パーティー結成と廃品回収
アルテスから旅立ってから17日が経過し
アレク達は、ようやく王都ドォールムへと
帰ってくることができた。
馬車での長旅は、盗賊達との戦闘以降
数回だけ魔物と遭遇しただけで全員が無事に
過ごせアレクの修行に付き合ったことで
少しだけ帰還が遅れたくらいで済んだ。
戦闘が少なく休憩が多かったことで
パーティーメンバーの疲労も少なく
ドォールムに到着しても全員が余裕があり
馬車で依頼の商品を商人に届けた後
いつも通りに休憩を挟んで酒場で
打ち上げをするほどだった。
ドォールムに帰って来てからアレクは、
冒険者ギルドでルシアからアルテスの話を
聞いたセシリアから無茶をしたことを
いつも通りに怒られ小さな命助けたことを
とても褒められた。
長時間のお説教が終わってバルド教官にも
挨拶をしようとセシリアに居場所を聞くと
地下の訓練所で新入りの訓練を
していると聞いたので、地下へと向かう。
いつも通りに地下へと向かうとバルド教官と
もう1人の見知った顔の女の子を見つける。
青い髪に青い瞳で冒険者ギルドに似合わない
修道服を戦闘用にした装備に身を包んでいる
少女の姿に驚きながらもアレクは2人に声を掛けた。
「バルド教官!とアマリア?なんで訓練所に
いるんですか?冒険者ギルドと教会の交流の
一環ですか?」
「おお!アレクじゃないか!アルテスから
無事に帰ってきてたんだな。
こちらは、冒険者見習いに訓練をしている
ところだが……アマリアとアレクは
知り合いだったのか?」
「ええ、教会の時にアマリアにはお世話に
なりました。ってアマリアが冒険者見習い!?本当ですか!それ!!」
アレクとバルドの視線が、アマリアの方に
集中すると恥ずかしそうに手に持ったメイス
を両手で握りしめながら俯いて話し出す。
「えっと……、アレクの冒険の話とか聞いたり
冒険者ギルドと教会とのことがあってから
私も外の世界をもっと知りたくなって
教会の許可をもらって冒険者見習いに
なることにしたの……」
「そうだったのか……アマリアがそんなこと
を考えたなんて全然知らなかったよ。
いつから冒険者ギルドで訓練を始めたの?」
「私が、訓練を始めたのは一カ月前から
ぐらいだから戦闘もまだまだ素人だし……
アレクに見られるのも恥ずかしいから
秘密にしてたんだから!」
いつもは活発で男勝りな勢いがあるのに
今日は何故かモジモジしながら話すアマリアの様子がおかしくてアレクは笑ってしまう。
そんなアレクの様子に怒ったアマリアが
いつも通りに騒ぎ出すと調子が戻ったようで
砕けた態度でアレクに話を振ってくる。
「あ〜もう!そんなに笑わなくても
いいでしょ!あとアレクと将来パーティーを
組むつもりだから今から、よろしくね!」
「ゴメン!ゴメン!将来のパーティーか……
うん、分かった!一緒に冒険者することに
異存はないよ。僕も冒険者としてまだまだ
だから一緒に頑張ろう!」
なんだかんだで、パーティーの件を了承し
アマリアと握手していると地下訓練所の
出入口の方から1人の声が乱入してくる。
「ちょっと待ったー!!そのパーティーの話
に俺も混ぜてもらおうか!アレクの親友の
俺を差し置いて話を進めるなんて酷いだろ」
燃えるような赤髪を揺らしながら現れる
美少年は、固い握手を交わしていた
アレクとアマリアの間に割って入ってくる。
パーティーメンバーの約束を自分よりも
早くしたことに対する嫉妬心なのか……
アマリアをライバル視する感情が背後に
透けて見えるようであった。
アマリアも突然現れた赤髪の美少年に
何故か対抗心を持ち、メイスを構えようと
していた。
「なんですか貴方は?アレクのパーティーメンバー1号は私ですよ?邪魔するなら
潰しますが……よろしいですか?」
「いいや、アレクのパーティーメンバー1号は親友でもあり相棒でもある俺だね!
俺の槍の錆してやろうか?」
そんな様子を温かい目で見守るバルド教官は
冷静にアレク達のパーティーメンバーの
戦闘スタイルやバランスについて想像して
いるようである。
「ほう!中々にバランスが取れたパーティー
じゃないか……近接戦闘特化のカインに
メイスで回復魔法を使えるアマリア、
近接戦闘も中・長距離も対応できるアレクか
後は魔法士でもいれば文句なしだな……
冒険者見習いで魔法士のやつはいたかな?」
「いやいや、バルド教官その前に
あの2人の言い争いを止めましょうよ……
なんでいきなり喧嘩腰なんですかアマリアと
カインのやつは」
「モテる男は、つらいなアレク……
きっと2人はアレクのことが大好きなんだろうさ。
色々と大変だろうがリーダーとして
頑張るんだぞ?」
「まあ、パーティーメンバーに好かれるのは
嬉しいですけど……モテるとは意味が
違うでしょ?ってかリーダーは僕で決定
なんですか?2人に確認も取ってないのに」
「好かれるも、モテるも大して変わらんだろ!
