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異世界やりこみドMプレイ〜持たざる者から始めます〜  作者: 塚木 仁
1章 【少年期 修行と検証の日々】
3/154

師匠との出会い

木々が生い茂る森の中に1匹の獲物が姿を

現わす、ウサギのようにも見えるがサイズが

1.5倍程大きく眼が赤く光っている。


その獲物を狙う銀色のやじり

草木の間から鋭い光を放っていた。

一瞬、獲物がやじりの光に気付いたが

“ヒュゥ!”風を切る音を最後に獲物の意識は絶たれのであった。


「やった!父さん、1発で仕留めたよ!」


嬉しそうにガッツポーズをするアレクの姿が

そこにはあった。


「アレク良くやったな!しかし、獲物を

手に入れるまでは油断しては いけないよ?」


ディオンは素早く茂みから出ると慣れた様子でアレクの仕留めた獲物を処理していく。

その様子を見逃さないようにアレクも

後に続き処理を見て技術を学ぶ。


「このローラビットは、他の獣の獲物でも

あるから手早く処理しないと横取りされる、

なんてことになるから気を付けなさい」


真剣な表情なディオンは処理を終え、アレクの方へ振り返る。


「はい!父さん!獲物を持って帰るまでが

狩り。ということだよね」


どこかで聞いたことがある言葉を、改めて

自分に刻みつける。


「それでは、そろそろ休憩にしようか?

この先に少し開けた場所があるから着いたら

昼食にしよう!」


弓を背負い直しながらディオンがアレクに

声を掛ける。


「はい、じゃあ獲物は僕が預かるね」


そういうとアレクはディオンから

受け取った獲物を何もない空間に入れる

ように突き出す。

すると獲物は、揺らぐ空間に吸い込まれる

ように消えっていった。


その様子を見ていたディオンは、改めて

感心したように呟く。


「そのアイテムボックスというのは本当に

便利な代物だなあ」


「中で時間は、止まってるから獲物は

腐らないけどあんまり大きな物は

入らないから万能じゃないけどね……」


苦笑いしながらアレクは頭を掻き

ディオンの呟きに答える。

最近、12歳となったアレクは村から近くの

森に父のディオンと狩りに出掛けていた。


弓術を覚えてからしばらくして

父に狩りを覚えたいと伝えると最初は

まだ早いから、危ないからと連れて行って

もらえなかったが……毎日のように家の裏で

弓の練習をしているアレクを見て母である

カーラが父を説得してくれたのだ。


家族揃っての夕食の時にカーラが落ち着いた

様子でゆっくりと話し出した。


「あなた、アレクが心配なのは分かりますが

いつも我儘わがままを言わないアレクが自分から狩りをしたいと伝えてきたのですよ……毎日欠かさず弓の練習をしていますし連れて行ってあげられませんか?」


「いや、しなしだな……」


それでも不安を拭え切れなかったディオンに

アレクは切り札を使うことにする。


(母さんの援護射撃を無駄にはしない!ここが押しどころだ!)


「父さん、実は僕アイテムボックスが使えるんだ。あまり大きくはないけど狩り荷物持ちくらいならできるよ!」


この世界においてアイテムボックスの存在は

確認されており、稀にだが使える者もいる

ことをアレクは調べていた。

自身の持つ無限に近い収納ほどではないが

六畳の部屋くらいの大きさのものなら

過去に何人も所有者がいたようだ。


「父さんの役に立ちたいんだ……それに

僕だって父さんと母さんに喜んでもらいたい!」


最後はディオンも納得し今では息子と一緒に

狩りをすることになったのである。

アイテムボックスの話をしながら

ディオンが目的地としていた森の中の

開けた場所に向かう。


「今日の昼食は、何だったかな?アレク?」


ディオンが思い出せずに問いかけてくる。


「えっとー、確かパンと干し肉と野菜を

挟んだものだったと思う!」

今朝の母との会話とアイテムボックスに

入れたバスケットの中身を思い出すように

答える。


「そうか、お腹が空いては狩りもできないからな!しっかり食べような、アレク!」


笑顔で頭を撫でてくる父を見上げながら


「もう!子供扱いしないでよー僕は12歳になって大きくなったんだから!」


その時、突然『ガサガサ!』と何かが草木を

揺らす音が背後の方から近づいてくる。

その一瞬で、ディオンは鋭い目つきになり

いつの間にか弓を引き絞る動作に入っていた。


突然のことで状況の変化に驚きつつも

ディオンの影に隠れるようにアレクは

移動し様子を窺う。

緊張した空気がピリピリと辺りを包んでいく。


“……ごっく……”自分の唾を飲む音が

やけに大きく聞こえた、その時!


