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アレクの事件簿

フェルムと弟子達に弓矢だけでなく

剣術のスキルも披露し満足してもらった

ようだったのでアレク達は工房に戻って

きていた。


「フェルムさん、お願いの件なんですが……

工房にある色々な武器や防具をできるだけ

多く拝見させて頂きたいです!売り物に

しているものから弟子の方達が作ったもの

まで種類が多ければ多いだけ嬉しいのですが

可能でしょうか?」


アレクが、考えていたことは武具を

アイテムボックスに入れまくり機能開放を

試すことだった。

今までは、武具を勝手にアイテムボックスに

入れることは倫理的にダメだろうという考え

から実行していなかったが……フェルムとのやり取りで今回の報酬として思い付いたので

やってみることにしたのだ。


「アレクよ、そんなことでいいのか?

お前さんのスキルを見せてもらった対価と

しては安過ぎると思うのだが……それなら

アレクに試してほしい武器があるから

それを一緒に渡すというのはどうかの?」


ちょっと待っていろ、というと工房の奥に

フェルムは歩いて行き1つの片手直剣

を手に戻ってくる。

黒の鞘に納められた片手直剣を

手渡されアレクは鞘から剣を抜き出す。


その剣は、剣身はつばから切っ先に

かけて青白い色からミスリルの翡翠色になり美しいグラデーションをしている。

明らかに冒険者見習いに渡していいもの

ではないことは一目瞭然だった為にアレクは

フェルムに聞き直してしまう。


「ほ、本当に僕が貰っていいものなんですか?

かなりの業物ですよね?これ……」


「ああ、ワシが作ったもので基本は鋼鉄で

少量のミスリルと月長石を使っている。

頑丈さと切れ味に特化した片手直剣に

仕上がったんじゃが……その……少々

重くなってしまってな、大衆向けではない

逸品になってしまったという訳じゃ」


フェルムから言われてみれば片手直剣に

してみれば重量感があるように感じる。

しかし、アレクの身体強化本気モードなら

問題なく扱うことができそうだった。

フェルムもアレクのスキルについての説明

を受けて、この片手直剣を譲ろうと思ったと

説明してくれた。


「そういうことなら、遠慮なくフェルム作の

この片手直剣を使わせてもらいますね!

本当にありがとうございます。

ちなみに、この剣には銘は付いているん

ですか?あれば教えて下さい」


「銘は、そうだなラグトゥスソードとでも

名付けようかのう?ワシらの古い言葉で

翡翠の空という意味の銘じゃ」


「ラグトゥスソード……翡翠の空ですか!

この片手直剣に相応しい美しい銘ですね。

大切に使わしてもらいます。

それと武器と防具のを、見せてもらう件も

よろしくお願いします!」


新しく片手直剣を手に入れ、試し斬りしたい

衝動を我慢しながら武具店にある武具を

見せてもらい少しだけ1人にしてもらうと

アイテムボックスに出し入れしての作業を

繰り返していく。

武具店内だけでは変化がなかった為に

工房内に置いてある武具なども見せてもらい

アイテムボックスに出し入れしていく。

工房内を見学しながら武具を出し入れして

いると1つのことが気になりフェルムさん

に質問する。


「フェルムさん、少しお聞きしたいですが

工房の隅に置いてある使ってなさそうな

武器や防具は何なんですか?」


「うん?あ〜あ、あれは失敗作で廃棄する

武具などだな。大抵のものは溶かしたりして

再利用するんだが加工方法や混ぜ物がある

武具は再利用できないものもあるから

失敗作はああして廃棄するのじゃ」


「あれは、もしかして回収しても問題ない

感じですか?もし大丈夫なら全部頂きたい

のですが……どうでしょう?」


「あんなものを使うくらいなら店で

新品を調達した方がいいぞ?冒険者として

今できる最高の装備を揃えるのは命を守る

上で重要なことだからな。装備しないなら

持っていってもらっても構わないが……

一体、何に使うんだ?」


「装備はしませんが、再利用しようとは

考えてます。まだ試したいことがあるので

上手くできたらフェルムさんにも報告

したいと思いますね!」


「お前さんには、色々な秘密があるよう

だな……まあいい深くは詮索はせんが

ワシらの知識や技術の向上に繋がりそうなら

できれば報告してくれれば嬉しいぞ」


鍛冶職人としての向上心と知識欲を

滾らせたフェルムの迫力に気圧されながらも

アレクは報告の件を了承する。

廃棄する武具を隅で回収しながらアレクは

先日、酒場で聞いた不穏な噂について

フェルムに聞いてみることにする。


「フェルムさん、先日酒場で“静寂の影”

なる者の噂を耳にしたのですが……

何か知ってる情報などありませんか?

