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真相

村長の家へと乗り込んだアレク達は、扉を開けると驚愕の表情を浮かべるミゲルと出会う。

最初に盗賊を抱えたアレクに視線を向け、次にカイン達に視線を移していくと何かを悟ったのか膝から崩れ落ち、四つん這いになると苦しそうに泣き始める。

そのまま何度も何度も頭を床に擦り付けてアレク達に謝罪をし続けた。

アレク達が、その様子を見守っているとミゲルは泣きながら自らの罪を話し始める。


それはアレク達が、村を訪れる半月ほど前にさかのぼる。

ミゲル達、村人は農作物を育てながら生活し裕福ではなくとも家族で幸せに暮らしていた。

しかし、そんな日常は一瞬で崩れ去る……ある日、突然に村に襲撃してきた盗賊達によって若い娘達は連れ去れ抵抗した者は殺されてしまう。

ミゲルにも息子夫婦と孫娘がいたが、娘を連れ去れまいと抵抗した息子夫婦は盗賊達によって殺されてしまった。


盗賊達は、残された村人達に“こいつらは人質だ!無事に返して欲しければ俺達に協力してもらう!”と脅迫し食料の提供や見回りに来た者に虚偽の情報を流すように強制したのだ。

村人達は、悲痛な思いで家族を守るために盗賊達の指示に従うしかなかった。

そんな絶望的な状況の最中にアルテスから魔物の目撃情報を受けて冒険者達が、村を訪れたのだ。


しかし、村人達は家族を人質に取られ助けを求めることすらできない……このまま冒険者達を街に帰すしかないと諦めていた村人達だったが、村長であるミゲルに盗賊達から命令が下される。

冒険者達を村に引き留め睡眠の薬を食事に盛って盗賊達に引き渡せ、という卑劣極まりない内容のものだった。

ミゲルは、悩んだ末に息子夫婦が使っていた家に冒険者達を案内し薬を盛った食事を出し盗賊達の指示に従ったのである。

そこまで話したミゲルは土下座をしながらアレク達に自らの罪に対して審判を求めてくる。


「私がしたことは、卑怯で許されないことです……本当に申し訳ありません。私の命は、当然あなた方の自由にして頂いて構いません。ですが……もし慈悲を頂けるなら村の者と人質になっている者を助けて頂けないでしょうか?私にお支払いできるものなら全てをお渡しします!どうか!……どうかお願いします!!」


「ミゲルさん、あなたの考えは分かりました。しかし、今はゆっくり話をしている時間的余裕が俺達にはないんです。これから、盗賊達のアジトに冒険者達の安否を確認しに向かわないといけませんから。


盗賊達を森で18人ほど片付けましたが……

まだ、奴らのアジトに仲間が残っている可能性があります。仲間の帰りが遅くなれば奴らも異変に気付くかもしれません。ですから、そこで人質になっている者達の安否確認も一緒に行うつもりです」


「……あ、ありがとうございます。私に出来ることなら何でも、お手伝いします!」


「では、ミゲルさんはウチのアマリアとミカエラを連れて村人を村長の家前に集めて下さい。ここまでの事情説明と連れ去られた者の名前や容姿を確認を手早く終わらせます!」


「分かりました、すぐに村人を集めます」


そういうとミゲルにアマリアとミカエラがついて出ていき、家の中にはアレクとカインと気絶している男だけになる。

アレクは、カインの顔を見ながら村長の話とカインが尋問して聞いた内容に食い違いがないか確かめる。


「村長の話とカインが聞いた話に何かを食い違いはなかったか?それか話を聞いていて違和感とかはなかった?」


「聞いた限りでは、話に食い違いはなかったかな……それ以外の情報だと盗賊達の素性やアジトの正確な場所とかは聞き出せたけどな」


「それは助かる。アジトの正確な場所までは分からなかったからカインが聞き出せてなければコイツを尋問しようと思ってたんだ」


アレクは、縛り上げられた男を指差しながらカインの情報に感謝する。

これからの事を軽く打ち合わせしていると外からアマリア達が帰ってくる。

外に出ると深夜にも関わらず村人全員が、家の前に集まり不安そうにアレク達を見つめていた。


(村人達も、異変には気付いてたのかもな……じゃなきゃ、こんなに早く集まることなんてできなんもんな)


