表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/154

依頼完了と受難の予感

 村での冒険者捜索の依頼を終えてアレク達《漆黒の魔弓》は、女冒険者達と捕らえた盗賊の男と共に馬車でアルテスへと帰還した。

 帰り道では、女冒険者達と親しくなり楽しく過ごすことができた。彼女達は全員がアルテス近郊の村の出身で、皆が18歳で黒い髪に褐色の肌色をしている。

 リーダーのドリーは、黒髪をポニーテールにしているクールな戦士だ。狩人のサリアは、ショートカットで元気印な女性だった。最後に魔法士のマギー、彼女は少し伸びた髪をツインテールにしており、いつも眠たそうな顔をしている。


 3人のDランク冒険者チーム妖精フェアリー羽根・フェザーと名乗っており、全員が幼馴染だそうだ。15歳から冒険者になった彼女達は、地道に依頼をクリアしながら最近やっとDランクに昇格できたと話していた。ずっと我慢していたのか、アレクの18人の盗賊達を相手にした戦いについて道中でドリーから質問攻めされたり、サリアから狩人のスキルや特訓法などについて教えてほしいと詰め寄られながら忙しく過ごした。


 彼女達の体調を気遣い、他の人には内緒にしてね!と話してアイテムボックスから家を取り出した時などは、軽いパニックになりかけたが……その後は、アレク達を見る目が尊敬の眼差しになり旅の途中でも“アレクさん”と自分達の方が年上なのに敬語とさん付けを、やめてくれなかった。実力主義の冒険者の世界では良くあることだとカインは言っていたが……どうしてもアレクは、慣れなかった。


 それと彼女達は、囚われていた時には平服だったのだが……どうやら捕まった際に盗賊に装備などを奪われていたらしく……アレクが、盗賊達のアジトで回収したものと盗賊の死体から使えそうな装備を剥ぎ取ったものの中から旅の途中で一生懸命に自分達の装備を探していた。

 アレクが回収していた盗賊達の死体は、装備などの剥ぎ取りで用済みになったので隙を見て村を出発する前に魔法で火葬しておいた。


 捕まえた男は最低限の生活を送らせ、逃げたら遠慮なく殺すと脅しておいたら余程、あの夜の出来事が怖かったのかブルブルと震えていた。

 2つのパーティーと盗賊の旅は、慌ただしく過ぎ村を出発してから3日後には無事にアルテスに到着する。


 昼前にはアルテスに着いたアレク達は、すぐ衛兵に盗賊の男を引き渡しアルテス近郊で発生していた魔物の目撃情報が盗賊達の仕業であると事情説明もしておいた。

 盗賊の男は何故か衛兵に引き渡されると安堵した表情になり、そのまま連行されて行く。

 アレク達は、馬車で冒険者ギルドに向かい依頼完了の報告と事件の顛末をレナードに伝えた。


 アレクとドリーは、お互いパーティーの代表として応接室でレナードに説明を終えるが、レナードは難しい顔をしている。


「あの〜副ギルドマスター?どうされたんですか?難しい顔をしてらっしゃるみたいですが?」


「ああ、ドリー君は盗賊達の出身について何か情報を聞いたかな?例えば、どこ国から流れてきたとか……」


「いいえ、私は特に副ギルドマスターがおっしゃるような情報は聞いていません」


「では、アレクくんの方では何か情報を掴んでいるかな?先程の説明では盗賊達から尋問を行っていたみたいだが……」


「こちらで掴んでいる情報では盗賊達は、どうやらカエルレウム共和国から流れてきた者達だったようです……元兵士が、犯罪を犯してアルテス方面に逃げてきたと言ってました」