討伐に乗り出すつもりはありませんが

警戒の為に知っておきたいんです」


“静寂の影”の話が出た瞬間、工房内の空気が

止まったように静かになる。

フェルムも難しそうな表情になり工房では

話しづらいと思ったのか場所を移そうと

アレクに声を掛けフェルムの個室へと

案内された。


「“静寂の影”なる者は半年前ほどから

アルテスに現れ始めたと言われておる。

恐らく10人以上の人族が犠牲になって

いる為に一時は他種族が犯人だと噂が

立ったこともある……」


「なるほど……今さっき工房内が静まり

返ったのは、そのせいでしたか。

ですが、噂が立ったこともあると過去形で

話したのは他種族が犯人ではないと分かったからですよね?」


「ああ、現場から立ち去る“静寂の影”

らしき人影を見かけた者がおってな。

アルテスに住んでいるのは人族とドワーフが

殆どだから人族であるとされておるのじゃ。

その際の犯人の格好が漆黒のフード付きの

ローブをしていたことと犯行現場を誰も

見られていないことから影のような存在、

“静寂の影”と呼ばれるようになっていると

いう訳じゃ」


「被害に遭われた方は、何かの関係者

だったりするのですか?特定の組織に

属していたとか?」


フェルムは、さらに難しく険しい顔になり

重々しい口を開き話を続ける。


「被害に遭ったのは、人族の子供ばかりで

男女関係なく殺されていたらしい……

本当に許せんことじゃ!非力な者を狙い

その命を奪うなど外道の所業じゃよ!

しかも犯人は白昼堂々、犯行を繰り返しておるのじゃ」


その後も、フェルムからアレクは話を

聞いたが王国でも見回りの兵士を増やしたり

冒険者に犯人を捜す依頼を出しているが

未だに犯人の風貌すら掴めていないと

いうことだった。

しかし、被害に遭った者の傷跡から

短剣のような武器を使っていることが

分かっているとフェルムは語る。


「フェルムさん、詳しい情報ありがとう

ございます……僕も他人事ではなさそう

ですね。まだ13歳くらいなら犯人の

目に止まる可能性もありますし誰にも

見られることなく白昼に犯行を繰り返して

いることから、かなり腕も立ちそうですし」


「アレク、出掛けるなとは言わんが……

外を歩く場合はできるだけ大通りを歩き

常に周りに人がいる状況を心掛けるんじゃ。

お前さんが強いことは知っておるだが、

言ってもまだまだお前さんは子供……

決して無理はするんじゃないぞ?」


フェルムの真剣にアレクを心配しての言葉に

アレクは黙って深く頷いた。



===============================



フェルムの金槌かなづちを訪れてから

2週間が過ぎアレクは、その間にパーティー

メンバーと共に簡単な依頼をアルテスの

冒険者ギルドで受けたりスキルの習得の為に

街の郊外で修行したり忙しく過ごしていた。

そして別の日課がアルテスの武具店を回って

廃棄する武具を回収することであった。


フェルムの武具店で廃棄する武具を回収

してからというものフェルムから紹介して

もらった他の武具店でも廃棄の武具を回収し

回収した先でも次の武具店を紹介してもらう

ことで順調に廃棄品の武具を集めることが

できていた。

アレクが思いついた作戦は、廃棄品の武具を

アイテムボックスに入れることで新機能が

開放されるか試すことと《素材分解》を

行いタダで素材を手に入れることだった。


武具店は廃棄する武具を処理する手間が

なくなりアレクは新機能開放と素材入手を

効率良く行うことができるwinwinな作戦で

ある。

しかし、アレクは少しずつ焦り始めていた。

何故なら毎日、武器・盾・防具など各種を

もう軽く数えただけで40種類以上は集めて

《素材分解》したのに新機能開放されて

いなかったからだ。


(う〜ん、結構な数の武具を集めて

《素材分解》したはずなんだけど……

機能開放しないところを見ると予想は外れ

だったのかな?まぁ、素材はどんどん

集まるから無駄ではないし一緒に噂の情報

収集もできるから困らないけど何故か焦る)


