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異世界やりこみドMプレイ〜持たざる者から始めます〜  作者: 塚木 仁
1章 【少年期 修行と検証の日々】
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初めての旅と師匠の猫かぶり

穏やかな日差しが降り注ぐ午前に森の中を

歩く2つの影が、そこにはあった。

1人は女性で身長は160cm程で紺のローブを纏い紫色の髪を揺らしながら歩いている。

その隣には、銀色の髪の爽やかな少年が

弓と矢筒を背負い周りをキョロキョロと

見渡しながら歩いている。

少年の格好は、若草色の軽装でいかにも

狩人という言葉が似合いそうな装いであった。


「あまり、キョロキョロするものではないぞ?まだ見渡しが良い街道で魔物も出ない。

注意し過ぎても疲れるだけだ」


気怠けだるそうに話す師匠に違和感を

覚え質問してみる。


「師匠、気怠けだるそうですが……

体調でも悪いんですか?」


アレクが顔色を伺うように問いかける。


「あぁ?体調など悪くないぞ?これが、

いつも通りの私だからな?」


ダルそうに歩く様子は砂漠を彷徨う旅人の

ように揺れていた。

ふっと、思い付いたことを口にしてみる。


「もしかして、師匠……村にいる時は

出来る女魔法士を演じてて。やっとそれから開放されたからダラけてるんですか?」


「ふっ、よく分かったな。まだ付き合いが

短いとはいえ、さすがは弟子ということか」


ドヤ顔で、そんなことを言うので

軽くイラッとしたのは内緒である。


「師匠って、本当は年齢いくつなんですか?

話してると若さを感じないというか……

村のお婆ちゃんと話してる気分になるんですけど……」


毒を吐くように質問する。


「ぼーや、は意外と毒舌だな。私以外の

女性なら叩かれるから気を付けることだ。

ちなみに歳はヒ・ミ・ツ・だぞ?」


「師匠以外には、言いませんよ。けど

気を付けておきますね。歳については

僕が思うより高めに考えておきます」


冗談を交えながら会話は続く。


「あと、ぼーや呼びが これからは固定

なんですか?」


気になったので一応、聞いておく。


「ぼーや呼びで不満か?まだまだぼーや

なんだし問題ないだろう?呼ばれたくなければ早く1人前の男になることだな」


どうやら、決定事項らしく嫌だったら

頑張れと言われれば反論もできない。


「いえ、別にぼーやで構いません。早く

名前で呼んでもらえるように頑張ります」


「素直でよろしい。では、早速修行を

始めようか。ぼーやは【気配探知】を

使えたな?それを使って私を探知し続けろ」


いきなり、修行が始まり急いで準備に入る。


「歩きながら【気配探知】は、やったことないですが……とりあえずやってみます!」


「【気配探知】」


半径10m程に感覚が広がっていくのを感じながら師匠の言葉に耳を傾ける。


「そのまま、私の方に注意を傾けろ。今から

私が魔力を強くしたり弱くしたりするから

その変化を感じ取ってみせろ」


「はい、やってみます」


歩きながらの気配探知は、意外と難しかった。

いつもは止まった状態でしか使ってこなかったからだ。

それでも効果が切れてはスキルを発動し

何度も繰り返すうちに歩きながらの発動は

慣れた。

しかし魔力を感じることは中々できず

次第に夜になり修行は一旦、終了となる。


「よし、今日はこの辺りで休むとしよう!

ぼーやも疲れただろうから続きは明日だ」


そういうと師匠は街道から少し外れた林に

入って行く。


「あ、ありがとうございます。では野営の準備を始めましょうか……って師匠どこ行くんですか?!

そっちは何もないでしょう!」


どんどん進む師匠を追いかけていく。

やがて人目につかない辺りまで進むと

師匠がアイテムボックスから、おもむろに

小屋を取り出した。


「よっこいしょ!“ドシン!!”ふーん

こんなトコかな?」

平然としている師匠をよそにアレクは唖然としていた。


「はあぁぁ!!アイテムボックスって家とか

入るんですか!?」


常識外れの光景に大声を出してしまう。


「ぼーやも、アイテムボックスを持ってるんだから大きさがあれば大抵のものが入るぞ?

ダメなのは生きてるものくらいだったかか?