「ほぅ……共和国からか……あそこの国は現在は、色々と問題を抱えていると聞いている。内政も安定していないと噂を良く耳にするほどだからな」


 カエルレウム共和国は、アレク達が拠点としているウィリデ王国 王都ドォールムの東にある国で、海に面しており他種族が入り混じって住んでいる国である。

 近年は、内政の乱れから犯罪や事件が多発していることから、できるだけ近付かない方がよいと噂されている。

 レナードからは、その後も事情説明の中で気になったところなどを質問され、アレクとドリーの2人で答えていった。

 30分ほどで聞き取りも終わり、解散になったのだが……アレクだけがレナードに呼び止められた。


「アレク君は、ちょっと残ってもらえるかな?先日、話し合った素材の買取について報告があるのでね」


「ああ、あれの件ですか!分かりました」


 ドリーが、部屋を出て行きレナードが気配が遠ざかるのを確認すると本題を切り出してくる。


「では、蒼糸の繭についてだが……冒険者ギルドでは鉱石としての価値が高過ぎて買取するのは難しいという結論に至った。しかし、それでは時間を作って待ってくれたアレク君達に申し訳ない……だから結論として商人ギルドに買取を依頼しようと思うのだが、どうだろうか?」


「う〜ん、商人ギルドに買い取ってもらうのは正直、不安がありますね。冒険者ギルドなら安心してお任せできるんですが……こうした交渉事に慣れていないもので……もし良かったら、冒険者ギルドから交渉事に長けている人材をお借りすることは出来ますか?」


「外部の者に対して不安がある、アレク君の気持ちも分かるつもりだ。だから今回の交渉には、私が一緒に立ち会うつもりだ。それなら、アレク君も安心して交渉に臨めるだろう?どうだろうか?」


「……分かりました!それではレナードさんに交渉を手伝って頂こうと思います。よろしくお願いします!」


 こうして、蒼糸の繭を商人ギルドに買い取ってもらうことになり3日後に先方へ向かうことになった。

 レナードとの相談が終わってギルドの休憩所に向かうとテーブルについて話しているカイン達とドリー達を見つけアレクは、そちらに足を向ける。


「みんな、待たせてすまないな!用件も済んだことだし……スザンナさんのこともあるから夜空の輝き亭に一度、戻ろうと思うんだが……いいかな?」


「ええ、私達もスザンナさんに顔を見せに行こうと思っていましたから、ご一緒します」


「……うん、行く」


「はい!私達もスザンナさんに心配を掛けてしまったので謝りに行きたいと思います!」


 ドリー・マギー・サリアの言葉を受けて、《漆黒の魔弓》と妖精フェアリー羽根・フェザーは夜空の輝き亭に一行は向かった。



 ===============================



 夜空の輝き亭に近付くにつれ、先程まで元気だった妖精フェアリー羽根・フェザーの3人の足取りが、段々と重くなっていく。

 その様子は、まるで帰ったら怒られると考えている子供のようでアレク達は、笑ってしまう。


「そんなに恐れなくても、いいんじゃないですか?スザンナさんも心配は、してましたけど……怒ったりはしてませんでしたよ?」


「……うっ!だけどスザンナさんは私達に、とって第二の母親と言える存在だからなぁ。

 アレクさん達に迷惑掛けたと分かったら、怒られるんじゃないかと思っちゃうんだよね〜」


「……スザンナ、怒ると……怖い」


「いや〜、私も怒られるのは勘弁だわ〜スザンナさん、怒ったら本当に怖いからね!」


「第二のお母さんかぁ……いいじゃない!怒られるってことは愛されてるってことでしょ?それは、きっと幸せなことよ?」


 ドリー達の話を聞いていたアマリアが、思うところがあったのか会話に混ざってくる。

 アマリアも、ドォールムの孤児院のマーテルのことを思い出したのかミカエラと顔を見合わせ笑っている。

 カインは、何やら複雑そうな表情をしていたが……アレクの視線に気付くと笑い返して何がを誤魔化していた。

 アレクも、自分の故郷にいる父と母のことを思い出しだけ寂しい気持ちになる。


 そんなことを話しているうちに、アレク達は夜空の輝き亭に到着して、入りづらそうにしているドリー達を置いて先に建物に入っていく。

 アレク達が中に入ると、すぐにカウンターにいたスザンナが気付き話しかけてくる。


「アレク!無事に帰ってきたみたいだね!あんた達のことだから大丈夫だとは思ってたけど……やっぱり姿を見るまでは、落ち着かなかったよ」


「どうも、スザンナさん!大きなケガもなく帰ってくることができました。ご心配をお掛けてして申し訳ありません……けれど、スザンナさんにお願いされてた件は解決してきましたよ?」


