ひとつ目 ターゲット:老人。
今回は前ふりなので、短いです。
どれだけ短い生涯であっても、人生の春夏秋冬は必ずある。
と思う。
冬のさなか。差し込む日にふと顔をあげると、大きなするどいツララのはしから、ぽたりぽたりとしずくが落ちているのをみつける…………。
そんな人生の頃の、老人。
ひところ騒がれた年金不正需給問題なんてのもあるように、戦争を体験しかつ生き残ったひとびと、この国の失敗と「繁栄」と勝者ならぬ敗者の混迷を体験したひとびとは、毎月人一人以上を生き延びさせるのに十分な金を受け取っている。
若い、人格形成期において、爪に火を灯すような生活を送っていただろうから、つましい暮らしになれ、その分余剰資産を貯めているひとも多いだろう。
そして、家族の無関心。
関わりたくない。
会いたくない。
わたしは私で生きてゆかねばならないんだから。
それが、己を人がましくなるまでに育ててくれたものへの言葉だろうか。
そんな言葉を吐いたひとびとは、自分もいつか言われる立場に立つことに、気づいていないのだろうか。
その時彼らは、どう思うのだろう。
かつてそう言って「家族」を切り捨てた自分を、思い出すのだろうか。
想像力の翼を持ち、原始の頃からの習性である、群れで生きることに居心地よさを感じる人間ならば、その死の終わりを、誰かに看取ってもらいたがる。
と思う。
たとえそれが、それまで会ったことのない、赤の他人であろうと。
ひとりぼっちで逝くよりは。