あと死んでてもアンデット系の魔物とかは

入らないから注意するようにな」


当然ように話す師匠を改めて研究者なんだなぁ、この人……と思いながら家に入る。


「っていう師匠、アンデット系の魔物とか

アイテムボックスに入れようとしたんですか?何してるですか……」


ちょっと引きながら家の中でくつろぎ始めた

師匠の顔を見る。


「アイテムボックスを、持ってたら誰でも

試すだろう?ちなみに凍結状態になった魔物や石化した魔物とかは入ったから試してないけど恐らく人も入れるかもしれないな」


さらっと怖いことを、言う師匠に勝手に

マッドサイエンティストの称号を与えておく。


「小屋の中は、結構広いんですね!けど……

色々と散乱してますね……」


小屋のは12畳ほどの大きさで研究用の机、

ソファに暖炉ベッドにトイレまで完備されていた。


(流石にトイレは、水洗トイレじゃないな……こういうところで日本が恋しくなるんだよなぁ)


「人里離れた場所から、この小屋ごと

持ってきたから仕方ないだろう?小屋で

休めるだけありがたいと思え」


そういうと部屋の一角にある奥のドアを

開けながら師匠がさらに衝撃の発言をする。


「私は湯で汗を流してくるからぼーやは

その辺で休んでいてくれ」


一瞬、耳を疑った。


(湯で汗を流す?って言ったのか師匠は!?)


ドアを閉めようした師匠に、慌てて問い詰める。


「ちょ!お湯ってなんですか!?説明して

下さいよ!師匠ってば!」


この世界にきてからは水浴びしをしたり

体を拭いたりはしていたが湯で汗を流す

という単語は聞いたことはなかった。


「はっ?なんだ一緒に汗を流したかったのか?

ぼーやも年頃というわけだな?ふふっ」


いちいち勘違いが腹立たしいが今は

真実を確かめるのが先決である。


「湯を沸かし使えると聞こえましたけど

そんなことが、この場で可能なんですか?」


「ふん、からかいがいがないぼーやだな、

湯を沸かし使う方法が知りたいのか?

こうやるだけだから簡単だぞ?」


そういうと師匠は魔法を使う。


水源創造クリエイトウォーター火炎弾ファイヤボールと」


バケツのようなタンクに水を入れ、拳くらいの大きさの火の玉を水に入れる。

するとお湯が沸騰した。さらに水に入れて温度を調整する。

できたお湯が入ったタンクを紐を引っ張って

上に上げる。

タンクの下の方には皮のホースのようなものが繋がっており最後にシャワーのように穴を開けた袋からお湯が降り注ぐ。


(これって簡易シャワーじゃね?っていうか

この世界にも俺が知らないだけでシャワーや

湯船が存在しているのでは?などと考えてたが……)


「旅の途中で、こんなことが出来るのは

師匠くらいでしょ?アイテムボックス持ちで

魔法士じゃないと無理ですよね?普通」


「そういうことを、気にしても仕方ないだろう?分かったら、さっさと出て行ってくれないか……それとも、いっし『結構です!』」


早々に、シャワー室を飛び出すと散らかった

部屋の片付けを始めるのであった。

その後、お互い体を綺麗し師匠が

アイテムボックスから取り出した食料を2人

食べた。食後には今日の修行と、これからの

修行について説明を受けることになった。


「ぼーやは、職業ジョブの所為でスキルの習得に時間が掛かるが覚えたスキルの熟練度を上げるのは得意なようだな?」


師匠が今日の修行を分析してくれていた。


「スキルの熟練度ですか?今日で歩きながら気配探知はできるようになりましたけど

習得したものを応用するのは皆、できるのでは?」


それは当然のように思えたが師匠は頭を横に振る。


「いいや、私のスキル研究で分かったのだが

スキルの熟練度は個人差があるが共通しているのは数をこなさなければならないということなのだ」


師匠は手を顔の前で組むと話を続ける


「例を挙げると

スキルの熟練度の上限が10,000pとしよう。

普通の人はスキルを使用すると1p上がる程度

だが、ぼーやは3pほど上がっているのだと

考えられる。」


アレクは疑問を、そのまま問う。


「その根拠は?」


師匠は、人差し指を立てると説明を始める。


「過去に、あの修行を行った多くの者が

歩きながらスキルを使いこなすまでに

3日程の時間を要しているからだよ」


師匠らしい考え方に感心してしまう。


「なるほど……納得しました。それにより

僕は熟練度が上がりやすいと」


「ぼーやには、これから既に習得している

スキルを多く使い。熟練度を上げながら

新たなスキルを習得してもらう。これが

修行の方針になる」


そこまで話を聞いてアレクは不安を覚える。


「新たなスキルの習得ですか……職業ジョブの件もありますし、難航しそうですね」


すると、師匠は。


「結論を急ぐな ぼーや、私はまだ可能性が

あると考えているぞ?」


と何かに挑むような態度でアレクを見つめる。


「その方法について話す前に……

先日、ぼーやのステータスを鑑定した時に

気になる点があったので確認させてほしいの

だが?」


急にステータスの話になり面を食らう

「ステータスですか?なんでしょう?」


「ぼーやのステータスの上がり方が

不自然に高かった。ぼーやは何をした?」


研究者として問い詰めてくる師匠に気圧され

正直にトレーニングについて白状する。


(超回復とか運動神経や反射神経については

似たニュアンスで誤魔化しておこう)