アレクは、そんなことを考えながら村人達に簡単にこれまでの経緯を説明すると人質になっている者の家族を呼び出し、人質の名前や容姿を確認していく。

その後は、今から人質の安否確認しに奴らのアジトに向かうことを伝えアレク達が外に出ている間、縛り上げた男を見張っておくように村人達に話す。

村人達の目には怒りや憎しみが写っていたのでアレクは殺さないなら殴ったり蹴ったりならしても良いと許可を出しておいた。


必要な情報を集めたアレク達《漆黒の魔弓》は夜の街道を【夜目】を使いながら馬車を操り盗賊達のアジトに向かう。

移動しながらカインから盗賊より得た情報についての報告を受ける。

30分ほど草原の街道を走ると、やがて情報にあった目印になる大岩が現れると街道を外れ遠くに見える廃村を目指した。

はっきりと廃村が見えると馬車をカインとミカエラに預けアレクとアマリアが廃村へ偵察に向かう。


盗賊の情報が確かなら、奴らは廃村を再利用してアジトとして使っているとのことだった。

探知を使い廃村の周辺を一回りしたが見張りと思われる者は1人しかしなかった。

見張りのいる木造の大きめの家の中に身を寄せ合うようにしている気配を複数確認する。

さすがに罠かと疑ったが……呑気に居眠りしている見張りを見て、罠ではなく自分達が襲われることなんて考えてないだけだと判断しアレクは【無の歩み】で見張りに近付くと片手で口を塞ぎ用意していた短剣で見張りの男のノドを切り裂いた。


死んだ男の懐を探りカギを手に入れると外で待機していたアマリアに合図を出し馬車を呼びに行ってもらう。

すぐに廃村に入ってきた馬車からカインとミカエラが降り合流すると全員で警戒しながら人質が囚われている建物に侵入する。

建物の中は、ひっそりとしており木造には似合わない頑丈そうな鉄格子が部屋の扉を覆っていた。


スキルで個室の気配と魔力を探りアレク達の目的の冒険者達が、いるかを調べると1番奥の部屋に個別に閉じ込められている反応を感知してアレクが合図を出す。

端の部屋の鉄格子を開け中には入ると手を縛られた18歳くらいの女性が座り込んでいた。

アレクは、警戒しながらも距離をつめて女性に話しかける。

女性は、こちらを疑いの眼差しで睨みつけているので信用に足る情報も一緒に伝えておく。


「大丈夫か?俺はアルテス冒険者ギルドから

行方不明になっている冒険者の捜索依頼を受けた者だ。夜空の輝き亭のスザンナさんからも、よろしくと頼まれている」


「え?私達を助けにきたの?スザンナさん……うっ……ありがとう……本当に……」


女性は、スザンナの名前を聞いて張り詰めていた神経が緩んだのか先程までの睨みつけていた顔ではなく安心した泣き顔になっていた。

カインに介抱を任せると隣の部屋も開放し、

冒険者達を順番に助けていった。

どうやら、女冒険者達も抵抗したり逃げたりしたら、一緒に捕まっている村の娘達を殺すと脅され自力での脱出をできずにいたらしい。


他の部屋に捕まっていた村の娘達も、開放しながら名前と容姿を確認して冒険者を含め7人を保護する。

全員を馬車に乗せ、アマリアとミカエラに護衛を任せてアレクとカインは念のために盗賊達のアジトを物色していた。

捕まった者達を奴隷として、どこに売ろうとしていたのか手掛かりがあればという考えだったが……それは達成できず終わる。


多少の金品があったのと別の倉庫に奪ったと思われる食料があるだけで他には有意義な情報は手に入らなかった。

アレクは一応、金品と食料を回収すると足早に馬車に戻り出発の準備に入る。

馬車に残っていたアマリアとミカエラは、アレクから預かったポーションをケガしてる者に使用して治療していた。

2人に声を掛け馬車を出発させると馬車は夜の闇に紛れて姿を消していく。



===============================



盗賊達のアジトに捕まっていた者達を奪還し馬車を走らせていたアレク達は、行きとは違い人数が増えたために速度を落として街道を、ゆっくりと進んでいた。

長かった夜も次第に明けていき太陽の暖かな光が御者席を照れしていく。


「やっと落ち着いてきたみたいだな……アマリアとミカエラが良く頑張ってくれた。カインも今日は、お疲れ様」


「ああ……出発した直後は皆、恐怖で震えていたが、今は安心したからか眠っているな。……1番大変だったのはアレクだろ、まさか18人も相手にしてるとは思わなかったぞ?どんな魔法を使ったんだ?」


アレクとカインが、屋形の様子を確認しながら長かった夜を振り返り疲れたように話を続ける。


「今回は、事前に敵がどこから攻めてくるか分かってたから地理も詳しく調べる時間もあったし、皆に手伝ってもらったから罠も仕掛けることもできた……俺1人の力じゃなく皆のお陰だよ」


「そりゃ、森に罠を仕掛けるのは手伝ったけど……アレク以外に今回の件を解決できたかと言われれば答えは否だろ?俺達もアレクの情報や指示があったから無事だったわけだし。それに睡眠の薬入りのスープが来た時は、正直焦ったぜ?アレクは、何も言わずにスープを出して飲み始めるんだからな!」


「まぁ、今回は俺も新しく考えたスキルの使い方をしなかったら危なかったと思うぞ?

