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異世界やりこみドMプレイ〜持たざる者から始めます〜  作者: 塚木 仁
1章 【少年期 修行と検証の日々】
20/154

教会と偶然と必然

冒険者ギルドで調べ物をした次の日

アレクは王都にある教会に向かっていた。

この世界での教会は創造神 クレデウスを

信仰する宗教団体で世界への奉仕を命題に

医療分野を司っていた。


(創造神ってことは、俺が話したことが

ある。あの神様のことだよな……名前は

本当の名前か分からないが認識としては

合ってるはず)

アレクは、この世界〈ティエーメ〉に

転生させてくれた張本人が神だったと

今更ながら再認識していた。


冒険者ギルドがある王都広場よりも

さらに奥、王城に近い場所に教会は

存在していた。それは国と近しい関係に

あることを暗に示しており教会の権威を

窺い知ることができた。


教会前まで到着するとアレクは建物を

観察する。石造りながら荘厳な雰囲気を

感じさせ、見る者に感動を与える美しさを

備えた建物の作りをしている。

(宗教団体で立派な建物を持ってるやつに

嫌な気持ちを抱くのは偏見なんだろうか?

立派な建物の方が信仰の象徴としていいのは

分かるけど建てる金のことを考えると

疑いたくなるな)


豪華な建物を建てるくらいなら恵まれない

人を助けてやれよ!なんて勝手なことを

考えてしまう自分を諌めながら教会内に

入っていく。


教会の中に入ると、すぐに礼拝堂になって

おり奥の祭壇上部には美しいステンドガラスが

はめ込まれている。天井には神聖な光景が

描かれていた。朝から祈りを捧げている人も

思ったよりも多く邪魔にならないように

並べられている背もたれがある長椅子に

座りながら教会内を観察していた。


しばらく教会内の様子を窺っていると

1人の修道服を着た女性に話し掛けられる。

「どうかされましたか?」

アレクが教会内を観察しているのを不思議に

思ったのか心配した様子で女性は問いかけてくる。

「いえ、特に何もないのですが……

以前、いた村には小さな教会しかなく

王都の立派な礼拝堂に驚いておりました。

神聖な場所で、僕のような子供が祈りを

捧げても良いものかと思ってしまって」

苦笑いしながら、誤魔化しておく。


「そうだったのですか、遠慮なさらず

祈りを捧げて下さい。きっと創造神

クレデウス様も、お喜びになりますよ?」

慈愛に溢れた表情で祈りをを勧められ

他の方が祈りを済まされてから

お祈りします。と返答しておいた。


やがて、礼拝堂から人が出ていき人気が

なくなると祭壇の前に歩き出す。

(一応、神様には感謝してるし祈りだけでも

捧げておくか……やり方は、見て分かったし)


祭壇の前で、跪いて両手を胸の前に組み

神様に祈りを捧げてみる。

(俺の知ってる神様か、分かりませんが

転生させて頂き ありがとうございます。

こちらは元気にやっています。神様は

お元気でしょうか?)

祈りを捧げていると、急に頭の中から

声が聞こえ始める。


『ワシは、元気じゃぞ?』


「っ!!」

思わず体がビクッ!と反応してしまう。


(急に出て来ないで下さいよ!ビックリする

でしょうが!?)


『祈りの中に、転生の情報が含まれて

いたから確認したら其方だったから

返事をしただけじゃろうが』


(祈りとか、ちゃんと聞いてるんですね。

祈っても神様には届かないと思ってたので

意外でしたよ)


『祈りは、我々には空気にようなものだから

普段は気に留めないが異変があれば今回の

ように反応することもあるのじゃ』


(はぁ、そういうものなんですね……

特に用事もないのにお呼びだてして

申し訳ありませんでした)

心の中で、頭を下げておく。


『いや、気にするでない。其方が元気そうで

何よりじゃからな。それではワシは戻るが

何か聞きたいことでもあるかのう?折角、

だからサービスで答えるぞ?』


(う〜ん、聞きたいこと……神様の名前は

割とどうでもいいしなぁ……聞きたいこと)

悩んでいると、組んだ両手に指輪の感覚を

確認し質問を決める。


(では、ステータスには運の要素は存在

するのですか?先日、手に入れた指輪が

運を上昇させる効果を持っていたのですが?)


『そうか、そんな指輪が……分かった。

其方の質問に答えよう。ステータスで

運の項目は存在する。これが答えじゃ』


(本当に、存在するんですね……なら指輪の

効果も無駄にはならないか。神様、答えて

下さってありがとうございました。色々と

大変だと思いますが頑張って下さい)


『礼ならいらぬ、其方も世界を楽しめるように頑張るのじゃぞ?人の子よ。それではさらばじゃ』


神聖な雰囲気が、霧散していくように感じ

気付いたら閉じていた目を開く。

久しぶりの神様との邂逅に気疲れし

再び長椅子に座り気を抜いていると

1人の男性に話しかけられた。


「お疲れのご様子ですが、大丈夫ですか?」

そこには60代くらいの黒い修道服を着た

優しそうな男性が立っていた。


なんとなく、他の人と違った雰囲気を持つ

男性に感じるものがあり立ち上がって

話をする。


「少し、熱心に祈り過ぎたようで

ここで休ませていただいておりました。

僕はアレクサンダーと申します。

冒険者見習いをしております。」

丁寧に一礼をする。


「これは、ご丁寧にありがとうございます。

私は創造神 クラデウス様にお仕えしている

信徒の1人、セロネスと申します」

セロネスさんも丁寧に返礼してくれる。


「やはり冒険者見習いの方でしたか。

服装から、そうではないかと思っておりました。冒険者の方が祈りに来られることが

珍しく思わず声を掛けてしまいました。

突然、失礼いたしました」


(やはり、冒険者と教会は珍しい組み合わせ

なのか……そこに俺がいたら、そりゃ浮くわ。最初の女性が心配そうだったのも納得だな)