あの2人の様子から聞かなくてもリーダーは
アレクになると思うがな……その辺のことは
追々決めればいいさ。
そらそろそろ2人を止めてこいリーダー!」
距離を取って2人の争いを静観していたが
バルドに背を押され仲裁に入ることに
なってしまった。
嫌々だったが……いい加減にしないと
周りで訓練している人達にも迷惑になるので
仕方なく2人に声を掛ける。
「はあ〜2人とも、そろそろ……」
「じゃあ、アレクについて問題を出し合って
答えられなかった方が負けだからな!
では、問題です。アレクが使っている盾は
誰から貰ったものでしょうか?」
「そんなの簡単よ!答えは師匠のルシアさん!
そんなの基本中の基本でしょ?
じゃあ、私からの問題ね……そうね
アレクのご両親の名前は?」
「はい!楽勝!ディオンさんとカーラさん!
どう?合ってるだろ」
「………………」
(なにやってるの……この2人は……
ちょっと気持ち悪いんですけど……)
2人の質問合戦を本気でドン引きしつつ
このまま続けられても恥ずかしいだけなので
アレクが強制的に争いを中止させ
年上なんだからアマリアが譲ってあげなよ。
というアレクの意見でカインに1号の称号が
与えられた。
いじけたアマリアには、また一緒に孤児院に
行く約束をして埋め合わせすることになった。
こうして、バタバタしながらも将来の
パーティーメンバーが決定したのである。
15歳の成人を目標として冒険者ランク昇格の
ポイント稼ぎや冒険者として経験を積むこと
戦闘技術の向上を当面の課題として
アレク達は動き出すことになった。
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将来パーティーを組むことが決まってから
アレクは徐々に冒険の準備を開始していた。
まずは所持金を錬金で薬を作り増やすこと。
次にアイテムボックスの機能《素材分解》を
使って利用できそうな素材を集めること
を目標として早速独自に交渉しにある人物の
ところに向かっていた。
「どうもー、グラウェさんいますか?
お久しぶりです!アレクです!」
「おう、アレクじゃないか!久しぶりだな!
アルテスに行ってたんだろ?無事に帰って
これて何よりだ。
っというか、その装備どうしたんだ!?
ずいぶんといい防具じゃないか……」
「この装備ですか?まあ、色々とアルテスで
ありまして……ちょっと話が長くなりますが
説明しますね」
アルテスでフェルムの金槌にお世話になり
フェルム本人とも仲良くなったことや
廃品の回収の話や例の事件について
できるだけ丁寧に話していく。
報酬の話くらいでグラウェが涙ぐんでいた時
は少し焦ったが、代わりに装備を用意して
もらったと聞いた時は嬉しそうだった。
話を聞き終わったグラウェは、何かを
考えていたようだったが正直に話して
くれた。
「フェルムさん本人が、言わなかったことを
言うのも何だが……フェルムさんはアルテス
でも有数の鍛冶職人だぞ?だからこそ
その声に街の皆が応えて装備を用意して
くれたんだと思う。
それをアレクには知っておいてほしかった
から正直に話したんだ……それを心の中に
でも留めておいてくれ」
「そうだったんですね……今度会ったら
またスキルでも見せれば喜んでくれますかね?」
「あはははっ!それは喜ぶんじゃないか?
新しい技術や知識に職人は飢えてるからな!
そういったものがあれが教えてやると
いいんじゃないか?それはそうと今日は
挨拶と旅の話をしに来たのか?」
「あっ!本題を忘れるところでした!
実は、先程の話に出たように廃品を回収する
仕事を始めようと思ってまして……
最初は、グラウェさんに話をしてみようと
考えて今日は武具店にお邪魔しました。
一定量以上の廃品があれば一律銀貨2枚で
買い取ろうと思ってるんですが……
どうですか?」
「廃品回収か……こちらとしてありがたいが
アレク、今買い取ると言ったのか?
銀貨2枚で引き取るの間違いではなくてか?」
「はい!間違いありません!僕が回収して
グラウェさんに銀貨2枚を支払います。
グラウェさんは、廃品がなくなるお金が
貰えるし問題はないかと思いますが?」
「えっ?まあ、こちらとしては問題ないが
お前さんは何も得るものがないじゃないか?
