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異世界やりこみドMプレイ〜持たざる者から始めます〜  作者: 塚木 仁
1章 【少年期 修行と検証の日々】
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初めての戦闘と魔法

王都へ向かう旅の途中

魔法士ルシアと、その弟子アルクは

スキル習得と熟練度を上げる修行を続けていた。


2人は早朝から街道に立っていた。


「今日も、【気配探知】をしながら歩いてもうことになるが……その前に ぼーや

こちらに背中を向けてくれるか?」


言われた通り、師匠に背中を向ける。


「これでいいですか?師匠」


「ああ、今から軽く魔力をぼーやに注ぐから

身体で魔力を感じてみてくれるか?」


そう言うとアレクの背中の中心あたりを

ルシアの手の平が触れる。


「はい、いつでもどうぞ!」


しばらく何も感じずに気まづい沈黙が

続くが、徐々に波打つ鼓動のような熱い

エネルギーが身体に入ってくる感覚がある。


「おっ、何か熱いエネルギーみたいを感じます!これが魔力ですか?」


アレクがルシアに声を掛けるとエネルギーの

感覚が消えていく。


「そうだ。魔力を感じることができたようだな。今日からは、この魔力を感知できるようになるのが目標になる」


続けて具体的なイメージを伝えてくれる。


「魔力のイメージは、全身をエネルギー……

お湯のようなものが流れる感じが分かりやすいと思うぞ」


(全身を流れるお湯……血液と血管か!

全身を巡り心臓を中心に循環を繰り返す

これなら分かりやすいぞ!)


「師匠ありがとうございます!分かりやすくてやれそうな気がしてきました!」


「よし!【気配探知】で魔力を探り

【魔力探知】を覚えてみせろ」


「はい、頑張ります!」


早速、修行を始めようとすると師匠から

注意が入る。


「ここから、2日程歩いた辺りから魔物が

出る恐れがある。改めて注意するが

私だけに集中し過ぎるな」


それからは、数日は歩きながら【気配探知】

朝と夜は自分の魔力に意識を向ける

【魔力操作】を修行することになった。

王都から、あと2日という距離となった街道

森を抜けている途中に それは現れた。

【気配探知】を発動しながら歩いていると

師匠が、ピタッと立ち止まる。


「師匠?どうしました?」


アレクが問うと同時にルシアから返事が

返ってくる。


「魔物に囲まれているぞ?もっと集中して

魔力を探ってみろ、相手は気配を消している」


一瞬で緊張が走り、背負った弓を構え

矢を取り出し魔力を集中して探そうとする。


“ドクッドクッ”と自らの鼓動が大きく

聞こえ足が震える。初めての戦闘で

頭が真っ白になりそうになる。


緊張を抑えようとすればする程、心臓の音が

うるさく聞こえてくる。


(ダメだっ!集中しろ!恐るな!)


“ガサッ”森の中からの音に反応しそうに

なったその時!


“ぽんっ”肩に師匠の手が乗っていた。

「力み過ぎ……色々と考えて過ぎているぞ」


師匠が優しく声を掛けてくれる。


「やることは1つ、相手を感じろ!矢は

当てなくていい。あとは私が何とかする」


その言葉に全身を絡みついていた恐怖が

霧散むさんしていく。


『ふぅー』息を吐くと一瞬だけまぶたを閉じ

そして開く……

頭がクリアになっていき地を這うように

エネルギーが隠れているを5つ感じる。


「右の傷付いた木の裏に2匹、左の大きな

木の裏に2匹とその横の茂みに1匹です」


その言葉を待っていたように魔法が

エネルギーに向かって飛んでいく。


「【風のウインドカッター】×2

【水のウォーターカッター】×2」


『シュン!シュン!ザシュ!ザシュ!』


一瞬にして風魔法で2匹を水魔法で巻き込む

ように2匹と1匹を消し去っていく。


安心していると師匠は最後の魔法を放って

いた。


「【火炎弾ファイヤボール】」


魔法の行方を目で追っていくと森の右奥に

青い大きな狼が火炎弾ファイヤボールを躱そうと

身をよじっていていた。


しかし、地面に着弾した火炎弾ファイヤボール

狼を巻き込むように爆発し確実に命を奪う。


背後から師匠が話しかけてくる。


「正解は6匹だ。ぼーや、けど【魔力探知】は成功したようだし上出来だな」


師匠の言葉を聞いて一気に力が抜ける。


「すみません、足を引っ張ってしまいました

攻撃すら出来ないとは……」


師匠は軽く笑う。


「問題ないさ、わざと囲まれるまで待って

から声を掛けたんだからな」


(薄々は感じていたが、やはり……)