「いえ、冒険者と教会の関係は少しだけ

聞いたことがありますので気にしないで下さい」


アレクは、この時まだ冒険者と教会の険悪な関係を理解できていなかった。


創造神 クラデウスを信仰する教会は

当然、この世界に生まれことを感謝し

この世界があることを祝福している。


しかし、それに疑問を持つ者達がいた。

そう冒険者ギルドである。魔物退治を

仕事にする彼らであったが魔物により

命を落とす者も多く、魔物さえいなければ

大切な者を失わずにいられた者もいた。


冒険者は、声を上げた。

なぜ、創造神は魔物を生み出し我々を

苦しめるのか!と。


それに対し、当時の教会は

魔物は創造神から与えられた試練であり

乗り越えるべき困難である!と答えた。


この答えに、多くの冒険者が激怒した。

試練で殺されては、堪ったものじゃない。

それに試練だと言うなら何故、教会は

積極的に魔物討伐を行わず冒険者だけに

責を負わせるか!自ら困難に立ち向かわないのか!


もちろん教会内部にも教会の見解を、

是としない者達がいた。そうした者達は

教会を離れ冒険者となった。


これが後に、戦闘職として聖職者が加わり

回復魔法の使い手が冒険者に増える元になる。


最初は、小さな亀裂であったものが

時が過ぎると共に大きな亀裂になってしまい

双方の関係は険悪なものとなってしまった。



「そう言って頂けると助かります。

それで本日は、何か要件があって教会へ

来られたのでしょう?よろしけば私が

お話を伺いますが?」


それから、アレクはセロネスさんに

教会の成り立ちや国家との関わり方。

教会の医療の関する知識。

周辺国家への影響などが勉強できる

資料が閲覧できないか話してみる。

一通り話し終わった辺りでセロネスさんが

1つ質問をしてくる。


「アレクサンダー君は、なぜそこまで

色々な知識を求めるのですか?

12歳の少年が求める知識としては

不釣り合いな気がします」


心を覗き込むような真っ直ぐな目に

アレクは正直に答えることを決める。


「それは、楽しむ為です」


「楽しむ為?何をですか?」


「この世界を、楽しむ為です。

私にとって世界を楽しむということは、

生きることと表現してもいいでしょう。


その為には多くのことを学び、

選択肢を増やし生き残らなければ

なりません。それには教会で知識を学ぶ

必要があると判断して、ここに参りました」


先程までの少年の雰囲気ではなく

そこには1人の人間として信念のような

強い意志を感じ、戸惑うセロネス。


しかし、彼はアレクが祭壇に祈りを

捧げていた姿を思い出す。


最初は冒険者と見られる少年が礼拝堂に

来ていると修道女から報告を受け様子を

見に礼拝堂を訪れた。


しかし、そこにいた祈りを捧げる少年は

今まで、感じたことのない神聖な空気を纏い

一心に祈りを捧げ神と対話しているように見えた。


その姿に、立ち尽くし呆然としていると

やがて彼の祈りが終わり長椅子に座るのを見て

話し掛けずにはいられなかった。


「これも、創造神クラデウス様の

お導きでしょう教会の者に資料が閲覧

できないか私が話をしてみましょう」


冒険者と教会の関係を憂いていたセロネスに

とって今回のアレクからの申し出は

お互いの距離を縮める一歩になるのでは

ないかという予感があった。


目の前の少年が、長年の冒険者と教会の

関係を変えてくれることを祈って

セロネスは彼の背を押すことを決める。


「さすがに時間が掛かると思いますが

準備できたら冒険者ギルドに使いを

出しますので、それまでお待ち頂けますか?」


「はい、ありがとうございます!

急ぎではありませんので、無理せずに

進めて頂ければ大丈夫ですので

よろしく、お願いします!」

深く頭を下げて教会を後にした。



そんな、アレクを少女が見つめていた。

彼女は、修道女見習いで礼拝堂の清掃を

1人行っている時に、人気のなくなった

祭壇に祈りを捧げる少年を見つける。


彼は、銀色の髪に整った顔立ちで

冒険者らしき格好をしていた。


教会に冒険者というミスマッチな

状況から彼を見つめてしまうが……

すぐに彼を自分が何故見ていたか

思い直すことになる。


彼の存在は、とても清らかで

青空のように澄み渡って見え

彼女は目が離せなくなっていた。


やがて彼の祈りが終わり祭壇から

離れていく。(彼が行ってしまう……)

思わず声を掛けそうになるが

何と声を掛けていいか思い付かない。


そんなことを考えていると彼は帰らずに

長椅子に座り休んでいるようだった。


それからは、セロネス司祭が現れ

タイミングを逃してしまい話はできなかった。

しかし、彼の名前は聞くことができた。


「アレクサンダー……」

彼女は、嚙み締めるように彼の名前を呟き。

次の機会を待ちわびるのであった。
















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