「す、すみません……何か……食べ物と……

飲み物を……恵んで下さい……」

絞り出すような声でヨロヨロと姿を

現わしたのは紫色の髪をした紺のフード付きのローブを着た女性であった。



「はむはむっ、むしゃむしゃ……ゴクゴク!

むはぁー 生き返る!!」


ローブの女性は木の幹に座りながらアレクが

アイテムボックスから出した食事を

受け取ると一心不乱に食べていた。

パンだけでは、ノドを詰まらせるかも

しれないからと父から水袋を出すように

言われ水も提供する。


森の中から突如現れた女性に助けを求められ

ディオンとアレクは、食料を提供し

その様子を木の幹に座り見守っていた。

しばらくして、空腹が満たされ

落ち着いたのか女性は、ディオンとアレクに

向き直り立ち上がると深く頭を下げた。


「食事を提供して頂き、本当にありがとうございました。助かりました」


先程のことが嘘のように落ち着いた雰囲気で

お礼を言う様子にアレクが驚いていると

ディオンが同じように立ち上がり自己紹介を

始める。


「いえ、お役に立てて良かったです。私は

この近くの村。ミーティスで狩人をしておりますディオンと申します。こちらは息子の

アレクサンダーです」


その声に慌ててアレクも自己紹介する。


「あ、アレクサンダーです」


ぺこり、と頭を下げ挨拶する。

それを見てローブの女性も自己紹介を始める。


「助けて頂いた方に名乗りもせずに失礼しました。私は魔法士をしておりますルシアと

申します」


お互いに挨拶を終えたところでディオンが

状況確認し始めた。


「ルシアさんは、なぜ1人で森の中に?

冒険者ではないのでしょう?この辺りには

魔物は出ませんから」


その問いにルシアは淡々と答える。


「はい、私は人里から少し離れた場所で

魔法の研究に没頭していたのですが……

気が付いたら備蓄していた食料が尽き

食料を調達しようと人里を探していたら

道に迷い。8日ほど森を彷徨っておりました」


あまりの計画性のなさと、どうやって8日も

森を彷徨っていたのかと突っ込みどころ満載であったが本当に疲れている様子から

嘘ではないのだろうと思えた。


ディオンも同じよう感じたらしく警戒を解き

話を続けた。


「それは……、大変でしたね。宜しければ私達の村にご案内しましょうか?」


その言葉に、パッと表情が明るくなり

安心したようにルシアは話し出す。


「助かります。お願い出来ますか?出来る

限りのお礼はさせて頂きますので」


こうして、ディオンとアレクは狩り中止し

ルシアと共に村へ帰るのであった。

その後、陽が落ちる前に家に着いた3人は

カーラに迎えられディオンは村長のところへ

事情説明に向かい。

ルシアは8日も森を彷徨っていたので

汚れが気になったこともありカーラに

連れて行かれてしまった。


アレクは狩りも早く終わって暇になったので

家の裏の人目に付かない 場所でステータスの

確認を行っていた。


【ステータス オープン】


ステータス


〔名前〕アレクサンダー

〔年齢〕12

〔職業〕持たざる者

〔レベル〕1

〔体力〕(HP)220

〔魔力〕(MP)25

〔攻撃力〕85

〔防御力〕25

〔敏捷性〕70

【スキル】

歩行術 投擲 弓術 隠密(new) 気配探知(new) 解体(new)

【称号】

なし


「ステータスも地味に上がってるし

スキルも新しく【隠密】【気配探知】【解体】が習得できたな……」


(ここ4年は、狩り中心の生活だった為

狩りに必要なスキルが育った感じかな?)