「僕に魔力探知と初戦闘を経験させる為に

ですか?」


「ああ、100回の修行より1回の実戦がより

人を成長させることもある……それに

実戦でないと分からないことある」


先程の戦闘を思い出しながら問題点と改善点

を考える。


「魔物の中には気配を消せるものもいるし

魔力探知の範囲内に全てがいるわけでも

単純に襲い掛かってくるわけでもない」


魔物からしたら、こちらが獲物で

あちらが狩人なのだ。息を殺し

チャンスをうかがすきを突いて

仕留める。


「狩る者と狩られる者、立場が変わることが

こんなにも恐ろしいことだとは思いもしませんでした……」


師匠は、黙って頷きアドバイスを続ける。


「そして相手を知っているのと、知らないと

では雲泥の差がでる。戦闘中に素早く情報を

集め確実に頭を潰す」


事前に知ることもあれば、突然に襲われる

こともある。

今回は、経験がある師匠がいてくれたから

良かったものの、もし安心して警戒を解いていたら大きな狼に殺されていたかもしれない。

その考えに至った瞬間、背筋が凍る。


「後ろに控えていた青く大きな狼は

リーダー格だったのだろう……仲間が

勝っても負けても動けるように行動する。

ズル賢い個体だったな」


「僕が、もし1人で襲われた場合……

どうするべきなんでしょうか?」


自分の中で最悪のパターンを想像して

質問する。


「あー、普通の冒険者が

そもそも1人で魔物の群れに出会った時点で

死亡確定なんだが……まぁ、仲間が途中で

死んで1人になる場合もあるしな」


少し想像して師匠は答えを教えてくれる。


「今回と同じ状況で私が、ぼーやの立場なら

私はリーダー格の狼を1番に処理して

混乱した残りを殲滅するかな?ただし

リーダー格の狼を見つけられなければ

周りに手傷を負わせず確実に仕留められる

ヤツだけ狩って逃げる」


前半部分は、納得できたが後半部分は

良く分からなかった。


「なぜ、手傷を負わせないのですか?」

思わず質問を食い気味にしてしまう。


「ぼーや今回の個体は賢いやつだったろ?

そんなヤツに手当たり次第に攻撃を繰り返せば

どうなる?手負いになったものを囮にし

仕留められてしまうよ。それならば

確実に数を減らし、すきを見せずに

逃亡した方がまだ生存する可能性がある」


師匠の話を聞き、先程の戦闘を思い出して

想像すれば驚くほど師匠の予想に近い結末が

待っていた。


「これが、戦闘中に素早く情報を集めて

判断することの重要性ですか……」


「そういうことだ、少し喋り過ぎてしまったな。

私は魔物の死体を処理してくるから

ぼーやは、そこで休んでいるといい」


そう言うと師匠は、ひらひらと手を

振りながら魔物の方へ歩いていった。

そして、その日は早めに休むことになり

日が落ちる前には小屋で休憩していた。

ソファで横になっていると師匠が

そばに寄ってくる。


「ぼーや、今日の戦闘でスキルも増えてるだろうし確認してやろう」


そう言うとルシアはアレクをソファに座らせ

鑑定のスキルを発動する。


「【鑑定】……」


「どうですか?師匠?」


「うむ、【魔力探知】と【魔力操作】が

新しく習得できているな。レベルは魔物を

直接攻撃してないから上がってないし

ステータスも同じだな」


修行を始めて6日で新しいスキルを習得できたことに驚きを隠さずにいると師匠から

分析が聞こえてくる。


「通常は、半月ほど習得には時間掛かるところを6日か……才能があるものでも7日ほど

掛かることが多いはず……ぼーやの場合は

45日ほどの予定だったが……イメージの影響もあるだろうが今回は実戦も含むことで

さらに効率が高まったと考えられる……

しかし、そうなるとイメージの上昇率が……」


師匠は、思考の海に呑まれて帰ってこない。

考えが纏まるまで放っておくことにした。

30分程、待っていると師匠が思考の海から

帰ってきたようで話し掛けてきた。


「すまないな、熟考してしまった。明日から

修行の内容を変更しようと思うのだが……

ぼーやは、魔法には興味があるか?」


「はい、あります!」


師匠の言葉に、即答してしまう。

そんな様子が面白かったのか笑いながら

説明をしてくれた。


「明日からは、歩きながら【魔力探知】と

魔法の勉強をしてもらう。朝と夜の日課

【魔力操作】も続けてもらうからな」


いきなり、魔法の修行をするわけでは

なくて少しテンションが下がるが

師匠は、お構いなしに質問してくる。


「ぼーやは、魔法についてどれくらい

知っている?」


「えっと、僕が知っているのは

魔法は五大属性と呼ばれる種類があり、

それは

火・水・風・雷・土の5つであること。


魔力を消費して力を行使でき

魔法士でなくとも魔法は使えるが

威力は低く魔力の消費も大きくなる。

強力な攻撃魔法などは魔法士しか

使用できない。以上のことぐらいです」


師匠は、うんうんと頷いて補足を話を始める。


「属性に関しては、あと2つ存在すると

言われているが確認はされていない」


「えっ?そうなんですか?」


「ああ、文献によると光と闇の属性が

存在するらしい。まぁ伝説みたいなもんだから気にしないでいい。それと魔法には

魔力以外も影響するものがある〔魔素〕と

呼ばれるものだ」


聞き覚えのない言葉だった。


「魔素ですか?どういうものなんですか?」


「魔素は体に取り込まれると魔力になり

魔法を補助し消費魔力を抑えてくれる

効果がある」


(魔素……酸素みたいな感じなのかな?

身体に取り込むと疲れにくいみたいな?)


「便利なものですね魔素って」


「その魔素を【魔力探知】で感じられるように修行をしてもらう。魔素が感じられ意識して

効率良く取り込めるようになれば?」


ハッ!とした表情になるアレク。


「魔素を魔力として消費し己の魔力を節約できるようになる!」


(外部からエネルギーを取り込めるなら

自身の負担を少なく出来るし強い魔法も

使えるようになるかもしれない)


「そういうことだ、魔素を多く取り込める

ようになれば魔法が多く使えるようになる。

魔法が多く使えれば魔力(MP)も鍛えられる。地味な基礎があってこそ力が使えると

いうわけだな」


(地味で辛い作業ほど終わった時の喜びも

大きくなる!そして将来に返ってくる

見返りも大きいと……)


「はい、やる気が湧いてきました!明日から

また頑張ります!」


師匠は優しい目で、こちらを見ると

いつも通りにベッドに向かって歩き出す。


「張り切り過ぎるな?もう、そろそろ王都に

到着するからな。では、お休み」


「はい、お休みなさい。師匠」


明日からの魔法の修行に胸を躍らせながら

アレクはソファに横になり目を瞑った。

ルシアとアレク

2人に旅は目的地へと到着しつつあった。



















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