ああ、それに関しては仕方ないだろ……あの場で説明するわけにもいかなかったんだし。

ちゃんと、スープを注ぐ時にアイテムボックスから別の作り置きのスープを出したから心配ないのに……」


2人で軽く笑いながら話していると、急にカインが真剣な表情になりアレクの顔をジッと見つめてくる。

アレクも、カインからの視線を感じて何かあるのかと聞く態勢をとりカインの言葉を待つ。


「なぁ、アレク……俺は、もっと強くなりたい。今のままだと俺はアレクの足手まといになっちまう……最近のアレクの成長速度は異常だ!これは俺の勘だけど……アレクの強さはスキルとか、そういうものじゃない気がするんだ。だからもし、俺にも可能なら強くなる秘訣とか修行法とかを教えてほしい。俺は……お前から背中を預けられる仲間になりたいんだ……」


「カイン……」


アレクはカインと共に修行をしてる時、スキルなどの習得法などは話してもステータスの底上げや超回復については話していなかった。

この世界の常識を超える知識は、アレクについて不審に思われる原因になるかもと考えたからだ。

しかし、アレクはカインの話を聞いて仲間達に自分の前世について話す時期がきたのかもしれないと思った。


「分かったよ……俺が皆に話してないことをアルテスに帰ったら話そう。カインに対しての答えでもあるから、それまで少し待ってもらえるか?」


「……ああ、分かった。ありがとうなアレク」


2人の話が終わる頃には朝日が昇りきり村が、はっきりと見え始めていた。



===============================



朝日を浴びながら、囚われていた村の娘達は、アレクの馬車を降りると家族の胸に飛び込んでいく。

皆、泣きながら家族の無事を喜び合い抱きしめ合って感情を爆発させていた。

その一方で、喜びだけではなく悲しみの表情を浮かべる者もいた。

盗賊達に家族を殺され引き離された者である。

色々な感情が湧きながらも皆、共通していたのは、人質を助け出してくれたアレク達に対する感謝であった。


順番に、お礼を伝えてくる村人達の対応をしながらアレクは、ミゲルと抱き合う1人の少女に目を留める。

少女も、アレクの視線に気付きミゲルの手を引きながら、こちらへと歩いてくる。


「冒険者のお兄さん、村のみんなと私達を助けて頂きありがとうございました!本当に……本当に……ありがとうございました!」


そういうと、深く頭を下げアレク達に心からの感謝を伝えてくる。

茶色の髪をした大人しそうな少女で、頭を下げたことで乱れた長い髪を耳にかける動作が印象的だった。

その少女の横には、覚悟を決めた顔をしているケレスが立っていた……そして、その場に集まった村の住人に声を掛け、今回の事件と前回の冒険者達の引き渡しに自分が関与していたこと全て話し始める。


アレク達の馬車に乗って休んでいた女冒険者達も、その話の当事者としてアレク達の傍にくると真剣にミゲルの話を聞いていた。

血を吐くように自らの行いを告白すらミゲルは、何度も言葉に詰まりがらアレク達に問い詰められたところまで話し終わるとアレク達に向き直り頭を下げながら最後の言葉を絞り出す。


「冒険者の方々には、本当にご迷惑をおかけし……申し訳ございませんでした。せめてもの誠意として私の全てをお渡し致します」


その言葉の意味することは命を差し出すということ……そこまで考えた村人達は心配そうな表情を浮かべるが、決して庇うようなことは言い出さなかった。

何故ならアレク達が、いなければ娘達は帰ってくることなどなかったからだ。

村人全ての視線がアレク達に集中する……するとアレクは、あっけらかんと答える。


「いえ、別にミゲルさんの命を頂いても困るので結構です。俺達は、実際には薬入りの食事も食べてないしパーティーメンバーの誰かがケガをしたわけでもないですから。

それより、その言葉は俺達ではなく彼女達に言うべきではないですか?」


アレクの発言により、村人達の視線は今回の被害者である女冒険者達に集まっていく。

ここで自分達に話が回ってくると思っていなかったらしく女冒険者達は、戸惑っていたが……リーダーと思われる女性が一歩前に出てくると話し始める。


「私達は、今回の事件で自分達の力不足を思い知った……同じ冒険者であるアレクさん達が見事、事件を解決してみせたのに私達は捕まって人質を前に抵抗することすらできなかったのだから。それに村の人達の異変を私達は、感じ取ることができなかった……それが本当に悔しい。だから人質を取られて抵抗できずに奴らに従うしかなかった村長さんを一方的に責めることはできない」


女冒険者のリーダーの言葉を受けてミゲルも村人達も、どう反応すればいいか顔を見合わせて困っていると空気を読まずにカインが大声で話し始める。


「えーと、つまりは誰も責められないってことで、誰も死ななくていいってことだろ?あとは村長さんが自分を許せないっていうなら自分自身で考えて罪を償っていけばいい。もちろん、死ぬ以外の方法で」


カインの言葉は乱暴だったが、この場にいる皆が望む結末であった。

村人達も女冒険者達も納得した表情で頷き今回の事件は幕を閉じた。

その後、アレク達が盗賊達のアジトから回収した食料を村に返還し休息が必要だった人質になっていた者と女冒険者達のために村で食事が振る舞われた。


さすがに薬を盛られることはなかったが、女冒険者達が少しだけ微妙な顔をしていたのをアレクは苦笑いしながら眺める。

アレク達も一緒に食事を貰い、深夜から今までの空腹を満たし休息を得るのであった。



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