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装備の新調

 アルテスに来てから、3カ月が過ぎようとしている頃……フェルムの金槌かなづちのフェルムから呼び出しを受けたアレク達《漆黒の魔弓》は彼の工房に来ていた。

 工房の奥で鉄を叩いていたフェルムが、弟子の1人からアレク達が、来ていることを伝えられ煤を鍛冶用のグローブで落としながら、こちらに近づいてくる。


「おおっ!アレク、待たせて悪かったな!お前達も、今日は良くきてくれたな!」

「いえ、別に待ってないので気を遣わないで下さい。それより、もしかして頼んでいた装備が完成したんですか?」


 アレクが、期待を隠しきれずに本題を聞くと……その様子に満足したのかニカッとフェルムが笑顔を浮かべ、工房の大きなテーブルへと案内してくれる。

 そこには、武器・防具・マントなど各種装備が並べられていた。

 その中には、先日アレクが《装備作成》でウルティムのインゴットを使用したものも含まれていたが……フェルム達の手によって調整され洗練された装備へと生まれ変わっていた。


「アレク達から依頼されていた装備一式だ!まずは防具から装備してもらっていいか?装備したら最終調整をして終わり次第、引き渡しになるからな」

「分かりました!みんな聞いてたな?各自、用意された装備を着用して何かあればフェルムさん達に伝えて調整してもらってくれ」

「「了解!」」


 カイン・アマリア・ミカエラが各自に用意された装備していくと使い心地をチェックしながらアレクに見せてくれる。

 そのアレクの横でフェルムが、装備についての解説を細かく教えてくれた。


「まずは、カインの装備だが……

 軽装鎧の胸当て・手甲・足甲を部分をウルティム製のものに変更した。カインの戦闘に合わせて右の手甲は拳の細かいところまでウルティムを使用しているから拳撃にも対応しておるぞ!左手の手甲は、右よりもガードしやすいように厚めに作っておいた。足甲も右足の蹴りに対応できるように調整しておいたから思いっきり敵を蹴っても痛くない作りになっている」

「すごいぞ!これ!全く重さを感じないのに攻撃の衝撃を全く通さない。ほら、アレクちょっと叩いてみろよ」


 白金に輝く手甲に向かってアレクが、カインに言われるままにアイテムボックスから出した練習用の片手剣で斬りつけてみる。

 “カーン”と金属のぶつかる音が響くがカインは感動したようで全然痛くない!はしゃいでいた。


「どうだ!すごく丈夫に仕上がってるだろう?本来なら装備重量のバランスを考えて左右の重さが、あまり違うのは良くないんだが……ウルティム製だと、それを気にせずに装備を作れるから専用装備を作るには最高の素材だな!」

「これは……すごい!防御力も一流で、個人の体術まで組み込んで考えられた装備ですね!」


 フェルムとアレクが、ウルティムの他の活用法について話し合っているとカインが武器を手に取り感触を確かめていた。


「今回、カインのために用意した武器は2つ、1つ目はウルティム製パルチザンだ。

 幅広大型な三角形の穂先を付けた長槍で斬撃・刺突に特化した作りをしている。刃の幅を広げて根元には別の重い金属と狂闘牛バーサク・ブルの角を使用して重量を確保した。攻撃の幅が広い武器に仕上がったが……狭い場所での戦闘には向かないから注意が必要だぞ?


 2つ目は、パルチザンの短所を補う補助武器でウルティムの直槍。この槍は16cm程度の穂を持ち、柄の長さは室内など狭窄空間用に1.8mになっている。羽のように軽く、高速での刺突攻撃が可能な逸品だ」


「なるほど……長く重い槍で斬撃・刺突を戦い、短く軽い槍で身を守るってことかぁ。いいなこれ!気に入った!!フェルムさん、この武器に銘とかあるんですか?」

「う〜ん、そうだなぁ……パルチザンの方が銀翼で、直槍の方を銀羽なんてどうだ?」


「銀翼と銀羽……この武器に相応しい銘ですね!俺この武器を大切に使います!」

「ああ、大切に使ってやってくれ!カインと仲間の命を守る武器だからな」


 フェルムと話を終えたカインは、銀翼を構え武器の感触を改めて確かめていた。

 その立ち姿は、今日のために新しく用意した薄紫の下地と白金の軽装鎧が見事に合わさり美しさすら感じさせる。

 カインの装備の見学を終えたアレクは、次にアマリアの元へと向かった。


 アマリアは、元々修道服を戦闘用に改良したものを着用している。

 カイン同様に胸当て・手甲の部分的がウルティム製の防具に変更されており防御重視の装備になっていた。


「胸当て・手甲の部分はカインよりも厚めに作っておいたぞ!けど、重たく感じたりはしないはずだ。あとブーツに関しては狂闘牛バーサク・ブルの毛皮をなめして作ってある。爪先とかかとの部分にはウルティムが、使われているから簡単な体術くらいなら問題なく使えるはずだ。