「以上が僕が行なっていたことになります」


研究成果を発表するように話を終えると

師匠が補足として成人男性のステータスを

教えてくれた。


ステータス


〔名前〕なし

〔年齢〕15

〔職業〕なし

〔レベル〕1

〔体力〕(HP)100

〔魔力〕(MP)30

〔攻撃力〕25

〔防御力〕25

〔敏捷性〕25


ステータス


〔名前〕アレクサンダー

〔年齢〕12

〔職業〕持たざる者

〔レベル〕1

〔体力〕(HP)220

〔魔力〕(MP)25

〔攻撃力〕85

〔防御力〕25

〔敏捷性〕70


「まだ12歳ということを考慮しても

ぼーやのステータスは一部すでに

成人以上だと言えるだろな」


比較対象がなかったとはいえステータスが

成人以上と分かったことでテンションが

上がるが、スキルとの関係性が分からない。


「僕のトレーニングが無駄では、なかったことが分かって嬉しいのですが……この件は

スキルと関係あるのですか?」


「ぼーや、大切なことは〔ステータスが

明確なイメージで効率良く上昇した〕

という点なのだよ」


まだ、話が見えてこず師匠の勿体ぶった

言い回しにじれったさを感じる。


「つまり?」


師匠は、自信たっぷりの顔で語る。


「スキル習得にも、同じ方法を使えば

効率良く新しいスキルを習得することが

出来るかもしれない」


「そんなことが可能なのですか?ステータスとスキルでは条件が一緒とは限りませんよ?」


淡い希望を疑うように反論する。


師匠は、心外だ!という表情になる。


「もちろん、根拠なく話をしたのでは

ないぞ?最初に言ったが私はスキル研究を

過去に行なっていたのだ。その経験から

今回の件は可能だと考えたのだ」


簡単に説明を纏めると

師匠自身がスキルの習得に取り組んでいた頃

早く習得できるスキルと習得に時間が

掛かったスキルがあったことから習得時間の

研究もしたことがあったそうだ。


最初は熟練度のように上限があり使用回数と

個人差があると仮定していたが……

同じ条件で複数の人に協力してもらい

実験をしたが、どうしても良い結果が得られなかった為に研究は中断することになった。


しかし、アレクのステータスを見た時に

予感めいたものを感じ。

そして、今日イメージの話を聞いて

それは確信と変わっていた。


「私の事例と照らし合わせても合致するし、

実験に協力してくれた者達の習得の速さの

優劣も説明がつく!これだけでも試す価値があるとは思わないか!?ぼーや!?」


興奮した師匠が俺の肩を両手で『ガシッ』と

掴んで迫ってくる。


(女性に迫られているはずに全然、嬉しくない!むしろ獲物を狙う獣の目をした師匠が、めっちゃ怖い!!)


「わ、分かりました!分かりましたから!

お願いします!許して下さいぃぃ!!」


なんとか師匠に落ち着いもらい

話の流れを元に戻す。


「イメージを明確してスキル習得を早める件

やるのはいいですが……スキルの明確なイメージなんて僕は分かりませんよ?」


この件に、おける1番の問題は

スキルを含め色々な知識がアレクには

欠如しているということだった。


(元いた世界の知識のことなら、多少は

分かっても活用できなければ意味ないよな)


「そんなことか!なんの為に私がいると

思っているのだ?」


そういうと豊満な胸をエッヘンと張り出してくる師匠。


(でかいっ!じゃなかっくて。すごい、

すでにそこまで考えていたのか師匠!)


「私には豊富な知識と経験がある……

そして、ぼーやには無知ゆえの発見や

発想力がある。スキル習得に必要になる

イメージは私が手伝い、そこからぼーやが

自身の力へと昇華させていけば良い!」


(この人……やはり……天才か!)


改めて師匠のすごさを実感していたが

最終的に思ったのは、師匠は本当は

いくつなのか?という疑問だった。


(経験豊富とか、25歳くらいじゃ絶対

言わないよな?もしかしたら……)


そんなことを考えていると師匠からの

呼び掛けで意識を会話に戻す。


「おい!ぼーや聞いているのか?」


「すみません、考え込んでて

聞いてませんでした!」


「まったく、ぼーやは……明日から

具体的なイメージを使った修行を行うから

今日は、ゆっくり休め」


そう言うと師匠は、ベッドに向かっていた。

残されたアレクはソファで横になる。


「ソファ……寝づらいな……」


1人の男の呟きを聞くものはおらず

静かに夜は更けていく。






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