「まだ種類が足りてないだけかもしれないし

気長に集めるしかないな。それよりも

今日の武具店の人から聞いた被害に遭った人

への聞き込みは、ここで合ってるかな?」


廃棄品の回収時に例の噂について聞き

関係者に話を聞いて回わるのを繰り返し

今日は被害者の子供がいた薬屋に来ていた。

大通りからほど近い距離にある薬屋で

おばあちゃんと孫が営む所と聞いている。

薬屋のドアを開き中に入ると薬屋独特の

色々な薬品の匂いが鼻に飛び込んでくる。


「いらっしゃいませ……」


奥のカウンターから若い女性の声がする。

カウンターの方に目をやると20代前半に

見える黒髪ロングで黒目の女性が

カウンター内に座っていた。

血色の悪い白い肌色に綺麗に切り揃えられた

前髪が前世で見た日本人形を彷彿とさせる。


遠目から見ても暗い表情の彼女は

服装も暗めの色で話しかけ辛い雰囲気を

放っていたが……こちらが女性を見ている

ことに気付くと精一杯の笑顔を向けてくれる。

いくつか錬金に使える素材を選んで

カウンターに持っていく。


「すみません、これを下さい」


「はい、かしこまりました。お包みします

ので少々お待ち下さい……」


2人の間に、沈黙が流れやがて女性の方から

アレクに向けて話し掛けてくる。


「この辺で、あまり見ない顔の子だけど……

旅の途中でアルテスに来たのかな?

お父さんかお母さんは一緒じゃないの?」


「はい、この街の子じゃありません。

お父さんとお母さんは一緒じゃないですが

お姉ちゃんと一緒にアルテスに来ました」


「そんなんだ……でも、昼間でも子供1人で

出歩かない方がいいよ。今この街は物騒な

事件が多いからできれば、お姉ちゃんと

一緒に買い物においで」


暗い雰囲気とは、裏腹にこちらを心配して

優しい声で注意してくれる彼女に少しだけ

安心し不穏な噂について聞いてみることに

する。


「物騒な事件?もしかして“静寂の影”

とかいう人の噂?食事処で冒険者っぽい人達

が話してるのを聞いたけど怖い人なの?」


「“静寂の影”?今はそんな風に呼ばれて

るんだぁ……噂についても聞いたのね?

じゃあ、ここの話も誰かに聞いたのかしら?」


「うん、僕と歳が変わらない子が被害に

遭ったって商店のおじさんに聞いた。

お前さんも気を付けなさいって心配して

話してくれたんだ……」


「そう、ここはね私の親戚のお店なの。

本当は、おばあちゃんと孫のミゲルって

子が住んでたんだけどミゲルは被害に遭って

いなくなってしまったの。おばあちゃんも

とてもショックを受けてね……このお店を

私に任せて田舎で静養してる」


そこまで、話を聞いて女性に影を感じた

理由が想像できた。親戚だといっても

直接、顔を合わせたことのある相手なら

その人が亡くなればショックもまた大きな

ものになるだろう。

そんな状況になりながら任された家業を

必死に手伝っているのだろうと思えた。


そんなことを考えているうちに錬金素材は

袋に包まれアレクの前に用意される。

その袋を受け取ると丁寧に一礼し

入口へと向かって歩き出す。

すると、アレクと入れ違いに1人の女の子が

店内へと入ってくる。


「いらっしゃい……」


「お姉ちゃん、いつものお薬下さいな!

お金も一緒に渡すね!」


「シャロちゃん、いつも1人で買い物は

危ないって言ってるでしょ?特に今は

物騒なんだから、誰か大人の人と一緒に

来てくれないと私も心配なのよ?」


「でも、お母さんのお薬は

この薬屋じゃないと安く買えないから

仕方ないもん。大人の人なんて付いてくれる

わけないし、お姉ちゃんと一緒なら安心でしょ?」


2人の様子を途中まで見守るとアレクは

薬屋の外に出る。

早く犯人が見つかるといいな……

あのお姉さんが元気よく笑えるような

日が来るように今は情報を集めるしか

ないけど出来ることはやれるだけ

やってみよう。


そんな、アレクの決意を嘲笑うように

数日後またしても白昼に1人の少女が

犠牲になったと噂がアルテスの街に

流れるのであった。





















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