 そういうとアレク達の影に隠れていたドリー達が、おどおどしながらスザンナの前に歩いてくる。

 3人とも、俯きながらスザンナに帰還の挨拶をする。


「……ご心配をお掛けて申し訳ありません!色々とありましたが、アレクさん達に助けられ帰ってくることができました」


「……ただいま」


「いやー、アレクさん達がいなければ奴隷にされて売られちゃうとこだったよね!本当に危なかった!アレクさん達を向かわせてくれたスザンナさんにも本当に感謝してます!ありがとうございました!」


 三者三様の言葉をスザンナに伝える妖精フェアリー羽根・フェザー一行だったが……肝心のスザンナが黙っているのを本当に怖そうにしていた。

 スザンナは、黙って3人に歩いて近づいていく……次第に3人との距離が縮まりドリー達は思わず身を固くする。

 そんな怯えた様子のドリー達にスザンナは、大きく腕を上げ優しく3人を抱き締める。

 訳が分からずに唖然としている3人に涙声のスザンナが母親のように語りかける。


「あんた達……よく帰ってきたね……私は、それだけで満足だよ……おかえり」


 その言葉を聞いた3人は、自然と涙が目から溢れ気付いた時には人目をはばからずに子供のように泣いていた。

 彼女達にとってスザンナは、本当に母親のような大切な存在なんだなぁ、と考えながら3人を見守るアレク達であった。

 やがて、落ち着きを取り戻したスザンナにアレク達とドリー達は食堂に連れて行かれ、スザンナの手料理を振舞ってもらった。

 泣きながら料理を食べていたドリー達も、次第に落ち着きを取り戻し食事が終わる頃には笑顔で話をできるようになる。


 そろそろ、解散して部屋に戻ろかと考えているとドリーとサリアが席を立ちアレクの傍へ寄ってくる。

 何事かとアレクもカイン達も注目していると、突然2人が頭を下げお願いをしてくる。


「アレクさん!私達をアレクさん達の弟子にしてくれませんか!?お願いします!」


 一瞬、何を言われたか理解できずにフリーズしているとカイン達が一斉に頭を横に振り、全力で断れ!とアピールしていた。

 その様子に正気を取り戻したアレクは、ドリー達に丁寧に断る理由を説明していく。


「俺達は、まだまだ弟子を取れるほど立派でもないし他の人に教えられるほど実力があるわけでもないから、申し訳ないけど弟子にはできないよ!」


「けど、私達と1つのランクしか変わらないのに多くことを知っているし……色々なことができるじゃないですか!それにAランクであろうとアレクさんみたいに18人も盗賊を1人で相手できる人なんて聞いたことありませんよ?」


「それでも、弟子にはできない。弟子にするってことは……ドリー達に対して責任を持つってことでしょ?悪いけど現状では俺達は自分達ことで手一杯で、そんな余裕はないよ」


「……うぅぅぅ、なら少しでいいので私達の訓練の動きを見て助言だけでも、貰えませんか?それなら、いいでしょう?」


 アレクが、判断に困って仲間を見ると全員が仕方ないから訓練のアドバイスをしてあげたら?という顔で、こちらを見ていた。

 そこでアレクも、ドリー達の勢いに負け……

 訓練のアドバイスをすることになったのである。

 しかし、これがアレクの受難の始まりだとは、誰も知る由もなかった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