 それに狂闘牛バーサク・ブルの毛皮には炎耐性があるから足元が燃えていても歩けるくらいには丈夫だぞ?ブーツの色も注文通りに黒いし宗教上も問題ないだろう」

「はい!フェルムさん、ありがとうございます!今までの装備が重りに感じられるくらいに動きやすい仕上がりです!これなら私も素早く立ち回れそうですよ」


 そう言いながら、今度はテーブルに用意されたメイスを手に取り、試しに振ったりして動作確認をするアマリア。


「そのメイスは、重量のある柄頭として狂闘牛バーサク・ブルの変異種の角を使用したぞ。柄の部位は基本はウルティムだが……蒼糸の繭を組み合わせて構成された、触媒の機能を有した武器だ。柄の先に重い頭部を付けたことにより高い打撃力を出せるようになっている」

「これならメイスを操りながら、回復魔法も発動できて回復力も上がるわけね!柄の部分も、かなり頑丈そうだし私向きね」


 白銀の柄頭が光り輝き、柄の部分は白金が神聖さを表している……持ち手の部分には蒼糸の繭が使用され、深いサファイアの色がついていていた。

 それだけで終わりではなく、アマリアは用意されていた盾を手に取り、装備して構えてアレク達に見せてくる。

 アマリアが構えていたのはカイトシールドという逆三角形の形状をした中盾である。

 足先に行くほど細くなっており、アマリアの胴体を覆うくらいの扱いやすい大きさに整えられている。


「そのカイトシールドは、大部分をウルティムで作った特注品だぞ?盾の裏に腕に止める革帯と吊り紐が取り付けられているから、強い衝撃を受けても腕から離れることなく安心して構えられる。ワシが作った中でも、間違いなく最硬の盾に仕上がったわ!」

「この盾……すごい性能じゃないですか?私でも自由に扱えて最硬の盾とか心強いんですけど!しかも軽い!」


 何故か盾をブンブンと振り回しているアマリアに、フェルムが声を掛ける。


「まだ、大盾が残っているだろう?そっちも、試してみてくれないか?」

「えっ?この大盾って私の装備だったんですか?この大きさ……私の体が、すっぽり隠れちゃいますよ?」


 文句を言いながら、テーブルに置かれた白金の大盾に手を伸ばしたアマリアの手が突然止まる。

 何か問題があったのかと、アマリアに問いかけようとした……その時!アマリアが片手で大盾を持ち上げる。


「えぇぇぇ!何この盾!?すごく軽い!!」

「はっはっは!どうだ!驚いただろ?これがウルティム製のタワーシールドだ!本来なら金属製の大盾で、かなりの重量があるために、アマリアのような者では筋力が足りずに扱えないが……ウルティムを使用するこのとで最軽量の大盾になっているんだ!歪曲した長方形により矢・剣・槍など、あらゆる攻撃を受け流すことができるぞ!」


 アマリアの体を隠す大きさの大盾を片手で構える光景は、知らない者からしたら異様に見えるだろう……しかも、アマリアは大盾を小枝でも振り回す速度で動かしていた。


「おお!!これなら、どんな攻撃がきても怖くない!でも大盾を軽々と扱う修道女って、周りから見たら怖くない?」

「はっはっは、どちらも同じ“怖くない”でも全く真逆の意味に聞こえるな!」

「いやいや、フェルムさん!笑い事じゃないから!これの所為で怪力修道女とか噂されたら、どうするの!?」


 黒い修道女に白金の胸当て・手甲にメイス・大盾と脳筋としか思えない装備に身を包み……強化パーツを装着したロボットを想像したアレクは、つい吹き出してしまう。もちろん、吹き出したところをアマリアに見られ怒られた。

 最後に残ったのはミカエラで……アレクの前に姿を見せると、いつもの前が開けた紺のローブではなく全身を覆う暗い青色のローブを着ていた。手と足には、真っ黒なグローブとブーツを装備している。


「ミカエラのローブをウチの工房ではなく、知り合いのローブ職人に頼んで狂闘牛バーサク・ブルの毛皮と蒼糸の繭を繊維上にしたものを編み込んで作った逸品だ。炎耐性・魔法耐性・魔法防御力向上と高性能なものに仕上がったそうだ。ちなみにグローブとブーツは狂闘牛バーサク・ブルの毛皮で作ったものだぞ?」