再利用するにしても費用が掛かるだろうに
それで大丈夫なのか?」
「ええ、他の人には内緒ですが……
スキルで素材を分解できるので問題ありません。
しかも、色々なところに顔を出すので
人脈もできてウハウハですよ僕は!」
「そんな便利なスキルを持ってたのか
アレクは……なら遠慮なく廃品を渡して
お金を支払ってもらおうとするか。
その代わりアレクの希望通り他の武具店や
知り合いを紹介してやろう!」
「ありがとうございますグラウェさん!
あと一応、回収する時は小分けはなしで
一括回収のみに限定しようと思います。
面倒事は、できるだけ避けたいですからね」
「そうだな、小狡いことを考える者も
出てくるかもしれんからその方がいいだろう。
そうだ!ドロシー婆さんのとこには
もう行ったのか?あの人は顔も広いから
面倒事を避ける意味でも人脈的な意味でも
話はした方がいいぞ?」
「なるほど……そういう考えもありますね!
ドロシーさんに会って話してみます。
逆にお金を取るべきだとか言われそう
ですけどね」
アレクとグラウェは苦笑いしながら
薬屋名物のドロシーの顔を思い出し
回収させてくれそうな人を紹介してもらった。
その後は、グラウェの言う通りに
ドロシーの薬屋に向かい廃品回収の話をして協力をお願いし、他にも溜め込んでいた薬
の買い取りをしてもらう。
こうして、アレクの地味な廃品回収と
修行の日々がスタートする。
最初は武具店や鍛冶屋を中心にして
仕事を行い、そこから次の人を紹介して
もらうことを繰り返していた。
廃品を回収すると言ってもアルテスのように
工業が盛んな街でなければ効率的には
集まらない。
なので、作戦を変えて廃品回収の幅を
広げてみることにした。
次に回収しだしたものは、家だった。
王都の中心街にあるような立派な家や屋敷
ではなく外縁部に存在するボロい家などは
無人なことが多く所有者も何かしらの事情で
亡くなっていることが殆どだった。
そういった物件を、管理しているのは国で
撤去や販売なども国の管轄になっていたが
優先順位が低いために長期間放置されて
いるのが現状である。
人脈を徐々に広げていたアレクは、
国から撤去・販売を依頼されている不動産屋に
辿り着き仕事の肩代わりをすることで
報酬の一部をもらう契約を交わした。
師匠の小屋をアイテムボックス入れる
ところを見てるアレクは基礎が地面に
固定されていなければ回収できることを
知っていたので遠慮なく家を回収していった。
基礎が固定されている家に関しても
【土魔法】を使用することで問題を解決し
回収して《素材分解》で新たな素材に
順次変えていった。
素材は、木材・石材・レンガ・鉄・銅・銀
など多岐にわたり生物でなければ回収・分解
は行えるために恐ろしい速度で素材が
増えていく。
そして1番の誤算は、タダで自分の家を
手に入れることができたことだった。
ある日、依頼を受けた家は木造ながら
真新しく清潔そうな二階建ての家で
何故回収を依頼されたか分からなかった。
そこで事情を不動産屋に聞いてみると
生前この家に住んでいた者は、毒を持つ
生物を集めるのが趣味で家で色々な生物を
飼っていたらしい。
しかし、ある時に不注意から生物を逃して
しまい探しているうちに毒がある生物に
刺されて死亡してしまったそうだ。
そして、周りが彼の死亡に気付いた時には
毒生物達が逃げ出し溢れる家に
なってしまっていた、ということだった。
この話を聞いた時は、先に事情を話さない
不動産屋を本気で殴ろうと思ったが……
アイテムボックスの効果を理解している
アレクは何とか思い留まることができた。
アイテムボックスには、生物を収納する
ことはできない。
では、生物がいる家を収納しようとすると
どうなるのか?答えは生物だけが弾かれ
回収地点に残される、である。
何度も家を回収しているうちに気付いた
仕様だったが……アレクも生物や虫などは
回収するのは勘弁だったので助かる仕様だと
考えていた。
今回の家のカギを預かると、その日のうちに
回収に向かってアイテムボックスに入れる
準備を開始する。
ただ今回は、弾かれた毒生物達を処分する
ためにリタから教わった基本魔法の
火炎弾を事前に準備しておく。
覚悟を決めて家をアイテムボックスで
回収するとおびただしい数のヘビ・クモ・
よく分からない虫などが家のあった場所に
“ドサッドサッ!”と音を立てて落ちてくる。
(うおあぁぁぁ気持ち悪いぃぃぃ
しかも全部、毒持ちなのかよぉぉぉ)
声にならない声を心の中で叫びながら
【火炎弾】を放ち焼却処分する。
こうして、精神的なダメージを受けたものの
自分の家をタダで手に入れることが
できたのである。
ただし、事故物件であることをこの時点では
アレクは完全に忘れていたのだが……
それに気付くのは暫く経ってからだった。