そんなことを考えていたら人の気配が近づいてくるのを感じステータス ウインドウを

閉じる。


おもむろにアイテムボックスから

練習用の弓と矢を取り出し普段どおりに

弓術の練習をしているフリをする。

家の影から、そっと顔を見せたのは

ルシアであった。

アレクの姿を見つけると声を掛けながら

近づいてくる。


「アレクサンダー君、だったよね?練習の邪魔をして悪いんだが……私と少し、お話しないか?」


ルシアは柔らかな笑顔を向けてくる。


「はい、大丈夫ですよ。なんですか?ルシアさん」


そこまで話して、ハッとする。


(ルシアさん……すごく綺麗だな……森で会った時はフード付きのローブを着ていて分からなかったけど母さんと同じくらい美人だ)


着替えを持っていたのか、いつのまにか

チャイナドレスに似たラインの分かる服を

きており目を奪われた。

服の色は、黒を基調としているが

下に向かうにつれ朱色のグラデーションが

美しく見えるようになっていた。


紫色の髪は、肩の下まであり。

ウェーブするように、ふわりと気品ある

雰囲気を醸し出しており。

前髪で片目が隠れているが紫色の瞳はまるでサファイヤのように深い色で彼女のミステリアスなイメージを引き立てていた。

少し表情に出てしまったのか不思議そうに

ルシアが、こちらを見ている。


「アレクサンダー君?どうかしたかな?」


慌てて表情を直すが、間違えて

思ったことを口にしてしまう。


「あ、いえ、ルシアさん が母さんと同じくらい美人だったので驚い……あっ……」


子供のお母さんと同じくらい美人という

評価を微笑ましいと感じたのかルシアは

素直にお礼を言う。


「それは嬉しいな、ありがとう」


照れ隠しもありアレクは会話の流れを

無理やり元に戻すように話し出す。


「いえ、あの、お話というのは?」


すると好奇心を我慢しているのか

ウズウズした様子で質問をしてくる。


「君は、昼間アイテムボックスを使っていたね。それについて教えてくれないかな?」


(ああ、それについてか……確かに珍しいからなぁ)


「はい、いいですよ!僕のアイテムボックスは……」


それから夕飯の時間になり、母さんが呼びに

来るまでルシアさんと色々なことを話した。

アイテムボックスをルシアさんも持っていること、今まで比較できる対象がなかった為に

俺のアイテムボックスに興味があること、

ルシアさんが過去に冒険者をやっていたこと、

村ではいなかった魔法士であることもあり

話は尽きなかったし知識の宝庫である

ルシアさんとの話は俺を大いに刺激した。


夕飯時には、ディオンも村長の家から

帰ってきており今後のことについて話して

くれた。


「村長には話を通して、おきましたので

村に滞在して頂いて大丈夫ですよ。ウチの家に使っていない部屋がありますので、そちらを使って下さい」


ルシアは少し驚いたようにも見えたが

まだ話には続きがあると考えたのか

促すように確認をする。


「そんな、寛大な対応をして頂いて宜しいんですか?」


ディオンは、ルシアの考えを察したのか

一呼吸置くと言葉を続ける。


「もちろんです。けれど、もしお手伝い頂けるなら魔法で村の整備を手伝って頂ければ助かります。どうでしょうか?」


村長から

お願いされたことなのだろうが……

本当なら、お客として迎えた方に

お願い事などさせたくない。という感情が

ディオンからは読み取れるようであった。


「構いません。助けて頂いた恩もありますし

ご協力させて頂きます。」


最初から、そのつもりだったのかルシアは

お願いを快く受け入れるのだった。


(ここは子供らしく、喜んでおいた方がいいかな?)


真面目な雰囲気を、なんとかしようとアレクが喋りだす。


「ルシアさん、村にいられるの?やったー

まだ、お話したいこと一杯あるんだぁ」


2割の建前と8割の本気で話を続ける。


「父さん、母さん、ルシアさん色々なことを

知っててすごいんだよ!昔は冒険者だったんだって!すごいよね〜」


アレクを中心に会話の雰囲気も和やかになり

その日の夜は、楽しそうな声が我が家に

響くのであった。














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