「こ、これは!魔力がローブに通っているのが分かります!凄いですね!」


 ミカエラの装備の説明をしていたフェルムが、急に申し訳なさそうな表情をするのでアレクは、何事かと質問する。


「どうしたんですか?フェルムさん?何か装備で納得いかないことでもありましたか?」

「……うむ、ミカエラに武器を作ってやることができなかったからな……どうしても、申し訳ない気持ちがあってな」


 それは、魔法士にとって大切な武器……杖についてだった。正直、核となる蒼糸の繭という素晴らしい素材はあったが……それ以外の素材や杖職人がアルテスでは揃わなかったのだ。

 武具生産が特色の街でも、専門外であれば用意できないこともある……それは仕方のないことだがフェルムは納得できなかったらしい。


「ローブ・グローブ・ブーツだけでも、十分に助かっていますよ俺達は。それに、あのミカエラの嬉しそうな顔を見て下さいよ!」


 アレクとフェルムの目線の先では、美しい青いローブをはためかせ色々と嬉しそうに自分のローブを見ているミカエラの姿があった。


「そうか?……いや、そうだな。ミカエラが、あれだけ喜んでいる姿を見れてワシ達にも嬉しいぞ。杖は、いずれどこかで機会に恵まれるだろう……それまで蒼糸の繭は大事に取っておくんだぞ?」

「はい、フェルムさんの言う通りに大事に取っておきます」


 全員の装備の説明を受けたアレクは、自分も頼んでいた装備をフェルムから受け取る。

 ウルティム・ナックルとフェルムが名付けたものは、手の甲と指を覆う体術用に作られた武器である。


「ウルティムを使ってるから、最硬・最軽量で体術を使える武器に仕上がったぞ!余計なものは一切加えてないシンプルな形になってるが……これで良かったのか?」

「ええ、これで大丈夫です!こういうシンプルな武器が、ほしかったんですよ」


 次に確認したのは、狂闘牛バーサク・ブルの毛皮と薄く伸ばしたウルティムを使った強化ブーツで炎耐性・物理防御にもなる装備である。

 フェルムと相談して実験的に作ったものなので、どの程度役に立つかは分からない……もし、使い勝手が良ければ仲間にも装備してもらう予定。

 最後に狂闘牛バーサク・ブルの変異種の毛皮と蒼糸の繭を編み込んで作ったフード付きマント。

 これは、変異種の素材1体分からしか作れなかったのだが……仲間達からアレクが装備するべきと言われて装備することになった。


「このマント……真っ黒かと思ったら、よく見ると銀色の繊維や青い繊維が混じってるんですね」

「ああ、そいつにはミカエラ程ではないが……蒼糸の繭が使われてるからな。杖の分も残さないといけなかったから他のマントには蒼糸の繭は使えなかったわけだが」


 実は狂闘牛バーサク・ブルの毛皮のフード付きマントは人数分、用意されていた。

 アレクのマントを除き、3つのマントはカイン・アマリア・ミカエラの分だったが、後からミカエラにはフード付きマントは必要ないことが分かり予備として取っておくことになった。


「この俺のマントは、他のマントと比べて違うところとかあるんですか?」

「ワシが把握してる範囲だと炎耐性と保温効果があるみたいだな。保温効果は狂闘牛バーサク・ブルの特性で、暑いところでも寒いところでもマント内を一定の温度に保つみたいだぞ?」


「へぇ〜便利なものですね、フェルムさんが完全にマントの性能を把握してないなら【鑑定】で調べてみてもいいですか?」

「ああ、鑑定してみてくれ!ワシも気になるからな」

「分かりました!じゃあ、【鑑定】……」


 鑑定結果:黒銀のマント

 効果:炎耐性・斬撃耐性・刺突耐性・魔法耐性・魔法防御向上・保温


 思っていたよりも多くの効果があり、驚きながらフェルムにも事実を伝えると、変異種の素材が影響しているのは間違いと分析を教えてくれた。

 全ての装備の確認と調整を終えたアレク達は、依頼料を支払っているとフェルムから今後の予定について聞かれる。


「アレクのスキルのおかげで、予定より早く装備を渡せたが……これからアレク達は、何か予定でもあるのか?それともドォールムに帰るのか?」

「いえ、あと2カ月はアルテスに滞在するつもりですよ!カインの希望でダンジョンに行くかもしれないですね……あの〜もし時間があったら作ってもらいたいものがあるんですけど……話だけでも聞いてもらえません?」


 アレクは、あることを思い出し、フェルムに仕事の依頼を別にお願いする。

 フェルムも最初は、乗り気ではなかったが……仕事の内容と使い道を聞いてアレク達には必要なものだから仕方なく作ると言ってくれた。

 こうして装備を新調したアレク達《漆黒の魔弓》は、次の目標であるダンジョン攻略に向けて準備を始めるのであった。


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