子を窺っていた。


「今の一撃……直撃しなくても熱のダメージだけで、当たりどころが悪ければ致命傷になるかもな……」


 大粒の汗を流しながら、カインは苦笑いして呟いた。

 そんなカインにアレクが大声で、指示を伝えてくる。


「カイン、やつは俺の剣撃を避けたぁ!ということは、やつに俺の剣撃は通用するってことだー!!俺が決めるから、囮を頼む!!」

「ああ、分かったー!けど気をつけろ!やつの一撃は直撃しなくても熱でやられるぞぉ!!」

「了解っ!!」


 アレクとカインの会話が終わるタイミングで、遠くからアイス・ジャベリン×6が黒剣のゴーレムに向かって飛んでくる。

 その魔法をゴーレムは、黒剣で打ち落とすが……全ては落としきれずに2本の槍が、またしても左肩にヒットする。


 しかし今度は、よろめくことなく素早くミカエラを捉え、黒剣のゴーレムが走り出す。

 ミカエラに猛スピードで迫り、突進のスピードを乗せた右薙みぎなぎを放ってくる。

 ミカエラは、躱すこともできずに立ち尽くしていたが……ミカエラと黒剣の間に、白金の大盾が割り込んでくる。


「やらせるかぁぁぁ!!」


 裂帛の気合いと共に飛び込んできたアマリアは、スピードが乗った黒剣の一撃を、今度は正面から大盾で受け止めるのではなく……腰を落とし姿勢を低くして大盾を傾けると、見事に盾で黒剣を滑らせて受け流してみせる。

 黒剣を振り抜き、無防備になったゴーレムの心臓部に背後から、アレクのラグトゥスソードが突き刺さり胸を貫通する。


 胸を貫かれた黒剣のゴーレムは、力なく膝から崩れ去ると”ガシャン!!”と大きな音を立てながら、うつ伏せに倒れた。

 警戒しながら、アレクがゴーレムの体からラグトゥスソードを引き抜き構えを取る。

 しかし、黒剣のゴーレムは“ピクリ”とも動かずに倒れたままだった。

 仲間達も、警戒しながらもアレクの後ろに集まりゴーレムの動きに注視する。


「アレク……あのゴーレム死んだと思うか?」

「いや、分からない……カインも警戒してるから分かると思うけど、体が塵になってないのが気になるんだ」

「だよな……先に黒剣だけでも回収して、武器を奪っておくか?」

「ああ、それがいいかも――」


 そこまで、話すと不意にゴーレムの指が“ピクッ”と反応する。

 次の瞬間、凄まじい熱量の炎を纏いながら黒剣のゴーレムが復活し、アレク達に向かって立ち上がっていた。


「二回戦目、開始か……笑えないなぁ」


 冷や汗が頬を流れるのを感じながらも、アレク達は武器を構えた。



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